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落花生との輪作でネコブセンチュウを対策! サツマイモのセンチュウ類被害と防除

落花生との輪作でネコブセンチュウを対策! サツマイモのセンチュウ類被害と防除
出典 : sky&sun / PIXTA(ピクスタ)

サツマイモ(甘藷)栽培において、センチュウ類による品質低下の被害が問題になっています。センチュウ類は非常に多くの種類が存在しますが、そのうち農作物に被害をもたらすのはネコブセンチュウなど数種類です。適切な予防対策を実施し、センチュウ類の被害を最小限に抑えましょう。

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サツマイモ(甘藷)に発生するのは主にネコブセンチュウで、被害を防ぐには予防が重要です。

本記事では、サツマイモ(甘藷)栽培におけるネコブセンチュウの防除に有効な農薬のほか、落花生などの対抗植物を利用した防除方法、土壌消毒など、さまざまな対策について解説します。

さまざまな作物の大敵となるネコブセンチュウとは

サツマイモ 収穫作業

camera111/PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウは、土壌中に存在するセンチュウ類の一種です。センチュウ類は非常に種類が多く、日本の一般的な土壌には数百~数千種類のセンチュウ類が存在しているといわれます。

多くのセンチュウ類の中で、農作物への被害が問題となるのは主にネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウの仲間など数種類だけです。

このうち、サツマイモに寄生し被害を生じるものは、ネコブセンチュウとネグサレセンチュウの仲間に限られます。

以下では、特にサツマイモの品質を著しく低下させ、減収につながるネコブセンチュウについて、生態や被害の特徴を紹介します。

ネコブセンチュウの生態と被害の概要

農作物で問題となるネコブセンチュウは、さらに数種類に分けられますが、このうち、サツマイモ(甘藷)栽培で最も注意すべきなのがサツマイモネコブセンチュウです。

サツマイモに寄生したネコブセンチュウの雌成虫

サツマイモに寄生したネコブセンチュウの雌成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

サツマイモ(甘藷) 奇形や肌荒れ、亀裂が見られるネコブセンチュウ被害いも

サツマイモ(甘藷) 奇形や肌荒れ、亀裂が見られるネコブセンチュウ被害いも
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

サツマイモ(甘藷)  内部に褐色の点が見られるネコブセンチュウ被害いも

サツマイモ(甘藷)  内部に褐色の点が見られるネコブセンチュウ被害いも
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

サツマイモネコブセンチュウは北海道南部から沖縄まで広く分布し、特に温暖な気候を好みます。成虫でも大きさは1mm以下で透明に近いため、肉眼による発見は非常に困難です。

塊根に止まり被害をもたらすのは雌で、雄がいなくても数百個の卵を産み繁殖します。好適条件下では1作期に3~4回発生し、25℃条件下では30日ほどで1世代を経過します。

九州など温暖な気候では、卵や幼虫が土壌中で越冬し、地温が10~15℃になるとふ化します。寒冷地では越冬できず、次作への影響はないとされますが、果菜類などの施設栽培の場合は越冬すると考えられるため対策が必要です。

きゅうりのネコブセンチュウ被害株

きゅうりのネコブセンチュウ被害株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ネコブセンチュウはその名の通り、果菜類などに寄生した場合は根にコブを作って養水分の吸収を阻害するため、生育の悪化や枯死を招きます。

根菜類やいも類に寄生した場合は症状が異なり、根にコブを作ることはありませんが、塊根がくびれるなどの奇形を生じたり、表面に亀裂を生じたりします。また、生育初期に多発した場合は、タコ足状となって塊根が形成されません。

ネコブセンチュウはほとんどの土壌中に存在していますが、通常それほど大きな被害にはなりません。しかし、連作を繰り返すことでネコブセンチュウの密度が高まり、徐々に被害が拡大します。

地上部にはほとんど症状が見られませんが、サツマイモ(甘藷)の場合、収穫部位の見た目が著しく損なわれるため、商品価値がなくなり大幅な減収につながります。

ネコブセンチュウが被害を与える作物

ネコブセンチュウの寄生範囲は広く、サツマイモネコブセンチュウはサツマイモ以外にもニンジンや里芋、ジャガイモ、大根などのいも類や根菜類のほか、ナス科・ウリ科などの果菜類、アブラナ科の野菜類にも発生します。

ただし、イチゴと落花生には寄生しないことがわかっています。

根菜類にはサツマイモ(甘藷)と同様の被害が生じますが、果菜類に寄生した場合は、先述したように根コブを発生させ、細根の腐敗・脱落による生育不良や萎れなどの被害が生じます。

きゅうりのネコブセンチュウ多発ほ場

きゅうりのネコブセンチュウ多発ほ場
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

サツマイモネコブセンチュウ以外のネコブセンチュウは、少しずつ寄生範囲が異なります。例えば、アレナリアネコブセンチュウは本州型・沖縄型の2系統に分かれ、どちらもトマトやタバコ、ピーマンには寄生し、落花生とイチゴには寄生しません。一方、サツマイモについては本州型だけが寄生し、沖縄型は寄生しません。

ナンヨウネコブセンチュウは、アレナリアネコブセンチュウの本州型とほぼ同じ寄生性を持ちます。ジャワネコブセンチュウはイチゴと落花生だけでなく、サツマイモ(甘藷)やピーマンにも寄生性がないので、サツマイモ(甘藷)農家にとって脅威にはならないでしょう。

キタネコブセンチュウはセンチュウ類の中でも北方系とされていますが、九州の平地などでも普通に生息しています。

ほかのネコブセンチュウと主な寄生性は共通しますが、少し特徴が異なります。イチゴや落花生、ジャガイモには寄生が見られますが、サツマイモやアスパラガス、スイカやイネ科には寄生しません。

