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【2023最新】イチゴの生産量ランキング! 日本一の産地が立てる戦略とは?

【2023最新】イチゴの生産量ランキング! 日本一の産地が立てる戦略とは?
出典 : 蕎麦喰亭/PIXTA(ピクスタ)

イチゴの主要産地は栃木県・福岡県・熊本県・愛知県・静岡県・長崎県で、この6県だけで全国の収量・出荷量の約半分を占めます。本記事では、2022年産イチゴの生産出荷統計をもとに、最新の生産量ランキングとイチゴ栽培の最新事情をご紹介します。

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イチゴは、ハウス栽培のものが冬から春にかけて旬を迎え、全国の産地から集まったさまざまな品種が青果店やスーパーの店頭に並びます。各イチゴ産地では毎年のように新品種が登場し、品種・産地間で品質や生産量アップの熾烈な競争が繰り広げられています。

主要品種も! 都道府県別・イチゴの生産量ランキング【2024最新】

まずは農林水産省による2022年産作況調査の「野菜生産出荷統計」をもとに、イチゴの生産量(収穫量)の全国合計および都道府県ランキングトップ10を見てみましょう。

順位県名収穫量構成比作付面積構成比
1位栃木県2万4,400t15.1%505ha10.4%
2位福岡県1万6,800t10.4%425ha8.8%
3位熊本県1万1,700t7.3%293ha6.0%
4位愛知県1万600t6.6%251ha5.2%
5位静岡県1万400t6.5%293ha6.0%
6位長崎県1万300t6.4%257ha5.3%
7位茨城県9,300t5.8%239ha4.9%
8位千葉県7,280t4.5%220ha4.5%
9位佐賀県6,720t4.2%157ha3.2%
10位宮城県4,870t3.0%136ha2.8%
その他4万8,730t30.2%2,074ha42.8%
全国計16万1,100t100.0%4,850ha100.0%

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)」の「令和4年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

イチゴの収穫量トップ10の県で全体の7割弱を占めています。また、収穫量が1万t以上の6県で、全体の52%を占めています。収穫量トップ5の産地について、生産状況を見てみましょう。

【イチゴ生産量:第1位】 栃木県

栃木県では1月15日を「いちご王国・栃木の日」としてプロモーションを行っている

出典:株式会社PR TIMES(栃木県農政部経済流通課 プレスリリース 2022年1月15日)
栃木県では1月15日を「いちご王国・栃木の日」としてプロモーションを行っている

2022年産イチゴの生産量第1位の栃木県は、今回で1968年産以降55年連続収量1位の座に輝き、作付面積でも2001年産以降22年連続で1位を守っています。「いちご王国・栃木」としてキャラクターやアンバサダーを起用し、PR活動もとても積極的です。

出典:栃木県庁「全国のいちご生産割合」

県内では、すべての市町でイチゴが生産され、県の中南部が一大産地となっています。中でも真岡市・栃木市・鹿沼市・壬生町・宇都宮市などの市町が、作付面積の大きい主要な産地です。

また、栃木県では品種改良も盛んで、多くのオリジナル品種が育成されています。全国No.1のシェアを持つ主力品種の「とちおとめ」をはじめ、期待の新品種「とちあいか」「スカイベリー」や、白いイチゴの「ミルキーベリー」、夏に収穫できる「なつおとめ」などの品種を主に栽培しています。

【イチゴ生産量:第2位】 福岡県

福岡県とJA全農ふくれんは、「博多あまおう」の本格的な生産販売開始から20年を記念し、『「博多あまおう」20周年プロモーション』を実施している

出典:株式会社PR TIMES(JA全農ふくれん プレスリリース 2022年11月15日)
福岡県とJA全農ふくれんは、「博多あまおう」の本格的な生産販売開始から20年を記念し、『「博多あまおう」20周年プロモーション』を実施している

