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播種機(種まき機)のおすすめ5選! プロ農家に適した機種や選び方は?

播種機(種まき機)のおすすめ5選! プロ農家に適した機種や選び方は?
出典 : sima - tock.adobe.com

ほ場に直播する作物を栽培する農家にとって、播種作業を効率的に行える播種機(種まき機)は重要な農機の1つです。そこで本記事では、機種も機能も豊富な播種機について、機能の概要や選ぶ際のポイント、おすすめの機種を詳しく解説します。

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播種機(種まき機)には小回りの利く手軽なものから、広範囲を効率的に播種できる多機能のものまで、多種多様な製品があります。ほ場の規模や作目に適した機種を選ぶことで、作業効率を大幅にアップできるので、購入前に必要な機能や特徴を明確に把握しておきましょう。

播種機(種まき機/シーダー)とは?

播種機による直播

Bits and Splits - stock.adobe.com

「播種機」とは、ほ場や苗床に作物の種子をまくための機具です。メーカーによっては、「種まき機」や「シーダー」とも呼ばれています。

播種といっても、作物によって種子の形や大きさが異なります。まき方も散播や条播、覆土の有無などもさまざまです。そこで各メーカーから、それぞれに対応した機能をもつ多様な機種が販売されています。

播種機の一般的な種類としては以下になります。

手押しタイプ
種子箱に入れた種を一定間隔で送り出す手押しタイプのシンプルな機種です。小規模のほ場や家庭菜園などで効率的に使えます。

牽引タイプ
トラクタに牽引させるタイプの散播機・点播機・条播機です。大規模なほ場での播種作業を大幅に省力化できる農業機械です。

それぞれの特徴について、次項でより詳しく解説します。

プロ農家に適した播種機(種まき機)の種類と選び方

播種機の中でもとりわけプロ農家に適した機種について、「播種方法」「対応作物」「ほ場や追加機能」という3つの観点から、機種選びのポイントを解説します。

1. 播種方法

前項で触れたとおり、播種機は播種方法によって散播機・条播機・点播機の3つに分けられます。

散播機のしくみは、種子箱に入れた種子を高速回転するスピンナーの上に落下させ、遠心力を利用して遠くに跳ね飛ばすものです。施肥機と同じしくみのため、兼用できる機種もあります。

散播機

牧草や穀類などの種子をほ場や苗床一面にばら撒く場合に適します。トラクタ牽引タイプの散播機を「ブロードキャスター」と呼び、大規模なほ場での省力化に役立てられています。

ブロードキャスター

Mascha Tace - stock.adobe.com

条播機

ほ場に畝を作って条播きをする野菜類や穀物には、条播機を使います。一般的には溝切装置や覆土鎮圧装置が装備されていて、畝立てや施肥と同時に播種を行う機種も多数あります。

人参の条播

LAZAR - stock.adobe.com

点播機

大根・カブなどの野菜類や、豆類など直播・点播する作物には点播機が適しています。条播と兼用の機種もありますが、1点1粒まきができる専用の機種もあります。

テープシーダー

juliedeshaies - stock.adobe.com

苗床用播種

上記は、ほ場への播種を目的としたものです。しかし、それ以外にも「セルトレイ」や「ポット」などの苗床用播種機があります。

水稲の苗箱播種機

Hip☆ - stock.adobe.com

2. 対応作物

播種方法だけでなく、種子の大きさや形状によっても対応できる播種機が異なります。そのため、栽培品種に適応した播種機を選ぶ必要があります。

一例として、直播水稲や大豆など、毎年作付けする作物が決まっているケースを紹介します。播種だけに使いたい場合は、より精度が高く、作物に最適な機能を備えた特化型を選ぶのがベターです。