ネコブセンチュウの被害を予防するには

ネコブセンチュウの防除方法は、基本的にはどの種類でも共通します。地上部での症状がほとんどないため、発見が遅れてしまいがちですが、収穫部位に症状が現れてから気付いても回復できず、有効な防除方法はありません。そのため、ネコブセンチュウは予防が原則となり、密度を高くしないことが重要です。

有効な方法を2つ紹介しましょう。

1.落花生などの対抗植物と輪作する

落花生 ほ場

ゴン太/PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウによる被害が拡大するのは、ネコブセンチュウの寄生性に適した作物を連作し続けることにより、土壌中のネコブセンチュウの密度が上がることが原因です。そのため連作を避け、ネコブセンチュウの繁殖を防ぐことが効果的な予防対策となります。

いも類や根菜類、ナス科、ウリ科、アブラナ科の作物を避けて輪作するだけでも、サツマイモネコブセンチュウの増殖を抑制できますが、線虫の対抗植物を利用することで、より高い効果を得られます。センチュウ類の対抗植物としては、次のような作物が知られています。

・落花生、クロタラリア(マメ科)
・マリーゴールド(キク科)
・アスパラガス(ユリ科)
・ソルガム、ギニアグラス(イネ科)

これらの対抗植物はネコブセンチュウが寄生できないので、餓死させて防除することが可能です。そのため、対抗植物を長く栽培することでより高い効果が得られます。

作物として収穫するほか、効果を高めるためにほ場にすき込んでもよいでしょう。その場合は、すき込んだ植物を分解するために30~45日程度の期間を持たせる必要があります。

なお、落花生についてはサツマイモネコブセンチュウには強いものの、キタネコブセンチュウが寄生することがあるため、注意が必要です。

2.土壌に持ち込まないようにする

サツマイモの切り苗

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウは土壌中に普通に存在します。ネコブセンチュウの急な増殖は、人為的に持ち込まれることで生じる場合も多く、種いもや苗などのほか、農機具や運搬用の容器に付着し入り込むことも考えられます。

サツマイモ(甘藷)だけでなく、ネコブセンチュウに寄生性のある作物で使った農機具や靴についても、そのままサツマイモのほ場に持ち込まず、こまめに土を落としましょう。

ネコブセンチュウは寄生性のある科の雑草でも繁殖するため、周囲にナス科やウリ科、アブラナ科の雑草が繁茂している場合も要注意です。ほ場の周囲を除草し、除草後の植物体や土がほ場に混入しないようにしましょう。

ネコブセンチュウ被害が発生したほ場での防除方法

ネコブセンチュウによる被害が発生してしまった場合は、次作に影響しないよう、土壌中のネコブセンチュウの密度を下げる必要があります。

軽度であれば前項で取り上げた予防手段を講じるだけでも十分ですが、被害が著しく、連作により土壌中のセンチュウ類のバランスが悪化している場合は、以下の方法で一度リセットするのがよいでしょう。

太陽熱消毒

センチュウ類は高温に弱く、60℃ほどの温度であれば数分間で死滅します。そこで、太陽熱消毒や熱水消毒が有効です。

夏期(7~8月)のできるだけ気温の高い時期に、強い太陽熱を利用します。温暖な地域や施設栽培で有効です。十分な陽光が当たり、気温の高い時期が1ヵ月程度続く地域に適しています。

手順は、ほ場を深耕したあと畝立てし、十分に灌水するか雨が降ったあと、透明のビニールシートで隙間なく覆い、盛り土でビニールシートの周囲を密封します。

そのまま1ヵ月ほど放置してからビニールシートを取ります。確実に効果を上げるには、作土層(15~20cm)の温度を測り、少なくとも40℃以上の温度が1週間ほど続くことが必要です。

消毒が終わったら、消毒が届いていない深層の土と混ざらないよう、耕うんせずにそのまま定植します。そのため、有機物や石灰窒素を施用する場合は、最初に畝立てする時点ですき込んでおきましょう。

定植準備が整ったサツマイモの本圃

misokasu / PIXTA(ピクスタ)

農薬を使用する

太陽熱消毒が難しい場合は、土壌くん蒸剤や殺虫剤による土壌消毒が一般的です。「かんしょ」「ネコブセンチュウ」に登録のある農薬は、「ネマキック粒剤」やクロルピクリンくん蒸剤の「クロピクテープ」など多数あります。

ただし、これらの農薬は非常に効果が高い一方で、有用なセンチュウ類も死滅させてしまいます。そのため、改めて適切な土作りをすることが必要です。また、これらの農薬は生育期間中に使えないため、栽培期間が長くなると、収穫後期で薬効が切れる恐れがあります。

そこで、天敵細菌を使った生物農薬である「パストリア水和剤」もおすすめです。環境への負荷も少なく、はじめに細菌を定着できれば、ほかの農薬よりも長期間効果が持続します。

また、石灰窒素の散布もネコブセンチュウの防除に効果があります。ただし、窒素過多にならないように注意が必要です。

なお、ここに記載する農薬は、2022年9月5日現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。

また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。

農薬登録情報提供システム

▼ネコブセンチュウの防除について、より詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。

サツマイモ(甘藷)の栽培においては、連作が続くとネコブセンチュウの被害増大を招くことがあります。被害を防ぐには、土壌中のネコブセンチュウが増えないように、対抗植物との連作をすることが大切です。

それでも被害が大きくなった場合は、土壌消毒を行い、ネコブセンチュウの密度を下げると効果的です。センチュウ類の防除の基本は、「殲滅させるのではなく、密度を適正に抑えて上手に付き合うこと」と押さえておきましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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