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高級食材「サボイキャベツ(チリメンキャベツ)」の栽培方法や特徴・魅力を紹介

高級食材「サボイキャベツ(チリメンキャベツ)」の栽培方法や特徴・魅力を紹介
出典 : daboost / PIXTA(ピクスタ)

近年、西洋野菜は、カフェやレストランで使われるだけでなく、一般家庭でも需要が高まっており、中でも貴重な国産の西洋野菜は高単価で取引されます。その1つである「サボイキャベツ」は、日本でも数種類の種子を入手でき、導入に成功した地域もあって栽培農家が増加しています。

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「サボイキャベツ」は、フランスやイタリアで古くから愛されてきた西洋野菜で、日本では「チリメンキャベツ」とも呼ばれます。この記事では、国産品の需要が見込める西洋野菜として、サボイキャベツの特徴や品種、栽培のポイントなどについて解説します。

高級食材「サボイキャベツ」の特徴・魅力

サボイキャベツ 小ぶりで肉厚 ちりめん状の葉

Caito / PIXTA(ピクスタ)

サボイキャベツはフランスやイタリアが原産で、その変わった名前は、原産地の1つであるフランス・サヴォア地方の地名に由来するとい言われています。日本で親しまれているキャベツとはどう違うのか、まずはその特徴や魅力をまとめます。

サボイキャベツ(チリメンキャベツ)とは?

サボイキャベツは、ヨーロッパではよく親しまれた身近な冬野菜で、フレンチやイタリアンのレシピによく使われます。日本のキャベツよりも小ぶりで、肉厚でちりめん状に縮れた葉が特徴です。日本ではチリメンキャベツとも呼ばれています。

サボイキャベツのロールキャベツ

arfo / PIXTA(ピクスタ)

水分が少なめで、生で食べると葉が硬く苦みがありますが、加熱すると柔らかくなり強い甘みが出ます。

主に加熱調理用に使われ、煮崩れしにくいのでロールキャベツなどの煮込み料理に使われるほか、パスタにもよく合います。煮込むと芯までおいしくなり、捨てるところがないともいわれます。

普通キャベツよりも高価格での取引

フレンチやイタリアンのメニューに使われることから、サボイキャベツは関東圏を中心にレストランやホテル、カフェなどで高い需要があります。

日本では早くから栽培に取り組み、1991年から東京に出荷し始めた宮城県加美町の中新田地区が産地化しています。現在も出荷量は全国一で、その9割が関東圏で消費されるとのことです。

出典:株式会社河北新報社「甘い「サボイ」地元で食べよう 加美のレストラン、農家支援へランチ提供」(河北新報オンラインニュース 2021年2月17日 17:08)

一般的なキャベツと比べて高価で、特に輸入品は重量があるため空輸にコストがかかる分、国産品よりもさらに高値で取引されます。

その結果、流通量が少ない高級野菜とされ、スーパーなどの小売店にはほとんど流通していません。裏を返せば、国産品を安定して生産できれば高い需要が見込めると考えられます。

栽培方法は普通キャベツとほとんど同じ

サボイキャベツの品種「サボイエース」

haru/PIXTA(ピクスタ)

サボイキャベツは基本的に冷涼な気候を好みますが、一般地(平地や暖地)でも栽培できます。キャベツの一種なので、栽培方法は日本の一般的なキャベツを基本として、特徴に合わせて調整していくとよいでしょう。

ヨーロッパだけでなく日本で改良・育成された品種もあり、それぞれ特徴が異なります。全般的に日本の一般的なキャベツよりも寒さに強く、高温多湿の環境に弱いという点で共通しています。また、寒気に当たるほど糖度を増します。

日本でも手に入りやすい品種としては、例えばヨーロッパ在来系で葉のちりめんが強く小ぶりな「シューフリーゼ」、従来のサボイキャベツと比べて大玉で葉のちりめんも大きく緑が濃い「クリスピーノ」などがあります。

また、中早生種では、外葉が濃緑色で球の内部は黄色が鮮やかな「エンペラー」、比較的大きく発芽後の揃い性を高めた多収種「サボイエースSP」などが挙げられます。

いずれも冷涼地では4月下旬~7月中旬に播種し、8月~11月にかけて収穫、一般地では7~8月の夏季に播種し、11~3月にかけて収穫します。品種によっては、温床育苗やトンネル栽培の作型で2~3月の春季に播種し、6月頃に収穫することも可能です。

