新規会員登録
BASF We create chemistry

耕種農業で一番「儲かる作物」って? 新規就農時に選ぶべき種類とその理由

耕種農業で一番「儲かる作物」って? 新規就農時に選ぶべき種類とその理由
出典 : cba/ PIXTA(ピクスタ)

初めて農業に参入する場合、頭を悩ませるのが「どの作物を栽培するか」ということです。そこで今回は、初心者におすすめの耕種農業で一番「儲かる作物」を紹介します。営農類型別に収益や必要な労働時間、農業経営を安定させる考え方などを紹介するので、ぜひ作物選びの参考にしてください。

  • 公開日:

記事をお気に入り登録する

農業もビジネスですので、利益を上げることを考えなければいけません。その時に重要となるのは、どの作物が高い利益を出せるかということです。

今回は初めて農業をする方に向けて、どういった作物が利益を出せるのかを、収益や労働時間などの視点から紹介します。

収入? 利益? まず知っておきたい、「儲かる農業」の基準

農業 収益

ilixe48/ PIXTA(ピクスタ)

まずは農業経営の基本となる収入や利益の計算方法と、その基準について紹介します。「儲かる農業」を行っていくにはどれも重要な知識なので、これから新しく農業経営を行う方は、しっかりとチェックしておきましょう。

主業農家の収益は「作物の売り上げ収入-経費」で求める

作物の売上収入は「収量×平均単価」で求められます。また売上で得た収入から経費を差し引いた額が農家の利益になります。

経費になるのは、ハウスや農機具などの設備費、種苗や肥料などの資材費、人件費など栽培にかかった費用すべてです。これらの費用を合計したものを収入から差し引きます。

もちろん経費が高くなれば利益が減ってしまうため、経営を行う上では収入とのバランスを考えることが大切です。経費削減に関しては、中古の機械や設備を利用することなどでも行えます。

単価に関しては、作物の種類や人気によってもさまざまです。例えば反収が少ない作物でも、ブランド化で単価を上げられるのであれば高い利益が期待できるでしょう。

反対に、単価が低かったとしても、栽培しやすい作物で安定した収量が見込めるのであれば、設備費などの経費がかからずに高い収益が期待できます。

労働時間あたりの収益にも注目を

人件費にあたる作業者の労働時間当たりの利益(いわゆる時給)も重要なポイントです。

例えば、短い労働時間で栽培できる作物を選んだ場合、空いた時間で別の作物を栽培するなどして増収を目指せます。

これらのことを踏まえると、儲かる農業をしたいのであれば「売上が多く、かかえる経費や労働時間が短くてすむ作物」を優先的に選択することだといえそうです。

最新の統計から見る、一番儲かる営農類型

お金 作物

ilixe48/ PIXTA(ピクスタ)

では、実際にどんな作物の栽培を行っている農家が儲かるのでしょうか?

つづいて最新の統計データをもとに、どの営農類型がどの程度の収益を上げているのかを詳しく解説します。

稲作・露地野菜作・施設野菜作・果樹作のうち、最も儲かる類型は?

農林水産省が発表した2018年の営農類型別経営統計(個別経営)によれば、稲作の農家1戸当たりにおける農業粗利益の平均は約265万円です。また露地野菜作は約836万円、施設野菜作は1,590万円、果樹作は約673万円となっており、施設野菜が最も儲かる類型であることがわかります。

また労働時間に関しては、同様の統計によれば稲作の自営農業における労働時間の合計平均が837時間です。また露地野菜作は2,964時間、施設野菜作は5,492時間、果樹作は3,146時間となっており、最も労働時間が少ない類型は稲作であることがわかります。

【参考】新規参入時の所得が最も高い営農類型

全国新規就農相談センターが2016年度に調査した、農業への新規参入者を対象とした調査結果では、最も新規参入者の農業所得額が多かった営農類型は施設野菜とされています。

内訳としては、施設野菜が平均120万円、次に果樹が110万円、水稲等が79万円と続き、露地野菜が72万円で最下位でした。

このデータから、新規参入者にとっても高所得を得やすい営農類型は施設野菜作であるといえるでしょう。ただし、このデータでは労働時間が不明となっている点に注意が必要です。

類型別! 農業で儲かる作物の例と、期待できる粗収益額

さまざまな作物

Fast&Slow/ PIXTA(ピクスタ)

営農類型と平均的な農業粗利益を紹介しましたが、もちろん同じ類型でも栽培する作物によっては収益に大きな差が出ます。そこで最後に、類型別に最も収益の出る作物をそれぞれ詳しく紹介します。粗利益のほか時給換算でも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

稲作では「作付面積20ha以上」の経営体が高収益を叶えている傾向に

稲作は栽培されている作物が水稲のみであるため、作物による収益の差はありません。しかし稲作は、作付面積によって粗利益の平均が大きく変わってくるという特徴があります。

