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【ブロッコリーの根こぶ病】病原菌を持ち込まない、感染を拡大させない対策と農薬

【ブロッコリーの根こぶ病】病原菌を持ち込まない、感染を拡大させない対策と農薬
出典 : s.garyuu / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーに根こぶ病が発生すると、出荷部分の花蕾は肥大せず、進展すると枯死して欠株になり、大きな減収につながります。根こぶ病が発生したほ場で完全に防除するのは困難ですが、土壌環境の改善や育苗時からの農薬使用、適切な栽培管理によって発生を遅らせたり、被害を軽減することができます。

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ブロッコリーの花蕾

s.garyuu / PIXTA(ピクスタ)

根こぶ病の病原菌が、ほ場に侵入すると発生を防ぐことは難しく、多発すると大幅な減収になります。この記事では、ブロッコリーの根こぶ病被害の特徴や多発条件、病原菌の密度を下げる方法などを解説します。

ブロッコリーの感染~発病サイクルと発生条件

ブロッコリーの根こぶ病は、一気に激化することがあります。まず、激化につながる感染~発病のサイクルと発生の好適条件を知っておきましょう。

病原菌

根こぶ病は、ブロッコリーや白菜、キャベツなどアブラナ科野菜に限って発生する病害で、病原菌は、「Plasmodiophora brassicae(プラスモディオフォラ・ブラシカエ)」と呼ばれる原生生物です。

代表的な土壌伝染性病害の1つで、病原菌は発生ほ場の土壌中で数年〜10年程度生存し、一度発生すると、そのほ場は、根こぶ病の発生リスクを抱え続けることになります。

また、この原因菌は、生きた宿主から離れた状態では増殖できない絶対寄生菌ですが、汚染された土壌の移動によって、ほかのほ場にも拡がってしまいます。

感染~発病サイクル

ブロッコリー 根こぶ病 肥大した根こぶ

ブロッコリー 根こぶ病 肥大した根こぶ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブロッコリーが根こぶ病に感染すると、根で病原菌の遊走子が異常に増殖し、根の細胞が異常に分裂して、典型的な病徴である根こぶができます。こぶの内部の遊走子は、休眠胞子を多量に形成します。そして、腐敗や中耕作業などで根こぶが破れると、土壌中に放出されます。

放出された休眠胞子は、水分中を移動し、健全株の根が近づくと発芽し、遊走子となってその株の根に侵入します。

侵入した遊走子は、根の中でさらに遊走子を生み(第二次遊走子)、一旦外に出ますが、再び根に侵入し、根こぶができ、休眠胞子を多量に形成します。

この繰り返しによって、感染拡大し、病原菌の密度が高まり、発病が激化していきます。

ブロッコリー 根こぶ病 発病株

ブロッコリー 根こぶ病 発病株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根こぶの発生条件

土壌pH

根こぶ病の病原菌は、酸性よりの土壌を好み、土壌pH6.0以下で最も発病しやすくなります。pH7.5以上のアルカリ性の土壌では発生を抑えられます。

気候

根こぶ病の休眠胞子の発芽適温は18〜25°C、昼の長さが11.5時間より長いと発生しやすく、春から初秋にかけてが発病時期といえます。

土壌水分

前述したように遊走子は土壌内の水分中を遊泳して根に寄生します。そのため、根こぶ病の発生は、水田転換畑など、排水性が悪く多湿になりやすいほ場で発生が多くなります。

病原菌を持ち込まない、感染を拡大させない

未発生ほ場でも、発生したことがあるほ場でも、まずは、根こぶ病が発生しにくいほ場の環境を整え、また、病原菌を持ち込まない、感染を拡大させない対策を徹底することが重要です。

1.多湿条件の改善

前述の通り、根こぶ病は多湿条件で発生しやすいため、ほ場の排水性を改善することが大切です。

排水性が良くないほ場では、明渠(めいきょ)や暗渠(あんきょ)などを施工したうえで、高畦栽培を行い、土壌が過湿にならないようにします。

高畝仕立てのブロッコリーほ場

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

2.土壌pHの調整

酸性土壌の場合も発病しやすいため、石灰資材を投入して土壌pHを調整します。

3.おとり作物「葉ダイコン」の作付け

根こぶ病の発生を抑制する方法として、おとり作物として、根こぶ病抵抗性の葉ダイコンを前作とし、すき込むことも有効です。

根こぶ病抵抗性の葉ダイコンの場合、根こぶ病の遊走子が侵入しても、その根の中で形成された遊走子(第二次遊走子)は弱って死滅していくため、根のこぶは発達しません。結果的に、土壌中の病原菌密度を低下させることができます。

抵抗性の葉ダイコンを1ヵ月程度栽培した後すき込みますが、定植までに十分腐熟する期間を設けられるようスケジュールしましょう。

4.ほ場に病原菌を持ち込まない。感染を拡大させない

農機具などの取り扱いにも注意が必要です。根こぶ病が発生したほ場で使用した農機具を未発生ほ場で使用すると、汚染土壌が移動してしまい汚染拡大の原因になります。そのため、汚染ほ場で使用した農機具や作業者の履き物などはよく洗いましょう。

また、苗からの持ち込みを防ぐために、無病の育苗培土や育苗床を利用しましょう。

ブロッコリーの移植作業

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

発生ほ場では、農薬による防除を

根こぶ病が発生したことがあるほ場では、育苗時~定植時に農薬による防除を行います。

ブロッコリーの根こぶ病で使用できる農薬には「ネビリュウ」や「ランマンフロアブル」、「オラクル粉剤」、「フロンサイド粉剤」、「フロンサイドSC」などがあります。以下で、使用時期と使用方法をまとめました。

薬剤名使用時期使用方法
ランマンフロアブル定植前日〜当日セル成型育苗トレイまたはペーパーポットに灌注
​​ネビリュウは種または定植前全面土壌混和
作条土壌混和
フロンサイド粉剤は種または定植前作条土壌混和
オラクル粉剤定植前全面土壌混和
フロンサイドSC定植前全面散布土壌混和

なお、ここで紹介した農薬は、2022年9月5日現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。

また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。

農薬登録情報提供システム

根こぶ病が激化すると、ブロッコリーの収量減は避けられません。発生したことがあるほ場では、農薬による防除をしっかり行い、併せて、発生を抑制するほ場環境を整え、感染を拡大させない対策を徹底しましょう。

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大矢隼平

大矢隼平

フリーランスのWebメディア編集者・ライター、コピーライターとして活動中。ITや通信、農業など多数メディアの編集・執筆業務から企業HPのコンテンツライティングまで幅広い業務を手掛けています。読者の方にとって有益な情報を発信します。

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