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東北地方の農業にはどんな特徴がある? 統計データから見る最新事情

東北地方の農業にはどんな特徴がある? 統計データから見る最新事情
出典 : rara / PIXTA(ピクスタ)

東北地方では、特有の風土や気候を活かした農業が実施されてきました。具体的にどのような特徴があるのか、統計データから県別に紹介します。また、東北地方の農業における課題や、近年増加している集落営農についても見ていきます。

日本有数の米どころとしても知られる東北地方の農業は、各県でそれぞれ風土や気候を活かしているのが特徴といえます。

各県の特徴や農業産出額などについてデータから見ていきます。また、東北地方の農業の課題やその解決策についても紹介します。

日本有数の米どころ! 東北地方における農業の特徴

福島 風景 秋

makoto.h / PIXTA(ピクスタ)

東北地方は日本有数の米どころとして知られている地域です。青森県以外のすべての県において、米は農業産出額の1位に位置しており、青森県においても農業産出額2位を占める重要な農作物となっています。

しかし、米以外の農産物については、それぞれの地域性や気候などを活かした県の個性がでています。県別の食料自給率や生産量の多い農産物、それぞれの産出額などについて見ていきましょう。

耕地面積が大きく、食料自給率も高い東北地方

日本の耕地面積は437.2万haで、そのうち東北地方は82.7haであり、実に18.9%を占めます。また東北地方は食料の自給率が高く、6県いずれもが全国平均よりも高いことからも農水産業が盛んな地域といえるでしょう。

東北地方の生産額ベース食料自給率(2019年)

全国平均青森県岩手県山形県秋田県宮城県福島県
食料自給率66%241%199%191%163%96%93%

出典:東北農政局「東北地域食料自給率」

農業が盛んな東北地方ですが、決して農業に適した風土ではありません。しかし、地域ぐるみの積極的な取り組みで、収量と収益の増加を実現してきました。

例えば、東北地方はその気候から冷害が起きやすいというリスクを抱えていますが、農業気象のポータルサイトである「水稲冷害早期警戒システム」を開設して運用することなどで収量維持を実現しています。

東北各県の農業産出額とその推移

東北地方の農産物の特色を知るために、各県の農産物産出額1~5位の農産物を紹介します。

東北地方は米の生産が盛んで、青森県以外は各県ともに1位の産出額です。

近年は需要の低下などから全体的に米の産出額が減り、果実の産出額が増える傾向にあります。このランキング表でもりんごや黄桃、桃といった果実が5位以内にランクインしていることが見てとれます。

岩手県では、米の産出額が以前と比べて大きく減っていますが畜産部門の産出額が増加しています。

東北各県の農産物算出額トップ5(2019年)

青森県岩手県山形県秋田県宮城県福島県
1位りんご
869億円
27.7%

603億円
22.5%

898億円
35.1%

1,126億円
58.3%

839億円
43.4%

814億円
39.0%
2位
596億円
19.0%
ブロイラー
549億円
20.5%
黄桃
362億円
14.2%

187億円
9.7%
肉用牛
274億円
14.2%
肉用牛
133億円
6.4%
3位
221億円
7.0%
肉用牛
292億円
10.9%

127億円
5.0%
鶏卵
64億円
3.3%
鶏卵
131億円
6.8%

126億円
6.0%
4位ブロイラー
204億円
6.5%

276億円
10.3%
ブドウ
123億円
4.8%
肉用牛
60億円
3.1%

127億円
6.6%
鶏卵
108億円
5.2%
5位鶏卵
178
5.7%
生乳
234億円
8.7%
肉用牛
122億円
4.8%
りんご
52億円
2.7%
生乳
121億円
6.3%
きゅうり
106億円
5.1%

上段:農産物名
中段:産出額
下段:県の農業産出額に占める割合

出典:農林水産省「令和元年生産農業所得統計 農産物産出額の順位と構成割合 (都道府県別)」よりminorasu編集部作成

現状は? 統計から読み解く、東北地方が抱える農業課題

秋 福島 金山

やえざくら / PIXTA(ピクスタ)

