農業用不織布で生育を促進! 目的・用途に応じた被覆資材の使い方
農業用不織布は防虫・防鳥や土壌の乾燥防止、防風、防寒、遮光などさまざまな効果を持つ被覆資材です。製造方法や素材の種類によって性能に特化した製品もあり、特徴に合わせて使い分ければより高い効果を得ることができます。本記事では使い方について解説します。
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被覆資材にはいくつかの種類があり、農業用不織布のほかに寒冷紗がよく知られています。この記事では農業用不織布に焦点を当てて、特徴や価格の目安、効果的な使い方、寒冷紗との違いについて詳しく解説します。
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農業用不織布とは?
不織布といえば、新型コロナウイルスの流行により、感染の予防効果が高いマスクの素材として一般に認知されました。このような不織布ですが、農業においても機能性の高い被覆資材の素材として、以前から活用されています。
そもそも不織布とは、さまざまな繊維を合成樹脂などの接着剤を使って接合し、布状にしたものの総称です。一般的な布は長い繊維を織って作りますが、織らずに作る布なので「不織布」と呼ばれています。
また、不織布は素材や接着剤の種類、製造方法によって多様な機能を付加できるのが特徴です。農業用不織布は、農作業で使いやすいように目的に合わせて機能が特化しています。まずは使用目的や購入価格の目安について解説します。
作物の保温や害虫防除目的で使われる農業用被覆資材
寒害で葉先が褐変した小松菜
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
農業用不織布の主な用途は、播種や定植のあと、作物の生育を促進するためにべたがけやトンネル栽培をする際の被覆資材として使用します。
被覆素材は土壌の乾燥を防ぐほか、以下のように多様な目的で用います。
●保温
●凍霜防止
●昇温抑制
●害虫や害鳥の防除
など
同時に作物の生育を妨げないように通気性がよく、水や光を透過させる必要があります。
農業用不織布は、このような条件を満たすだけではありません。上から灌水しても水を通し、遮熱しながらも必要な光は作物へ届けられるなど、作物の栽培に適した機能を持つ優れた資材です。
素材には、耐熱性・耐候性に優れたポリエステルや比重の軽いポリプロピレンが主に使われています。そのため、丈夫で繰り返し使えるのも大きな利点です。
不織布は素材と製造方法の組み合わせ次第で、多様な機能を付加できるので、各社から目的別にさまざまな新製品が登場しています。なお、似た資材として寒冷紗があります。どちらも優れた被覆資材ですが、製造方法や特徴が異なります。その違いや使い分けについては後述します。
どのくらいの金額で導入できる? 一般的な価格目安
bildlove - tock.adobe.com
一口に農業用不織布といっても素材も製造方法も異なります。さまざまな種類があるため価格の幅も広くなっています。強度が高かったり、厚みがあったりする製品はその分価格が上がり、透水率や遮光率を高めたものなど、特殊な機能がある製品はより高額になります。
ハウス内で使用する場合など、一般的なべたがけの効果で十分な場合は安価な不織布で大丈夫です。また、「霜に気をつけたい」「遮光して昇温を防ぎたい」など、特段の希望がある場合は、多少高額でも必要な性能を持つ不織布を選ぶとよいでしょう。
価格帯の例はこちらです。
安価なもの
1.5m幅×10mで600円台(1mなら60円台)から
保温性が高く遮熱効果も付加したタイプ
1.8m幅で1m当たり600円台(1m単位売り)、2.1m幅で1m当たり700円台、2.5m幅で1m当たり800円台といった価格が見られます。
国産で保湿に優れ光線透過率90%のもの(広範囲に使う場合)
1.8m幅×200mのロール6本(1,200m分)で10万円弱、2.1m幅では10万円台、2.4m幅では12万円台など、お得に購入できます。
農業用不織布の主な種類
農業用不織布は被覆用素材として、保温性、保湿性、通気性、光線透過に優れています。耐熱・耐候性も高く丈夫なことや、伸縮性が低いので扱いやすいこと、繰り返し使えることなど、多くのメリットがあります。機能性が高いうえ、比較的安価で手に入ることも大きなメリットです。
また、ハウスの内張りカーテンの素材としても用いられています。保温や保湿、遮熱、害虫や害鳥の防除などが目的です。そのほか、防草用シートや水稲育苗用に特化した被覆資材、置床被覆資材などにも不織布を使用したものがあります。
