【ブロッコリーのアオムシ対策】効果的な防除方法や農薬の使用方法を解説
アオムシはブロッコリーなどのアブラナ科の植物に付着しやすい害虫で、発見が遅れると葉脈以外のあらゆる部分が食害されて収量が大幅に低下します。成虫になってモンシロチョウになると、防除が困難になるため早期の対策が重要です。この記事では、除草などの耕種的防除や農薬を使用した防除方法を解説しますので、参考にしてください。
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アオムシはブロッコリーの葉脈以外のあらゆる部分を食べ尽くします。光合成や結球を阻害するため、防除が遅れると食害が深刻化するので要注意です。
食害を抑えるためには、生態や発生時期を理解したうえで適切な防除を実施することが欠かせません。アオムシの防除で利用できる農薬について確認しておきましょう。
まずは、アオムシの生態や多発時期について解説します。
アオムシ(モンシロチョウ)の生態
アオムシはモンシロチョウ・スジグロシロチョウ・オオモンシロチョウの幼虫です。ここではモンシロチョウの幼虫の生態について解説します。
アオムシ(モンシロチョウ)卵(長径1mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
モンシロチョウは蛾の一種で、ブロッコリーをはじめキャベツや白菜・カリフラワーなどのアブラナ科植物の葉裏に、長径0.6~1.0mm前後の卵を産卵します。
若い株のあるほ場を好んで産卵する傾向があるうえ、成虫は広範囲にわたって産卵するため、ふ化後の食害は拡大しがちです。
アオムシ(モンシロチョウ)若齢幼虫(体長3.5mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ふ化直後のアオムシの体色は黄色ですが、体長3mm前後になると緑色に変化し、葉に食害を加えながら体長30~35mm前後まで成長します。
アオムシ(モンシロチョウ)老齢幼虫(体長35mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
体長40mm前後に成長すると、アブラナ科植物の葉裏や家屋の塀など風の当たりにくい場所に体を固定して蛹化します。蛹の色は黄色または淡緑色で、大きさは約20mmで繭には包まれません。
アオムシ(モンシロチョウ)蛹(体長20mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
蛹化した後1週間前後で成虫になり、アブラナ科の植物や雑草に産卵します。11月以降に蛹になった場合はそのまま越冬し、春になると成虫になります。
アオムシ(モンシロチョウ)の発生原因と多発時期
アブラナ科の植物には害虫から身を守るために、カラシ油成分の原料となる「グルコシノレート」という化学物質が含まれています。
アオムシの成虫であるモンシロチョウは、カラシ油成分の香りを嗅ぎ分けてブロッコリーなどのアブラナ科植物に飛来、産卵するためアオムシが発生します。アオムシはカラシ油成分を解毒するしくみを持っているため、アブラナ科植物を食害しながら成長し、成虫となって再びアオムシを発生させるのです。
アオムシ(モンシロチョウ)成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
発生時期は3~11月頃ですが、7~8月には天敵であるアオムシコマユバチやアシナガバチが増えるためアオムシの数は減少します。
モンシロチョウ1匹あたりの産卵数は300~400粒で、産卵後4~7日ほどでふ化した後1ヵ月ほどで成虫となります。アオムシの発生頻度は、暖地の場合は年間5~8回、寒冷地では年間4~6回ほどです。
ブロッコリーのアオムシ(モンシロチョウ)の防除方法は?
アオムシが成虫になると広い範囲を飛び回るので防除が困難になります。そのため、幼虫の段階で適切に防除を実施することが、作物への食害を少なくするうえで重要です。ここでは除草などの耕種的防除や農薬を利用した防除方法を紹介します。
耕種的防除
mits / PIXTA(ピクスタ)
定植の段階で防虫ネットや寒冷紗(かんれいしゃ)を張ると、モンシロチョウが作物に接近できず産卵を防止できます。アオムシや他の害虫の侵入を阻止して、食害を防ぐ効果も期待できるので、目の細かいものを選ぶようにしましょう。
ただし灌水や追肥の際にネットを取り外した時、成虫・幼虫が侵入する恐れがあります。作業時はネットを取り外す範囲を狭くするなど、細心の注意が必要です。施設栽培の場合も同様で、害虫が侵入しないように、開口部に防虫ネットを施工したいところです。
また、モンシロチョウはアブラナ科の雑草にも産卵するため、畝に黒やシルバーのマルチを張って、雑草の発生を抑制することも効果的です。マルチ穴から雑草が発生する可能性があるので、穴の大きさは最小限にするとよいでしょう。
雑草から風で卵が飛散して作物に付着する可能性もあるため、ほ場周辺の除草も徹底するようにします。
ブロッコリーのアオムシ防除で利用できる農薬
作物にアオムシの卵・幼虫を見つけた場合やほ場周辺にモンシロチョウが多く飛んでいる場合は、早めに農薬での防除を実施しましょう。定植前に農薬を使用することで、害虫の発生を抑止できる可能性が高まります。
ここではアオムシの防除で利用できる、効果発現性が速く、残効性が高い農薬を3種類紹介します。
農薬を使用する際はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明な点はメーカーや普及指導センターなどに問い合わせるなどして適切に使用しましょう。
ミネクトデュオ粒剤
■有効成分
チアメトキサム0.30%、シアントラニリプロール0.50%
■使用時期と使用量
播種覆土後~育苗期後半:セル成型育苗トレイ1箱またはペーパーポット1冊(約30×60cm、使用土壌約1.5~4L)あたり40g
定植時:1g/株
アオムシだけでなく、アブラムシ類やアザミウマ類の防除にも効果を発揮する農薬です。アクタラ顆粒水溶剤やプリロッソ粒剤など併用できない農薬があるのでご注意ください。
ハチハチ乳剤
■有効成分
トルフェンピラド15.0%
■使用時期と使用量
収穫7日前まで:10a当たり100~300ℓ(1000~2000倍に希釈)
アブラムシ類やコナガの防除にも効果を発揮し、既存の農薬に感受性が低下した害虫にも有効です。植物体に浸透移行性がないため、葉の表裏にまんべんなく散布するようにします。
プレバソンフロアブル5
■有効成分
クロラントラニリプロール5.0%
■使用時期と使用量
育苗期後半~定植当日:セル成型育苗トレイ1箱またはペーパーポット1冊(約30×60cm、使用土壌約1.5~4L)あたり0.5L(100倍に希釈)
収穫前日まで:10a当たり100~300ℓ(1000~2000倍に希釈)
ブロッコリーやキャベツ・白菜などのアブラナ科植物をはじめ、幅広い作物の害虫防除に利用できます。高い耐雨性を持っており、効果が長続きするのも特徴です。
KY / PIXTA(ピクスタ)
アオムシは年に数回発生するうえ、ブロッコリーの葉や花蕾に食害を及ぼすため、防除が遅れると収量が大きく低下します。防虫ネットなどを用いた耕種的防除と早期の農薬による防除が重要です。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。