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小麦の収量の実情と課題|日本でも高所得を実現できるか?

小麦の収量の実情と課題|日本でも高所得を実現できるか?
出典 : jyugem / PIXTA(ピクスタ)

日本では、食生活の変化によって米の消費が減る一方で、手軽に食べられるパン食が進み、国産小麦の需要が高まりをみせています。小麦の収穫量は増えつつあるものの、10a当たり収量には諸外国と比べて低いのが実情です。

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日本では、食生活の変化で手軽に食べられるパンや麺のニーズが高まる一方で、米の消費は減少傾向にあります。また、消費者の安全志向の高まりもあり、国産小麦の需要は増加しつつあります。

世界と比較! 日本の小麦の収穫量と10a当たり収量

小麦の踏圧(麦踏み)

小麦の踏圧(麦踏み)
nobmin / PIXTA(ピクスタ)

しかしながら、国産小麦の収穫量は伸びているものの、小麦のカロリーベースの自給率は15%にとどまっており、10a当たりの収量は世界の主要産地に比べて低いのが現状です。

日本の小麦の収穫量と10a当たり収量は、増加傾向

農林水産省の作況統計によると、2021年産の小麦の作付面積は22万haで、収穫量は109万7,000t、10a当たり収量は499kgでした。

前年に比べると、どの数値も増加しており、気象災害の影響によって収穫量が減っている年はあるものの、ここ10年ほどは増加傾向にあります。

小麦の収穫量と10a当たり収量の推移

出典:農林水産省「作物統計 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物)|「麦類(子実用)の作付面積及び収穫量」(令和2年、令和3年、長期累年)よりminorasu編集部作成

一方、世界に目を向けると人口増加が進んで経済発展を遂げている国を中心に、小麦の需要は大きく高まっており、それに伴って生産量も大幅に増加している状況です。

USDAによると、世界の小麦生産量は2021/2022年に約7億7,900万tに達すると見込まれています。2005/2006年の6億1,900万tと比べると26%増です。

世界の小麦生産量推移

出典:USDA Foreign Agricultural Service PS&D(2022/12/14取得データ)よりminorasu編集部作成

国内小麦の収穫量の2005年からの増加率は25%と同等ですが、その量は、世界の生産量の0.1%強にすぎず、2020年産小麦の生産量は51位でした。

2020年産小麦の生産量 世界ランキング

出典:FAO統計データベース(FAOSTATS)よりminorasu編集部作成(2022/12/14取得データ)

しかし、日本の小麦の10a当たり収量は、ヨーロッパ諸国のおよそ半分

小麦 ほ場 春

キタデザ(北村笑店) / PIXTA(ピクスタ)

日本の小麦の10a当たり収量は、国内で比較的栽培に向いている北海道でも、10a当たりの収量はヨーロッパ諸国のおよそ半分程度です。収量が低いのは、ほ場の効率性や栽培管理の質が課題があるといわれています。

2020年産小麦の10a当たり収量 ランキング 世界(作付面積15万ha以上の国・地域)

出典:FAO統計データベース(FAOSTATS)よりminorasu編集部作成(2022/12/14取得データ)

アメリカや東欧のように広大な農地で大規模栽培を営めばスケールメリットが効きます。しかし、日本はもともと小規模農地が多く、大型の農業機械を使用した効率的な栽培管理ができるほ場はそれほど多くありません。

また、小麦は冷涼乾燥気候を好む作物であり、日本の温暖多湿の環境下では多くの収量を望むのが難しいため、これまでは小麦をわざわざ栽培しようとする農家が少なかったという事情もあります。

小麦の収量向上には、日本の気候でも良好な生育が期待できる多収品種の開発および普及が必須です。

日本と国土面積が近いドイツを例に挙げると、農地環境の整備や新品種開発といった対策を講じて、日本の約1.75倍の高い単収を実現しています。

出典:農研機構「中央農業総合研究センター研究報告 第24号」 所収「小麦収量水準格差の形成要因-日本とドイツの比較分析-」

ドイツの小麦ほ場 収穫風景

ドイツの小麦ほ場 収穫風景
donogl / PIXTA(ピクスタ)

小麦栽培の現場で進むさまざまな取組み

日本では小麦の収穫量が増えつつありますが、小麦のカロリーベースの自給率は15%にとどまっています。そうした現状を変えようと農家だけでなく、政府や関係機関も対策を講じており、中には効果が表れつつある取り組みもあります。

ここからは、小麦栽培の現場で進められているさまざまな取り組みについて紹介します。

品種改良・転換による品質・収量の向上

水田転作の小麦「きぬあかり」のほ場

「きぬあかり」のほ場
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

日本の気候に合った品種改良は小麦栽培における長年の課題の1つでした。近年は各地で独自の品種転換が進みつつあり、従来よりも高品質かつ多収な品種が登場しています。

例えば、愛知県では2010年に「きぬあかり」を県の奨励品種に指定して以降、毎年のように単収が増加し、2017年には単収で全国2位、収量では全国4位になるなど、大きな成果を上げました。

