アブラムシからブロッコリーを守る! 防除対策や利用可能な農薬を解説
アブラムシがブロッコリーに寄生すると吸汁によって生育を阻害するだけでなく、他の植物にもウイルス性の病気を媒介します。ブロッコリーを守るためには適切な防除対策の実施が重要です。この記事ではブロッコリーに被害をもたらすアブラムシの特徴や、アブラムシの防除に有効な農薬・対策について詳しく解説します。
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アブラムシは春と秋に発生する、農作物にとっては厄介な害虫として知られています。まずはブロッコリーに寄生するアブラムシの種類や、発生する被害の特徴について説明します。
ブロッコリーに被害をもたらすアブラムシ類
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
アブラムシ類はブロッコリーの葉や茎などあらゆる部位に寄生し、晴天や乾燥が続くと多発する傾向です。吸汁により作物の生長を阻害するだけでなく、モザイク病などのウイルス病を媒介したり排泄物によって「すす病」を発生させたりするなど大きな被害をもたらします。ブロッコリーへの寄生が確認されている代表的なアブラムシの種類や、特徴・発生時期について解説します。
モモアカアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
モモアカアブラムシは多食性の害虫として世界的に知られており、国内でも北海道から沖縄まで各地に分布しています。ブロッコリーをはじめ小松菜・キャベツなどのアブラナ科野菜など多くの野菜類・果樹・花きに寄生するのが特徴です。4~5月が発生のピークで、夏には発生数が少なくなるものの9月下旬から晩秋にかけて再び増加します。交尾で増殖する時期と雌のみの単為生殖で卵胎生する時期があり、卵は越冬できます。
無翅胎生雌虫の体長は約1.8~2.0mm、体表には光沢があり体色も赤色や緑色・黄緑色・赤褐色などさまざまです。有翅胎生雌虫は、季節の変わり目や寄生密度が過密になって寄主植物の移動が必要となった際に現れます。卵形をしており体長は約1.6mm、体色は緑色で頭・胸は黒色です。葉の表裏に多く寄生し、アブラムシ類の脱皮殻が葉の葉面に散らばって生育不良を引き起こします。排泄物によって葉や茎が黒くなる「すす病」も発生します。
ダイコンアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ダイコンアブラムシはアブラナ科植物に寄生し、特にブロッコリーやカリフラワー・キャベツでの発生が多くなる傾向です。国内各地に分布しており、5~6月頃に発生のピークを迎えます。夏以降はほとんど発生しませんが、卵や無翅胎生雌虫は越冬します。ブロッコリーモザイク病などのウイルスも媒介するため、防除が遅れると作物への被害が大きくなりがちです。
無翅胎生雌虫の体長は約2.2~2.5mm、体色は暗緑色ですが全体が白い粉状の分泌物で覆われている個体もみられます。有翅胎生雌虫は体長が約2.1mm、側面に斑紋があり体色は灰緑色です。葉が重なった部分の裏側や茎に大きなコロニーを作って作物を加害するだけでなく、すす病も発生させます。新芽・新葉に寄生すると葉の奇形や萎縮が生じ、出荷が困難になるなどの被害も生じます。
ニセダイコンアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ニセダイコンアブラムシは国内各地に分布しており、海外各国でも分布が確認されています。アブラナ科植物だけに寄生しますが、ブロッコリーやカリフラワーでの発生はキャベツなどと比べると少ないといわれています。7月下旬頃から有翅胎生雌虫が現れ、9月下旬頃が発生のピークです。暖地では無翅胎生雌虫の状態で、寒地では卵の状態で越冬して3月初旬から繁殖が始まります。
無翅胎生雌虫は楕円形で体長は約1.4~2.4mm、体色は黄緑色ですが白色でワックス状の分泌物に覆われています。有翅胎生雌虫は細長い楕円形で体長は1.4~2.2mm、腹部は緑色または暗緑色で頭部・胸部は黒色です。葉の裏にコロニーを形成し、吸汁によって葉を黄色く変色させます。繁殖力が高いため、すす病の被害も大きくなりがちで、幼苗では枯死に至ることもあります。
