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【2023】かぼちゃ収穫機で作業を軽労化!いま使える最新農機情報まとめ

【2023】かぼちゃ収穫機で作業を軽労化!いま使える最新農機情報まとめ
出典 : 川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

かぼちゃは重量野菜であり、管理作業や収穫にかなりの労力がかかります。特に収穫作業は、ほとんどの工程を屈みながら手作業で行うため、足腰への負担が大きく、人手不足が深刻な状況です。こうした作業負担を軽減するため、近年、かぼちゃ収穫機の開発が進んでいます。

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2021年9月、ヤンマーアグリ株式会社と北海道の訓子府機械工業株式会社が共同開発した、加工業務用かぼちゃ収穫機のモニター販売が開始しました。

本記事では、このかぼちゃ収穫機の概要について解説するとともに、収穫作業を軽減するそのほかの農機も紹介します。

かぼちゃ収穫作業の機械化を実現! 「ヤンマー KYP-900」

かぼちゃの収穫作業

川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

かぼちゃは年間を通して需要のある野菜ですが、国内の栽培状況は、作付面積・収穫量ともに減少しています。

農林水産省の作況調査を見ると、全国の作付面積は、2006年から2021年で16,900haから14,500haとなり、14.2%減少しています。同様に収穫量は、220,400tから174,300tとなり、20.9%減少しています。

かぼちゃの作付面積と収穫量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)」の野菜生産出荷統計よりminorasu編集部作成

この背景には、かぼちゃは重量野菜であり、栽培においては管理作業も収穫作業もほとんど手作業で行っているため、作業負担が大きく人手が足りないという問題があります。高齢化が進む中、かぼちゃ生産農家の担い手不足は深刻化しています。

特に作業負担がかかるのが収穫作業です。

かぼちゃの蔓を切り、拾い上げてミニコンテナに入れ、鉄コンテナの場所まで運んで、鉄コンテナ上辺まで持ち上げて積みこむ

かぼちゃの蔓を切り、拾い上げてミニコンテナに入れ、鉄コンテナの場所まで運んで、鉄コンテナ上辺まで持ち上げて積みこむ
川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

そのような状況の中、収穫作業を大幅に効率化・省力化する「かぼちゃ収穫機」が日本で開発されました。

ヤンマーアグリ株式会社が、北海道の訓子府機械工業株式会社と共同開発した加工業務用かぼちゃ収穫機で、2021年9月に北海道地区限定でモニター販売を開始しました。

これまでにも、大規模栽培の多い北海道では海外製のかぼちゃ収穫機を使用している例はありましたが、日本製の収穫機が販売されるのは初めてです。日本のかぼちゃ栽培により適した性能が期待できます。

この収穫機は、茎葉を切断して畝上に集め風乾させたかぼちゃを「拾い上げて選別」し、「鉄コンテナに収容」するまでの作業を機械化します。これにより、手作業に比べて約3倍の作業能率を実現でき、さらに、作業負荷や労働力の大幅な軽減も期待できます

価格は? ヤンマーかぼちゃ収穫機の製品仕様

国際農業機械展in帯広2023に出展された、かぼちゃ収穫機「KYP-900」

国際農業機械展in帯広2023に出展された、かぼちゃ収穫機「KYP-900」
出典:株式会社PR TIMES(ヤンマーホールディングス株式会社 プレスリリース 2023年6月26日)

ここでは、ヤンマーアグリ株式会社と訓子府機械工業株式会社の共同開発によるかぼちゃ収穫機について、具体的なスペックや価格などを紹介します。

かぼちゃ収穫機の価格・スペック

かぼちゃ収穫機「加工業務用かぼちゃ収穫機KYP-900」はトラクター牽引式で、トラクター適用馬力が60ps以上、操作にはトラクターのオペレーターのほか選別作業者が1~2名必要です。

ほ場条件は、畝間250cm以上で、マルチ栽培をする場合は生分解マルチを使用する必要があります。発売当初のメーカー小売価格は5,346,000 円(税抜価格 4,860,000 円)です。

出典:ヤンマーホールディングス株式会社「重量野菜『かぼちゃ』の収穫作業を軽労化する加工業務用かぼちゃ収穫機を開発」

かぼちゃ収穫機の導入により期待できる効果

ヤンマーアグリジャパン株式会社北海道支社 Youtube公式チャンネル「【北海道限定販売】トラクタけん引式・加工用かぼちゃ収穫機 KYP-900」

「かぼちゃ収穫機KYP-900」は、かぼちゃを集めた畝上をトラクターで牽引することで、かぼちゃをコンベアとパドルで拾い上げ、茎葉と選別して、後部の収容用のコンテナまでかぼちゃを傷付けずに搬送します。

コンベア先端部の回転刃で茎葉を切断するため、収穫期に茎葉が絡み付くことなく、スムーズに作業を進められます。

また、収容用の鉄コンテナの角度をチルト機構によって調整でき、収容時のかぼちゃへの衝撃をやわらげ、傷が付いたり割れたりするリスクを軽減します。ただし、手作業よりはかぼちゃに傷が付くリスクが高いため、加工業務用かぼちゃ向けとされています。

かぼちゃ収穫機KYP-900を使用することで、収穫の作業効率は手作業で行う場合の3倍も向上します。

2021年にこの収穫機の実演会を実施した北海道のJA北はるかでは、美深町農業振興センターかぼちゃ試験ほ場で実際に作業したときの様子をホームページ上にて動画で紹介しています。