稲作の農業粗利益は、平均で約265万円です。しかし、これはあくまでも平均であり、20ha以上の作付面積を持つ経営体から、農業粗利益の平均が約2,253万円と一気に利益が高くなります。

また30ha以上の作付面積を持つ場合は、約2,685万円と面積が広くなるほどに利益が高くなる点も魅力です。

大規模かつ効率的な栽培を行うことで、より高収益が期待できるでしょう。稲作を始める場合は、まず作付できる土地の確保と大型農機の調達が必要です。仲間との法人化も視野にはいってくるでしょう。

露地野菜作では、時給換算で「キャベツ」が最も高収益

農林水産省では、2007年まで「品目別経営統計」として、作物別の労働時間や農業粗利益の集計、公表を行っていました。少し古いデータになってしまいますが、露地野菜作はこのデータをもとに「儲かる作物」について紹介します。

上記の統計によれば、露地栽培で最も高い農業粗利益が出るのはシシトウで、10a当たり201万円、最も少ない大根や玉ねぎが32万円であるのに比べて169万円もの利益が出る計算です。しかし一方で、シシトウは労働時間も全品目の中で圧倒的に長く、合計で2,155時間かかります。

そこで最も効率よく収益を上げられる作物を調べるため、それぞれの所得(農業粗利益から経費を差し引いた額)を労働時間で割って時給を算出したところ、キャベツが時給2,000円で最も高収益であることがわかりました。キャベツは農業粗利益が10a当たり39万円と低いですが、経費が少ないことと労働時間が90時間に抑えられることが高収益に繋がっています。

またキャベツは栽培に求められる技術もあまり高くなく、初心者が取り組みやすい作物ですが、規模によっては定植機や収穫機などの導入も考えなければなりません。

ちなみに次に時給が高いのはレタスで、農業粗利益は10a当たり48万円、労働時間は133時間で時給は1,700円程度です。

施設野菜作では、「ミニトマト」の収益性が断然高い

施設野菜作も露地野菜作と同様に、2007年の「品目別経営統計」で見てみると、まず最も農業粗利益が高い作物は407万円のミニトマトで、最も低いスイカの75万円と比べて332万円の利益が出ます。

またミニトマトの労働時間は1,488時間で、最も高いシシトウの2,983時間や、イチゴの2,092時間に比べるとかなり少ない時間に抑えられます。時給換算を行っても、ミニトマトは1,400円程度で最も高収益の出る作物です。

ちなみに大玉トマトとスイカも時給が高く、ミニトマトとほぼ同程度の時給になる高収益の作物です。スイカに関しては収益が低いものの、経費も労働時間もほかの作物と比べて圧倒的に少ないため、結果的に高収益となっています。

施設野菜は総じて高い水準にあり、収穫期間が長くて収量も安定して多いことが大きなメリットです。しかし施設栽培は経費も高く、簡易なビニールハウスでも1棟3aの資材に約60万円かかり、そのほか加温に使う燃料や電気代、補修や張替の費用が必要です。

その結果、時給としては露地野菜よりも低くなりやすい傾向があります。

果樹作では粗収益・時給ともに「桜桃(さくらんぼ)」がトップ

2007年の「品目別経営統計」で見てみると、果樹作で最も高収益の作物は、桜桃(さくらんぼ)で、農業粗利益は約79万円です。ただし粗利益が低いすももなどと比べても33万円の差しかなく、露地や施設野菜のような大きな差はありません。

また、桜桃(さくらんぼ)の労働時間は1,139時間で、3,000時間近くになるりんごや梨はもちろん、果樹作の全体で見てもかなり少ない労働時間に抑えられます。

時給換算でも桜桃(さくらんぼ)が最も高く、高収益な作物です。ちなみに次に高収益な作物はキウイフルーツで、こちらも高水準となっています。

高収益な作物を理解し「儲かる農業」を始めよう

さまざまな作物 男性 ほ場

Graphs/ PIXTA(ピクスタ)

今回は、新しく農業経営を始める方に向けて、作物選びの参考となるよう営農類型別の作物の収益や労働時間を紹介し、どの作物が儲かるかについて詳しく紹介しました。

同じ営農類型でも栽培する作物によって収益が大きく変わるため、自身のほ場の環境、作物の栽培しやすさなどを加味しながら作物を選ぶことが大切です。今回の記事を参考に、ぜひ「儲かる農業」を始めてみてはいかがでしょうか。

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

よろしければ追加のアンケートにもご協力ください。(全6問)

農地の所有地はどこですか?

栽培作物はどれに該当しますか? ※販売収入がもっとも多い作物を選択ください。

作付面積をお選びください。

今後、農業経営をどのようにしたいとお考えですか?

いま、課題と感じていることは何ですか?

日本農業の持続可能性についてどう思いますか?(環境への配慮、担い手不足、収益性など)

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

おすすめ