グリーン森下 代表取締役 森下和紀氏|地道な広報と消費者の声がジャンボスイカを全国に知らしめる!

「入善ジャンボスイカ」はラグビーボール型の巨大なスイカです。コアなファンも多いジャンボスイカをより多くの方に知ってもらうため、グリーン森下ではさまざまな取り組みを行ってきました。JAとの協力体制やSNSの活用など、時代の変化に合わせながら、どのようにジャンボスイカの魅力を伝えてきたのか伺いました。
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目次
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有限会社グリーン森下 代表取締役 森下和紀(もりした かずのり)さんプロフィール
祖父の代から代々続くジャンボスイカ栽培農家の3代目として就農。作付け転換や消費傾向が大玉スイカに移行したことをきっかけに、農家数が減少していったジャンボスイカの栽培を現在も継続し、地元ブランド作物「入善ジャンボスイカ」として確立させる。
直売所での販売から全国販売をめざして
入善町は、日本で唯一のジャンボスイカ生産地として、120年以上ジャンボスイカを栽培してきました。かつては、国道沿いに立ち並ぶ直売所で、多くのお客さまがジャンボスイカを購入していましたが、時代の変化に伴い徐々に直売所が減少していったといいます。
ジャンボスイカの販売を直売所から全国に広げるために、森下さんはどのような取り組みを行ったのでしょうか。
全国各地にいる消費者に農家だけの力で対応していた時代があった

———かねてよりジャンボスイカの市場規模は大きかったのでしょうか?
現在ほど流通技術が発達していなかった頃から、ジャンボスイカの需要は全国にありました。貨物列車にジャンボスイカを積み込んで県外に出荷するため、いくつものジャンボスイカを駅まで運んでいた時期もあります。
また、その頃の販売ルートの主軸は、農家による直売でした。国道8号線沿いにいくつもジャンボスイカの直売所があり、県内外から多くのお客さまがジャンボスイカを買いに来られていました。ドライブのお土産にジャンボスイカを買って帰る、という方もいらっしゃいましたね。
JAとの協力体制が生んだジャンボスイカの安定供給体制
———現在も入善ジャンボスイカの販促活動は農家の皆さんが各々実施されているのですか?
入善ジャンボスイカ農家に限った話ではありませんが、日々の農作業もある中で農家が販促活動に取り組むには、相応の時間とコストがかかります。栽培も販促も行うためには、コストも手間も人手も必要になりますから。販促にかかる課題は、JAと力を合わせることで解決することができました。入善町で生産されるジャンボスイカの集荷をJAが一括で行い、卸売業者との価格交渉や販売まで担ってくれたことで、私たちジャンボスイカ農家は栽培に集中できるようになったのです。
一括集荷に切り替えたことに合わせて直売所を閉めたとしても、「ジャンボスイカを食べたい」という根強いファンは多くいらっしゃいました。JAが集荷から販売まで引き受けてくれたおかげで、お客さまのニーズに応え続けることができたのだと思います。

出荷前の入善ジャンボスイカ
参照元:グリーン森下Instagram
富山から全国へ。ジャンボスイカの魅力を広める活動
———JAとの協力体制ができたことで、消費者に安定してジャンボスイカを届けられるようになったのですね。
JAとの協力体制は、ジャンボスイカの販促や販路拡大の面でも大きな影響がありました。
一時期はコロナ禍の影響で中断されていましたが、定期的に東京都内や埼玉県大宮市内にある富山県のアンテナショップで、ジャンボスイカの展示販売・試食会イベントを行い、首都圏での知名度向上に向け取り組んでいました。
このイベントの開催は、JAの協力あってのものです。地元を離れた富山県民だけでなく、これまでジャンボスイカのことを知らなかった方にも「こんなスイカを富山で栽培しているんだ」と知ってもらうことができました。
大きなジャンボスイカをその場で購入される方は少ないですが、興味を持ってくださった方が、あとから通販で注文してくださることも増えていきました。
お客さまの「食べたい!」に応えるジャンボスイカ通販
JAとの協力体制によってジャンボスイカの栽培は安定しましたが、全国のお客さまにジャンボスイカを届けるためには、新たな販路の開拓が必要になりました。それが「ジャンボスイカ通販」だったと森下さんは語ります。
電話やハガキによる通販からオンライン通販へ
———グリーン森下では、直売所以外での販売はどのように行っていたのでしょうか?
実は、国道沿いに直売所が並んでいた当時から、グリーン森下では県外からの注文も受け付けていました。電話やハガキで注文を受け付ける、昔ながらの通販ですね。古くからのお客さまの中には、北海道や沖縄県にお住まいの方もいらっしゃいます。
さらに、オンライン通販を始めてからは注文も簡単にできるようになり、より多くのお客さまからご購入いただけるようになりました。
オンライン通販の先駆者として地域を盛り上げる
———消費者がジャンボスイカを購入しやすいように、時代に合わせて販売方法を工夫されているのですね。
実は、入善町で最初にジャンボスイカのオンライン通販を始めたのは、グリーン森下です。今でこそ多くの方が利用されているオンライン通販ですが、オンライン通販黎明期には「直接品物を見ないで買い物をするのは抵抗がある」という方も多くいらっしゃいました。
そのため、オンライン通販を使った直販に踏み切れない農家も少なくありませんでした。しかし、私たちのオンライン通販が軌道に乗ったことをきっかけに、地域のジャンボスイカ農家もあとに続き始めたのです。
———グリーン森下がジャンボスイカのオンライン通販を促進していったのですね!
「私たちが促進していった」というと、少し大袈裟な感じがしてしまいます。しかし、ジャンボスイカを多くの方に届けるために「自分達にできることは、とりあえずやってみよう」という気持ちが大きかったので、私たちの取り組みがジャンボスイカの販路拡大につながったのだとしたらうれしい限りです。

