新規会員登録
BASF We create chemistry

小規模事業者持続化補助金は農業でも使える? 申請方法や採択事例を紹介

小規模事業者持続化補助金は農業でも使える? 申請方法や採択事例を紹介
出典 : kou / PIXTA(ピクスタ)

直販による販路拡大やITツールの導入など、事業規模拡大または作業効率改善に取り組むには資金が必要です。その際に頼りになる補助金として小規模事業者持続化補助金が挙げられます。この記事では小規模事業者持続化補助金の概要を紹介します。

  • 公開日:

記事をお気に入り登録する

農業経営をアップデートさせるため、ドローンなどのIT技術を活用した作業効率化や、ECサイトを立ち上げてて消費者への直販を始めたいと考えている方もいるでしょう。

しかし、新しいことにチャレンジするには資金が必要で、自己資金だけでは足りない場合は融資や補助金を検討するでしょう。

この記事では農業者の利用実績もある小規模事業者持続化補助金の概要と実際の活用事例を紹介します。

小規模事業者持続化補助金は農業でも使える!

小規模事業者持続化補助金の使いみち オンラインショップの構築

モンキチ / PIXTA(ピクスタ)

小規模事業者持続化補助金は、常時使用する従業員数が一定以下(業種によって異なる)の小規模事業者の販路拡大や生産性向上のための取り組みを支援する制度です。

対象となる業種は幅広く、農業でも要件を満たせば申請できます。ただし、申請しても審査に通らなければ補助金は交付されません。

2022年の第9回公募分は申請数11,467件に対して7,344件(採択率約64%)となっています。第8回公募分の採択率が約63%(申請数11,279件、採択数7,098件)だったことからも、要件を満たして申請をした人でも3~4割程度が審査に落ちていることがわかります。

出典:中小企業庁「令和元年度補正予算・令和3年度補正予算「小規模事業者持続化補助金」の「一般型(第9回締切分)」の補助事業者が採択されました」

農業事業者が活用する場合の要件

直販を検討する農家

tsukat / PIXTA(ピクスタ)

農業で小規模事業者持続化補助金を申請する際の要件は以下の通りです。

・常時使用する従業員の数が20人以下
・資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%株式保有されていない(法人のみ)
・直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていない
・受付締切日の前10ヵ月以内(採択日から起算)に、持続化補助金(一般型、低感染リスク型ビジネス枠)で採択されていない

なお、系統出荷の収入のみである個人農業者は対象外です。そのため、出荷先がJAのみの農家は上記の要件を満たしていても申請できません。

出典:全国商工会連合会「商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」 所収「令和元年度補正予算・3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領」

【申請類型別】補助金の上限・補助率

小規模事業者持続化補助金には全部で6つの申請類型があります。それぞれの類型の概要および補助率・補助額上限は以下の通りです。なお、申請は通常枠・特別枠のいずれか1枠のみです。

申請類型別 補助金の上限 補助率

出典:全国商工会連合会「商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」 所収「令和元年度補正予算・3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領」

補助対象となる経費

ドローン 農薬散布

ソライロ / PIXTA(ピクスタ)

小規模事業者持続化補助金で対象になる経費は以下の11項目です。

・機械装置等費
・広報費
・ウェブサイト関連費
・展示会等出展費
・旅費
・開発費
・資料購入費
・雑役雑費
・借料
・設備処分費
・委託・外注費

具体的には、販路拡大や作業効率向上を目的とする「ユニットハウスの購入」「ECサイトの構築」「ドローンの導入」「チラシの作成」などが補助対象です。

一方で、汎用性が高く目的外使用になりえるものの購入については補助対象として認められません。例えば、車やオートバイ、自転車といった車両や文房具、パソコンの購入費用などが該当します。ただし、パソコンに関しては本体そのものではなく、ソフトウェアの導入であれば補助対象となる場合もあります。

出典:全国商工会連合会「商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」所収「令和元年度補正予算・3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領」

小規模事業者持続化補助金の申請方法

小規模事業者持続化補助金 申請

w_stock / PIXTA(ピクスタ)

