【ブロッコリーのべと病】農薬や抵抗性品種で適切防除! 収量を保つ対策方法
秋のブロッコリー栽培で特に注意したい病害がブロッコリーべと病です。11~12月に収穫する作型は、育苗期間に病原菌発生の好適条件となり、最も被害が大きいとされています。発生原因や予防・防除方法、有効な農薬などの情報を得て、早期に防除対策を講じましょう。
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ブロッコリーべと病は、花蕾に発生すると表面からはわかりにくい厄介な病害です。収穫期を迎えてから発覚し、すでに広範囲に深刻な被害が広がっているケースもあります。
この記事では、ブロッコリーべと病の特徴を解説するとともに、効果的な防除方法をご紹介します。
葉や花蕾に被害大! ブロッコリーのべと病とは?
ヨシヒロ/PIXTA(ピクスタ)
ブロッコリーべと病は従来、幼苗の子葉や生長した株の下葉に発生する病害とされていましたが、花蕾に発生する場合もあり、同じ病原菌でありながら症状がそれぞれ異なります。
そこで、まずはブロッコリーべと病の特徴や防除方法について、症状が葉に出た場合と花蕾に出た場合をそれぞれ確認します。
主な症状と被害の特徴
ブロッコリー べと病 葉表の病斑
写真提供:HP埼玉の農供物病害虫写真集
ブロッコリーべと病が葉の部分に発生した場合の症状は、葉の表面に不明瞭な形や葉脈で区切られた形の、淡褐色の病斑が生じます。葉の裏には汚白色で霜状のカビが生じることもあります。生長した株では、主に下葉に発生します。
幼苗期に感染すると、子葉や下葉が黄褐色の病斑が現れ、葉裏にはやはり汚白色で霜状のカビが生じます。植物体内での病害の進行は早く、酷くなると枯死することもあります。
花蕾に発生した場合は、主に花蕾のすぐ下の主茎や花柄に、不整形な水浸状の病斑を形成します。やがて黒褐色の病斑になり、悪化すると黒い病斑が拡大し、主茎や花柄の内部まで黒変します。
重症化すると組織が崩壊し、花蕾の表面にも黒斑が現れたり、花蕾自体が奇形になったりします。収穫間近になって見つかっても、農薬による防除ができず治療法はありません。
葉の部分の発生では、収穫への影響はあまりありません。しかし、花蕾に発生していた場合、進行初期や軽症では花蕾の外観から判別しづらく、出荷先で発見されて問題になり、出荷できなくなることもあります。
そのため、発生を予防することに加え、できるだけ初期に適切な防除対策を行い、被害を最小限にとどめることが重要です。
べと病の見分け方
葉に不整形で黄褐色や淡褐色の病斑が発生する病害には、黒腐病や黒斑細菌病があります。いずれも発生時期や発生しやすい環境は似ていますが、病原も防除方法も異なります。病害を正確に特定し、適切な防除を行うことが必要です。
ブロッコリー べと病 葉裏の病斑 カビの胞子が見える
写真提供:HP埼玉の農供物病害虫写真集
べと病かどうかの判断は、病斑裏側に霜状のカビが生えているかで見分けられます。また、葉の縁からV字型に病斑が見られる場合は、黒腐病の可能性があります。
ブロッコリー 黒腐病 発病株
写真提供:HP埼玉の農供物病害虫写真集
花蕾直下の主枝や花柄に黒変が見られる症状は、黒腐病かホウ素欠乏症の可能性もあります。黒腐病では表層の浅い部分だけに黒変が見られ、深部は変色しません。
一方、ホウ素欠乏症は主枝や花柄の表皮に、茶褐色のかさぶた状の症状が見られることで区別できます。
ブロッコリー ホウ素欠乏症 茎がかさぶた状に木化する
写真提供:HP埼玉の農供物病害虫写真集
べと病が発生する原因と、特に注意すべき作型
ブロッコリーべと病の病原は糸状菌(カビ)です。べと病は多くの作物に発生する病害ですが、べと病菌にはいくつかの系統があり、系統によって感染する植物の種類が異なると考えられています。
同じアブラナ科の作物に感染するべと病菌でも系統が数種類あり、ブロッコリーに感染する系統の菌はキャベツとカリフラワーにも感染します。これらの作物が近隣にある場合は、相互の感染に気を付けましょう。
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
べと病菌の主な感染源は、被害作物の残さです。その中に卵胞子や菌糸の状態で長期間生存し、好適条件になると胞子を飛ばして、風や灌水・雨水などにより伝染します。
発病適温は10~15℃と比較的低温で、多湿を好むため降雨の続く春・秋に多発します。
茎葉が雨などで長く濡れた状態が続くと、付着した菌から菌糸が伸び、細胞間隙から侵入します。
一般的な温暖地の「夏まき冬どり」の作型では、育苗期間に雨が多く、さらに定植時期が台風シーズンと重なるなど、べと病発生の好適条件になりやすいため注意が必要です。
また、堆肥や窒素肥料などを多量に施用したり、立性の品種を極端に密植したりすると、花蕾部の発病が助長されます。
ブロッコリーをべと病から守る、4つの防除対策
