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キャベツ収穫機のおすすめは?価格・スペック一覧と、収穫自動化の最新動向

キャベツ収穫機のおすすめは?価格・スペック一覧と、収穫自動化の最新動向
出典 : 瑞鳳 / PIXTA(ピクスタ)

近年、加工・業務用キャベツの需要が拡大し、キャベツ栽培の大規模化が推進されています。それに伴い、キャベツ栽培で最も時間と労力を要する収穫作業を大幅に省力化する大型収穫機の需要が高まり、各メーカーによる既存機種の改良やAIを活用した技術開発も盛んです。

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キャベツの大規模栽培においては、大型収穫機による一斉収穫が徐々に広まっています。そこで本記事では、収穫機の新規導入や新機種への買い替えを検討しているキャベツ農家に役立つ、キャベツ収穫機の最新情報を詳しく解説するとともに、おすすめの機種を3つ紹介します。

加工・業務用キャベツの需要増加により可能になった収穫の機械化

従来のキャベツ収穫 人手によって収獲したキャベツを運搬用トラクターに積み込む

massyu / PIXTA(ピクスタ)

従来のキャベツ栽培においては、多くが小売り向けであるため規格や傷に対して厳しく、1つずつ生育状況を確認しながら手作業で行う収穫が主流でした。

しかし、近年は外食・中食だけでなく小売店でのカット野菜や総菜の販売も増えたため、加工・業務用キャベツの需要が増えています。2015年にはキャベツの加工・業務用需要が50%を超え、家庭消費用需要を上回りました。

産出額に対する需要割合の推移

※農林水産政策研究所による推計
出典:以下資料よりminorasu編集部作成
農林水産政策研究所「主要野菜の加工・業務用需要 6割に近づく」(研究成果|2017年度)所収「主要野菜の加工・業務用需要の動向と国内の対応方向(セミナー・研究成果報告会 2017年10月3日)」
独立行政法人農畜産業振興機構「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについて(2)~共同調査~」

こうした消費動向は、政府が推進している農地の集約・大規模化に拍車をかけ、キャベツ栽培においても大規模経営の増加が続くと考えられます。

加工用キャベツのコンテナ出荷、キャベツの加工工場

瑞鳳 / PIXTA(ピクスタ)・Nosuke / PIXTA(ピクスタ)

大規模経営化には、同時に機械化による作業の省力化・効率化が必要ですが、キャベツ栽培の場合、加工・業務用であれば規格も家庭消費用ほど厳しくなく、機械による一斉収穫が可能になります。

農作業の中でも、収穫作業は機械化が難しいとされていますが、キャベツの収穫は比較的機械化しやすく、すでに複数のメーカーから優れた収穫機が開発され、実用化しています。

2012年に、農研機構生物系特定産業技術研究支援センター・ヤンマー株式会社・オサダ農機株式会社が行った調査によれば、収穫機の導入によって、収穫・調整・出荷にかかる作業時間は慣行の手作業と比べて半減し、大型コンテナを使用することでダンボールが不要となり、その分の資材費が2/3に削減できるとのことです。

出典:農林水産省 農林水産技術会議「農業新技術200X」所収「農業新技術2013|機上調製作業と大型コンテナ収容方式を特長とする高能率キャベツ収穫機」

なお、キャベツ収穫機の導入に当たっては、導入する機械に合った畝立てや品種の選定、収穫を妨げる倒伏をしないように定植するなどの工夫が必要です。既存の農機との相性も考慮し、導入計画を策定し、十分検討したうえで購入しましょう。

どこを見る? 加工・業務用キャベツ収穫機の選び方

キャベツ 大規模栽培 収穫

gonbe/PIXTA(ピクスタ)

キャベツ収穫機はかなり大型で高額な農機です。導入に当たっては、後悔することのないように慎重な検討が必要です。そこで以下では、機種選びの際に注意したいポイントを2点挙げます。

栽培面積に応じた「処理能力・サイズ」

キャベツ収穫機を選ぶ際に最も重視すべきなのは、ほ場に合った処理能力を持っているかどうかという点です。

ほ場の規模に比べて作業能率の低い収穫機を導入すると、想定通りに効率を上げられません。逆に、大きすぎる収穫機を導入すれば小回りが利かず、結局は効率を下げてしまうことになります。

ほ場の傾斜や形状、移動に使う農道など、周囲の環境なども併せて考慮し、総合的に最も効率化できる機種・サイズを選ぶことが重要です。

サイズだけでなく、例えば降水量が多く水が出やすいほ場であれば、条件が悪くても安定して走行できる機能があるかなど、実際に使用した場合を想定して、適した機能を確認しておきましょう。

また、操作に必要な技術や知識を持つ人材の有無も、事前に確認しておくことが大切です。どんなに優れた機能を持つ収穫機を購入しても、それを活かせる人材がいなければ、せっかくの機能が無駄になってしまいます。