小規模事業者持続化補助金の申請をするために必要な書類や申請の流れについて紹介します。

申請に必要な書類

小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類は以下の通りです。

・小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書[原本]※電子申請の場合は不要
・経営計画書兼補助事業計画書[原本]
・補助事業計画書[原本]
・事業支援計画書[原本]
・補助金交付申請書[原本]※電子申請の場合は不要
・宣誓・同意書[原本]
・電子媒体※電子申請の場合は不要

上記に加えて、法人は「貸借対照表および損益計算書(直近1期分)[写し]」と「株主名簿[写し](経営計画書兼補助事業計画書の「確認事項」欄に出資者の名称、出資比率が記載されていない場合)」が必要です。

個人は「直近の確定申告書【第一表及び第二表及び収支内訳書(1・2面)または所得税 青色申告決算書(1~4面)】(税務署受付印のあるもの)または開業届(税務署 受付印のあるもの)[写し]」が必要になります。

また、希望する類型によっては追加資料が必要だったり、提出することで加点されたりする書類があります。例えば、賃金引上げ枠の申請では上記の書類とは別に「賃金引上げ枠の申請に係る誓約書[原本]」「労働基準法に基づく賃金台帳[写し]」の提出が必要です。

さらに、赤字事業者として補助率3/4を希望するのであれば、「直近1期に税務署へ提出した税務署受付印のある、法人税申告書の別表一・別表四[写し]」も提出しなければいけません。

申請書類の不備を防ぐためにも、希望する類型にはどのような提出書類があるのかを事前によく確認しておくことが大切です。

出典:全国商工会連合会「商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」 所収「令和元年度補正予算・3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領」

申請の流れとスケジュール

小規模事業者持続化補助金の流れは以下の通りです。

1. 書類を準備して電子または郵送により申請手続きをする
2. 申請内容の審査が行われ、採択の結果が通知される(採択決定者には応募時に提出した「補助金交付申請書」に不備がなければ「交付決定通知書」で通知)
3. 申請時に提出した補助事業計画に沿って申請者が補助事業を実施する
4. 実績報告書を提出する
5. 事務局の確定検査後、補助金額が確定する
6. 「補助金確定通知書」が送付されるので、精算払請求を行って補助金を事務局に請求する
7. 補助金が入金される
8. 「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を文書等で提出し、事業効果報告を行う


公募締切日から審査・交付決定までは2ヵ月程度かかり、事業実施期間は交付決定日から6ヵ月程度です。

実績報告書の提出期限は、「補助事業終了後、その日から起算して30日を経過した日」または「最終提出期限(事業実施期間終了日から10日程度)」のいずれか早い日(必着)となっています。

なお、公募の実施回数は年4回程度です。2022年度の実績は、第8回2022年6月3日(以下、申請受付締切日)、第9回2022年9月20日、第10回12月9日で、第11回は2023年2月20日でした。

令和4年度第2次補正予算分の詳細については、2023年2月20日時点では「準備が整い次第、公募を開始」となっています。

出典:
全国商工会連合会「商工会議所地区 令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」 所収「令和元年度補正予算・3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック」
独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業生産性革命推進事業」ホームぺージ 「持続化補助金」の項所収「チラシ(令和4年12月時点)」

小規模事業者持続化補助金の計画作成のポイント

小規模事業者持続化補助金は審査があるので、申請条件を満たしていても必ず補助金を受け取れるわけではありません。そのため、補助金を受けるには的確な書類を作成することが大切です。

ここでは、小規模事業者持続化補助金において特にハードルが高くなりやすい経営計画と補助事業計画書を作成する際のポイントを紹介します。

経営計画の書き方

顧客ニーズや自社の強みや競合を分析するさまざまなフレームワーク

tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

経営計画書に記載する項目は「企業概要」「顧客ニーズと市場の動向」「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」「経営方針・目標と今後のプラン」の4つで、書き方の指定は特にありません。また、写真や表を使用することも認められています。

書類を作成する際のポイントは、事業の強みを客観的な数値や画像などを用いて誰がみてもわかりやすくアピールすることです。

例えば、「企業概要」「顧客ニーズと市場の動向」「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」では、写真や表を活用することで文字だけでなく視覚的にもわかりやすくなります。

そのうえで、「経営方針・目標と今後のプラン」で具体的な売上目標や来店人数などを記載すれば、より説得力のある計画書ができあがります。

補助事業計画書の書き方

わかりやすい計画書

雪空 / PIXTA(ピクスタ)