また、複数の異なる作物の播種に施用したい場合は、サイズの異なる種子にも対応できる製品がよいでしょう。

水稲の乾田直播 溝切りと施肥、播種を同時に作業

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

3. 対応ほ場や追加機能

播種機によって、適したほ場の条件や播種と同時に行える作業が異なります。

例えば、以下のようなものがあります。

・セルトレイなどの苗床用播種機で床土入れからできるもの
・散播機で覆土までできるもの
・覆土の厚さを調整できるもの

条播機も同様に、溝付や覆土・鎮圧ができるものや、畝立てや施肥までできるもの、条間や畝の高さを調整できるもの、マルチができるものなど多種多様です。

このように播種機にはさまざまな付加機能があるので、まずは以下を行いましょう。

播種方法と対応作物で機種を絞り込む
使用する環境や必要な機能、予算を明確にする

上記2点を踏まえて播種機を選択するとよいでしょう。

播種機(種まき機)の主な販売メーカーとその特徴

ここでは、プロ農家向けの播種機を製作している主なメーカー5社を紹介します。

アグリテクノサーチ株式会社

アグリテクノサーチ株式会社は、播種機をはじめ管理機や散布機、背負い式噴霧器などの農機を製作している会社です。1996年の創立以来、農業の中でも「種をまく」技術を核として、農業技術と農村文化を探求し続けています。創立当初はアグリテクノ矢崎株式会社という社名でしたが、2021年6月に商号を変更しました。

経営理念に「天を敬い農業を愛す」という意味の「敬天愛農」を掲げ、培った農業技術を、本社のある兵庫県姫路市から日本全国、さらに韓国や中国、フィリピンなど世界に向けて広げています。

播種機には最も力を入れているため機種も豊富です。さまざまな野菜種子に対応した播種機を、人力用からトラクタ装着用まで複数取り揃えています。

アグリテクノサーチ株式会社

株式会社石井製作所

株式会社石井製作所が開発した「無コーティング代かき同時浅層土中播種技術」

株式会社石井製作所が開発した「無コーティング代かき同時浅層土中播種技術」
株式会社PR TIMES(株式会社石井製作所 ニュースリリース 2022年2月17日)

株式会社石井製作所は創業が1921年(大正10年)という老舗で、1926年には前身である鉄工所から石井農機製作所と改名し、本格的に農業機械の生産を行ってきました。1964年には、現在の社名である株式会社石井製作所に改名しています。

主に稲作用の農機を扱っており、籾すり機や米選機、バインダー、トラクタやコンバインのアタッチメント、砕土機、自動播種機など、農家の声を活かしながら商品開発をしています。播種機では床土入れから播種、灌水、覆土までをオートで行える機種があります。

株式会社石井製作所

株式会社クボタ

株式会社クボタは1890年に鋳物メーカーとして創業して以来、水道用鉄管や農工用エンジン、工作用機械など、食料・水・環境にかかわる多くの製品を生み出してきた老舗企業です。

近年では、タイやフランスにトラクタの生産会社を設立するなど、海外に日本の技術を広めたり、持続可能な社会の発展に貢献するためサスティナビリティ活動に取り組んだりと、活動の幅を広げています。

農業機械の製造・販売においても、大手メーカーとして業界をリードしてきました。播種機では、大型で乗用の一発耕起播種機や、育苗箱へ効率的に播種できる水稲用の製品など、多様な機種を取り扱っています。

株式会社クボタ
  「米ー育苗播種関連機器」
  「野菜ー野菜播種機 苗作り関連資材」

みのる産業株式会社

みのる産業株式会社は、1945年に岡山で個人経営の農機具メーカーとしてスタートしました。品質・コスト・安全性・時代性などの諸条件を満たし、相乗したもの作りをすることで、農業をサポートしてきました。創業当時から、「ユニーク」と「オリジナリティ」を大切にしています。

製作する農機具は、田植機や直播機、野菜移植機、育苗関連製品、収穫調整機器など多種多様です。播種機では、セルトレイ用やポット育苗用、玉ねぎ用、野菜類用など、細分化された苗箱用播種機や、大豆の不耕起播種に対応したトラクタ用アタッチメントまで、さまざまな種類をきめ細かく取り揃えています。

