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水稲(米)の新品種一覧!主食用・飼料用の“今導入すべき”多収&新形質米の品種とは

水稲(米)の新品種一覧!主食用・飼料用の“今導入すべき”多収&新形質米の品種とは
出典 : 天空のジュピター/ PIXTA(ピクスタ)

水稲は主食用作物としての役割に留まらず、加工用や飼料用などの用途にも対応するべく、時代とともに品種改良が行われてきました。各産地での主食用米の新品種育成競争は激しく、加工用や飼料用の多収品種の改良も積極的に行われています。

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水稲の品種改良は多様性が高まり、食味や多収性の向上だけでなく、新たな機能を持つ品種や栽培方法に合わせた品種など、特定の用途に特化した品種開発も進んでいます。そこで本記事では、水稲の品種改良に関する最新の動向と、今後の展望について解説します。

収量や食味・生産コストなど、メリットの多い水稲新品種

水稲 収穫 大規模化

ばりろく/ PIXTA(ピクスタ)

日本の水稲栽培は、長い歴史の中で時代の変化に対応しながら品種改良を重ね、高い品質を保ってきました。戦後は量の確保(増産)と多収性が重視されてきましたが、米の生産量が需要を超える時代に突入してからは、よりおいしい米が求められるようになりました。

その後、米の市場が自由化されると、各産地で独自のブランド米の開発が広がり、近年は、米の余剰問題に対応するため、飼料用や加工用、輸出用などの多様な用途を見据えた品種改良が進んでいます。

こうして新しく生まれた品種は、収量や食味が優れているだけでなく、病気・倒伏・高温・冷害などへの耐性が向上しています。これにより、農家にとって栽培管理がしやすくなり、安定した収量を得られるというメリットがあります。

そこで本記事では、最適な品種を選定する際の参考として、近年品種登録された水稲を主食用・飼料用といった用途別に紹介します。

【主食用】 多収・良食味な水稲新品種4選

主食 ご飯

shige hattori/ PIXTA(ピクスタ)

まず、主食用米のうち、特に収量性や食味に優れ、栽培もしやすい新品種を4つ紹介します。

高温・倒伏に強く、多収で良食味の 「にじのきらめき」

「にじのきらめき」は、農研機構 中央農業研究センター北陸研究拠点で育成され、2022年に品種登録されました。栽培適地は北陸から関東以西と広く、「コシヒカリ」と同様に多くの地域で栽培できます。

熟期は「コシヒカリ」と同じ中生で、育成地である新潟県上越市では、「コシヒカリ」と比較して出穂期はほぼ同じ、成熟期は4~5日ほど遅くなります。

育成の背景には、近年の気候変動による玄米の品質低下や、水稲作経営の大規模化に伴う多収化の必要性といった、水稲栽培を取り巻く新たな課題がありました。

これらの課題に対応するために育成された「にじのきらめき」は、「コシヒカリ」並みの食味でありながら、標肥栽培では約15%、多肥栽培では約30%弱の多収で、高温に強いという特長があります。

水稲品種「にじのきらめき」の収量特性 玄米収量 10a当たり  コシヒカリとの比較

※農研機構中央農研北陸研究拠点(上越市)における成績
※試験年次は標準肥栽培は2013~2017年、多肥栽培は2016~2019年
出典:農研機構「プレスリリース|中日本農業研究センター| (研究成果)高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種 『にじのきらめき』」よりminorasu編集部作成

多収であるだけでなく、玄米外観品質に優れ、腹白米・心白米・乳白米・背基米の発生がコシヒカリより少ないことも強みです。

水稲の新品種「にじのきらめき」の玄米外観品質は「コシヒカリ」より優れている

水稲の新品種「にじのきらめき」の玄米外観品質は「コシヒカリ」より優れている
画像提供:農研機構中日本農業研究センター

病害にも強く多く、縞葉枯病に抵抗性を持ち、葉いもちには“中”、穂いもちには“やや強”の耐病性を持ちます。また、短稈で耐倒伏性も“強”なので、栽培しやすく、直播栽培にも向きます。

食味は「コシヒカリ」と同等で、大粒で粘りが強く艶がよいので、業務用にも適しており、岐阜県では外食チェーン向けの供給を推進しています。

水稲品種「にじのきらめき」の食味特性 コシヒカリとの比較

※農研機構中央農研北陸研究拠点(上越市)における成績
※試験年次は標準肥栽培は2013~2017年、多肥栽培は2016~2019年
出典:農研機構「プレスリリース|中日本農業研究センター| (研究成果)高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種 『にじのきらめき』よりminorasu編集部作成