収穫精度に影響?「茎葉の切断方式」

各メーカーの収穫機を見ると、同じ機種でも「固定刃」と「回転刃」の2種類が提供されている場合があります。この2つはどう違うのでしょうか。

この違いについては、2015年に鹿児島県農業開発総合センターで行われた、キャベツ収穫機による収穫精度を高める植付法を開発する研究が参考になります。

この研究によれば、キャベツ収穫精度を調査したところ、植付方法や品種に関わらず、回転刃に比べて固定刃のほうが適切り率(結球部に損傷のない個数の割合)が高い、という結果が報告されています。

なお、溝植えと平植えでは前者のほうが適切り率が高く、刃の種類や植え方、倒伏しにくい品種などを組み合わせることで、収穫精度を高めることが可能です。

出典:農研機構九州沖縄農業研究センター「研究発表会 要旨 農業機械部会」 所収「加工・業務用キャベツ機械収穫精度向上のための植付法の開発(鹿児島県農業開発総合センター」

一方で、主要メーカーの1つである株式会社クボタのキャベツ収穫機紹介を見ると、回転刃は切断面への土の付着が少なくきれいに仕上がる、という特徴があります。どちらを重視するかによって、切断方式の種類を選ぶとよいでしょう。

出典:株式会社クボタ「クボタキャベツ収穫機 KCH1400」

なお、一般的に回転刃よりも固定刃のほうが、製品価格は若干安い傾向にあります。刃の強さやメンテナンス、交換のしやすさなども含め、総合的に考える必要があります。

キャベツ収穫機の価格、目安は「1,000万円前後」

1,000万円

ぬここん / PIXTA(ピクスタ)

キャベツ収穫機の小売価格は1,000万~1,200万円程度が相場です。コンテナや荷受部も含めた金額とはいえ大型農機の中でも比較的高額といえます。数社から発売されていますが、メーカーの違いよりも製品の処理能力・サイズや切断方式によって価格が前後します。

高額な農機は中古で購入する方法もありますが、キャベツ収穫機が本格的に普及し始めたのは2015年くらいからであり、まだ中古市場にはほとんど出回っていません。

そこで、国の「担い手確保・経営強化支援事業」などの支援制度を利用するという方法もあります。大規模経営の農業法人として経営の高度化に必要な農業用機械を導入する場合や、地域の小規模・零細地域の経営体が共同利用機械として導入する場合に支援が受けられます。

※詳細は、農林水産省の「経営体育成支援」のページ の各支援制度をご確認ください。

このほか、各自治体やJAが独自の支援を行っている場合もあるので、地域の支援を調べてみてください。

【一覧】メーカー別!おすすめのキャベツ収穫機3選

現在販売されているキャベツ収穫機から、おすすめの機種を3選ピックアップして紹介します。

ヤンマー 「キャベツ収穫機 HC1250/HC1400」

ヤンマーホールディングス株式会社 Youtube公式チャンネル「キャベツ収穫機HC1400収穫作業」

ヤンマーのキャベツ収穫機「HC」シリーズには、中型の「HC1250」と大型の「HC1400」の2種類があります。さらに、それぞれの型には固定刃・回転刃の2種類がラインアップされています。

HC1250
・全長:4,910mm(作業時4,960mm)
・機体重量:固定刃1,935kg/回転刃1,945kg
・1基の鉄枠コンテナを載積可能で、最大積載量は400kg
・10a当たりの作業能率は4.0時間
・刈り取り条数1、適応条間600mm以上
・価格:固定刃10,351,000円(税込み)/回転刃10,692,000円(税込み)

HC1400
・全長:5,510mm(作業時5,560mm)
・機体重量:固定刃2,620kg/回転刃2,630kg
・2基の鉄枠コンテナまたは1基のハーフコンテナを載積可能で、最大積載量は800kg
・10a当たりの作業能率は2.0~4.0時間
・刈り取り条数1、適応条間600mm以上
・価格:固定刃12,188,000 円(税込み)/回転刃12,529,000円(税込み)

製品ページ:ヤンマーホールディングス株式会社「キャベツ収穫機HCシリーズ」

HC1250とHC1400では、積載量は異なりますが、荷受部に乗れる補助者人数はどちらも3人です。

どちらも刈り取りのしくみは、キャベツを中央に掻き込みながら根を掴んで引き抜き、姿勢制御ローラでキャベツを適切な姿勢に整えながら搬送し、2枚の回転刃または固定刃で茎葉部を確実にカットします。

掻き込みホイルを減速したり、挟持ベルトの速度を調整したりすることで、キャベツの傷付きを低減できます。

収穫と同時に、コンテナ台に乗った補助者が腰を曲げることなく調整作業・コンテナ詰めを行えるため、作業効率を大幅に向上できます。コンテナに詰められたキャベツは、そのまま出荷が可能です。

クボタ キャベツ収穫機 KCH1400

株式会社クボタ Youtube公式チャンネル「クボタキャベツ収穫機 KCH1400」

クボタのキャベツ収穫機には、固定刃仕様の「KCH1400-A」と回転刃仕様の「KCH1400-AK」の2種類があります。

KCH1400-A
・全長:5,510mm(作業時5,560mm)
・機体重量:2,620kg
・2基の鉄枠コンテナまたは1基のハーフコンテナを載積可能で、最大積載量は800kg
・10a当たりの作業能率は2.0~4.0時間
・刈り取り条数1、適応条間600mm以上
・価格:11,715,000円(税込み)

