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キャベツの根こぶ病対策! 原因と段階別の防除方法

キャベツの根こぶ病対策! 原因と段階別の防除方法
出典 : gonbe / PIXTA(ピクスタ)

キャベツの根こぶ病は一度発生すると防除が困難で、ほ場全体に深刻な被害を及ぼします。根こぶ病による減収を避けるためには、適切なほ場管理と前作の発病状況に応じた防除の実施が重要です。 この記事では、キャベツ根こぶ病の被害症状・診断のポイントや段階別の防除対策について解説します。

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キャベツが根こぶ病に感染すると、根に多数のこぶが発生します。ネコブセンチュウによる被害でも同様の症状が表れますが、こぶの大きさや部位の違いによって根こぶ病との区別が可能です。まずは、キャベツ根こぶ病の病徴や発生原因について解説します。

診断のポイントは? キャベツ根こぶ病の被害症状

根こぶ病 こぶ部

根こぶ病 こぶ部
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

キャベツ根こぶ病は、糸状菌(カビ)の一種である「学名:Plasmodiophora brassicae(プラズモディオフォラ・ブラシカエ)」によって引き起こされる病害です。

感染すると地際近くの根に大小多数のこぶが発生します。根の部分が肥大することで養分・水分の吸収が阻害され、晴天の日に茎・葉がしおれるようになります。

生育初期の感染では、定植後1ヵ月頃から下葉がしおれ、重症株は枯死に至ることがあります。生育後期の感染では、根にこぶが認められても、市場出荷できる可能性があります。

そのため、特に生育初期でキャベツ根こぶ病に感染すると、大幅な収量低下を余儀なくされます。

また、ネコブセンチュウが寄生した場合にも根に多数のこぶが発生しますが、ネコブセンチュウでは数珠のように小さなこぶが膨れるので、大小多数のこぶができるキャベツ根こぶ病と簡単に区別できます。

根こぶ病 発病株(左)生育不良

根こぶ病 発病株(左) 生育不良
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

発生当初、こぶの色は白色ですが、次第に黒褐色に変色します。こぶが腐敗すると悪臭を発するようになり、やがて崩壊します。崩壊したこぶの中に含まれる休眠胞子によってキャベツ根こぶ病の感染が拡大するため、被害を最小限に抑えるためには病変の早期発見が大切です。

キャベツに根こぶ病が発生する原因

キャベツ根こぶ病は、高温・多湿な環境や酸性土壌で発生しやすいとされています。こぶに含まれる休眠胞子は生存期間が長いため、休眠胞子が土壌に放出されると長期にわたって根こぶ病の発病リスクが高まります。

ここでは、根こぶ病発生の好適条件や原因菌の伝染経路について解説します。

好適条件は「高温・多湿」と「酸性土壌」

土壌pH

だいち ゆうと / PIXTA(ピクスタ)

キャベツ根こぶ病の原因となる病原菌は、20~24℃が生育適温です。感染に最適な地温は18~25℃なので、夏まき・年内収穫の作型ではキャベツ根こぶ病の発生リスクが高まります。一方、秋になって地温が15℃以下になると感染は減少します。

また、病原菌は水媒伝染するため、排水が不十分なほ場や低湿地でもキャベツ根こぶ病は発生します。反対に、排水性のよいほ場や地下水位の高いほ場では、発生が抑えられます。

土壌の酸性度では、pH6.0以下の酸性土壌ではキャベツ根こぶ病が多発し、pH7.0以上のアルカリ性土壌では病原菌の発育が抑制されます。

土壌の種類では、黒ボク表層土や灰色低地土ではキャベツ根こぶ病が発病しやすくなる一方、黒ボク下層土や赤黄色土は発病しにくいことも特徴です。休眠胞子密度が高い場合、発病リスクは高まります。

原因菌の土壌伝染により発生、休眠胞子は長期生存も

キャベツ根こぶ病の伝染源は、発生したこぶに含まれる休眠胞子です。こぶの腐敗・崩壊によって土壌内に休眠胞子が拡散されて土壌伝染します。

人・機械に汚染土壌が付着すると他のほ場に原因菌を持ち込むことになり、被害が拡大します。休眠胞子には耐久性があり、通気性の悪い土壌では10~15年間生き延びたというデータもあります。

また、汚染土壌が雨水・用水に混入した場合にも被害が拡大する恐れがある点にも注意が必要です。休眠胞子は水中でも19ヵ月以上生存するといわれており、キャベツ根こぶ病が発生すると数年にわたって減収する恐れがあります。

