白絹病から大豆を守る!水田転作で麦類を輪作する場合は特に注意。発生原因や防除対策を知っておこう
大豆の白絹病は、西南暖地の水田転換畑で発生が多い病害です。この記事では大豆の白絹病について、被害の特徴や伝染経路、多発条件とともに、発症させない管理方法や、発生した場合の農薬による防除方法を解説します。
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目次
大豆の白絹病は、多湿になりやすい水田転換畑で発生しやすく、被害の特徴や防除策について解説します。
主に西南暖地で発生。大豆の白絹病の生態
白絹病の菌糸
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
白絹病の菌核 直径0.8mm
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
大豆の白絹病は、糸状菌の一つである「Sclerotium rolfsii」(スクレロチウム・ロルフシー)よって発生する病害です。この病原菌は、寄主範囲が広いく、多くの作物・植物に寄生するといわれます。
白絹病の第一次伝染源は、越冬した菌核です。ただし、前年に形成された菌核は、土中深くに埋まるとほとんど死滅しますが、地表近くの浅い場所に残存した菌核が伝染の主な原因となります。
また、菌核は土壌中で5〜6年の生存が可能です。そのため、一度白絹病が発生すると、そのほ場では当面の間、大豆の栽培が難しくなります。
越冬した菌核は、発育可能な温度や湿度条件になると、菌糸を伸ばして大豆に侵入します。地際部の茎が軟化して、本葉は急速に黄変し最終的に枯れてしまいます。地際部には、白色の菌糸とともに、粟粒大の茶褐色の菌核が形成されていきます。
白絹病(小豆)株元の白い菌糸と菌核
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
大豆の白病の発生条件は? 中耕培土のリスクが高い理由
大豆の白絹病はどのような条件のもとで発生しやすい病害なのでしょうか? 発生条件についてみていきましょう。
大豆の白絹病は、6月〜9月にかけて多湿条件で発生しやすい
HAPPY SMILE / PIXTA(ピクスタ)
大豆の白絹病は、気温の高くなる6月から発生し始め、降雨が多く多湿になる梅雨時期と8月後半~9月に多発します。西南暖地では5月下旬からの発生もみられます。
盛夏で乾燥気味の時期は発生はやや少なくなります。
中耕培土をきっかけに一気に感染拡大することも
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
麦類との輪作で、麦わらをすき込んでいる場合に大豆の中耕培土をきっかけ白絹病が一気に拡がることがあります。
白絹病の病原菌は、完熟していない麦わらなどの有機物をエサに増殖します。中耕培土でこれらの有機物が地表付近まであがってくることで、病原菌が一気に増殖し、大豆の地際から侵入するリスクがたかまってしまうのです。
大豆の白絹病は耕種的防除が重要!
ここでは、大豆の白絹病対策として耕種的防除が重要である理由や具体的な防除策について解説します。
大豆の白絹病対策として耕種的防除が重要な理由は、農薬による化学的防除の場合、土壌消毒(くん蒸や灌注)や株元散布が必要であるため、大規模栽培では適用しにくいことが挙げられます。
大規模栽培では、病原菌の密度を出来る限り下げるための土壌管理を徹底して実施することが大切です。
本圃の排水対策とpH調整
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
まず、ほ場が過湿状態にならないよう排水対策を徹底し、被害株は翌年の伝染源となる可能性があるため処分します。被害株付近の土も、菌系や菌核が残っている可能性が高いため、ほ場外へ持ち出して処分します。
また、土壌pHの調整も重要です。菌糸の伸長は土壌pH6以上になると生育が悪くなり、菌核に関しても土壌pH6.5を超えると発芽を抑制できるため、土壌pHを高めに調整します。
連作を避ける。可能であれば田畑輪換も
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
大豆の白絹病は、土壌表面に残った菌核が翌年の第一伝染源となるため、前年に白絹病が発生したほ場での連作を避けることが基本となります。可能であれば、水稲と大豆を3~4年程度の周期で田畑輪換するのが効果的です。
本格的な田畑輪換が出来ない場合は、水稲を組み込んだ輪作体系を組み、大豆の前作に水稲を持ってくることも有効です。白絹病の菌核は、湛水状態を一定期間つくることで死滅させることができるので、前作を水稲にすることで発生リスクを低減できます。
深耕天地返しで菌核を土壌中深くに埋没させる
白絹病が発生したほ場では、麦わらなど腐熟するまでに時間がかかる有機物のすき込みを避け、深耕を行いましょう。また、天地返しで、地表近くの菌核を土中深く埋没させることで、菌核の生育が難しくなり発病の抑制につながります。
密植や過繁茂を避け、中耕培土は慎重に
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
密植や過繁茂は、白絹病の発生や感染拡大を助長するため避け、適正播種を行いましょう。
また、先述したように、中耕培土をきっかけに白絹病が一気に拡がることがあります。そのため、白絹病の発生リスクの高いほ場では中耕・培土を避けましょう。
それ以外のほ場で中耕培土を実施する際は、水分中を菌核が移動しないよう、降雨直後の日程を避けて行います。
中耕培土をしないで白絹病の発生を抑える「不耕起狭畦栽培」という選択肢も
中耕培土を避けて白絹病の発生を抑えるためには、「不耕起狭畦栽培」という選択肢があります。
不耕起栽培とは、その名の通りほ場を耕さないで作物を栽培する方法のことです。また、狭畦栽培とは、通常の畦幅を半分程度に狭めて作物を播種・栽培することを指します。つまり、狭畦不耕起栽培は、収穫までほ場を耕さずに省力的な栽培を実現できる方式です。
中耕培土を行わないため、白絹病の発生を抑えられるほか、労働時間や生産費の削減にもつながるメリットがあります。
ただし、排水対策をしっかり行わないと湿害が発生しやすくなります。また、除草剤による雑草防除を播種前や播種直後に行う必要があります。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
大豆の白絹病での農薬使用は土壌消毒と株元灌注が中心
大豆の白絹病対策としての農薬使用は、作付け前の土壌消毒と作付け後の土壌灌注に限られます。作付け前の土壌くん蒸には「クロルピクリン錠剤」、作付け後の土壌灌注には「リゾレックス水和剤 」が使用できます。
なお、ここに記載する農薬は、2022年7月時点で登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。
また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。
農薬登録情報提供システム
大豆の白絹病の防除対策は、耕種的防除が基本です。今回紹介した耕種的防除やそれぞれのポイント、注意点を意識しながら大豆を白絹病から守り、栽培を成功させてください。
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大矢隼平
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