KCH1400-AK
・機体重量:2,630kg
・価格:12,045,000円(税込み) ほか共通

製品ページ:株式会社クボタ「クボタキャベツ収穫機 KCH1400」


どちらも機体重量と刃の仕様以外は同じスペックで、刈り取りのしくみも同様です。まず、2枚の掻き込みホイルでキャベツを掻き込みながら根を引き抜き、姿勢制御ローラでカットに適した姿勢に整えます。さらに挟持ベルトで切断角度を調整し、2枚の回転刃または固定刃でカットします。

カットしたキャベツは後部のコンテナ台に搬送され、3人までの補助者が立ったまま腰を屈めることなく選別・調整作業を行えます。

運転者が掻き込みホイルを減速したり、挟持ベルトの速度を調整したりすることで、キャベツの傷付きを低減できるほか、補助者側でもカットの状態を見ながら、キャベツの姿勢を整えたりカット位置を調整したりできるのがポイントです。

イセキ「キャベツ収穫機 VHK1250/VHK1400K」

井関農機株式会社 Youtube公式チャンネル「【営農情報】キャベツ機械化大規模体系~キャベツ収穫機VHK125による収穫作業」

イセキ(井関農機株式会社)のキャベツ収穫機は、ヤンマーと同様に中型の「VHK1250」と大型「VHK1400K」の2種類があります。どちらもカット方式は2枚の回転刃のみです。

VHK1250
・全長:4,910mm
・機体重量:1,945kg
・1基の鉄枠コンテナを載積可能で、最大積載量は400kg
・作業速度:秒速0.6m
・10a当たりの作業能率は4.0時間
・刈り取り条数1、適応条間600mm以上
・価格:メーカーまたはJAに問い合わせ

VHK1400K
・全長:5,510mm
・機体重量:2630kg
・2基の鉄枠コンテナまたは1基のハーフコンテナを載積可能で、最大積載量は800kg
・作業速度:秒速0.78m
・10a当たりの作業能率は2.0~4.0時間
・刈り取り条数1、適応条間600mm以上
・価格:メーカーまたはJAに問い合わせ


製品ページ:井関農機株式会社「イセキ キャベツ収穫機 VHK1250/VHK1400K」


ヤンマーやクボタの収穫機と同様に、掻き込みホイルにより左右に倒れたキャベツを中央へ掻き寄せながら根を引き抜き、姿勢制御ローラで姿勢を整え、挟持ベルトで角度を調整してから茎葉部分をカットします。カッターは外葉の枚数に合わせて上下に無段階調整ができます。

カットされたキャベツは選別部に送られ、最大3人の補助者が立ったまま調整作業やコンテナ詰めまで行えます。

自動収穫が実用化?! キャベツ収穫機に関する最新動向

上記で紹介した収穫機を利用すれば、かなりの作業省力化が実現できますが、現在ではさらに、AI搭載の自動収穫・運搬ロボットの開発が進められています。

既存のキャベツ収穫機をベースに、オペレーターが行っている運転と、掻き込みホイルや挟持ベルトの調整などの操作を、AIを使ってすべて自動で行うというものです。

収穫機に取り付けた複数のカメラでキャベツを検出し、的確に刈り取ります。この技術を用いれば、熟練のオペレーターと同様の精度で、自動刈り取りができるとのことです。

さらに、収穫したキャベツは後部のコンテナに積み込まれ、コンテナがいっぱいになると無人の自動運搬車が収穫機にドッキングし、満杯のコンテナを空のコンテナと交換してトラックまで運びます。

コンテナの運搬までを自動で行うこのシステムは、JA鹿追町の所有する収穫機をベースとして共同研究機関のオサダ農機が製造し、実演できるところまで進んでいます。ただ、価格などの問題もあり、具体的な実用化はもう少し先になりそうです。

出典:
農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業|人工知能未来農業創造プロジェクト|採択された研究開発計画(園芸)」 所収「露地野菜の集荷までのロボット化・自動化による省力体系の構築」
立命館大学「人手不足がいよいよ深刻な日本の農業 自動収穫・運搬ロボットが救世主となる」(shiRUtoーシルトー2019年2月22日)
株式会社日本経済新聞社「キャベツ収穫は無人ロボットで 農業の人手不足に挑む-編集委員 吉田忠則」(日本経済新聞電子版 2019年12月21日)
株式会社北海道新聞社「先端技術活用 省力化の動き|キャベツ自動収穫機 鹿追で開発進む」(北海道新聞 2021年12月16日 朝刊)

大規模な加工・業務用キャベツ栽培においては、一斉収穫ができるキャベツ収穫機の導入は、かなりの作業効率化やコスト削減を実現できます。

ただし、価格は1,000万円以上と高額であり、導入すればダンボールからコンテナによる運搬への変更や、一斉収穫に適したほ場の整備、品種選択など多くの変更が必要です。導入に当たっては、周囲とも十分に相談し、まずは確実な導入計画の策定を行ってください。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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