SNSの発信や商品開発を通じて、新しい顧客層にアプローチ
オンライン通販への取り組みと合わせて、グリーン森下では新しい顧客層にアプローチする活動を積極的に行っています。
SNSの活用で若い世代にもジャンボスイカの魅力を伝える
———インターネットが普及していったことで、ジャンボスイカに関する情報発信の幅も広がったのでしょうか?
FacebookやInstagramを使った情報発信は、主に息子(森下信義さん)や妻(森下さゆりさん)が中心となって行っています。
ジャンボスイカだけでなく、グリーン森下で栽培している桃などの作物、看板猫の様子を公開して、幅広いお客さまに知っていただけるように工夫しています。グリーン森下や入善ジャンボスイカのハッシュタグを見てみると、若い方がおしゃれにアレンジしてスイカを食べている様子や、大きなスイカにはしゃぐ子どもたちなどの様子を見ることができます。
SNSを始めたことで自分達が作ったジャンボスイカが愛されている様子を見ることができるようになったのはうれしいですね。
作物の加工商品を通してグリーン森下や入善ジャンボスイカを知ってもらう

ご当地グミの原料としてグリーン森下のジャンボスイカが使用されている
———SNSの発信を通じて、若い世代の新たなファンを獲得することができたのですね。
そうですね。しかし、若い世代の方にとって、ジャンボスイカを丸ごと1玉注文するのは少しハードルが高いですよね。そこで活用したのが「 ニッポンエールシリーズ」のグミです。
「 ニッポンエールシリーズ」のグミには、原材料としてグリーン森下をはじめとした入善の農家が栽培した入善ジャンボスイカが使用されています。このグミは、全国各地のスーパーやコンビニで販売しており、このグミをきっかけにジャンボスイカに興味を持ってくださる方が増えています。
———グリーン森下では、こうしたグミなどの6次産業化にも、積極的に取り組まれているのでしょうか。
はい、グリーン森下では桃の栽培も行っているのですが、私たちが栽培した作物の6次産業化は、息子が中心となって動いてくれています。
入善駅周辺のクレープ店や富山市内のパティスリーなどで、グリーン森下の桃を使っていただいたことをきっかけに、より多くの方にグリーン森下を知っていただけました。
その結果、桃だけではなくジャンボスイカの存在、そして、そのおいしさを伝えられたと感じています。
若い世代にもジャンボスイカのおいしさを知ってもらい、ジャンボスイカのファンを作っていくことで、この先もジャンボスイカの需要を生むことができると考えています。
日本で唯一のジャンボスイカ生産地で長年ジャンボスイカを栽培してきた私にとって、次の世代にもジャンボスイカが愛されるというのは農家冥利につきます。
全盛期に比べてジャンボスイカの生産農家は少なくなってしまいましたが、これから先の未来でもジャンボスイカ栽培が途絶えることがないよう、私たちにできることはどんどん取り組んでいきたいですね。
グリーン森下は、地域の名産品であるジャンボスイカを後世に残していくために、積極的な挑戦を続けています。その思いの根底にあるのは「長い歴史を持つ入善ジャンボスイカを後世に伝えたい」という思いでした。次世代にもジャンボスイカを伝えていくための森下さんの挑戦は、これからも続いていくことでしょう。
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福馬ネキ
株式会社ジオコス所属。「人の心を動かす情報発信」という理念のもと、採用広告を中心にさまざまな媒体で情報発信を手がける株式会社ジオコスにてライターを務める。