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いま「国産アボカド栽培」が熱い! その収益性と、日本で安定的に栽培するコツ

いま「国産アボカド栽培」が熱い! その収益性と、日本で安定的に栽培するコツ
出典 : Yanukit/PIXTA(ピクスタ)

南国産の輸入農産物というイメージが強いアボカドですが、近年の温暖化の影響で、国内でもアボカドの栽培が可能な地域が増えてきました。高需要・高単価が見込める国産アボカドについて、栽培のコツや工夫、収益性、注意すべき病害虫などの最新情報をまとめます。

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乳製品を思わせる濃厚な味わいから「森のバター」とも呼ばれるアボカドは、年々人気が高まり、国産品を望む声も少なくありません。温暖化の影響で日本国内でも栽培が可能となり、今後ますます需要が見込まれるアボカド生産の現状と栽培方法について、詳しく紹介します。

アボカドサラダ 人気 高い栄養価

kai /PIXTA(ピクスタ)

近年、日本におけるアボカドの人気は高く、その需要は年々増えています。人気の理由の1つとして、味がおいしいのはもちろん、オレイン酸やビタミンE、食物繊維、カリウムなどの栄養素が豊富で、美肌や若返りといった特に女性にうれしい美容効果が期待できるとされていることがあります。

輸入量の推移から見る、国内の「アボカド需要」

少し前までは若者を中心に広まり、おしゃれなカフェで見かけるくらいでしたが、現在では1年中スーパーに並び、ファストフード店やレストラン、居酒屋でもアボカドを使った定番メニューが見られるほど一般的になりました。

その人気の高まりは、輸入量の推移を見ても明らかです。財務省「貿易統計」でアボカドの輸入量の推移を見ると、2005年には約2万8,150tだったのに対し、2019年には約7万7,287tと大幅に増加しています。

輸入元の国も、2005年ではメキシコ、ニュージーランド、アメリカ、チリの4ヵ国だったのに対し、2019年にはコロンビア、ペルー、オーストラリアが追加され、7ヵ国に広がりました。また、2005年も2019年も、全輸入量の90%以上をメキシコが占めています。


出典:農林水産省「農林水産物輸出入統計(財務省 貿易統計) - 輸入 アボガドー(生鮮)」
2019年

2005年

日本におけるアボカド栽培の現状

それでは、日本におけるアボカド栽培は、どの程度広がっているのでしょうか。

農林水産省の「特産果樹生産動態等調査」(平成30年産・最新)によると、1980年代から和歌山県や静岡県、愛媛県、香川県など柑橘類の名産地で、何度か栽培された記録はあるものの、ほとんど収穫に至らず、1998年からは記録も途絶えています。

この頃の日本は暖地であっても、アボカドの栽培には向かなかったのかもしれません。その後、日本でアボカドの栽培と収穫が記録されたのは2014年です。2014年産のアボカドは愛媛県のみで、栽培面積3.0ha・収穫量0.2t・出荷量0.1tと、わずかな数値でした。

しかし、翌年の2015年産は、和歌山県と愛媛県を合わせて栽培面積3.8ha・収穫量4.8t・出荷量4.6t、2016年産も同じく2県合計で栽培面積9.2ha・収穫量・出荷量ともに8.1tと、まとまった量が生産されました。

続けて、2018年産は和歌山県と愛媛県に鹿児島県が加わり、3県合計で栽培面積18.7ha、収穫量10.5t、出荷量9.5tの実績を上げています。

出典:農林水産省「平成30年産特産果樹生産動態等調査 種類別栽培状況 かんきつ類以外の果樹【常緑果樹】


国産アボカドへの需要の高まりに加え、温暖化によって日本国内で栽培可能な地域が広がりつつあり、少しずつ栽培実績が増えているといえそうです。

とはいえ、先述の通り、輸入量は2019年で7万7,287tと桁違いです。

栄養価の高いアボカドの人気は世界的規模で続いており、欧米やアジア諸国でも、今後も高い需要が続くと予想されています。

日本でアボカドを栽培できる地域

アボカド、国産、収穫

takataka0414/PIXTA(ピクスタ)

日本では和歌山県、愛媛県、鹿児島県など、柑橘類の栽培が盛んな暖地が主要な産地となっています。しかし、ハウス栽培であれば、比較的冷涼な地域でも栽培が可能だといわれています。

実際に、新潟県の「せきね農園」では、2015年からアボカドのハウス栽培に取り組み、試行錯誤を重ねて栽培方法を模索しながらも、「雪国アボカド」の名で国産アボカドを販売しています。