出典:日本石灰窒素工業会「技術情報|石灰窒素だより」 所収石灰窒素だよりNo.146 池上八郎「石灰窒素だよりNo.146|アブラナ科野菜根こぶ病とこの防除剤の石灰窒素」

さらに、休眠胞子が付着した土壌(汚染土壌)が種子に混入した場合は、種子伝染が発生し、被害が広域にわたる可能性もあります。

【段階別】キャベツ根こぶ病の防除対策

キャベツ根こぶ病の発病を防ぐには、発生リスクの高さに応じた防除対策が重要です。土壌分析によってほ場の菌密度を測定した上で防除対策を行うと確実ですが、時間とコストがかかるため、レベルごとに防除対策を検討することをおすすめします。

レベル1:前作で根こぶ病の発生はなし。ただし近隣ほ場では発生が確認されている
レベル2:前作でほ場の一部に根こぶ病が発生
レベル3:前作でほ場全体に根こぶ病が発生


併せて、ほ場排水性の改善や土壌pHの調整もキャベツ根こぶ病の発病リスクを減らすためには重要なので、ほ場管理の方法やレベルごとの防除方法について解説します。

なお、農薬を使用して防除を行う場合はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明な点はメーカーや普及指導センターなどに問い合わせるなどして適切に使用してください。

共通:ほ場排水性の改善と、土壌pHの調整

農研機構 YouTube公式チャンネル「無資材で簡単・迅速に排水改良できる穿孔暗渠機『カットドレーン』」

ほ場排水性の改善と土壌pHの調整が、キャベツ根コブ病の抑制には効果的です。

ほ場排水性の改善方法としては、明渠(めいきょ)の施工や畝高を30cmにする高畝栽培などを取り入れる方法や、カットドレーンを使った暗渠(あんきょ)を施工する方法もあります。

カットドレーンとは、地表面から30~70cmの深さに排水用の空洞を形成する簡易暗渠施工機のことです。施工した暗渠では通常の暗渠と同等のピーク排水量5mm/hを確保でき、迅速な地下水位の低下に効果を発揮します。

出典:
全国農業協同組合連合会岐阜県本部(JA全農岐阜)「加工業務用キャベツの排水対策の取り組み」
農研機構「農家が使える無資材・迅速な穿孔暗渠機「カットドレーン」」
鹿児島県「農業開発総合センタートップ > お役立ちマニュアル等」所収「キャベツ根こぶ病の発病レベルに応じた総合防除対策マニュアル」

また、キャベツの生育に適した土壌pHは6.0~7.0ですが、pH7.5前後に調整するとキャベツ根こぶ病の抑制効果が得られます。

消石灰やマグエースを施用すると早期に土壌pHが低下する一方、ケイ鉄や苦土石灰・ミネカルでは土壌pHの調整効果が長続きします。輪作する作物に適した土壌pHを考慮して酸性度を調整するのがポイントです。

出典:福井県「実用化技術等(年度ごと平成11年~)」所収「土壌pH補正によるキャベツの生育促進と根こぶ病の軽減(令和4年度指導活用技術 手引き)」

▼土壌pHの調整についてはこちらの記事をご覧ください

そのほかには、種子伝染によってキャベツ根こぶ病が拡大する可能性を考慮して、消毒された種子を使って健全な苗を育苗するようにします。休眠胞子を外部から持ち込まないように農機具や靴・作業着の洗浄を実践することも大切です。

レベル1:セルトレイへの灌注処理

キャベツ セルトレイ苗

t.kawada / PIXTA(ピクスタ)

過去にキャベツ根こぶ病の発病歴のないほ場の場合は、播種直後や定植前にセルトレイへの灌注処理を行えば発病を予防できる可能性があります。

ほ場診断で土壌中の菌密度が高い結果が出た場合や近隣のほ場でキャベツ根こぶ病が発生している場合には、灌注処理を行うことが重要です。

※なお、ここで紹介する農薬は2023年7月25日現在、登録のあるものです。実際の使用に当たっては、必ず使用時点の農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み用法・用量を守りましょう。また、地域の防除所からの情報を必ず確認し、地域によって独自のルールがある場合には、指導に従って使用してください。

【灌注処理に使用できる農薬】

・オラクル顆粒水和剤

アミスルブロムが有効成分で、土壌内に放出された遊走子に直接作用するのが特徴です。200~500倍に希釈して定植前に1回灌注します。

・ランマンフロアブル

シアゾファミドが主成分で、品種によっては軽度の生育抑制がみられる可能性があるものの、実用上の問題は生じません。500倍に希釈して定植前日または当日に1回灌注します。