耕種的防除方法
まあさ / PIXTA(ピクスタ)
アブラムシの増殖を防ぐには、ほ場周辺を除草するなど害虫が潜伏できない環境づくりが大切です。農薬の使用とあわせて、アブラムシの防除に有効な対策を検討しましょう。ここでは、光の反射を利用してアブラムシの侵入を防ぐ方法や、天敵を使った防除方法を紹介します。
近紫外線除去フィルムやシルバーマルチによる防除
アブラムシは光の反射に弱いため、畝面にシルバーマルチを張ると成虫の飛来を防止できます。アオムシなど他の害虫の侵入を防ぐために防虫ネットや寒冷紗を使用している場合は、葉に触れない高さに30cm間隔でシルバーのテープを張るのも有効です。ブロッコリーの葉・茎への食害だけでなく、モザイク病などのウイルス感染の予防にも効果を発揮します。また、有翅アブラムシは黄色に誘引されるため、黄色粘着板などのトラップを設置するのも効果的です。
ほ場に近紫外線除去フィルム(紫外線カットフィルム)を張ることで、アブラムシの活動を鈍らせて作物への被害を抑える効果を期待できます。アブラムシを含む昆虫類は、紫外線がカットされた空間を暗黒と認識するからです。施設栽培の場合は、UVカット効果のあるフィルムを使用することでアブラムシ類の防除効果を発揮します。
天敵 テントウムシによる駆除
施設栽培では、アブラムシ類の天敵であるテントウムシを使った防除も有効です。防除ではナナホシテントウ・ナミテントウが用いられ、成虫・幼虫とも1日で数十匹のアブラムシを捕食します。アブラムシ類を発見した時点で最初の放飼を行い、7~10日間隔で数回放飼するとテントウムシの密度が高まり安定した防除効果を得られます。
使用量は1㎡あたり10~13頭が目安です。葉や茎の汚れが目立つ場合は薬剤の散布を検討する必要がありますが、ウララDFなど併用可能な薬剤は限られているのでご注意ください。なお、飛翔能力を欠くナミテントウ(テントップ)が生物農薬として指定されており、幼虫の段階で放飼することでより高い防除効果を発揮します。
ブロッコリーのアブラムシ類防除に利用可能な農薬
u.yoshifusa / PIXTA(ピクスタ)
ブロッコリー栽培で利用できる、アブラムシ防除に効果がある農薬を紹介します。育苗時点から農薬を使用することで、アブラムシの防除に効果を発揮します。農薬を使用する場合はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明点はメーカーや農業普及指導センターに問い合わせた上で適切に使用してください。
【定植時に使用】
スタークル顆粒水溶剤
薬剤の残効性に優れており、定植時に灌注することでアブラムシ類を効率的に防除できます。薬剤が土壌に十分に吸収されるよう、灌注直前・直後の灌水は避けるようにします。定植後も収穫3日前まで散布による防除が可能です。
【収穫3日前まで使用可能】
ダントツ水溶剤
アブラムシ類だけでなくアオムシやコナガの防除にも効果を発揮する、浸透移行性に優れた薬剤です。有機リン・カーバメート・合成ピレスロイド剤に抵抗性がある害虫にも高い防除効果が期待できます。
【収穫前日まで使用可能】
アクタラ顆粒水溶剤
残効性が長く耐雨性にも優れているので、安定した防除効果が期待できます。散布後は葉裏にも浸透するため、薬剤が行き渡りづらい葉裏や葉の内部のアブラムシ類の防除も可能です。
その他にも、以下の農薬が使用可能です。
アブラムシ類は葉や茎に多数寄生し、吸汁による生育阻害だけでなく排泄物による「すす病」の発生源となります。
繁殖力が強いため、防除が遅れると収量の大幅低下につながります。作物への被害を最小限に抑えるには、ほ場に近紫外線除去フィルムやシルバーマルチを設置して、アブラムシ類を寄せ付けない環境づくりが重要です。
天敵であるテントウムシによる防除も効果的です。育苗・定植段階から農薬による防除を実施し、目標の収量を確保しましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。