【スイカ栽培】摘果のタイミングやツルの仕立て方など管理のポイントを解説
果実に養分を集中させて糖度の高いスイカを栽培するためには、摘果は欠かせません。定植後の仕立てや整枝などの栽培管理も、果実の生長を促す大切な作業です。この記事では、スイカの摘果を行う基準やタイミングを中心に、ツルの仕立て方や収穫までの栽培管理の流れについても解説します。
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スイカの摘果はツルを仕立てた後に行いますが、糖度の高いスイカを栽培するためには適切な栽培管理が重要です。まずは、スイカの基本的な栽培暦について紹介します。
スイカの基本的な栽培暦
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
スイカの作型は、早熟トンネル栽培が主流ですが、ハウスによる半促成栽培・抑制栽培に取り組む地域もみられます。ここでは、早熟トンネル栽培と半促成ハウス栽培の栽培暦を紹介します。
早熟トンネル栽培
栽培地 | 播種 | 定植 | 収穫 |
---|---|---|---|
冷涼地 | 3月中旬~3月下旬 | 4月中旬 | 6月下旬~7月中旬 |
中間地 | 1月上旬~1月中旬 | 2月中旬~2月下旬 | 6月中旬~7月上旬 |
暖地 | 1月上旬 | 2月下旬 | 5月中旬~6月中旬 |
半促成ハウス栽培(無加温)
栽培地 | 播種 | 定植 | 収穫 |
---|---|---|---|
冷涼地 | 3月上旬~3月中旬 | 4月中旬~4月下旬 | 6月下旬~7月上旬 |
中間地 | 大玉:12月上旬 小玉:11月上旬 | 2月上旬 12月上旬 | 5月中旬~6月中旬 3月上旬~6月上旬 |
暖地 | 11月上旬~11月中旬 | 12月中旬~下旬 | 4月中旬~5月中旬 |
出典:一般社団法人日本種苗協会「栽培のヒント~スイカ」よりminorasu編集部まとめ
スイカは高温乾燥の環境を好む反面、水はけの悪い場所を嫌うのが特徴です。着果や初期肥大を安定させるために、トンネルやマルチを活用して降雨対策を行う場合があります。
スイカの品質と収量の成否をわける摘果
johnny-nayuta / PIXTA(ピクスタ)
続いて、スイカの品質と収量を大きく左右する摘果について解説します。
果実の大きさがソフトボールと同程度になったら、1本のツルに2個の果実を残して摘果します。
摘果とは品質の良い果実を収穫するために、果実が小さい段階で総数を人為的に減らす作業です。病気や害虫の影響を受けた果実を摘果し、収量低下を未然に防ぐ一面もあります。
仮に摘果しないですべての果実を栽培し続けた場合、地力や施肥の状況にもよりますが、果実1個当たりの大きさが小さくなる傾向があります。
特にスイカは果実が大きく生長するため、少ない果実に集中して養分を回さなければ十分に肥大せず、食味も悪くなります。その結果、出荷規格を満たせず、農家にとって減収につながることもあります。
一方で、適切なタイミングで摘果を行えば、残した果実に養分を集中させることができ、果実の品質を高められます。栽培する株数に応じて、収量計画を立てることも可能です。
プラナ / PIXTA(ピクスタ)
スイカの摘果|位置は? タイミングは?
品質のよいスイカを収穫するためには、着果させる場所だけでなく摘果するタイミングや基準を決めておくことが大切です。ここでは、スイカ栽培における摘果方法について解説します。
着果させる位置は?
