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【大麦の栽培方法】土作りから収穫まで! 栽培歴や施肥量、作付体系も一挙解説

【大麦の栽培方法】土作りから収穫まで! 栽培歴や施肥量、作付体系も一挙解説
出典 : horizon / PIXTA(ピクスタ)

消費者の国産志向や健康志向の高まりから、国産大麦の需要は増しています。食料自給率向上のための戦略作物として国が推進し、交付金などの支援がある点も見逃せません。さまざまな用途や品種があるので、気候に適した品種を選んで栽培に取り組みましょう。

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大麦はほぼ全国で栽培されており、各地で品質の高い大麦が生産されています。野菜類の連作障害対策や水田裏作としても取り組みやすい作物です。そこで、この記事では大麦の日本での生産状況や具体的な栽培方法について、詳しく解説します。

日本における大麦生産の現状

大麦は日本で古くから栽培され、その用途は主食用や飲料用など、多岐にわたります。小麦ほど日常生活に浸透してはいませんが、多様な需要のある大麦について、まずは国内の生産状況やその仕向先について解説します。

国内の大麦生産量統計と栽培品種の例

主要品種

日本で栽培されている大麦は、主に二条大麦・六条大麦・はだか麦の3種類です。

二条大麦

ペイレスイメージズ 2 / PIXTA(ピクスタ)

二条大麦とは粒が大きく「大粒大麦」とも呼ばれ、穂には実が2列に並んで付くのが特徴です。主な品種としては、サチホゴールデン、はるしずく、はるか二条などがあります。

六条大麦

keke / PIXTA(ピクスタ)

六条大麦は二条大麦に対して「小粒大麦」と呼ばれ、実が6列に並んでつきます。ファイバースノウ、シュンライ、カシマゴールなどが主な品種です。

はだか麦

ペイレスイメージズ 2 / PIXTA(ピクスタ)

はだか麦は子実の外皮が剥がれやすく粒がはだかになるのが特徴で、イチバンボシ、トヨノカゼ、マンネンボシなどの品種があります。

生産量

最も多く生産されているのは二条大麦で、2020年の全国の収量合計は約14万4,700t、主な産地は佐賀県、栃木県、福岡県で7割近くを占めています。

六条大麦は5万6,600tで、主な産地は福井県や富山県で約4割で、滋賀県、栃木県、石川県と続きます。

はだか麦は全国合計で2万400t、産地は愛媛県と香川県で半分近くを生産し、大分県、福岡県などの九州を加えると7割近くに達します。

出典:農林水産省「作物統計・令和2年産麦の収穫量」

また、2018年頃より、もち性大麦の独特の食感が人気となり、水溶性食物繊維β-グルカンを多く含むことからも需要が急増しています。

主な生産地などのデータはまだ上がっていませんが、農研機構では北海道から九州まで、各地の気象条件などに合わせて栽培できる7品種を育成し、栽培技術を開発して普及に努めています。これから取り組む場合は、もち性大麦も視野に入れるとよいでしょう。

※もち性大麦についてはこちらの記事をご覧ください。

大麦の主な仕向先

大麦の用途例 ビール原料、麦茶、主食用(麦ごはん)

Masson / PIXTA(ピクスタ)・ykokamoto / PIXTA(ピクスタ)・ささざわ / PIXTA(ピクスタ)

大麦の用途は種類によって大きく異なります。

二条大麦は、主にビールや麦焼酎の醸造に使われ、ビールに使われるものは「ビール大麦」とも呼ばれます。ただし、ビール大麦はビール会社との契約によって栽培されます。産地も限られ、品種の指定もあります。契約をせずに栽培しても買い取ってもらえません。