福岡県は、10a当たりの収量は3,950kgと8位に甘んじていますが、作付面積は425haと3位以下を大きく上回り、3位となっています。

主要品種は「あまおう」です。近年、イチゴの品種は大粒のものが主流になっていますが、その先駆けともいえる「あかくて、まるくて、おおきくて、うまい」福岡が誇る人気品種です。

「あまおう」は他県でも栽培されていますが、福岡県では育成地として他所との差別化を図るため、「博多あまおう」のブランド名で販売しています。2023年は「博多あまおう」20周年ということで、福岡県やJA全農ふくれんが主体となって大々的にキャンペーンが行われました。

県内の主なイチゴ産地は、八女市、久留米市、広川町などです。

【イチゴ生産量:第3位】 熊本県

2021年12月、「JA全農の産直通販JAタウン」に熊本県産の「ゆうべに」と「恋みのり」を食べ比べできる商品が登場

出典:株式会社PR TIMES(JA全農の産直通販JAタウン プレスリリース 2021年12月15日)
2021年12月、「JA全農の産直通販JAタウン」に熊本県産の「ゆうべに」と「恋みのり」を食べ比べできる商品が登場

熊本県の主要品種は比較的新しい「ゆうべに」や「恋みのり」、白い品種の「淡雪」などです。

「ゆうべに」は2015年、100年に一度しかない「15(イチゴ)」イヤーに誕生した、食味がよく中まで赤いのが特長の熊本県のオリジナル品種です。熊本県産イチゴの主力品種として、マスコットキャラクターやおなじみの「くまモン」が盛り上げています。

また、「淡雪」は、発祥地である鹿児島県志布志市で品種登録されましたが、熊本県内の多くの農家が生産しています。

県内の主なイチゴ産地は、玉名市、宇城市、阿蘇市、八代市などで、平たん地から中山間地までさまざまな地域でイチゴ栽培が行われています。

【イチゴ生産量:第4位】 愛知県

2021年の2月から3月にかけ、名古屋プリンスホテル スカイタワーで、「ゆめのか」「章姫」など愛知県産のイチゴを使ったスィーツのフェアが実施された

出典:株式会社PR TIMES(株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド プレスリリース 2021年1月6日)
2021年の2月から3月にかけ、名古屋プリンスホテル スカイタワーで、「ゆめのか」「章姫」など愛知県産のイチゴを使ったスィーツのフェアが実施された

温暖な東海地方からランクインしたのは愛知県です。作付面積は251haと、同じ東海地方の静岡県(293ha)を下回りますが、10a当たり収量が4,230kgという生産性の高さで4位の座に輝きました。

冬も日照量が多いことにより、厳冬期であっても糖度の高いイチゴ栽培が可能となっています。

愛知県で生産されているイチゴは、主に「とちおとめ」「章姫」「紅ほっぺ」「ゆめのか」などです。このうち「ゆめのか」は、2007年に品種登録された愛知県のオリジナル品種で、やや大粒のジューシーな実が特長です。

2022年9月には、ゆめのか以来15年ぶりに愛知県発の新ブランド「愛きらり」が商標を取得しました。イチゴ農家や関係団体が立ち上げた「愛知県いちご新品種ブランド化推進協議会」が、PRや需要拡大に向けた取り組みを進めています。

県内の主なイチゴ産地は、愛西市・豊橋市・西尾市・豊川市・蒲郡市・岡崎市などで、県内一帯でイチゴが栽培されています。

【イチゴ生産量:第5位】 静岡県

株式会社銀座コージーコーナーは、2024年3月4日(月)から、全国の生ケーキ取扱店で、せとか、きらぴ香苺、紅ほっぺ苺を使用した3種類のスイーツを販売

出典:株式会社PR TIMES(株式会社銀座コージーコーナー プレスリリース 2024年3月1日)
株式会社銀座コージーコーナーは、2024年3月4日(月)から、全国の生ケーキ取扱店で、せとか、きらぴ香苺、紅ほっぺ苺を使用した3種類のスイーツを販売