熊谷市の小麦ほ場「さとのそら」

「さとのそら」のほ場
zero one / PIXTA(ピクスタ)

また、群馬・栃木・埼玉などの北関東一帯では、小麦の作付面積減少が進んでいました。しかし、単収の高い「さとのそら」への転換を2010年に推進して以降、生産状況に改善が見られます。

小麦のニーズが高まっている現状から、今後もこうした品種改良および転換の流れは続き、現在よりもさらに効率的な経営に貢献することが期待されています。

小麦・大麦農家 スマート農業活用事例集落営農でも大活躍!作物の収量アップと、書類作業の時間を1/9に削減するスマート農業の可能性

佐賀県 眞木様

■栽培作物
米・小麦・大麦・大豆

導入の目的

▷限られた人員で作物を育てているため、作業を効率化したい

課題・悩み

▷高齢化により、共同の管理機を運転できる人が少なくなっている
▷地域で管理している農地以外に、自身の農地管理やさまざまな役職の兼務で多用なため、作業の効率化を図りたかった

成果

▷生育ステージ予測を活用し、最適なタイミングでの除草剤の散布や堆肥の施肥が可能になった
▷地力の弱い場所に肥料を撒けるようになったため、収量が増加
▷ザルビオの作業記録を出力することで、農協提出用の書類作成時間が90%削減

詳しくはザルビオサイトへ

国産小麦のニーズにあわせ中力系から強力系へシフト

国産小麦の食パン、中華麺、強力系小麦の「ゆめちから」

rachel / PIXTA(ピクスタ)・tokachiiga / PIXTA(ピクスタ)・manoimage / PIXTA(ピクスタ)

かつて小麦は、海外産のほうが作物に適した環境で栽培を行えるため、国内産よりも品質に優れているという評価を受けていました。

しかし、上述のとおり高品質・多収の新品種が開発されたことにより、徐々に国産小麦の評価も高まっています。特に需要があるのは、パンや麺に使用されることの多い強力系小麦です。

農林水産政策研究所の「日本の麦-拡大し続ける市場の徹底分析-」という資料によると、2009年時点での国内産小麦の用途別シェアはパン用で3%、中華麺用で5%でした。

ところが、2017年産では主にパン・麺に使用される強力系小麦の国内生産量は全体の2割を占めるほどに増加したと報告されています。

国産小麦は安全志向の高まりから注目されるようになり、食品メーカーの中には国産小麦の使用率目標を掲げている企業もあります。食品メーカーにとっては、国産小麦を一定割合使えば、異常気象や国際情勢の変化によって起きる小麦価格の変動リスクに備えられるという側面もあります。

こうした状況を背景に、中長期的な観点で中力系小麦から強力系小麦への転換を進めている産地や農家もあります。

出典:農林水産政策研究所「セミナー開催案内等(令和元年度)」所収「日本の麦-拡大し続ける市場の徹底分析-(民間流通制度導入後の国内産麦のフードシステムの変容に関する研究(小麦編))
」(国内産小麦に関するセミナー 2019年10月23日)

▼国産小麦の需要拡大についてはこちらの記事もご覧ください。

水田転作の交付金をうまく使って小麦へシフト!所得アップにつなげる

収獲間近の小麦と田植直後の水田

Rise / PIXTA(ピクスタ)

米の消費が減少しつつあるのに対して、パンや麺などの需要増が期待できる小麦は、将来的に米の単一作よりも稼げる可能性があります。

農林水産省の「水田における麦、大豆、非主食用米等の所得」という資料によると、10a当たりの所得は主食用米が3万4,500円なのに対して、小麦は4万3,000円と試算されています。

出典:農林水産省「政策統括官 米政策改革について」所収「水田における麦、大豆、非主食用米等の所得」

小麦の所得が多いのは、販売収入よりも経営所得安定対策などの交付金が多く支給されるからですが、交付金を利用しながら、設備の整備や省力化・効率化を進められれば、結果的に収益性を高めていけます。

水稲から小麦に切り替えた農家の中には、需要にあった品種を導入して販売収入を増やし、大幅に所得をアップさせた事例もあります。

▼事例についてはこちらの記事をご覧ください。

小麦は日本人の食生活の変化もあって今後も需要が高まることが期待されています。パンや麺にあった品種の開発も進んでおり、政府も水田の有効活用の一環で交付金等を用意して転作を後押ししています。水田転作や田畑輪換の畑作物として、小麦は大きな選択肢の1つになるのではないでしょうか。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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