【トマトの施肥方法】施肥量や追肥のタイミング・窒素過多の見分け方を解説
トマトの栽培期間は長期にわたるため、作型や栽培暦に合わせて適切な量の施肥を行うことが収量・品質の向上につながります。また、天候などの理由で窒素過多になる場合がある点にも注意が必要です。この記事ではトマトに施肥するタイミングや施肥量、窒素過多の見分け方と対処方法について解説しますので参考にしてください。
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トマトを収穫できる期間は長く、促成長期栽培では最長で8ヶ月にわたります。安定した収量を得るためには、肥料切れを防ぐことが重要です。トマトの基本的な作型と栽培歴を理解したうえで、施肥のタイミングや量について計画を立てましょう。
トマトの基本的な作型・栽培暦
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
トマトの作型は促成栽培が主流ですが、抑制栽培や露地栽培などを組み合わせることで通年での供給体制が確立できます。同じ作型でも地域によって育苗期・生育期間、収穫可能時期が異なります。一方で、播種してから収穫可能になるまでの期間はどの作型でも4~5ヶ月程度です。
作型ごとの特徴や栽培暦について紹介します。
出典:株式会社サカタのタネ「詳しく知りたい、取り入れたい 自然の力・有機の力 〜実践編〜【第2回】トマト」、タキイ種苗株式会社「農業列島 産地ルポ JAうつのみや~CFハウス桃太郎とCF桃太郎はるかの利点」、株式会社武蔵野種苗園 商品紹介「有彩014(ありさ014)」よりminorasu編集部作成
促成栽培は冬を越す作型なので、収穫期前半まではハウスの加温が必須です。半促成栽培では収穫期の加温が不要で、果実肥大期が温暖な季節と重なるため生産しやすいといわれています。
促成長期栽培は栽培期間の大部分を加温しますが、近年ではハウス栽培だけでなく養液水耕栽培にも取り入れられています。
また、露地栽培では霜の心配がなくなったあとに苗を定植しますが、施設栽培と異なり細かな温度調節ができないため8月までに収穫を終えることが必要です。
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
施肥のタイミングと分量
トマト栽培での施肥量は、目標収量1t当たり窒素:リン:カリウム=2.7kg:0.7kg:5.1kgが目安です。特にカリウムはトマトの健全な生育に欠かせない成分で、カリウムの供給量が適切であれば窒素の過剰吸収も防止できます。
基肥
hamayakko / PIXTA(ピクスタ)
定植15日前を目安に基肥をほ場全体に施用し、土壌と十分に混ぜ合わせておきます。定植から収穫を終えるまでの期間が長いため、緩効性肥料や遅効性肥料を組み合わせると追肥の負担を軽減できます。
一例として、宮崎県の施肥基準から、作型ごとの基肥の施肥量目安を紹介します。
10a当たりの目標収量と施肥量
作型 | 目標収量 | 窒素 | リン | カリウム |
---|---|---|---|---|
促成栽培 | 9,000kg | 15kg | 25kg | 10kg |
半促成栽培 | 6,000kg | 10kg | 10kg | 10kg |
ハウス抑制栽培 | 3,000kg | 20kg | 20kg | 20kg |
雨よけ栽培 | 8,000kg | 15kg | 25kg | 10kg |
出典:農林水産省「都道府県施肥基準等」掲載「宮崎県 主要作物の施肥基準」所収「3. 野菜(5ページ)」
追肥
生育初期のトマト 一段目が結実し始めている
写真提供;HP埼玉の農作物病害虫写真集
1回目の追肥は、株の1段目の果実がピンポン玉くらいの大きさになった頃に行います。草勢が強ければ、追肥を見送っても問題ありません。窒素成分量で10a当たり2~3kgを目安に、速効性のある化成肥料を畝の両側に施用します。
2回目以降は、奇数段の花が開いた頃を目安に追肥を行いますが、茎葉の状況に応じて追肥量を調整します。草勢が弱い場合は、4段目・6段目の開花時期にも少量の追肥を行うと効果的です。
葉の色が黄緑色に変色している場合は養分が不足しているため、生長が止まらないよう早めに施肥を行いましょう。また、液肥を施用する場合は、窒素成分量で10平方m当たり10g程度を各段の開花時期に灌水しながら施用します。
窒素過多の見分け方と対処法
土壌の窒素が過剰になると、果実肥大期に下葉や上葉が巻き上がったり、茎に茶褐色のえそ斑が生じたりする生理障害が起こります。放置しておくと根の伸長や樹勢の低下・過繁茂につながります。
佐竹 美幸 / PIXTA(ピクスタ)
日照不足などで果実が日陰におかれると、果実の表面に褐色の斑点が現れる「すじ腐れ」の原因となり、品質低下にもつながるため早めの対処が大切です。
窒素過多は過剰な施肥が原因ですが、土壌中の有機物含有量が少なくなって肥料が効き過ぎたときにも発生します。
また、トマトは吸肥力が非常に強いため、降雨などで土壌の水分量が急変したときに、根が窒素を急激に吸収する場合もあります。下葉にまだら模様を伴っている場合は、窒素過多によって苦土の吸収阻害やカリ過剰が発生している可能性がある点にも留意しておきましょう。
窒素過多が発生した場合は灌水を見合わせ、土壌を乾燥させて窒素の吸収を抑えるようにします。土壌の水分が急激に増減しないよう、有機物を施用したり地表面にマルチしたりすることも効果的です。追肥する際に窒素を加えずに、カリウムの割合を増やすのもよいでしょう。
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
トマト栽培で、長期間にわたる収穫期を通じて安定した収量を確保するには、基肥に加えて生育状況に応じた追肥を行い、肥料の過不足を生じさせないことが必要です。
そのためには、草勢をよく観察することが重要で、肥料切れや窒素過多の兆候がみられたら、土壌水分や施肥量の調整などをきめ細かに行っていきましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。