※農研機構育成の品種を栽培する場合、種子の入手先は、農研機構と品種利用許諾契約を締結した機関(種苗販売店など)に限られます。農研機構の「農研機構育成品種の種苗入手先リスト」にて品種名で検索してください。近くに入手先がない場合は、農研機構に問い合わせてください。

出典:
農研機構「プレスリリース|中日本農業研究センター| (研究成果)高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種 『にじのきらめき』」
農林水産省「農林水産技術会議|委託プロジェクト研究|成果集 成果集 - 令和2年度版|暑さに強く、たくさんとれる『にじのきらめき』」
農林水産省「登録品種データベース|29274」

良食味と多収を両立 「縁結び」

良食味と多収を両立する新品種「縁結び」

良食味と多収を両立する新品種「縁結び」
写真提供:株式会社ハラキン

良食味と多収を両立する新品種「縁結び」(島根県産)

良食味と多収を両立する新品種「縁結び」(島根県産)
写真提供:株式会社ハラキン

「縁結び」は、株式会社中島美雄商店 稲育種研究所が、「夢ごこち」と「ホシアオバ」の交配から選抜して得た系統「N系65」がもとになっています。

2009年に「N系65」の育種権を譲り受けた株式会社ハラキンが試験栽培を重ねました。2015年に同社と株式会社バローホールディングスが共同出資して設立した株式会社アグリトレードが育成者権を取得し、2018年に品種登録されました。

栽培適地は東北南部以南で、地域によって早晩性が異なります。東北では“晩”、関東や東海、北陸では“中”、近畿や中国、四国では“早~中”、九州では“早”です。「日本晴」と比較して出穂期はほぼ同じ、成熟期は1週間程度遅いという特性があります。

稈長は“やや長”である一方、倒伏には強く、いもち病に対して“極強”の耐病性を有します。多収で、栽培試験データでは「日本晴」に比べ2割程度多い収量を上げています。程よい粘りがあり、極良食味であることも特長です。

※登録品種であり、種子の育成・譲渡・自家採取・海外持ち出しを無断で行うことは禁止されています。導入を検討する際には、株式会社アグリトレードに問い合わせてください。

株式会社アグリトレード「縁結びCONCEPT」

出典:
株式会社アグリトレード「縁結び 品種概要」
農林水産省「登録品種データベース|26690」
株式会社中部経済新聞社「中部経済新聞 2015年9月15日|アグリトレードが水稲の新品種/食感よく多収量、いもち病に強い/育成者権取得作付け面積拡大めざす」
株式会社中日新聞社「中日新聞 2015年10月21日|新品種のコメ“縁結び”栽培 「いもち病」に強く多収穫 美味 多治見の生産管理会社 16年産米の販売目指す」

いもち病に抵抗性あり 「ちほみのり」

「ちほみのり」は、農研機構 東北農業研究センターで2005年から選抜・育成され、2018年に品種登録されました。

栽培適地は東北以南で、特に秋田県での作付け実績が多く、福島県や新潟県など、東北や北陸地方でも普及が進んでいます。2015年に秋田県、2019年に福島県と新潟県の産地品種銘柄に指定され、2020年には、さらに岩手県・宮城県・山形県・兵庫県でも指定されました。

ちほみのりの作付面積推移

出典:農研機構「東北農業研究センター|研究センターニュース|東北農研ニュース 第5号」所収「研究紹介 3|早生の直播栽培向き良食味多収水稲品種『ちほみのり』」よりminorasu編集部作成

「あきたこまち」と比較して、出穂期と成熟期がやや早く、早晩性は育成地である東北では“かなり早”に当たります。稈長が短く穂数が多い「穂数型」の多収品種です。

直播栽培に適し、移植栽培でも「あきたこまち」より多収が期待できます。

水稲品種「ちほみのり」の収量特性 標肥栽培の場合

※東北農研における成績で、2009~2013年の平均値
出典:農研機構「刊行物|アーカイブ|東北農業研究センター|研究報告|東北農業研究センター研究報告 No.118」所収「多収で直播栽培向きの良食味水稲品種「ちほみのり」の育成」よりminorasu編集部作成

多肥栽培ではさらに多収が見込めますが、倒伏のリスクが高くなるため、施肥量には注意が必要です。

水稲品種「ちほみのり」の収量特性 多肥栽培の場合

※東北農研における成績で、2012~2013年の平均値
出典:農研機構「刊行物|アーカイブ|東北農業研究センター|研究報告|東北農業研究センター研究報告 No.118」所収「多収で直播栽培向きの良食味水稲品種「ちほみのり」の育成」よりminorasu編集部作成