▼作型・作期の詳細は、各種苗メーカーの製品ページをご覧ください。
株式会社増田採種場「シューフリーゼ(R)(サボイキャベツ)種」
トキタ種苗株式会社「クリスピーノ」
山陽種苗株式会社「エンペラー」
タキイ種苗株式会社「タキイネット通販|キャベツ・サボイエースSP」

サボイキャベツ栽培のメリット

収穫後のサボイキャベツ

kipgodi/PIXTA(ピクスタ)

サボイキャベツには、一般的なキャベツと比較して以下のようなメリットがあります。

・水分が少なく葉が硬いため、貯蔵性が高い
・品種によっては小ぶりで外葉が広がらないため、作業しやすく防虫ネットも崩れにくい
・葉が硬く弾力性もあるため、収穫や輸送の際に傷が付きにくい
・裂球しにくく収穫期の幅が広い
・寒さに強く、霜に当たって外葉が枯れても結球部分は糖度を増し、品質が上がる
・冷涼な気候を好むが、幅広い温度に適応できる

こうしたメリットは品種によって少しずつ異なります。地域の特性や栽培暦に合う品種を選び、メリットを最大限に活かして栽培しましょう。

サボイキャベツ栽培に当たっての注意点

海外のサボイキャベツのほ場 葉枚数展開期

海外のサボイキャベツのほ場 葉枚数展開期
Ajdin Kamber - stock.adobe.com

上述したようにさまざまなメリットがある一方で、サボイキャベツの栽培に当たっては以下のような注意点もあります。

・種子の価格が一般的なキャベツよりも高いので、事前に収支をよく検討する
・生育に個体差があって揃いにくく、一度に収穫できないため、結球したものから順次収穫する
・品種によっては一般的なキャベツよりも外葉が広がり、場所を取る恐れがある
・糖度が高い分、害虫が寄生しやすいので対中防除は必須
・高温多湿を嫌うため、温度・湿度管理が重要
・肥料を多く必要とするため、生育の状況を見ながら施肥を十分に行う

これらの注意点も品種によって異なり、外葉の広がらないものや生育が揃うように改良されたものもあります。それぞれの特徴も考慮しながら、一般的なキャベツと同様に適切な栽培管理に努めましょう。

サボイキャベツの栽培方法

海外のサボイキャベツほ場 収獲期

海外のサボイキャベツほ場 収獲期
JackF/PIXTA(ピクスタ)

ここでは、サボイキャベツの具体的な栽培方法について解説します。なお、栽培例が少ないため、基本的には一般的なキャベツの栽培方法に準じます。

播種・育苗

地域の気候と品種によって、播種の時期を決めます。定植から収穫までの日数の目安は、早生種は110日程度、中生種は140~150日、晩生種は160~180日です。定植日を決め、そこから逆算して4~6週間前に播種をします。春播きは2月前後に、夏播きは7~8月を目安にしましょう。

ポットに5~6粒播種し、発芽したら3本に間引きし、本葉が3~4枚となるまでに1本にします。本葉5~6枚になったら定植時期です。

高温期の育苗となる夏播きの場合は、適温である20℃前後を保ち、遮光ネットを利用したり通気性をよくしたりして高温・多湿にならないよう管理することが、健苗育成の重要なポイントです。灌水は控えめにし、徒長に注意します。

土作り

定植するほ場には、軽くて緩く、酸性度の低い土壌が適しています。また、サボイキャベツは多湿環境を嫌うため、陽当たりや水はけのよいほ場を選びましょう。

植え付け2週間前には、10a当たり100~150kgを目安に石灰を混ぜ込み、土の酸度はpH6.5前後に調整します。1週間前になったら10a当たり堆肥2t、化成肥料100kgを目安に溝施肥をし、畝立てをします。

定植

定植は涼しくなった夕方に行い、株間は40~45cmを目安にします。定植適期を過ぎないように、やや若苗~適期の苗を植え付けましょう。植穴にもたっぷり水を注ぎ、植えたあとにも十分に灌水します。

特に夏播きの場合は害虫が寄生しやすいので、防虫トンネルで害虫の侵入を防ぎましょう。定植直後にトンネル支柱を立て、トンネル用防虫ネットを張り、サイドに土を盛ってふさぎます。