静岡県は、作付面積・収量ともに前年並みをキープし、5位にランクインしました。温暖な気候と適度な降水量がある静岡県のイチゴの主な産地は、伊豆の国市・函南町・三島市・裾野市が知られています。

栽培品種は、1951年の「マーシャル」から、「ダナー」、「春の香」、「宝交早生」、「アイベリー」、「女峰」、「章姫」へと移り変わってきました。

2003年以降は、県農林技術研究所が育成した「紅ほっぺ」の栽培が主流となり、2012年からは、同じく県が育成した新品種「きらぴ香」の試験栽培が始まりました。2023年時点で「きらぴ香」の栽培面積は約5haに達しています。

▼いちごの品種選定については以下の記事をご覧ください

世界と比較すると? 生産量と栽培面積から見る、国内イチゴの現状

日本のイチゴは、世界中でも「おいしくて甘い」と品質の高さが評価され、シンガポールや台湾など富裕層からも好まれています。しかし、世界市場の中で見れば、日本のイチゴのシェアはまだ低い状況です。世界から見た日本のイチゴ事情について解説します。

出典:独立行政法人農畜産業振興機構 「月報 野菜情報 今月の野菜 いちご 2018年12月」

日本全体のイチゴ生産量と近年の推移

農林水産省の「野菜生産出荷統計」からイチゴの「作付面積、収穫量及び出荷量累年統計」をもとに、1980年代以降の生産量の推移を見てみましょう。

イチゴの収穫量と作付面積の推移

出典:農林水産省「作物統計|作況調査(野菜)」の「長期累年」「令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部が作成

作付面積は1980年から2015年までは減少の一途をたどる一方でしたが、2015年以降は減少が緩やかになっています。

収穫量は1980年から1990年まで増加し、その後減少しましたが、2015年以降は一定の増減を繰り返しながら微増しています。

反収あたりの収穫量は増加しているため、イチゴの収穫量は一定の範囲で維持されており、その背景には品種改良や生産技術の向上があると考えられます。

一方、家計調査によれば、イチゴを含めて青果全体の国内消費量は減少傾向にあるものの、ほかの果物と比較するとその下げ幅は緩やかです。また、コロナ禍で家庭内の食料品消費が増えたこともあり、イチゴは比較的安定した需要が見込めます。

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構 令和3(2021)年の生鮮野菜の消費動向(令和3年1-12 月家計調査)

世界一の産地は? イチゴ生産量の国別ランキング

2022年の国別イチゴ生産量のランキングは次のとおりです。

2022年 世界のイチゴ生産量

順位国名生産量構成比
1位中国335万t35.0%
2位アメリカ126万t13.2%
3位トルコ73万t7.6%
4位エジプト64万t6.7%
5位メキシコ57万t6.0%
11位日本16万t1.7%

出典:栃木県庁HP「世界のいちご生産」

中国が335万tで1位、アメリカがその半分以下の126万tで2位、3位がトルコの73万t、4位がエジプトの64万t、5位がメキシコの57万tと続きます。日本は16万tで世界第11位、シェアはわずか1.7%です。

日本のイチゴが品質で高い評価と人気を得ながらも、シェアが伸びない事情には、マーケティングの弱さや、日本のイチゴが柔らかく、長期の輸送が難しいことなどが挙げられます。

また、日本産のイチゴが海外でも産地別に対立し、ブランド別に売り込むため全体のアピール力が劣ってしまう、といった事情もあります。今後、輸出量を伸ばしていくには、これらの課題解決が重要です。

一方、国内でも近年、輸入イチゴを見かけるようになりました。生鮮イチゴの輸入は、国内産イチゴの生産が減少する夏から秋の時期に見られ、ほとんどがアメリカから、そのほかオランダや韓国からも輸入されています。

また、加工用原料として輸入される冷凍イチゴは約半分が中国産となっています。

ただし、輸入品に対して品質面での不安があるため、夏場も国産へのニーズが高まっています。近年は日本でも「なつおとめ」や「すずあかね」など、夏に収穫できる「夏秋イチゴ」の品種開発が進んでおり、需要に応えています。

「夏秋イチゴ」は需給バランスにより単価が高いうえ、ケーキ店・アミューズメントパークなど業務用での安定した需要があるため、収益性も高く注目されています。

出典:栃木県庁HP「いちごの輸入」

日本一の産地に学ぶ! イチゴ生産量を増やす“3つの工夫”とは?