せきね農園の公式サイトによれば、アボカドの名産地であるメキシコの山間地は、昼間の平均気温は約25℃であるのに対し、夜間は約10℃と1日の寒暖差が激しい気候です。

本場の寒暖差を、新潟の冬の厳しい寒さとハウス内の暖かさを利用して再現し、雪国でのアボカド栽培を実現しています。

国産アボカドは10~1月が旬で、この時期の大きい寒暖差に当たることで、油分を蓄えたおいしい果実になるのだそうです。

また、メキシコで主に栽培されている「ハス」という品種だけではなく、40もの品種のアボカドを栽培し、ユーザーにはそれぞれの違いを楽しむよう薦めています。

せきね農園公式サイト「雪国アボカド」

実際儲かるの? 国産アボカドの収益性について

アボカド、苗、ポット栽培

psisa/PIXTA(ピクスタ)

国産アボカドは、本格的な栽培開始からわずか数年の新規農産物であり、その栽培方法は未だに手探り状態です。確立した収支の情報はまだありませんが、参考となる試算があります。

今後の九州や本州への亜熱帯果樹の生産拡大を見込み、農研機構の果樹茶業研究部門では、鹿児島県、三重県、千葉県、岐阜県、東京都小笠原支庁などの農業研究機関や大学などが協力して、「地域戦略(亜熱帯果樹)コンソーシアム」という共同事業体を作りました。

そして、2016~2018年の3年間、国産化可能性の分析や栽培技術の開発に取り組み、栽培方法の手引きの制作や露地栽培における経営評価試算を行っています。その結果から、アボカド栽培の収益性やメリットを見てみましょう。

露地栽培における経営収支と労働時間の試算

アボカドの経営評価試算によると、アボカドを暖地で露地栽培した場合、10a当たりで収量600kg、1kg当たり単価1,000円、粗収入は60万円と見積もられています。

一方で、生産費は肥料・農薬費や資材費、光熱費、施設や農機具にかかる費用、さらには販売手数料や資本利子を含めると、合計38万5,435円という試算になり、所得は21万4,565円になります。

また、10a当たりの労働時間は合計182時間と見込まれ、特に旬を迎える10月と11月の収穫運搬作業、そして12月の枝梢管理に多くの時間がかかります。

出典:農研機構 技術紹介パンフレット 園芸・茶: 2019年
所収 地域戦略(亜熱帯果樹)コンソーシアム/アボカド・パッションフルーツ「栽培の手引き」

柑橘からの転作もメリットが大きい

寒さに弱く、暖かい気候で生育するアボカドは、柑橘類の産地の気候に適しています。一方で、近年の日本の柑橘類産地では、柑橘類の需要の低下や価格低迷に苦しむ農家が少なくありません。

主要な柑橘類の産地の1つである愛媛県松山市でも、農業指導センターと農家が協力し、柑橘類に代わる農産物として、普及に努めています。柑橘農家がアボカドを追加で作付けしたり、転作したりするケースには、柑橘栽培のノウハウが活かせるメリットがあります。

アボカドは気温が2℃を下回ると枯れてしまうため、寒さ対策に手こずったといいますが、基本的に灌水や施肥は、柑橘類よりも少ない頻度で済むとされています。

そのうえ、手をかけて育てても思うように値が付かないこともある柑橘類に比べ、アボカドは作れば売れ、高い値が付きやすいのも大きなメリットです。

ただし、アボカドは生長が遅く、種子から栽培する場合は果実をつけるまでに5〜7年かかるので、転作作物として導入する場合はそれまでの期間の収入を確保しなければなりません。

日本でも安定生産を実現! 国産アボカド栽培のポイント

アボカド畑、幼苗

treetstreet / PIXTA(ピクスタ)

最後に、日本の気候でも安定的に生産するために、栽培に当たって注意すべきポイントについて解説します。

日本で栽培できる品種と選び方

日本に輸入されているアボカドのほとんどは、「ハス」という品種ですが、実はアボカドには数百もの品種があります。原産国によって、「メキシコ系」「グアテマラ系」「西インド諸島系」の大きく3つの系統に分けられます。

メキシコ系は耐寒性にすぐれ、−6℃まで耐えられるといわれています。収穫期が10〜11月と早めで、意外にも平均100gの小玉であることが特徴です。

グアテマラ系は耐寒温度が−2℃、収穫期は遅く1〜5月、身の大きさは品種ごとに大きく異なりますが、大きいものは500gほどになります。果皮がゴツゴツと硬いのが特徴で、果肉は黄白色で油分が多く、濃厚な味わいです。

西インド諸島系は寒さに弱く、耐寒温度は約0℃、収穫期は9〜12月頃と早めです。500g〜1kgを超える大型の果実が多く、形も丸形やひょうたん型、へちま型など個性豊かです。

日本でも、氷点下にならない南西諸島や奄美大島などでは、露地栽培でもすべての品種の栽培が可能です。また、加温ハウスであれば、全国どこでもどの品種でも栽培できます。

アボカドは施設栽培にも向いています。大玉の「チョケテ」「ミゲル」「カハルー」「ヤマガタ」といった、品質のよい多様な品種の栽培に挑戦してみましょう。

そのほかの地域で露地栽培をする場合には、冬場の最低気温に合わせて、耐寒性のある品種を選びます。−3℃を頻繁に下回る地域では露地栽培には向かないので、ハウス栽培がよいでしょう。