防虫ネットトンネル(普通のキャベツ)

防虫ネットトンネル(普通のキャベツ)
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

灌水・追肥

基肥と追肥は2:1の配分として、定植から3週間頃、本葉10枚ほどになったら畝間や株間に化成肥料を施用します。同時に、中耕・除草を兼ねて株元に土寄せします。

様子を見て、必要があれば2週間後に追肥してもよいでしょう。その1ヵ月ほどあと、結球し始める頃に2回目の追肥と土寄せを行います。

十分に活着するまでは、灌水の管理は慎重に行い、極端な乾燥や過湿を避けましょう。灌水は表面が乾燥しない程度にします。また、結球を大きくするには、こまめに除草を行うことも大切です。

収穫

サボイキャベツの葉が大きくなり防虫ネットに接するくらいになってきたら、防虫ネットを取り外します。結球部分を押してみて弾力を感じるようなら収穫できます。

気温によって収穫時期は変動しますが、品種の早晩性に応じた定植から収穫までの期間を目安に、適期を見極めましょう。サボイキャベツは裂球しにくく、収穫期間に幅はありますが、あまり長く放置するととう立ちするので注意してください。

収穫期のサボイキャベツ

turiganesou / PIXTA(ピクスタ)

サボイキャベツで注意すべき病害虫と防除対策

最後に、サボイキャベツ栽培で注意すべき病害虫と、その防除対策について解説します。病害虫防除についても、一般的なキャベツと同様に考えるとよいでしょう。

なお、サボイキャベツには、適用作物名がキャベツで登録のある農薬が使用できます。ここで紹介する農薬は2022年10月10日現在登録のあるものです。実際の使用に当たっては、ラベルをよく読み使用方法を守ってください。

べと病

サボイキャベツ栽培で特に注意すべき病害は「べと病」です。育苗期から結球期まで発生に注意が必要で、10~15℃の低温で雨が続くと発生しやすくなります。

キャベツの葉表に見えるべと病の病斑

キャベツの葉表に見えるべと病の病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

キャベツの葉裏に見えるべと病の病斑

キャベツの葉裏に見えるべと病の病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

発病すると外葉や下葉、まれに結球部分にも淡黄褐色や黒褐色の不定形な病斑を生じ、病斑部には白っぽい霜状のカビが生えます。過灌水を控え、風通しをよくすることで発生しにくくなります。

農薬では、「ジマンダイセン水和剤」や「ダコニール1000」、「オロンディスウルトラSC」など有効なものが多数あります。

害虫

害虫では、アブラナ科共通の害虫である「アオムシ(モンシロチョウの幼虫)」に葉を食害されたり、「ヨトウムシ」に茎元を食害されたりして、収量の低減につながることもあります。

防虫ネットによるトンネルも有効ですが、侵入を許すと中で繁殖してしまうこともあります。特にヨトウムシに関しては、幼虫が地面を這ってくることもあるので、防虫ネットは上部だけでなく、周囲に土を盛ってしっかりふさぐことが重要です。

葉に食害痕を見つけたら、葉の裏表や株元を確認し、害虫を見つけて種類を特定したのち、できる限り捕殺するとともに、早めに適した農薬を使用することが大切です。ヨトウムシ類は日中、株元や葉の付け根などに潜っていて見つけにくいので、被害葉の周囲をよく探しましょう。

キャベツに寄生したアオムシの老齢幼虫

アオムシの老齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ヨトウムシの老齢幼虫(体長20mm)

ヨトウムシの老齢幼虫(体長20mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

有効な農薬としては、アオムシやヨトウムシをはじめ、蛾や蝶になる多くの害虫に効果のある「ゼンターリ顆粒水和剤」や、同じくアオムシ・ヨトウムシ・コナガ・タマナギンウワバを同時防除できる「ベニカS乳剤」が挙げられます。

フレンチやイタリアンで使われる西洋野菜

Beton Studio / PIXTA(ピクスタ)

サボイキャベツは食の多様化に伴って、今後も需要が見込める作物です。栽培方法もキャベツと大きな違いはないので、西洋野菜の中でも比較的取り組みやすいでしょう。

ただし、高温多湿に弱いので、高温・多雨な日本の環境では十分な対策が必要です。サボイキャベツを栽培する際は参考にしてください。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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