イチゴ栽培 消費者 子供

Fast&Slow/ PIXTA(ピクスタ)

今後イチゴの生産量を増やし、国内のほかの産地や世界の産地にも負けない産地・農家となるためには、品質の高さだけに頼らず、地域ぐるみで一体となったマーケティングへの取り組みが必要です。

参考事例として、日本一の産地である栃木県で行われている取り組み例を3つご紹介します。

「とちおとめ」から「とちあいか」へ! 新時代を担う品種への切り替え

栃木県産「とちあいか」

Taisuke / PIXTA(ピクスタ)

栃木県では、これまでイチゴ生産全国トップの座を支えてきた主力品種「とちおとめ」の生産量を減らし、新品種「とちあいか」への切り替えが進んでいます。

その背景には、「とちあいか」は「とちおとめ」と同じ面積で作付けした場合、生長が早いうえに1.3倍も多く収穫できるという生産性の高さがあります。

生産農家の収益向上をめざし、食味に優れ、断面が「ハート形」に見えることから見た目もよい「とちあいか」を今後、栃木県の主力品種とするという県の意向を受け、県全体で「とちおとめ」の生産を減らしているとのことです。

このように、県がブランドの方向性を決め、主力品種の減産というリスクを負ってでも個々の農家が力を合わせて生産を調整していくことが、強いブランド力を維持する秘訣の1つといえるでしょう。

SNSを上手に活用! 積極的なプロモーションで消費の拡大を狙う

SNS プロモーション

metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

今や商品のプロモーションには、SNSやホームページなどインターネットの活用が欠かせません。

消費量拡大を狙い、栃木県は「いちご王国」を名乗って専用のホームページを作成するとともに、FacebookやInstagramにもアカウントを持って、積極的に情報を配信しています。

王国内には独自のキャラクターがいて、栃木県のイチゴ生産の歴史を「王国の歴史」として紹介したり、県内産地を「王国のパートナー」と紹介したり、就農相談や農場試験場の研究も王国を通して紹介したりするという徹底ぶりです。

それと並行して、「いちご王国・栃木」検定の創設や、王国産イチゴを使ったスイーツコンテストの開催、さらに王国の新名物として「いちごナポリタン」のパスタソースを作成し、ふるさと納税の返礼品とするなど、さまざまな方法でPRを進めています。

かつて香川県が「うどん県」として知名度アップに成功したように、県全体の徹底したプロモーションで栃木県を「いちご王国」として売り出し、メディアにも少しずつ取り上げられるなど成果を上げています。

農業大学校に「いちご学科」を新設! イチゴ農家の育成基盤も整備

「いちご王国」の活動は、消費者に向けたPRだけに限りません。2021年に栃木県農業大学校に日本初の「いちご学科」を新設し、イチゴ生産の担い手育成を推進しています。

また、イチゴ生産の研修や体験、移住支援なども含めた就農希望者へのサポートも充実させ、イチゴ農家を増やすための取り組みを積極的に行っています。こうした、後継者の育成も含めた地域での取り組みは、今後ますます重要となると考えられます。


日本国内で青果の消費が全体的に落ち込む中、イチゴはニーズに合わせた品種改良が各産地で行われていることもあり、比較的需要が安定しています。各産地が競争の中で互いに品質や生産方法を磨き向上させてきた、という経緯もあります。

今後は国際市場への進出や、イチゴそのものの消費拡大をめざし、産地を越えて農家が手を取り、協力し合うことも大切です。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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