農業が盛んな東北地方ですが、課題もいくつか抱えています。特に深刻な課題として次の2点が挙げられます。

地域全体の高齢化や若者の流出による担い手不足
東日本大震災被害からの復興に伴う、施設や機械の整備コスト負担

地域全体の高齢化や若者の流出による担い手不足

国勢調査などを基に公益社団法人東北活性化研究センターがまとめた「2020年度 東北圏社会経済白書」 によると、東北地方では戦後一貫して転出超過が続いています。多くは首都圏への転出で、全国平均と比較しても高齢化率や若者の流出率が高い地域といえます。

全国的に高齢化や担い手不足が憂慮される日本農業の中でも、東北地方の農業は深刻な状況に置かれているといえるでしょう。

東日本大震災被害からの復興に伴う、施設や機械の整備コスト負担

東日本大震災で東北地方の農地が受けた被害は以下のとおりです。

農業関係の被害総額流水や冠水による農地の被害面積
岩手県688億円730ha
宮城県5,504億円14,340ha
福島県2,395億円5,460ha

出典:東北農政局「農業・農村の復旧・復興に向けた東北農政局等の取組状況」 所収の「農業・農村の復興・再生向けた取組と動き(令和3年11月)」

2019年3月時点で、被害に遭った農地の93%に当たる17,440haが農地として復旧しています。除染作業中の福島ではやや遅れが見られますが、農地はほぼ復旧済みといえるでしょう。

復旧した農地で1から営農を再開していくにあたっては、できる限り負担を少なくして営農施設を整備し、農業用機械を導入することが求められます。また、経営を安定させるための高収益化や低コスト化をめざすことも必要になるでしょう。

東北農業に学ぶ! 課題解決のキーワードは「集落営農」

山村集落 南会津

natsu / PIXTA(ピクスタ)

東北地方では、農業が抱える問題を解決するために、「集落営農」を積極的に推進しています。

農業経営体を組織化する「集落営農」とは?

集落営農とは、複数の農家が集まって機械を共同利用し、作業を協力して進めることで高齢化に伴う担い手不足を解消しようという取り組みです。

担い手不足の解決だけではなく、経営効率の向上を実現し、農村の維持と発展につながる手法として期待されています。

また、集落営農として米の所得補償交付金を申請すると、組織全体における主食用の作付面積から10aが控除されるという点も大きなメリットといえるでしょう。

集落営農数は全国最多。メリットを活かして課題解決につなげた東北の工夫

東北地方は、震災復興に伴って農業経営体の組織化が特に進んでいる地域です。2020年の全集落営農数を見ると、全国計の14,832のうち、東北地方は3,325で22.4%を占めています。

「東日本大震災農業生産対策交付金」を利用するためには、組織として農業を経営している必要があったことが組織化が進んだ大きな理由の1つです。

東日本大震災の復興のために進んだ集落営農ですが、持続的な地域農業へとつながりつつあります。

具体的には、担い手不足の解消や、整備コストの負担軽減、低コスト化による安定的な農業経営といった効果がみられています。

全国的にも集落営農数は増加傾向にあり、集落営農は、担い手の減少やコスト増大などの課題を抱えるほかの地域でも応用できる手法といえるでしょう。

2020年 集落営農数 地域別

地域集落営農数
1位東北3,325
2位北陸2,368
3位九州2,321
4位中国2,119
5位近畿2,052
全国計14,832

出典:農林水産省「令和2年集落営農実態調査報告書 継続等区分別集落営農数」よりminorasu編集部作成

山形 月山 鳥海山

やえざくら / PIXTA(ピクスタ)

東北地方では、地域の特性を活かした農業が盛んです。ニーズの多様化に合わせて米以外にも畜産業や果樹栽培などが活発になっています。

集落営農によって、担い手不足の解消や、効率化・低コスト化による安定的な農業経営を図り、持続可能な地域農業をめざしていることは特筆すべきことといえるのではないでしょうか。

※集落営農についてはこちらの記事もご覧ください。

林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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