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農業後継者になる!農業経営を継承する方法と、その後の取り組みを支援する制度

農業後継者になる!農業経営を継承する方法と、その後の取り組みを支援する制度
出典 : プラナ / PIXTA(ピクスタ)

近年、後継者不足で悩む農家と後継者となる新規就農者をつなげる取り組みが進められています。そこで、新規就農者が農業経営を継承するときの注意点や、継承後にうけられる補助金について解説します。

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日本では農業従事者が減少するとともに、後継者問題が深刻化しています。また、農業の担い手として期待される新規就農者にとっては、農地の確保や技術の獲得などのハードルがあります。

そこで選択肢にはいってくるのが「農業経営を継承する」ということです。この記事では、農業経営を継承するメリットとともに、継承した後の支援制度について解説します。

新規就農で「農業後継者になる」という選択肢

これまでは親子で農業を継承していた

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

一般的に、これまでの農家は親元で家業を継ぐ継承スタイルが一般的でした。しかし、現実には後継者がいない農家が増加しています。このままでは長年続けてきた農業を廃業せえざるを得ない農家が増えるでしょう。

一方で新規就農をめざす人にとっては、農地の取得や農業機械への投資など就農前に解決すべき問題が山積しています。双方が抱える問題を解消する方法として、既存の事業を後継するという方法が近年注目を集めています。

農家を悩ませる、深刻な後継者不足問題

ここ数年、新規就農者の数は5~6万人台で推移していて、10年前に比べて大きく減少しているわけではありません。むしろ新規雇用就農者が増加傾向にあるため、年ごとの増減はあるものの一定の水準を維持しています。

それにもかかわらず、2020年時点で日本の基幹的農業従事者数は、2010年の約205万人から約136万人に減少しました。同時に高齢化も進んでいて、平均年齢は2010年の66.1歳から徐々に上がり、2020年は67.8歳になっています。

基幹的農業従事者数の推移

出典:農林水産省「農林業センサス」よりminorasu編集部作成

わずか10年足らずで3割以上に当たる70万人近くも減少した背景には、深刻な後継者不足があります。後継者がいない農家は高齢になっても農業を続けていくか、廃業を余儀なくされます。

就農時、既存の事業を後継するメリット

新規就農は、認定新規就農者制度などを活用して、補助金を受けたり地元市町村の支援を受けたりしながら小規模農家からスタートする方法が一般的です。

それ以外に、後継者のいない農家の設備や機械、経営上のノウハウなどをそっくり受け継ぐという方法があります。この方法のメリットは、初期投資の負担を抑えられ、なおかつベテラン農家の知識と経験を継承できる点です。

また、経営基盤や販路を継承できる点も就農後の不安を払拭してくれる大切なポイントです。これらのメリットは新規に就農を希望する方にとって就農のハードルを低くすることに大いに寄与するでしょう。

円滑に農業を継承するには? 失敗しないためのポイント

農業後継者

cba / PIXTA(ピクスタ)

後継者を探している農家が第三者を農業後継者とし、継承した新規就農者がその後の営農を円滑に進めていくためには、両者の協力が欠かせません。

また、お互いの認識の齟齬があると、利害関係が一致しないなどのトラブルに発展してしまう可能性があります。

ここでは、新規就農者が農業を継承する際に押さえておきたいポイントと、家族や親族でない第三者に事業を継承することに不安がある農家が頼るべき法律的なサポートについて解説します。

継承後の経営計画を具体的に検討しておく

これから経営を担う新規就農者にとって、継承する農業で収益が出せるかどうかは極めて重要な問題です。そこで事前に中長期的な経営計画を立てておくことをおすすめします。

経営計画を作成する際は、移譲する側の農家から情報とアドバイスをもらうようにします。それまでの農作業の概要や土地の状態、主に栽培している作物の種類、販路についてなど、可能な限り多くの情報を提供してもらい継承後の経営計画を作成します。

これまでの実績から具体的な数字を予測できるので、将来の予想が立てやすいでしょう。移譲する側の農家から技術や知識などを教えてもらう仕組みや計画も同時に作っておくと安心です。

継承の具体的な取り決めには、第三者機関が間に入るとスムーズ

一方、後継者を探している農家にとって、身内ではない相手への経営移譲は、周囲が考えるほど簡単ではありません。

特に土地の所有権が関係してくると予想外のトラブルに発展する場合もあります。お互いの信頼関係だけでは解決できない問題が出てくるかもしれません。

こうした問題を未然に防ぐためには、第三者機関に仲介を頼むのも1つの選択肢です。第三者機関としては、移譲者や後継者とは利害関係にない、完全に中立的な立場の組織や法律家に依頼しましょう。仲介が入ることで、お互いの言い分が食い違った場合も間を取り持ってもらえます。

継承したあとは? 継承後の後継者を支援する「経営継承・発展支援事業」

就農した夫婦

プラナ / PIXTA(ピクスタ)

継承した後の経営が不安という方も多いのではないでしょうか。意欲ある後継者に継承後の取り組みをしえんしてくれる制度があります。

それは、国と市町村が一体となって継承後の農業経営をサポートする「経営継承・発展支援事業」です。

補助額と対象となる取り組みは?