育成の背景には、米価の低迷が続く中、品質・食味を維持しつつ、農家の作業負担を軽減すべく直播栽培に適した多収の品種を育成したい、という狙いがあります。

「ちほみのり」は、これらの狙いを満たした品種です。“かなり早”という作期のため、大規模ほ場での作期分散に活用できます。

※農研機構育成の品種を栽培する場合、種子の入手先は、農研機構と品種利用許諾契約を締結した機関(種苗販売店など)に限られます。農研機構の「農研機構育成品種の種苗入手先リスト」にて品種名で検索してください。近くに入手先がない場合は、農研機構に問い合わせてください。

出典:農研機構
「研究情報|研究成果|成果情報|東北農業研究センター 2019年の成果情報|早生で多収の直播栽培向き良質良食味水稲品種『ちほみのり』」
「プレスリリース・広報|刊行物|パンフレット|品種紹介パンフレット|水稲「ちほみのり」所収「多収で、美味し直販栽培向き水稲 ちほみのり」
「刊行物|アーカイブ|東北農業研究センター|研究報告|東北農業研究センター研究報告 No.118」所収「多収で直播栽培向きの良食味水稲品種「ちほみのり」の育成」
「東北農業研究センター|研究センターニュース|東北農研ニュース 第5号」所収「研究紹介 3|早生の直播栽培向き良食味多収水稲品種『ちほみのり』」
農林水産省「登録品種データベース|26435」

高温に強い早生品種 「なつほのか」

「なつほのか」は鹿児島県が育成し、2016年に品種登録された高温に強い早生品種です。栽培適地は西日本です。

九州地域で「なつほのか」は、主力品種「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」より高温登熟性に優れながら、収量が多く食味がよい品種として期待されています。

鹿児島県は、早期栽培には「なつほのか」、普通機栽培には「あきほなみ」を推していますが、長崎県・大分県の両県では、早期・普通期とも「なつほのか」を推しており、大分県は、作付け拡大に特に注力しています。

「なつほのか」の最大の特長は、高温条件下で登熟期を迎えても、倒伏しにくく、「ヒノヒカリ」より白未熟粒の発生が少なく品質が落ちない点です。

「なつほのか」は、高温条件下で登熟期を迎えても白未熟粒の発生が少ない

「なつほのか」は、高温条件下で登熟期を迎えても白未熟粒の発生が少ない
画像提供;大分県

「ヒノヒカリ」と比べると、出穂期は4日ほど、成熟期は7日ほど早まります。穂数がやや多く大粒なため、収量は「ヒノヒカリ」と比較して多くなります。食味はヒノヒカリと同等で良好です。

水稲早生品種「なつほのか」の収量特性 10a当たり玄米重

出典:大分県「農林水産部| 農林水産研究指導センター農業研究部水田農業グループ|普及カード」所収「水稲早生品種『なつほのか』の特性」よりminorasu編集部作成

大規模経営ほ場では、「ヒノヒカリ」との作期分散にも活用できます。ただし、いもち病の抵抗性は低いため、「ヒノヒカリ」と同様に徹底した防除対策が必要です。

※種子入手について:ご自分の県が、「なつほなみ」を奨励品種・認定品種に指定している場合は、近くのJAや出荷団体に問い合わせて入手します。そのほかの地域の場合も、まずはJAなどに問い合わせてください。(育成者権を持つ鹿児島県は、自家増殖について許諾手続きなどを不要としています)


出典:
大分県「水稲新品種「なつほのか」情報(東部振興局技術情報)」所収「水稲早生品種『なつほのか』栽培のポイント」
大分県「大分県農林水産ポータルサイト | 研究Now」所収「「水稲早生品種『なつほのか』を認定品種に採用しました!」
大分県「農林水産部| 農林水産研究指導センター農業研究部水田農業グループ|普及カード」所収「水稲早生品種『なつほのか』の特性」

【主食用】 外食・中食や加工米飯に向く水稲新品種4選

主食用米はコンビニ弁当やレストランチェーンなど中食・外食産業の需要が高い

syogo / PIXTA(ピクスタ) ・Haru photography / PIXTA(ピクスタ)