みのる産業株式会社

株式会社向井工業

株式会社向井工業は、1960年に大阪で個人創業としてスタートし、10年後の1970年に株式会社として設立しました。播種機を中心に製作しており、そのほかには施肥機や施肥播種機、散水機、湛水土壌中直播機、中耕除草機などを扱っています。

赤いボディが特徴的な「ごんべえ」という手動のベルト繰上げ式播種機が有名で、家庭菜園向けからプロ向けまで幅広いラインナップを揃えています。

株式会社向井工業

【用途・目的別】 プロ農家におすすめの播種機(種まき機)5選!

次に、プロ農家におすすめの播種機を5つピックアップし、それぞれの用途や対応種子、播種方法、製品の特徴などを解説します。

【トラクタ】 大豆等の不耕起栽培にも対応 「高速汎用播種機 NTP-4A」(アグリテクノサーチ株式会社)

トラクタ用のクリーンシーダNTPシリーズは、車速最大8km/hというスピーディーな作業が可能で、作業能率は最大で130a/hです。速いだけでなく、繰り出し部に「種子分離」と「放出」のダブル播種プレートを採用し、点播の際の欠株を抑えます。

プレートを交換することで、大豆や飼料用デントコーン、ソルガムなど、大きさの違う種子に対応でき、プレート交換には工具も要りません。株間調整や肥料の落下位置、ほ場への貫入圧力、播種の深さなどのさまざまな調整も手動で簡単に行えるなど、操作性の高さも特徴です。

中でも「NTP-4A」は4条播き用で、ほかに2条・6条・8条用があり、2条と4条タイプは一部不耕起ほ場でも作業ができるためおすすめです。同じ仕様で施肥に対応した施肥播種機もあります。

製品ページ:アグリテクノリサーチ株式会社「高速汎用播種機 NTP-2/NTP-4A」

アグリテクノリサーチグループ Youtube公式チャンネル「トラクタ用 不耕起対応 高速播種機【NTP-2A】」

【全自動】 苗箱の製作能力が段違い! 「全自動播種機 AN-603K+AT-606」(株式会社石井製作所)

大規模稲作農家用の苗床用全自動播種機で、「AN-603K」と「AT-606」を組み合わせることで、床土入→ならし→鎮圧→両角取り→灌水→播種→むら直灌水→排籾→覆土→ならしという処理手順を自動でこなします。

ダイヤル・ツマミによる簡単操作で、毎時400~600箱の能率切り替えが可能です。飼料米等の大粒米などにも広く対応します。

移動ローラー付きで一人でも移動でき、高さ調整も簡単なため、作業しやすい高さに合わせて長時間の作業も楽にできます。

なお、当機種は大規模農家向けで、農薬散布や灌水装置、排籾装置などのオプション機能も標準装備されており作業能力が高い分、広いスペースが必要です。同シリーズには毎時200箱、300箱などに抑え、設置スペースを考慮したコンパクトタイプの機種も展開されています。

価格はAT-606(床土入機)が231,000円(税込)、AN-603K(播種機)が570,900円(税込)です。

製品ページ:株式会社石井製作所「全自動播種機 ANー603K+ATー606」

株式会社石井製作所 Youtube公式チャンネル「箱積機(播種機オプション)」

【全自動】 育苗ポットへの播種が大幅省力化 「ポット全自動播種機 LSPE-40R」(みのる産業株式会社)

5ha未満の播種作業に最適な全自動播種機で、「苗箱供給」「土入れ」「播種」「覆土」の4つの作業をこなします。適応苗箱のポット448で毎時300~360枚と能率がよく、コンパクト設計で場所を取らないのも特徴です。

苗箱自動供給装置には、苗箱を20枚まで一度に重ねられます。効率よく作業できるうえ、オプションで播種同時施薬装置が簡単に取り付けられるメリットもあります。価格は374,000円(税込)です。