べと病は発病株が発生源となるため、発生が認められた株は速やかにほ場外へ持ち出し、焼却もしくは土中深くに埋めるなどの処分をして、残さをそのままにしないようにしましょう。
しかし、胞子は風に運ばれるため、完全に感染を防ぐのは困難です。そこで以下では、べと病の発生を防ぐために有効な4つの対策をご紹介します。
1. 農薬を適期に予防散布する
「夏まき冬どり」のブロッコリー栽培では、べと病の主な感染時期である10月に農薬による防除を行うと、花蕾への発病抑制に効果的です。薬液を葉裏までしっかり付着させるために、茎葉が大きく繁茂する前に散布を開始すると、より効果が高まります。
2021年11月現在、ブロッコリーのべと病に登録のある防除薬剤は、「シグナムWDG」や「フォリオゴールド」「ホライズンドライフロアブル」「ダコニール1000」などがあります。
農薬の使用に当たっては、ラベルの記載内容をよく読み用法・用量を厳守しましょう。また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
2. 耐病性品種を利用する
べと病に耐病性がある品種も開発されています。発生が心配される場合は、耐病性がある品種を選定することも有効です。べと病に耐性のある品種としては、次のようなものが挙げられます。
きずな35号(ナコス)
・早生
・べと病と黒腐病に耐病性
・詳細ページ:http://www.e-broccoli.co.jp/itemlist.html
緑嶺(サカタのタネ)
・中早生
・べと病と黒腐病に耐病性
・詳細ページ:https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code000214.html
緑笛(サカタのタネ)
・中早生
・べと病と黒腐病に耐病性
・詳細ページ:https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code00922503.html
彩麟(トキタ種苗)
・中晩生
・べと病と黒斑細菌病と花蕾腐敗病に耐病性
・詳細ページ:https://www.tokitaseed.co.jp/bai.php?varietycode=118012
ウインタードーム(サカタのタネ)
・晩生
・べと病に耐病性
・詳細ページ:https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code012400.html
出典:長崎県農林技術開発センター「諫早湾干拓地における大規模模環境保全型農業技術対策の手引書」主要野菜の病害虫抵抗性品種一覧
3. 施肥管理で窒素過多になるのを防ぐ
堆肥や窒素の過剰施用は、ブロッコリーべと病の発生を助長するといわれます。一方で、窒素を多くしても、花蕾の重量や径サイズなどの増加には結びつかないとされています。土壌診断を行い、窒素過多とならない適切な施肥量を心がけましょう。
施肥量の目安としては、山形県が公表している施肥基準が参考になります。成分量で、窒素:リン酸:カリウムで10a当たり、基肥15.0:8.1:11.5(kg)、追肥10.0:6.3:8.8(kg)、合計25.1:14.5:20.4(kg)を基準としています。
出典:やまがたアグリネット(山形県運営)施肥基準のページ所収「施肥基準(野菜・飼料作物)」
施肥量は気候やほ場の条件などによって変わってくるので、あくまでも目安として捉え、地域の指導や土壌診断に基づいて施肥量を決めましょう。
また、土壌改善のためにやむなく堆肥を多めに施用する場合は、緑肥作物であるソルゴーをすき込むことで、窒素肥効を制御できます。
4. 過度の密植を避ける
ブロッコリーべと病は、過剰密植によっても発生しやすくなります。べと病の発生や蔓延を予防するには、過度の密植を避け、風通しをよくすることが重要です。
例として、秋田県が野菜栽培技術指針の中で示しているブロッコリーの栽植様式を挙げると、2条植えの場合は畝幅150cm/株間40cmの千鳥植え、1条植えの場合は畝幅75cm/株間40cmとしています。栽植密度は10a当たり3,300株です。
ただ、これは冷涼な秋田の気候における夏どり・秋どり栽培の例です。紹介している畝幅・株間はあくまでも目安の1つとして参考にしてください。
出典:秋田県「野菜栽培技術指針 葉茎菜類」
また、適度な畝間・株間をとるだけでなく、高畝にして排水をよくするなど、湿気のこもらない栽植を心がけましょう。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
つです。
べと病の発生を増長させる堆肥や窒素の過剰施用や密植を避け、排水や換気をよくするなどの耕種的防除と農薬散布による防除を組み合わせて、発生を予防しましょう。日頃から葉や茎を観察し、病害が発生した場合は速やかに対処することも大切です。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。