−3℃以下に下がらない地域であれば、着果のよい「ベーコン」、食味のよい「フェルテ」「エッティンガー」がおすすめです。もし、それでも心配な場合は、最も耐寒性にすぐれ、反対の耐暑性も備えた「メキシコーラ」を候補に入れてみてください。

もう少し暖かく、0℃以下に下がらない地域では、着果も食味もよい「ピンカートン」や、日本でもおなじみの「ハス」が栽培しやすいといえます。

着果を安定させるには「混植」がよい

アボカドは、結果率が非常に低い作物といわれており、少しでも着果を安定させるには、栽培方法の工夫が必要です。

アボカドの花は「雌雄異熟型」といい、同じ花の雄しべと雌しべの活動する時間帯がずれます。花は2日かけて咲くのですが、午前中に雄しべが活動し、午後に雌しべが活動するタイプと、その逆のタイプがあります。

一般に、「1日目の午前中に雌しべが開花して午後に閉じ、2日目の午後に雄しべが開花する」ものをAタイプ、「1日目の午後に雌しべが開花し夕方に閉じ、2日目の午前中に雄しべが開花する」ものをBタイプと分けられます。

Aタイプの主な品種はハスやメキシコーラ、ピンカートンなど、Bタイプはフェルテやベーコン、ズタノなどです。1品種のみでも栽培はできますが、異なるタイプの品種を混植することで、受粉率が上がります。

受粉は風や虫などによって、自然に成立することがありますが、より確実に成立させるためには、人工授粉を行うとよいでしょう。AタイプとBタイプを混植している場合は、開いている雄しべから筆などで花粉を取り、雌しべが開いている花に付けます。

どちらか一方のみを栽培している場合は、雄しべが開いたときに花粉を採取して冷蔵庫で保存し、雌しべが開いたら付けましょう。

生育中の防風対策と乾燥対策は必須

アボカドは根が浅く風に弱いので、防風対策が欠かせません。台風の多い地域は特に要注意で、防風樹や防風垣は必ず整備しましょう。幼木の間は支柱を立てて固定し、1本ずつ防風ネットで囲うなどの対策が必要です。

また、アボカドは乾燥にも弱いので、植栽後は土壌が乾燥せず潤いを保てるように、十分な灌水を心がけましょう。

特に生育初期は注意したい「越冬対策」

アボカドの寒害を防ぐには、耐寒性の高いメキシコ系の品種を選んだり、メキシコ系の台木を使ったりすることが大切です。

しかし、それでも予想を超える寒さとなる場合もあるでしょう。アボカドは1日でも寒さに当たると、枯死してしまうこともあるので、越冬対策は慎重に行わなければなりません。

ハウス栽培であれば、加温できるので問題ありませんが、露地栽培の場合は、寒冷紗被覆や不織布資材で木ごと包んだり、藁を敷いたりするのが、現実的で効果もある方法です。

結果数を増やすために有効な「環状剥皮」

先述の通り、アボカドは結果率が非常に低く、受粉がうまくできても、落果が多く見られます。

これを防ぐ方法として、まず幼果時に環状剥皮すると、生理的落果が減少する傾向があります。満開後1ヵ月くらいに、枝の直径の5分の1程度の幅で、環状剥皮処理をしましょう。この処理によって、品質を保ちながら結果数を増やせます。

また、開花終期から摘果までの約1ヵ月に芽かきを行い、果実の縦径が1〜3cmになってから、5cm程度になるまでの時期に、段階的に摘果することも、結果率の向上に効果的といわれています。

アボカドに発生しやすい害虫とその対策

農研機構 地域戦略(亜熱帯果樹)コンソーシアムによる2018年までの研究により、アボカドの路地・ハウス栽培において発生する重要病害虫は、チャハマキ、ミナミトゲヘリカメムシ、アテモヤコナジラミ、ヤマモモコナジラミ、炭そ病であることがわかっています。

これらは、ほかの果樹と同様に、防虫ネットなどの耕種的防除などの対策によって防ぐことが重要です。チャハマキについては、合成した人工の性フェロモンを充満させる「コンフューザーN」などの交信かく乱剤で、大きな効果をもたらします。

なお、コンフューザーNは2021年10月現在、果樹類への登録があることを確認していますが、実際の使用にあたってはラベルをよく読み、用法や用量、用途を守りましょう。

近年、急激に需要が高まっているアボカドは、日本での露地栽培が可能になり、徐々に生産拡大が進んでいます。

本格的な栽培が始まったばかりで情報は少ないものの、果樹栽培の経験のある農家では、すでに持っている栽培技術を活かして、アボカド栽培に取り組んでいます。適した環境にほ場やハウスを所有しているのであれば、高値が期待できる人気作物のアボカド栽培に挑戦してみましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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