主食用米の中でも安定して多収で、かつ一定水準以上の品質を保ちつつ低コスト生産が可能な品種は、外食・中食産業への需要に適しています。

続いては、米余りといわれる現在でも需要が高い外食・中食産業向けの新品種を4つ紹介します。

晩生で作期を広く分散 「あきあかね」

「あきあかね」は農研機構中央農業研究センターが新潟県で育成し、2022年に品種登録された晩成品種です。

栽培適地は北陸以西で、育成地では「あきだわら」と比較して出穂期は同じ、成熟期は3日ほど早くなります。これは、新潟県などで多く作付けされている「コシヒカリ」よりも2週間程度遅いため、大規模経営ほ場での作期分散に向いています。

稈長は「あきだわら」とほぼ同じで穂数が多く、育成地での玄米収量は「あきだわら」に劣るものの、大粒で玄米の外観品質に優れています。ただし、いもち病の抵抗性は十分ではないため、対策が必要です。

健康志向が高まる中、低アミロース米である「あきあかね」は、玄米食のニーズの増加に応えられると期待されており、今後の作付けの増加が予想されます。

出典:農研機構「晩生で多収の良食味水稲新品種候補系統「あきあかね」

多収・良食味の早生品種 「つきあかり」

「つきあかり」は、農研機構 中央農業研究センター北陸研究拠点で育成され、2020年に品種登録されました。栽培適地は東北中南部や北陸、関東以西で、広く栽培できます。

育成地では“早生”に当たり、出穂期は「あきたこまち」と同程度です。収穫期は「コシヒカリ」よりも2週間ほど早いため、作期分散に適しています。

稈長が短くて倒伏に強く、「あきたこまち」に比べて10%程度上回る収量が見込めます。さらに、「つきあかり」の炊飯米は外観・食味ともに優れ、特に食味は「コシヒカリ」よりも高い評価を得ています。

出典:農研機構「早生で多収の極良食味水稲新品種『つきあかり』」

低アミロースかつ巨大胚 「金のいぶき」

宮城県では、『金のいぶき』を健康志向に応える究極の玄米としてアピールしている

宮城県では、『金のいぶき』を健康志向に応える究極の玄米としてアピールしている
ソーシャルワイヤー株式会社(宮城県農林水産部 プレスリリース 2018年11月2日)


「金のいぶき」は、宮城県の古川農業試験場で2002年から育成を始め、2015年に品種登録されました。栽培適地は東北中部以南で、育成地においては“中生の晩”に当たり、「ひとめぼれ」と比較して出穂期は3日程度、成熟期は4~6日程度遅くなります。

低アミロース品種である「たきたて」と、巨大胚糯品種の「めばえもち」(当時は「北陸糯167号」)を交配し育成を繰り返した本種は、両方の特徴を兼ね備えた「低アミロース巨大胚水稲品種」です。

「ひとめぼれ」と比較して、稈長は同程度の“やや長”で、耐倒伏性はやや強い“中”、玄米収量はやや劣ります。耐冷性は“極強”です。

玄米は白濁するため、外観品質はやや劣ります。食味は粘りが強く軟らかくてよいものの、「たきたて」よりも外観・味ともにやや劣ります。

この品種の大きな特長は、胚芽がほかの品種に比べて大きく、玄米中には今話題のGABA(γ(ガンマ)-アミノ酪酸という、アミノ酸の一種)の含量が「ひとめぼれ」の約3倍と高いことです。ほかの品種にはない付加価値であり、宮城県は玄米向けにPR活動をしています。

出典:宮城県「農政部 |古川農業試験場 |研究成果 |場報告第12号 水稲新品種「金のいぶき」について」所収「「水稲新品種「金のいぶき」について」

【飼料用・米粉用】 安定経営につながる“新規需要米”の新品種4選

飼料用米 ホールクロップサイレージ

amosfal/ PIXTA(ピクスタ)

主食用米や加工用米だけでなく、飼料用米や米粉用米、輸出用など新規需要米への需要が高まっています。この動きを後押しするため、国が交付金などの支援制度を設けて取り組みを推進しています。

水稲栽培を続けながら、水田活用の直接支払交付金を受けることも可能なため、農家は安定的に品種を切り替えられます。

そこで最後に、飼料用・米粉用の水稲新品種を4つ紹介します。

【飼料用米】主食用米との作期分散が可能 「くらのぬし」

「くらのぬし」は、茨城県にある農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センターがJA全農との共同研究で育成し、2021年に品種登録されました。

飼料用の多収品種として育成され、育成地においては、「くらのぬし」の出穂期は“やや晩”、成熟期は“晩”に当たります。

栽培適地は関東・北陸以西で、温暖地東部では主食用品種と作期分散ができます。

多収系統の「北陸193号」と比較して、稈長は長く、粗玄米収量は高く、耐倒伏性はやや弱い特徴があります。

縞葉枯病には抵抗性を持ち、葉いもち・白葉枯病の抵抗性は“やや強”です。耐倒伏性は“強”ですが、多肥になりすぎないよう気を付けてください。また、脱粒性が“やや易”のため、刈り遅れないように注意が必要です。