経営発展に向けた取り組みに必要な費用を100万円上限で、国と市町村が2分の1ずつ補助します。経営発展に向けた取り組みとして、下記13項目が挙げられています。

「経営継承・発展支援事業」の対象となる取り組み

取り組み内容
1法人化
2新たな品種や栽培部門の導入
3認証取得
4データ活用経営
5就業規則の策定
6経営管理の高度化
7就業環境の改善
8外部研修の受講
9販路開拓
10新商品開発
11省力化、業務の効率化、品質の向上
12規格等の改善
13防災・減災の導入

生産の省力化・効率化から、マネージメントの合理化、働く環境の整備、マーケティング面までカバーしているので、優先したい施策へ注力するための資金として使えるのではないでしょうか。

申請の要件は?

農林水産省の資料によると、申請できる後継者は「中心経営体である先代事業者からその経営に関する主宰権の移譲を受けた後継者で、経営発展計画を策定するなどの要件を満たした者」となっています。

まず、先代経営者が「中心経営体である」ということはどういうことでしょうか。具体的には、地域の中心的経営体だと「人・農地プラン」によって認めてられている、あるいは、市町村に認められていることが必要になります。

「経営継承・発展支援事業」における「先代経営者」の要件

要件
1「人・農地プラン」において実質化された人・中心経営体
2市町村長が地域農業の維持・発展に重要な役割を果たすと認めた「認定農業者」または準ずるもの
3「人・農地プラン」の工程表の対象地区内にあり、将来、上記の「実質化された人」「中心経営体」になることが確実と見込まれる

※「実質化された人」とは、農地についての地域内のアンケート→現況把握→中心経営体への農地集約化に関する将来方針の作成という3つのプロセスを経て「中心経営体」とされた人のことです。

では、補助を申請する後継者側の要件はどうでしょうか。

要件は以下の表の通りですが、今まで農業経営に携わったことがあったり、農業次世代型人材投資事業(経営開始型)の資金交付を受けたことがあると対象外になるので注意してください。

「経営継承・発展支援事業」における「後継者」の要件

要件
1経営発展計画を策定している
2経営発展計画の提出時までに、先代事業者からそ主宰権の移譲を受けていることが、所得税関係の書類で確認できる
3先代事業者の経営規模から著しく縮小していない
4税務申告を後継者の名義で行っている
5青色申告者である家族経営の場合は、家族経営協定を書面で締結している
6地域農業の維持・発展に貢献する強い意思を有していると、市町村などが認めている
7主宰権の移譲を受ける前に農業経営をしていない
8農業次世代型人材投資事業(経営開始型)の資金交付を、過去も現在も受けていない

この項の出典:令和3年度農業関係予算経営継承・発展等支援事業所収農林水産省「令和3年度経営継承・発展等支援事業の概要(経営継承関係)」

※この制度についての問い合わせは、一般社団法人全国農業会議所の「経営継承・発展等支援事業 補助金事務局」または市町村の農政部署にしてください

農業を後継する際に活用できる、そのほかの支援制度

最後に、農業後継者が活用できる支援制度を紹介します。上手に利用して初期投資や設備投資に活かしていきましょう。

農業後継者育成に関する補助金

自治体が農業関連の補助金を支給する場合もあります。例えば、埼玉県さいたま市では「農業振興事業費補助金制度」の一環として「農業後継者育成事業」を行っています。こちらは将来的に農業の継承を受ける新規就農者か認定新規就農者が対象です。

この事業では農業関連の施設整備費や機械購入費として補助対象経費の2分の1以内かつ上限100万円を補助してくれます。地元の自治体でも対象になる補助金があるかもしれないので、対応する窓口に問い合わせてみましょう。

出典:さいたま市「農業」のページ所収の「令和3年度さいたま市農業振興事業費補助金制度について」

農地等の贈与を受けた農業後継者には、納税猶予の特例も

もう1つは補助金ではありませんが、税金面での優遇措置を紹介します。農業後継者が農地を贈与された場合、そこで農業を営んでいる間は贈与税の納税が猶予されます。

贈与税は贈与者か後継者のどちらかが亡くなった場合や、農業の後継者に生前一括贈与した場合に納税免除の対象になります。ただし、贈与者と後継者ともに特例を受けるための要件があるので注意が必要です。

出典:国税庁「農業後継者が農地等の贈与を受けた場合の納税猶予の特例」

新規就農者がまったく何もない状態から農業の準備をするのは、資金面や販路の開拓などの面も含めて多くの困難をともないます。継承によって、農業経営がすぐに始められる環境を手に入れられれば負担は大きく軽減されることでしょう。

農業経営継承事業は非常に手厚いサポートが受けられる制度なので、新規就農を視野に入れている方はぜひ検討してみてください。

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大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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