・フィールドキーパー水和剤

バリオボラックスが有効成分で、施用に伴う薬害リスクが少ないのが特徴です。200倍に希釈して播種直後に1回、定植前日または当日に1回灌注します。

レベル2:抵抗性品種の利用

過去にほ場の一部でキャベツ根こぶ病が発生している場合は、セルトレイへの灌注処理を前提に抵抗性品種の利用を検討します。

ただし、利用できる産地・作型が限られている点と菌密度によってはキャベツ根こぶ病が発病する可能性がある点には留意が必要です。

2023年7月時点で抵抗性品種として販売されている品種をいくつか紹介します。

・YCRこんごう

YCRこんごうは年内~1月収穫に向いた品種で、菌密度が高いほ場でも発病抑制効果が高いとされています。萎黄病にも耐病性がある反面、黒腐病の発生が懸念されるため農薬による防除が必須です。

出典:株式会社日本農林社「YCRこんごう(金剛)」

・YCRふゆいろ

YCRふゆいろも年内~1月収穫に向いた品種で、内部黒変症が出にくく複数の種類の根こぶ病に高い抵抗性があるのが特徴です。平玉で安定した形状で、球伸びに優れているといわれています。

出典:
株式会社日本農林社「【新】YCRふゆいろ」
農研機構「強度の根こぶ病抵抗性と高い実用形質を有するキャベツ「YCRふゆいろ」」

・YCRげっこう

YCRげっこうは寒玉系の品種で、既に販売されている「YCR多恵」を改良した品種です。1球当たり1.3~1.5kgに揃い、球の着色がよいといわれています。

出典:
株式会社日本農林社「YCRげっこう(月光)」
鹿児島県「普及に移す研究成果(普及情報:野菜)」所収「夏播き作型でキャベツの根こぶ病に強い有望品種「YCR夢いっぽ」,「YCRげっこう」」

・BCR龍月

BCR龍月も寒玉系の品種で、キャベツ根こぶ病はもちろん黒腐病・萎黄病にも耐病性があります。倒伏しにくく、玉がよく揃うのが特徴です。

出典:タキイ種苗株式会社「BCR龍月」

レベル3:農薬の土壌混和

ほ場 土壌混和

kiki / PIXTA(ピクスタ)

過去にキャベツ根こぶ病が多発したほ場では、定植前に農薬を全面散布した上で深さ10~15cm程度の範囲で土壌混和すると生育中の感染予防効果を得られます。

高い防除効果を得るためには、前述したセルトレイへの灌注処理や抵抗性品種の利用と組み合わせることが重要です。土壌混和に使用できる農薬を紹介します。

【粉剤(全面または作条土壌混和)】

・オラクル粉剤

アミスルブロムが有効成分で、継続的に施用することで休眠胞子の密度を下げられるのが特徴です。全面混和する場合は30kg/10a、作条土壌に混和する場合は20kg/10aを施用します。

・フロンサイド粉剤

フルアジナムが有効成分で、石灰類との併用で防除効果が高まるのが特徴です。全面混和する場合は30~40kg/10a、作条土壌に混和する場合は15~20kg/10aを施用します。

・ネビジン粉剤

フルスルファミドが有効成分で、長期にわたって安定した効果が得られるのが特徴です。全面混和する場合は20~30kg/10a、作条土壌に混和する場合は20kg/10aを施用します。

【水和剤(全面散布土壌混和)】

・オラクル顆粒水和剤

アミスルブロムが有効成分で、葉ダイコンやエンバクといったおとり植物と組み合わせて利用できることのが特徴です。300g/10aを100Lに希釈して定植前に施用します。

・フロンサイドSC

フルアジナムが有効成分で、休眠胞子の殺菌や遊走子の遊泳・発芽を阻害する効果があるのが特徴です。500mL/10aを100L~200Lに希釈して定植前に施用します。

キャベツ根こぶ病の原因菌は休眠胞子に含まれており、土壌伝染や水伝染によってほかのほ場に拡散されます。休眠胞子の生存期間は長く、一度感染すると長期にわたって減収リスクを抱えることになります。

特に、排水が不十分なほ場やpH6.5以下の酸性土壌のほ場で発病しやすいため、被害拡大を防ぐには耕種的防除としての排水性の改善や土壌pHの調整が重要です。前作の発病状況に応じて定植直前に苗へ農薬を施用したり、農薬の土壌混和を実施したりすることも有効な防除対策です。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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