【最新】ネギの新品種一覧|収益・収量アップにつながるのはどれ?
露地野菜の中でも耐寒性が高く、大掛かりな初期投資をしなくても済むネギは全国的に栽培されている品目です。しかし、従来から栽培されている品種に課題がないわけではありません。この記事ではネギ栽培が抱える課題を解決するために誕生した新品種を紹介します。
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ネギは露地野菜の中でも耐寒性が高く、栽培コストもそれほどかからないことから全国各地で栽培されています。一方で、栽培期間が8ヵ月程度と長いため気象条件や病害虫の影響を受けやすいこと、土寄せをする労力がかかることなどが課題です。
また、酷暑期の栽培が難しく、初夏や初秋といった市場価格が高い時期の出荷ができずに、悩む農家の方もいるのではないでしょうか。
この記事ではネギ栽培が抱える課題を整理し、それを解決する品種を紹介します。
従来のネギの課題
tamu1500 / PIXTA(ピクスタ)
従来のネギ栽培における主な課題は、「栽培に労力がかかる」「満足のいく収量や売り上げを確保できない」ことの2点です。
日光を遮ることで、白くやわらかい葉鞘部を作り出す一本ネギは、株が生育するたびに土寄せが必要です。一般的に軟白部は30cm以上確保しなければならないため、定植から出荷までの間に5~6回程度の土寄せを行うこととなり、農家の大きな負担となっています。
また、根切り・皮むき・葉切りなど出荷調整の負担が大きい作物でもあります。
品種にもよりますが、ネギの標準的な栽培期間はおよそ8ヵ月です。露地野菜の中では比較的長くかかることから、栽培期間中に病害虫や気象条件の影響を受けやすいのも課題です。特に夏場は酷暑や台風、集中豪雨などの天候不順が起こりやすく、ネギに限らず露地野菜の栽培には難しい季節です。
しかし、そうした困難を乗り越えても、ネギの価格が高くなる5月前後は、生産が不安定になり、出荷量は多くありません。一方で収量の多い冬になると、ネギの価格は下がります。
農家の経営安定化のためにも、相場の高い初夏のシーズンに出荷できるような品種が求められています。
耐暑性・耐湿性に優れたネギの新品種
株式会社キタデザ(北村笑店) / PIXTA(ピクスタ)
ネギ栽培の現場では、天候の厳しい時期においても管理しやすく、省力化に貢献し、相場の高い時期に良品として出荷できる品種が求められています。
そうした声を受けて、農家の理想に近いネギが開発されつつあります。まずは耐暑性や耐湿性に優れた、厳しい環境でも栽培しやすい6つの品種を紹介します。
碧い海原
「碧い海原」は、耐暑性に優れており、気温が高く、生育が遅れがちな夏でも首締まりがよく、肥大性も良好な品種です。9月ごろの襟首のゆるみが少ないことから在圃性が高く、収穫遅れにも対応できます。
平地基準では3月下旬定植、9月~10月収穫がおすすめなので夏越しの品種として最適です。
葉先枯れに強い濃緑色の葉色をしているので品質低下に悩まされにくいうえ、茎葉病害と土壌病害の双方に耐性がある点も魅力として挙げられます。
大河の轟き
「大河の轟き」は、暑さによって草勢が衰えた際の回復の早さに加え、湿害にも強いことから降雨量の多い地域でも夏越しに向いている品種です。葉色が濃緑色で葉先枯れに強い点や草姿がコンパクトで首締まりのよい点は碧い海原と似ていますが、耐寒性はより高いとされています。
耐寒性の高さにより栽培の弱点が少なくなっており、夏ネギから冬ネギまで使用可能な万能さが特徴です。
酷暑の時期である8月定植でも高い残存率と秀品率を誇りますが、一般地でおすすめの栽培シーズンは4月~5月前半定植、10月~翌年1月収穫となっています。
龍美
「龍美」は、気候の厳しい夏場に出荷することを想定して開発された品種です。夏場に出荷するネギは暑さの影響で腐敗しやすく、収量減に悩まされることがあります。龍美は夏場の腐敗に強いだけでなく、しっかりした根が張るので湿害の影響も受けにくいのが特徴です。
そのほかにも、「葉の病害に強い」「温度が高い時期でも伸張性が高い」といった特徴があるため、一般地の夏秋どりや冷涼地での盛夏どりに向いています。
大地の響き
「大地の響き」は、伸張性に優れた早生F1品種です。従来の合黒系品種の課題であった過度な抜けあがりや止め土後に、首部の緩さが抑えられていることで、在圃性も高いことが特徴です。
ネギの品種としては根の強さもトップクラスであり、酷暑期であっても発根の衰えがあまり見られません。低温下でも伸張することから盛夏どりはもちろん、秋冬どりで使用するのもよいでしょう。
ただし、耐病品種でない点や晩抽品種ではないことから、春~初夏どりで抽苔(とう立ち)のリスクがある点には気を付けましょう。
夏の宝山