みのる産業株式会社「ポット全自動播種機 LSPEー40R」

【手動】 低コストの水稲播種機 「ニューきんぱ播種機 SR-95KJ」 (株式会社クボタ)

「ニューきんぱ播種機」のSRシリーズは、クボタ独自のリバース方式によって、空き箱を設置すると、往路で床土を入れて苗箱を積み上げます。そこから復路で灌水→播種→覆土を行い仕上げたものが戻ってくるため、省力化・省スペース化ができます。また、作業人数に合わせて高速・低速の切り替えが可能で、作業効率もアップします。

播種量はツマミ1つで調整でき、播種ロールをオプションの大粒米ロールと交換すれば飼料米にも対応可能です。同シリーズの中でも「R-95KJ」は手動式で、機能も播種と覆土のみと最もシンプルです。価格は143,330円(税込)です。

ちなみに同シリーズでは、はじめに解説した機能をすべて備えた全自動タイプのものなど、豊富な機種がラインナップされています。

製品ページ:株式会社クボタ「ニューきんぱ播種機 SRー95KJ」

【人力】 1粒播きに対応したプロ向け種まき機 「ごんべえ HS-801」 (株式会社向井工業)

「ごんべえ」シリーズは、ベルト繰上げ式の手押しタイプ播種機で、中でも「HS-801」はプロ農家向けに開発された最上級機種です。

間引きの省力化や種子代の節約にもつながる点播きタイプで、ほかの機種とは異なり1点1粒播種できる専用L1Rベルトを使用しています。さらに、種子の落下位置を低くすることで、点播の高い精度を実現しました。1条タイプと2条タイプがあり、播種量や播種間隔、条間の調整も簡単です。

主にほうれん草や小松菜、水菜、大根、カブ、ニンジン(コート種子)といった小粒種子の野菜類に施用し、穀類など大粒の種子は播種できません。公式サイトに価格は明記されていませんが、一例として通販サイト「モノタロウ」では参考基準価格58,000円(税別)とされています。

製品ページ:株式会社向井工業「ごんべえ HSー801」

株式会社向井工業 Youtube公式チャンネル「HS 801」

できるだけ安く導入するには? 播種機の新品・中古価格目安

播種機には多様な種類がありますが、一般的に全自動など機能が高いほど価格も高額で、シンプルな機能であれば安く購入できます。気に入った製品がシリーズ展開をしていれば、同じシリーズの中で、自分にとって必要な機能のみを搭載している機種を探してみてもよいでしょう。

ただ、優良な機能であれば、導入費は高くなっても大幅な省力化や効率化につながり、結果的に作業コストや人件費を下げられる場合もあります。導入時だけでなく、長期的なコストも含めて検討することが大切です。

単純に購入費用を安く済ませたい場合は、中古品の購入も有効です。比較的状態のよい商品が安く手に入る場合もあるので、購入を希望する商品名で探してみるとよいでしょう。

中古品は状態によって大きく価格が変わるので一概にいえません。例えば、播種機を「Yahoo!オークション」で検索してみると、おおむね1万円~6万円台ほど、高くても10万円以下で売られています。

近隣の中古農機販売店はもちろんのこと、「中古農機市場UMM」や「農機具ひろば」といった農機具を専門に扱う中古販売サイトもあるので、それらも活用しながら探してみましょう。

株式会社UMM「中古農機市場UMM」

有限会社マシーンコーポレーション「農機具ひろば」

ほ場や苗床への播種は、多大な負担を要する作業です。しかし、作物や作業環境に適した播種機を導入すれば、大幅な省力化やコストカットにつながります。

ただし、播種機は種類が多く、付加機能も導入コストも機種によって大きく異なります。播種には畝立てや施肥、灌水など付随する作業も多くあります。どの作業を省力化し、何を人力で補うか、汎用性と専門性のどちらを優先するかなどを検討し、必要な機能を明確にしてから購入しましょう。

▼麦類・大豆の播種機についてはこちらの記事もご覧ください

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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