六条大麦は食味がよく、麦ごはんや麦麺など主食として用いられ、麦茶にも使われます。はだか麦は主食用のほか、麦みその原料として使われます。

なお、主食用大麦は100%国内生産ですが、その他の用途ではそれぞれに適した輸入大麦が使われ、国産の割合は2割以下にとどまっています。

大麦も食料自給率向上のための「戦略作物」とされ、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)や水田活用の直接支払交付金の対象になっているので、詳しくは各自治体に問い合わせてみましょう。

年間スケジュールは? 大麦の栽培暦

麦と水稲の二毛作

とんとん / PIXTA(ピクスタ)

大麦の栽培暦は、米との二毛作や米・大豆との輪作として行われることが多く、水稲や大豆の栽培と一連となった栽培暦が多く採用されています。

暖地での平均的な栽培暦では、11月に播種、1~2月の冬期に麦踏みをし、4~5月に出穂期、登熟期を迎え、6月に収穫をします。大麦の収穫が終わり次第、次作の作業に入ります。

播種が早すぎると幼穂分化したり、冬までに節間が伸長しすぎたりして凍霜害を受けやすくなります。逆に遅すぎると生育や成熟が遅れ、いずれも収量や品質低下の原因となります。気温の低い地域では水稲の収穫後直ちに排水し、土壌が乾いたほ場から順次播種するとよいでしょう。

大麦の播種期と大豆の収穫期、また、大麦の収穫期と大豆の播種期・水稲の移植期が重なるので、スムーズに転換できるように栽培スケジュールを入念に立てておきましょう。

もともと大麦は小麦に比べて収穫期が早く、作業が競合しにくいというメリットがあります。さらに余裕を持たせたい場合は、収穫の早い品種を剪定したり、水稲の一部を直播栽培して移植作業を減らしたりする対策もおすすめです。

なお、北海道では大麦が冬を越えられないため、春播きの作型で栽培されます。5月に播種をし、7月中に出穂期・登熟期を経て8月上旬に収穫します。

連作障害を防ぐ! 作付体系の例

大麦をはじめとする麦類は、連作障害が発生するおそれがあります。そこで、ほかの作物との輪作など、連作障害を回避する作付体系について解説します。

病害を抑える「麦種の切り替え」と「水田輪作」

大麦縞萎縮病 葉の黄色いかすり状病斑

大麦縞萎縮病 葉の黄色いかすり状病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

大麦や小麦は、それぞれ連作をしていると土壌成分が偏ったり、土壌中の病原密度が高くなったりして立枯病や大麦縞萎縮病、小麦縞萎縮病などの病害が発生しやすくなります。

このうち大麦縞萎縮病は小麦に発生せず、小麦縞萎縮病は大麦に発生しないため、小麦と大麦を3年程度で切り替えることによって被害を軽減することが可能です。

一方、立枯病は乾燥した条件で多発するため、田畑輪換を行うことで発生を抑制できます。水稲の裏作として大麦を栽培する二毛作が一般的なのは、このためでもあります。また、二毛作は畑の雑草対策としても有効であるなど、多くのメリットが期待できます。

連作障害対策には、抵抗性品種の選定も効果的

ほかの作物との輪作や田畑輪換が難しい場合、または輪作をしても大麦縞萎縮病にかかりやすい場合は、抵抗性や耐病性を持つ品種を選ぶのもよい方法です。

以下に抵抗性あるいは耐病性を持つ品種の一覧を掲載します。

大麦 抵抗性あるいは耐病性を持つ品種の一覧

なお、農研機構によると、きはだもちは大麦縞萎縮病だけでなくうどんこ病や赤かび病にも抵抗性があり、耐倒伏性もあるなど丈夫で病害に強いとされています。極多収のもち性品種で食味もよいことから、注目されています。ただし、本格的に広まり始めたのが2019年であるため、詳しいデータや実績が出るのはこれからです。

多収をめざす大麦の栽培方法と、作業のポイント

2020年産の二条大麦・六条大麦・はだか麦の10a当たり収量は、それぞれ全国平均で368kg・314kg・322kgです。直近7ヵ年のうち最低と最高の年を抜いた5ヵ年の平均値「10a当たり平均収量」ではそれぞれ306kg、290kg、260kgです。ここから、350~400kgを目安に目標を立てるとよいでしょう。