出典:
農研機構「飼料用米生産に適した多収の水稲新品種『くらのぬし』」
農林水産省「登録品種データベース|28287」

【飼料用米】最高レベルの収量性を誇る 「オオナリ」

「オオナリ」は、茨城県の農研機構次世代作物開発研究センターが育成し、2017年に品種登録された飼料用米に適した多収品種です。

栽培適地は関東以西の温暖地で、既存の多収品種「タカナリ」を栽培していた地域では、生育特性や草姿がほぼ同じであるため、導入が容易です。熟期も、育成地において“中生”に当たり、「タカナリ」と出穂期・成熟期ともほぼ同じです。

「タカナリ」の課題であった脱粒が改良された「オオナリ」は、収量の向上が期待できます。粗玄米収量は多肥栽培で10a当たり940kgとされ、最も収量性の高い品種の1つです。

白葉枯病に対しては中程度、縞葉枯病に対しては強い抵抗性を持ちます。いもち病は通常発生しませんが、葉いもちのほ場抵抗性は低いため、防除対策が必要です。また、耐冷性が低く、寒冷地での栽培には向きません。

出典:
農研機構「飼料用米に適した水稲新品種『オオナリ』」
農林水産省「登録品種データベース|25814」

【飼料用米】食用品種との識別が容易 「いわいだわら」

「いわいだわら」は、農研機構 東北農業研究センター大仙拠点で育成され、2015年に品種登録されました。粗玄米収量が高く、飼料用米に適した品種です。

栽培適地は東北中南部以南で、育成地での出穂期は「あきたこまち」よりも2日早い“早生の晩”に当たり、成熟期は「あきたこまち」よりも3日遅い“中生の中”に当たります。

稈長は「あきたこまち」並ですが、育成地での多肥栽培では、従来の多収品種「ふくひびき」より約10cmも高くなり、倒伏の危険性が高まります。

岩手県一関市を普及予定地として導入が広がっており、当地では「ふくひびき」を上回る多収で、稈長も高すぎず倒伏の危険性も低くなります。

育成地ではいもち病の発生は見られていません。耐冷性は低いので、冷害には注意が必要です。

出典:
農研機構「いわいだわら」
農林水産省「登録品種データベース|24363」

【米粉用米】米粉加工に適した高アミロース品種 「北瑞穂」

高アミロース米は、麺や製菓用のほか、ぽろぽろした食感を活かした料理にも向く

高アミロース米は、麺や製菓用のほか、ぽろぽろした食感を活かした料理にも向く
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

「北瑞穂」は、農研機構 北海道農業研究センターで育成され、2014年に品種登録された高アミロース米品種です。

高アミロース米は、小麦粉の代替として注目を集め、需要が高まっている米粉への加工に適しています。耐冷性が高く、栽培適地である北海道で普及が進んでいます。農研機構では麺やお菓子、ぽろぽろした食感を活かした料理のレシピを紹介しています。
農研機構 北海道農業研究センター「米粉加工向け高アミロース米品種『北瑞穂』~北瑞穂レシピ」

「きらら397」と比較して出穂期は1日、成熟期は4日遅く、“中生の早”に当たります。稈長・穂長ともに「きらら397」よりも長く、穂数は少ない「偏穂重型」です。

玄米収量は「きらら397」「ななつぼし」よりも多く見込めます。ただし、耐倒伏性は高くないため、多肥栽培は極端にならないよう注意が必要です。病害に関しては穂いもちの抵抗性が十分ではないので、防除対策が大切です。

出典:
農研機構 北海道農業研究センター「米粉加工向け高アミロース米品種『北瑞穂』」
農研機構「|産学連携・品種・特許|品種|食用作物|稲種(Oryza sativa L.)|北瑞穂|品種詳細」
農林水産省「登録品種データベース|23428」

主食用米の需要が低迷し続け、米余りが深刻化する一方で、米粉用や飼料用、海外輸出用など、新たな需要が増えています。水田の持続的な運営には、従来とは異なる新しい品種の導入を検討することが大切です。

新しい品種を導入する際は、現在の主要品種との作業の競合を避けるため、慎重に選ぶ必要があります。始める際には少しずつ取り組むとよいでしょう。国や自治体の助成金なども活用できる場合があります。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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