四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)
定植後は子づるが4本残るようにツルを仕立て、大玉スイカの栽培では16~22節あたりの三番花に2個の果実が着果するように整枝します。
15節以下だと果実が小さくなりやすく、23節以上だと空洞果や裂果が発生しやすくなるので注意が必要です。また、小玉スイカの栽培では15~20節で3個の果実が着果するように整枝します。
これより低い位置に着果させた場合は、雌花が充実していないことが多いため果実が十分に肥大できず、扁平になる傾向があります。
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
雄花・雌花が開花したら、確実に着果するように人工交配を行います。午後になると花粉の受精能力が下がるので、遅くとも午前10時までに交配作業を完了させましょう。
栄養生長が強いときに着果すると、果実のスジが多くなり食味にも影響します。また、高い位置の着果では果実が大きく生長するものの、空洞果や裂果が発生しやすくなります。
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
着果後の生長に支障が出ないよう、着果した節から親づるまでの間にできた孫づるは早めに掻き取りましょう。なお、着果した節から先にできた孫づるは放置しておいても問題ありません。
摘果のタイミング、果実の大きさ
dorry / PIXTA(ピクスタ)
摘果に適したタイミングは、人工交配を行った約10日後が目安です。摘果が遅れると果実が十分に肥大できなくなる可能性があるため、早い段階で取り組みましょう。
大玉スイカの場合は直径7~8cmの果実を1株当たり2~3個残して、ほかの果実は摘果します。
果実の品質をさらに高めたい場合は、摘果後の果実がソフトボール程度の大きさに肥大した段階で、最も形がよいものを1個だけ残してもよいでしょう。また、小玉スイカの場合は直径4~5cmの果実をツル1本当たり1~2個を残します。
摘果後に咲いた雌花が受粉すると、新たに果実が着果することで養分が奪われるため、授粉しないように早めに摘み取っておきましょう。
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残す果実の選び方
摘果で残す果実は、形が整っている楕円形のものを選びます。果実の大きさを揃えてバランスよく肥大できるよう、交配日が近いものをピックアップするとよいでしょう。16~22節目に着果した果実は収穫後の品質が良いとされているので、優先的に残すようにします。
一方、球体に近い果実や形がいびつな果実は奇形果になる可能性が高いので、残さずに摘果します。傷が付いた果実や害虫痕・細菌感染のある果実も摘果します。
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摘果後の栽培管理のポイント
摘果後から収穫までの、栽培管理のポイントについて解説します。
着果棒を立てる
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
摘果後は、収穫のタイミングを一目で確認できるように着果棒を立てます。既製品を購入しても、保有している資材を使って自作してもかまいません。
着果棒に、摘果した日と品種ごとの収穫予定日を明記した紙を貼っておくとわかりやすくなります。収穫時期が近づいた時点で果実を試し切りして、熟度を確認したうえで収穫日を決めるとよいでしょう。
着果棒を地域ぐるみで活用している事例もみられます。JA鹿本(熊本県)では、摘果した日から3日ごとに決められた色の着果棒を果実ごとに立てています。収穫前に、出荷査定会で糖度・熟度を確認してから、着果棒の色ごとに収穫日を決めているのが特徴です。
出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「熊本県 JA鹿本 ~高度な栽培管理と光センサーによる厳しい選果体制で高品質なすいかを食卓へ~」(野菜情報 2021年5月号 産地紹介)
玉肥(追肥)
スイカは着果後4~5週間で、収穫できる大きさまで生長します。生長に当たって多くの養分が必要となるので、肥料切れとならないよう着果が確認できたら早めに玉肥(追肥)を行いましょう。
草勢を見ながら、ツル先に10a当たり3~4kgの割合で窒素肥料を施肥します。窒素過多になると茎・葉だけが生長して果実が肥大しなくなる恐れがあるので注意してください。
玉肥は1回だけでかまいませんが、速効性肥料を使用している場合は収穫期間までに肥料切れを起こす場合があります。ツルの先の持ち上がりが低ければ肥料不足なので、果実の直径が15cm程度になった頃を目安に、10a当たり1~2kgの割合で窒素を施用します。
玉直し
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果実の色と形を均一にするために、遅くとも収穫の1週間前には玉直しを行います。果実の色むらが心配な場合は、何度か行ってもかまいません。
玉直しの際はヘタが取れないよう気をつけながら、果実の日陰だった部分に日が当たるように置き直します。葉が果実と重なる場合は、必要に応じて摘葉も行います。
kmc / PIXTA(ピクスタ)
着果後にスイカを摘果することで残した果実に養分が行き渡りやすくなり、品質の向上につなげられます。病原菌や害虫の影響も未然に防ぐことができ、収量確保にも効果を発揮します。
変形果が生じるリスクを回避するため、ツルの16~22節あたりに着果させるようにしましょう。摘果後も、玉肥や玉直しを行うようにします。摘果日に着果棒を立てておけば収穫予定日を一目で確認できます。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。