きたはるか YouTube公式チャンネル「かぼちゃ収穫機実演会」

出典:JA北はるか「ニュース&トピックス|かぼちゃ収穫作業機実演について」

収穫作業を省力化するかぼちゃ集荷機や茎葉処理機にも注目

2023年6月現在、国産農機でかぼちゃ収穫作業の茎葉切断〜収容までを機械化できるのは「加工業務用かぼちゃ収穫機KYP-900」のみです。

しかし、ほかにも日本国内で、かぼちゃの収穫作業において作業を軽労化する農機がいくつか開発されています。

かぼちゃ収穫機の導入が難しい場合でも、こうした農機を導入することで一部の作業を機械化でき、作業負担を軽減できます。

そこで、すでに販売されているかぼちゃの「集荷機」と、販売に向け開発が進められている「茎葉処理機」を紹介します。

川辺農研産業 「カボチャ集荷機 PC-120」

川辺農研産業株式会社YouTube公式チャンネル「Kawabe カボチャ集荷機 PC-120」

従来のかぼちゃ収穫作業では、広いほ場で収穫したかぼちゃをコンテナまで運び、積み込む作業に大きな労力と時間がかかりました。また、かぼちゃを積んだ重いコンテナを移動させる必要もありました。

この運搬と積み込みを軽労化しようと開発されたのが川辺農研産業株式会社の「カボチャ集荷機PC-120」です。

トラクター牽引式・トレーラータイプなので、コンテナを積んだまま少しずつ移動し、収穫場所の近くに常に置いておくことができます。

作業者は、かぼちゃの蔓を切ったあと、地表近くにあるコンベアに載るだけで、コンベアが縦横に稼働し、かぼちゃをコンテナの上辺まで移動してくれます。

集荷機の上には作業者が2人ほど搭乗でき、コンテナの高さまで運ばれたかぼちゃを手に取って、コンテナに積み込めます。そのため、かぼちゃをほとんど傷つけることがありません。

さらに、集荷用コンテナ・予備用コンテナのほかに選別用コンテナを置く台があり、人の目で、傷や害虫の食害痕がある実を選り分ける粗選別も同時に行えます。

この集荷機は、人の目による選別が可能で、省力化しながら品質も維持できることが大きなメリットといえるでしょう。

全長5,340mm、全幅5,850(格納時2,820)mm、全高1,430(格納時2,370)mmで、適応トラクターは60〜100psです。

PC-120を開発した川辺農研産業株式会社は、特殊農機のパイオニアとして「オリジナル農機」も受託開発しています。課題の相談から始めれば、ほ場に適した集荷機への改良が期待できるかもしれません。

出典:川辺農研産業株式会社「オリジナル農機で食品産業に貢献」

ヤンマーアグリジャパン・訓子府機械工業「かぼちゃ茎葉処理機」

ホクレン農業総合研究所 営農支援センター Youtube公式チャンネル「【営農支援センター】かぼちゃ茎葉処理機開発に関わる産地試験状況」

「かぼちゃ茎葉処理機」の開発は、かぼちゃ収穫機と同じく訓子府機械工業株式会社とヤンマーアグリジャパン株式会社が共同して2020年に開始した取り組みで、ホクレン農業協同組合連合会や北海道立総合研究機構が支援して進められています。

2022年までに、ホクレン訓子府実証農場のほ場や、北海道内の主要なかぼちゃ産地のJAが提供したほ場で、実用化を目指して現地試験が行われています。

この茎葉処理機は、トラクターに取り付けて使用します。前部に付ける「デバイダー」と、後部に取り付ける「チョッパー」で構成されています。

処理方法は、畝の上を移動しながら、前部のデバイダーに付いた回転刃でつるを切断し、トラクターに踏まれないよう実を左右に振り分けます。後部のチョッパーは、実を傷付けない高さで茎葉のみを切り離します。

これまでの現地試験では、茎葉処理を行うことで、収穫作業の効率は20%ほど改善できるとの結果がでています。また、処理時の移動速度は時速3〜5kmで、実に重大な損傷を及ぼす可能性は10%以下であることが確認されています。

作業の様子を見学した農家からは、「実を見つけるために茎葉をかき分ける必要がなくなる」「実がどこにあるか見えるので、収穫の作業効率が上がる」「収穫の際に実を見落として収穫し損ねる割合が減る」といった声もありました。

現在は、土質や湿度など条件の異なるほ場での操作をスムーズに行えるようにすることと、実の損傷割合を下げることをめざして、改良を重ねつつ、価格の設定やメンテナンス体制の構築が進められています。

出典:ホクレン農業協同組合連合会アグリポート「かぼちゃ茎葉処理機の開発」

コンテナで搬出されるかぼちゃ

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

かぼちゃは、重量野菜であるにもかかわらず機械化がほとんど進んでいませんでした。現状では、ほとんどの作業が手作業で行われ、農家にとっては作業負担が大きくなっています。

そのため、かぼちゃ生産は年々減少を続けています。こうした状況を打開するために、収穫に関する作業を省力化できる農機が開発されています。

現在、多くの作物でほ場の集約化・大規模化が進められています。かぼちゃにおいては、収穫機の実用化によって、大規模化のネックとなる収穫工程の大幅な省力化が期待できます。

収穫機の導入が難しい場合は、集荷機や茎葉処理機などを導入し、作業の一部を省力化することも検討してみましょう。

作付面積や収穫量は減っていますが、かぼちゃの栽培にかかる労働時間はほかの果菜類と比べて短く、省力化や複合作などの工夫により高い収益が期待できます。

▼かぼちゃの収益性についてはこちらの記事をご覧ください

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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