出典:農林水産省「令和2年産4麦の収穫量」

より多収をめざすために、栽培方法で特に注意したいポイントを解説します。

なお、ここに記載する農薬は、2022年1月現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルの記載内容をよく読み、用法・用量を守りましょう。また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。

1. ほ場の排水対策

麦は本来、乾燥した気候を好みます。ほ場はできるだけ水はけのよい状態にしましょう。特に水稲栽培後の水田転換畑では、湿害を防ぐために事前に排水対策をしっかり整えることが重要です。

前作物である水稲はできるだけ早く収穫を終わらせ、排水を始めましょう。中干しを強めに行って土壌に亀裂を作っておいたり、収穫後、早めに荒起こしをしたりすると、排水性が高まります。

また、次作に大麦を作付けする予定のほ場では、乾田直播栽培を行うと、収穫後の排水性も高まり畑地化が早く進みます。

麦畑 額縁排水溝 水路

田舎の写真屋/PIXTA(ピクスタ)

水田の場合は、収穫後すぐに排水のための明渠・暗渠を整備します。地表排水のために水田の周囲に明渠(額縁排水溝)を掘り、3~5mおきに縦方向の小明渠を掘ってその両端を額縁排水溝につなげます。

さらに10~15m間隔で一層深い基幹明渠を掘ります。このとき、すべての明渠を水尻に向かって深く掘るようにします。畝立てをしてその溝を小明渠としてもよいでしょう。そして、地下排水のために横方向または斜め方向にまんべんなく弾丸暗渠を掘ります。

ただ溝を作ってそこに水が溜まるようにしても、排水できなければ意味がありません。必ず明渠と額縁排水溝、排水路をそれぞれつなげ、排水することを確認しましょう。また、播種作業で溝が埋まることがあるので、播種後には排水溝の修繕を行い、降雨後も溝さらいをこまめに行いましょう。

2. 土作りと施肥管理

大麦栽培にはpH6~6.5ほどの微酸性を示す土壌が適するため、土壌診断に基づいて耕起の際に苦土石灰などをすき込み、適切な酸度に調整します。

調整前がpH5.8以下の場合は、10a当たり100kgを目安に施用しましょう。同時に堆肥を施用すると地力が高まり、収量や品質の向上に有効です。

肥料は、窒素(N):リン酸(P):カリウム(K)10:10:10(10a当たり・kg)を基本とし、一般的にリン酸とカリウムは全量を基肥とします。窒素は6割を基肥として、残りを分げつ肥と穂肥に分けて施用するとよいでしょう。

出穂後の追肥は子実の粗蛋白含量を上げます。収穫後の用途によって粗蛋白含量を上げたい場合は分げつ肥と穂肥、出穂後追肥の3回に分けてもよいでしょう。

3. 種子の更新・消毒

種子消毒は、なまぐさ黒穂病、裸黒穂病、堅黒穂病、斑葉病、雲形病などの病害を防ぎ収量を安定確保するために重要な行程です。無病種子を入手することが基本ですが、自分で種子を消毒する場合は「ベンレートTコート」などによる薬剤処理または、風呂湯浸法(※1)、冷水温湯浸法(※2)などを行います。

※1 風呂湯浸法:46℃の湯に種を入れ、蓋をして10時間をかけてだいたい20~25℃になるように温度を調節しながら浸します。

※2 冷水温湯浸法:種を20℃の冷水に3時間つけます。その後47~50℃の湯に2分間つけて温め、次に52℃の湯に5分間つけ、すぐに20℃の水につけて冷やします。温度と浸漬時間は正確に計って行うことが重要です。

4. 耕起~播種

シードドリル

Baloncici / PIXTA(ピクスタ)