「夏の宝山」は、優れた耐暑性と耐寒性に定評のある長宝の改良系F1品種です。暑さと寒さの両方に強いため夏~秋冬どりまで幅広く対応しています。特に根張りが強いことから酷暑期の欠株が少なく、夏場における秀品率の増加を見込める点は大きなメリットでしょう。
晩抽性の品種ではないので、適切な播種期を逃さないことが栽培のポイントです。
森のめざめ
「森のめざめ」は、夏越し率が高く夏から秋冬どりまで、幅広いシーズンで多収量が期待できます。
また、従来の夏越し品種よりもさらに耐暑性と耐湿性が増しており、湿害や高温害による欠株が少なくなるように改良されています。それでいて、耐寒性や霜による被害に強い点は、森の奏でと同様なので作柄の安定に大きく貢献するでしょう。
なお、当該品種は酷暑によるダメージからの復活が早い分、収穫期までの日数が短くなる可能性がある点には注意してください。
価格が高い初夏に収量を確保できるネギの新品
sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
ネギの市場価格が年間で最も高くなるのは一般的に初夏であることが多く、その時期に出荷できるようになれば農家所得向上につながります。近年では品種改良も進み、初夏どりに適した品種も開発されています。
ここからは春どりから初夏どりに適した2つの品種を紹介します。売上アップをめざしている農家の方は参考にしてください。
陽春の宴
「陽春の宴」は、中生から晩生に対応した黒柄系F1品種の一本ネギです。抽苔が非常に遅いのが特徴で、特に春どりでは最後に収穫するのに向いています。そのため、4月収穫はもちろん、トンネル栽培による5~6月の初夏どりにも使用可能です。
ネギの初夏どりは首部が緩くなりがちですが、当該品種の首締まりは良好で品質低下に悩まされることは少なくなっています。
一般地で5月から梅雨前までに定植して春どりをする場合は、湿害や高温害に備えるために、水はけのよいほ場の選定や根張り強化、腐り対策は徹底して行いましょう。
また、8月下旬定植で4月収穫も可能ですが、気温の低い時期が長く続く年は、生育が間に合わない場合があります。そのため、秋ごろから通常施肥を行って、冬が来る前にある程度育てておくことが適期に収穫するコツです。
初夏扇2号
「初夏扇2号」は、前述した「陽春の宴」と同様に極晩抽性の品種で、一般地における春どりは4月上旬~5月上旬まで出荷可能です。また、トンネルなどを使用すれば6月に収穫する初夏どりに対応することもできます。
在圃性に優れていることから収穫が間に合わないケースは少なく、価格が高くなりやすい時期に安定して出荷できる点は魅力です。
ただし、初夏どりは春どりに比べてゆっくり太るため、収穫時期が6月下旬~7月上旬ごろになる点には気を付けてください。
また、初夏扇に比べると葉の病害にやや強いのですが、抵抗性のある品種ではありません。これまでと同様にさび病やべと病はもちろん、軟腐病や白絹病といった土壌病害にも注意しながら栽培しましょう。
省力化と栽培期間の短縮可能なネギの新品種・ゆめわらべ
「ゆめわらべ」は、農研機構が開発した品種で、ネギ栽培において作業負担の大きい土寄せ作業の負担軽減が期待されています。
一般的な一本ネギは定植から出荷までの期間に土寄せ作業を5~6回程度行います。しかし、こちらの品種はネギの葉鞘を短くすることで栽培期間を1~2ヵ月程度短縮し、それにともなって必要な土寄せ作業も2~3回ほど少なくすることに成功しました。
品種改良によって栽培期間が幅広くなったことで、秋冬どりだけでなく、初夏から夏どりまで対応できるようになっています。ネギ栽培が抱える課題の多くを解決する品種として、近年注目を集めている品種です。
H.Kuwagaki / PIXTA(ピクスタ)
そろい性に優れた葉ネギの新品種・京千羽
「京千羽」は、収量性とそろい性に優れた品種です。密植しても太さや全長がそろいやすい性質を持っているため歩留まり率が高く、荷姿も美しいのが特徴となっています。また、草姿立性の細葉が左右対称に展開していくので、倒伏や葉倒れが起こりにくいのもメリットです。
耐寒性もあり、低温期でも安定して生長するため、厳冬期の収穫やトンネルなどを用いた露地栽培も可能です。ただし、晩抽性ではないため春~初夏どりでは早めの収穫を心掛けてください。
gomasio / PIXTA(ピクスタ)
ネギ栽培は、土寄せにかかる作業負担や相場の高い時期に出荷できないといった課題がありました。しかし、品種改良によって徐々にではあるものの、そうした課題を解決する品種が登場してきています。
「相場の高い時期に出荷できる品種」や「省力化に貢献しそうな品種」など、自らが抱える課題に応じて選ぶべき品種は異なります。まずは自らのほ場の課題を明確にしたうえで、この記事を参考に栽培する品種を選んでみてください。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。