作物の生育をサポート! 農業用不織布の効果的な使い方
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農業用不織布は、露地栽培とハウス栽培のどちらでもさまざまな用途に活用されています。特徴を理解して適した製品を使うことで、より高い効果を発揮できます。ここでは、用途別に効果的な使い方を解説します。
播種・定植後の保温は、透光率の高い不織布でべたがけを
べたがけとは、播種後や定植後に被覆資材で畝全体を覆う方法です。保温や保湿の効果があり、発芽をそろえて生育を促進します。また、強い日差しをやわらげて気温や地温の上昇を抑制したり、害虫や害鳥の被害を防いだりする目的もあります。
使い方は作物の特性に合わせてさまざまです。
べた掛けの方法 | |
---|---|
直がけ | 資材を直接作物の上に掛け、資材の端を杭で挿したり、土を盛って固定する |
置きがけ | 資材の端を固定せずに掛ける(上からトンネル被覆する場合も) |
浮きがけ | 資材が直接作物に触れないように支柱を使って掛ける |
棚がけ | 支柱を使って、作物の上方に平らに掛ける |
以上のようにさまざまあり、作物の特性に合わせて適した方法が行われます。
農業用不織布は、べたがけの用途に合わせて作られているため、期待される目的をほとんど満たします。さらに効果を上げるためには、ほ場の環境や気候に合わせ、製品に付加された特徴を選ぶとよいでしょう。
例えば、冬期の栽培において凍結防止や保温を目的にべたがけをするなら、日照量が少なくても十分な光を作物に届けられるように、透光率の高い不織布を選ぶと効果的です。反対に、夏期の栽培で地温の上昇を避けたい場合は、遮熱・遮光率の高い不織布が向いています。
農業用不織布は、商品説明に透光率や遮光率などが明記されているので、購入前にチェックしてください。
トンネル栽培には、より強度の高い農業用不織布を選んで
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トンネル栽培の方法は、作物の高さに合わせて畝をまたいで支柱を弧状に挿し込み、支柱の上から被覆資材を掛けて留め具で固定します。べたがけと同様に、保温・保湿して作物の生育を促進する効果が望めます。
トンネル栽培に使用する被覆資材にも、べたがけと同じような特性が求められます。しかし支柱や留め具を使うため、破れにくいようにさらに強度の高いトンネル栽培用のものを選ぶことをおすすめします。
ビニールハウス内のカーテンとして、夏場の熱対策にも
ビニールハウスの内張りカーテンとしても農業用不織布を活用できます。防虫ネットとして使う場合は、一般的な農業用不織布で十分です。
しかしながら、冬場の保温を目的とする場合は、保温力の高いものを選び、夏場に使用する場合は、遮光・遮熱効果の高いものを選ぶと、より高い効果が期待できるでしょう。
加えて、紫外線カット機能のついたものを選べば、強すぎる紫外線から作物を守れます。遮光カーテンとしての機能に特化した不織布も売られています。
食害防止目的なら、寒冷紗ともうまく使い分けよう
不織布と似た素材として、寒冷紗も代表的な被覆資材です。大きく異なる点は製法で、寒冷紗は長い繊維を織って作っています。不織布同様に素材を変えたり、複数の素材を織り込んだりすることによって、さまざまな効果を付加できます。
機能としての違いは、不織布は寒冷紗よりも保温性能が高いことです。冬場の凍結防止などには不織布が向いており、夏場の食害防止として使用する場合は、過度な昇熱を抑えられる寒冷紗が適しているといえるでしょう。なぜなら、寒冷紗は一般的に不織布よりも遮光率が高いためです。
ただ、互いに弱点を補う機能を付加した商品もあり、それほど大きな差はありません。価格を比較しながら、状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
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農業用不織布はさまざまな作業を大幅に効率化でき、作物の生育促進も期待できます。特に、べたがけやトンネル栽培がうまくいかない場合や収量を増やしたい場合は、目的に合わせた不織布を取り入れることで改善するかもしれません。積極的に活用してみてください。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。