みかんのそうか病対策は?農薬や被害にあった際の防除方法
カンキツそうか病は枝や葉に付着した糸状菌が原因で発症し、適切な防除を行わず放置すると二次感染を繰り返し被害が広がります。特に温州みかんや柚子に発生しやすい病害です。果実に発症した場合は見た目を損ない、商品価値が大きく低下します。
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みかん栽培で発生するカンキツそうか病は、葉や果実にいぼ状またはかさぶた状の病斑を発生させる病害です。本記事ではカンキツそうか病の原因と発生しやすい条件に加え、適切な防除方法とそのタイミング、おすすめの農薬について紹介します。
カンキツそうか病とは
Shii / PIXTA(ピクスタ)
カンキツそうか病とは、みかんなどの柑橘類が被害を受ける病害の一種で、糸状菌によって引き起こされます。
糸状菌(学名:Elsinoë fawcettii Bitancourt et Jenkins)を病原菌とし、特に温州みかんは被害を受けやすい病害です。温州みかんのほか、レモンなどで多く発生しますが、夏みかん、はっさく、甘夏、伊代柑などはあまり被害にあいません。
カンキツそうか病の「そうか」は漢字で瘡痂(かさぶたの意)と書き、果実、葉や枝にかさぶた状の病斑が生じることからきているようです。
ただし、病斑はかさぶた状だけでなく、葉や果実の組織が若い時期(葉:長さ約5cmまで、果径:4〜10cmまで)には、いぼ状の特徴的な病斑がみられます。なお、枝の病斑はそうか型のみです。
それ以降の生育段階で感染すると菌密度が高まり、密集したいぼ状の感染部位が変色し、かさぶた状になる「そうか型」の病態を発症します。
そうか病の被害
カンキツそうか病は、葉と果実のほか枝にも発症しますが、それぞれ生育阻害や収量減につながる被害をもたらします
葉に発生した場合は、円形の直径1mmほどの水浸状または黄色の小斑が発生し、病斑が多発すると奇形葉が出現し、落葉します。
幼果のときに感染が拡大した場合は、果実の大部分が落果してしまいます。その後も、肥大を阻害し病斑が残るため、品質への影響は免れません。
枝に感染した場合は「そうか型」のみを発症します。感染を広げず、翌年に持ち越さないために、剪定による切除が必要です。
そうか病の原因
カンキツそうか病の病斑が現れた枝や葉で病原菌が越冬すると、翌年以降の1次感染源となります。
春先の雨や露によって3時間ほど濡れた状態が継続すると胞子が形成されます。胞子は雨滴によって飛散し、若い葉や果実に運ばれます。
若い葉に付着した胞子は5日間ほど潜伏して発病します。果実に付着した場合は葉に比べて潜伏期間が長く、10〜15日ほどで発病します。
新しくできた病斑からまた分生子がつくられ、周囲の葉や果実に感染していきます(2次感染)。
カンキツそうか病が発生しやすい条件
Yoshi / PIXTA(ピクスタ)
カンキツそうか病は、10年生くらいまで若い樹に発生します。1年のなかで感染が広がりやすい時期は以下の通りです。
春葉への感染がおきるのは、発芽期から6月上旬ごろまでで、特に展葉初期に当たる4~5月に雨が多く、日照不足と低温が続くと発生しやすくなります。
果実への感染は、落花期以降から9月上旬まで見られ、主な感染時期は5月中旬から7月下旬にかけてです。幼果期が最も感染しやすく、肥大して以降の感染は小さな病斑が出るのみであまり大きな症状はでません。
いずれも、胞子の付着後に多湿条件が続くと感染拡大のリスクが高まります。そのほか、発生を助長する条件として、枝葉が軟弱になることが挙げられ、適切な施肥管理、排水対策、整枝・剪定が求められます。
カンキツそうか病の耕種的防除
pu- / PIXTA(ピクスタ)
カンキツそうか病は、苗木から約10年ほどは発病リスクが高いため、新植・改植の際は、そうか病が発病していない苗木を入手します。
前述したように、カンキツそうか病の病原菌は、病斑上で越冬し、翌シーズンの感染源となります。
まず、病斑のある枝葉は可能な限り切除して、菌密度を減らすことを心がけます。定期的な園地見回りを行い、発病した枝葉は見つけ次第取り除くようにしてください。
そして、病原菌が繁殖しづらい環境をめざして園地を整えます。
●糸状菌は湿度の高い土壌中で発生しやすくなるため、園地の排水を良好にする
●整枝・剪定によって雨・霧などが早く乾くよう通風と採光に留意した樹形管理をする
●台風などの強風による傷からの感染を防ぐ防風対策
●軟弱な枝葉の発生や遅伸びを助長しないよう窒素過多に気をつける
適切な整枝・剪定は、後に述べる農薬による防除で農薬が万遍なくかかりやすくする効果もうみます。
特に中山間地などで、霧の多い園地、日照不良の園地ではカンキツそうか病が発生しやすいため、これらの耕種的防除に努めててください。
sunny cafe / PIXTA(ピクスタ)
カンキツそうか病の農薬による防除
農薬による防除で重要なタイミングは、4月上旬から中旬にかけての発芽が盛んになり新葉をつける「展葉初期」と、満開したあと少しずつ花弁が散っていく「落弁期」です。落花後は果実の肥大化が始まるため、特に重要な防除のタイミングです。
前年度にカンキツそうか病が多発した園地では、展葉初期、落弁期に加えて、5〜6月の幼果期にも農薬散布を行うことで防除効果が高まります。
※なお、ここで紹介する農薬は、2023年5月18日現在、柑橘類のそうか病に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、ラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく防除してください。
※この章で記載するのは一例です。地域や栽培品種によって、注意が必要な病害虫や具体的な防除暦、有効な農薬の情報などは異なります。各地域のJAなどから作目別の防除情報が毎年公表されているため、自身の該当地域の最新情報を入手し、適切な防除を行うようにしてください。
展葉初期の防除
安ちゃん / PIXTA(ピクスタ)
新葉の展葉初期、発芽した新梢が5mm程度、最長でも1cm程度の頃に1回目の防除を行います。多くの地域では4月上中旬になるでしょう。
「デランフロアブル」(ジチアノン水和剤)または、「ストロビードライフロアブル」(クレソキシムメチル水和剤)をいます。
落弁期の防除
アネモネ / PIXTA(ピクスタ)
地域や品種によりますが、早生種を除いて5月以降に落弁期を迎えます。落弁期は、カンキツそうか病だけではなく、「灰色かび病」「黒点病」などの防除時期でもあります。
上記3種の病害が同時に防除できる農薬としては、「ナリアWDG」「ファンタジスタ顆粒水和剤」「ストロビードライフロアブル」「フロンサイドSC」、「ナティーボフロアブル」などがあります。
▼みかんの防除暦についての記事内「 5〜6月:開花期・幼果期は、防除の重要時期!」の項もご覧ください。
カンキツそうか病は、かいよう病、灰色かび病、黒点病とともに、展葉期から落弁期にかけて防除すべき病害の1つです。適期に効果のある農薬を使って適切に防除するとともに、園地の環境整備にも努めてください。
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大森雄貴
三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。