ほ場と種子の準備ができたら、土が乾いているときに耕起と播種を行います。耕起後に雨が降ると播種作業が困難になるので、基肥の施用と耕起・播種は1日で終えるようにします。

温暖化の影響があるためか近年では播種適期が遅くなっており、平坦地で11月中旬が好適期といえます。

播種は、ドリルシーダを使用するドリル播きと、ダスターや散粒機を使って均一に全面散播し、ハローなどで浅く撹拌覆土する全面全層播きの2つの方法が主流です。

ドリル播きは浅耕砕土しながら条間20~30cm、深さ2~3cmに播種すると同時に、施肥・覆土・鎮圧も行います。大麦はあまり深植えせず覆土は2cmほどを保つ必要がありますが、ドリル播きは播種精度が高く安定して出芽します。

全面全層播きは播種期を使わず狭いほ場でも簡単に行えますが、覆土の深さが安定せず、発芽にムラが出やすい傾向があります。

播種量は、好適期に行う場合は10a当たり8~10kgで播種密度は1平方メートル当たり200~250粒が目安です。これよりも遅くなる場合は徐々に播種量を増やしましょう。

5. 麦踏み(踏圧)

麦踏み(踏圧)

nobmin / PIXTA(ピクスタ)

麦踏みは麦作特有の作業で、霜柱害や凍霜害を防ぎ、茎数増加や耐寒性強化といった効果があり、強じんな穂を出させるといわれています。

ただし、生育が十分でない場合は逆に生育抑制を起こし、また土壌が湿っている場合は土を締め付け、やはり生育を妨げるため無理に行う必要はありません。

麦踏みを行う場合は、12月上~中旬と2月下旬~3月上旬の2回、乾燥した日に鎮圧ローラーをかけます。

6.追肥と病害虫防除

生育期間中はほ場周囲の除草と排水溝の補修を随時行いながら、分げつ期と幼穂形成期に追肥を行います。

大麦 赤かび病発病穂

大麦 赤かび病発病穂
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

病害虫で最も被害が大きいのは赤かび病です。感染すると粒肥大が抑制され、外観も損ねるので大きな減収につながります。

何よりも人体に有害な物質を出すため、赤かび粒の混入限度は0.0%以下(1万粒中4粒以下)と農林水産省の検査規格で厳密に規制されています。

赤かび病は罹患した水陸稲や麦の株、イネ科雑草などの残さから病原菌に感染し、開花期~乳熟期に20~27℃で曇雨天が続くと発病・蔓延します。

これを防ぐため、大麦の場合は穂揃い期に「クムラス「トリフミン水和剤」「シルバキュアフロアブル」などの農薬を予防散布し、その後もローテーションで7~10日おきに数回、追加防除をしましょう。

7.収穫

収穫期を迎え穂を垂れた二条大麦

Yoshi / PIXTA(ピクスタ)

出穂後はおおむね45日程度で収穫します。穂が成熟し、穀粒水分が25%まで低下すると収穫適期です。二条大麦の場合は適期になると穂首が湾曲するので、全体の70~80%が稲穂のように穂を垂れた頃を見計らって収穫しましょう。

梅雨の時期に重なり、雨に当たると穂発芽しやすく品質も低下するので、降雨が予想される場合は早刈りを実施するなどの判断が必要です。

収穫後、長時間放置すると品質低下を招くので、速やかに乾燥施設に運び、2~3時間以内に乾燥しましょう。

米麦のカントリーエレベーター

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

大麦は水稲との二毛作や大豆との輪作に向き、秋から春にかけての栽培なので比較的病害虫の被害も少なく栽培しやすい作物です。排水対策にやや骨が折れますが、冬の間に水田を活用し十分な収益が見込めるメリットは大きいでしょう。

クラフトビールやもち麦が流行し、大麦の需要も高まっている今、国の交付金も利用し積極的に栽培に取り組んでみましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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