補助事業計画書では、「補助事業で行う事業名」「販路開拓等(生産性向上)の取組内容」「業務効率化(生産性向上)の取組内容(任意記入)」「経営方針・目標と今後のプラン」の4つを作成します。

こちらも記述内容は自由なので、補助事業で行う事業内容とその効果を写真や表を用いて、わかりやすく説明することがポイントです。

経営計画書との一貫性を意識して、補助事業の具体的な取り組み内容と期待される効果を記載します。

例えば、「販路開拓等(生産性向上)の取組内容」では新しい事業内容の詳細だけでなく、「これまで行ってきた事業との違いや特徴、創意工夫した点」を掘り下げて記載すると期待される効果が客観的にわかりやすくなります。

経営継続補助金の公募は終了

小規模事業者持続化補助金に類似した制度として、以前は「経営継続補助金」もありました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者が感染拡大防止対策を行いつつ、販路回復・開拓などで必要になる機械・設備の導入や人手不足解消の取り組みを総合的に支援するものです。

しかし、経営継続補助金は令和3年2月2日に選定された2次募集の交付対象者を最後に公募が終了しています。販路拡大に関係する補助金を探している方は、小規模事業者持続化補助金の活用を検討してください。

農業での持続化補助金の活用事例

最後に、農業で実際に小規模事業者持続化補助金を活用できた事例を紹介します。

古川農園|増える水田に悩む農家が水管理システムを導入

古川農園が導入した「paditch」

出典:株式会社PR TIMES(株式会社笑農和 プレスリリース 2019年8月26日)
古川農園が導入した「paditch」

静岡県袋井市で水稲栽培を営む古川農園は地域の高齢化もあって近隣農家からの作業委託が増加し、適正な作業量を超えつつあることが問題になっていました。そこで、作業の効率化を考え導入したのが、ITを活用した水管理システムです。

スマートフォンやパソコンから水位や水門の状態を把握し、水門の開閉までできる水管理システムの「paditch」を導入したことで、分散する水田の水管理の効率化をめざしました。

その結果、当初からの目標である「管理時間2分の1削減」の見込みが立つほど、作業効率改善に効果があったとのことです。

出典:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus「米作りの肝である水管理を、IoTを使ってセンシング&自動化」

平田観光農園|コロナで打撃をうけた観光農園が「動画」でのコト消費を企画

販路拡大に貢献した農家の取り組みとしては、広島県で観光農園を営む平田観光農園が挙げられます。

平田観光農園はりんごやイチゴ、サクランボなど14種の果樹を栽培し、一年を通じてフルーツ狩りができる農園として有名でした。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響によって、観光客の来園が途絶えてしまいます。

そこで、新しい取り組みとしてチャレンジしたのが、イチゴと動画をセットにした「自宅でイチゴ狩りを楽しめるキットの開発およびEC販売」です。

いわゆる「巣ごもり体験」ができるキットは発売当時の目新しさもあり、メディアに多数取り上げられました。その結果、イチゴの在庫がなくなるほどの人気となってコロナ禍で苦しむ売り上げに貢献したのです。

同社では今回の経験によって、動画を活用したさまざまな体験を楽しめるコト消費の重要性を認識し、今後に活かすとしています。

平田観光農園温来ショップ「巣ごもりジャム作り【いちご】 おしゃれなWECK瓶セット」

出典:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus「動画+宅配の体験サービス迅速に提供」

▼平田観光農園のインタビュー記事も是非ご覧ください。

小規模事業者持続化補助金は、販路拡大や生産性向上のための用途であれば農家でも申請できます。ただし、申請に当たっては収入が系統出荷のみの農家は対象外などの細かい要件があるので、事前によく確認しておくことが重要です。

上手く活用できれば最大200万円の補助金が受け取れるので、新しい取り組みにチャレンジしようと考えている方は申請を検討してみてはいかがでしょうか。

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

よろしければ追加のアンケートにもご協力ください。(全6問)

農地の所有地はどこですか?

栽培作物はどれに該当しますか? ※販売収入がもっとも多い作物を選択ください。

作付面積をお選びください。

今後、農業経営をどのようにしたいとお考えですか?

いま、課題と感じていることは何ですか?

日本農業の持続可能性についてどう思いますか?(環境への配慮、担い手不足、収益性など)

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

おすすめ