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【地域別】小麦の主な品種一覧! 特徴を踏まえたおすすめは?

【地域別】小麦の主な品種一覧! 特徴を踏まえたおすすめは?
出典 : nomo / PIXTA(ピクスタ)

北海道から九州まで、小麦の主な品種を一覧で紹介します。各品種ごとに栽培特性や病害抵抗性などをまとめ、近年品種登録された小麦新品種についても解説します。品種選びの参考にしてください。

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安定した小麦生産を実現するためには、栽培地域の気候に適した品種選びが重要です。この記事では、北海道から九州まで、各地域で多く栽培されている主要な小麦品種について、生産地域と生産量、作型など栽培に関係する特徴、用途の適性などを紹介します。

小麦品種は「地域の気象条件」と「需要の実情」で選ぶ

小麦粉と各種パン

freeangle / PIXTA(ピクスタ)

小麦品種の選定では、「地域の気象条件」と「需要の実情」の2つのポイントを考慮します。

<地域の気象条件>

  • 小麦は冬作物であり、特に冬期の気温条件が栽培可能な品種を左右します。
  • 病気や穂発芽などの障害が発生しやすい地域では、耐病性や障害耐性のある品種を選ぶ必要があります。

<需要の実情>

  • 小麦の作付けでは、製粉会社や加工業者など実需者との播種前契約が推奨されます。
  • 播種前契約によって安定した販路の確保が可能になります。
  • 実需者の要望に合う特性の品種を選ぶ必要があります。

特に、気候の影響を受けやすい小麦はまず地域に適した品種を選ぶことが重要です。次章以降では、地域ごとの主な栽培品種とその特徴について解説します。

北海道で栽培されている主な小麦品種

小麦畑 小麦 麦

小麦畑 小麦 麦
gonbe / PIXTA(ピクスタ)

日本一の小麦産地である北海道は、2023年(令和5年)産の小麦収穫量において、全国の109万4,000tに対して71万7,100tと、65.5%を占めています。

さらに、作付面積でも、全国の23万1,700haの57.1%に当たる13万2,300haを北海道が占めています。

北海道で栽培されている主な小麦5品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
きたほなみ2009年9月秋まき小麦日本麺用やや早生やや強やや強やや弱やや難
ゆめちから2011年3月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生やや強やや強
春よ恋2001年3月春まき小麦パン・中華麺用中生やや強---やや難
はるきらり2010年3月春まき小麦パン・中華麺用中生---
キタノカオリ2003年3月秋まき小麦パン・中華麺用中生かなり強

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

このように、日本の一大小麦生産地である北海道で多く栽培されている小麦は、以下の5品種です。

  • きたほなみ
  • ゆめちから
  • 春よ恋
  • はるきらり
  • キタノカオリ

これら5品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

きたほなみ

「きたほなみ」は、2009年9月に品種登録された主に日本麺用の品種です。農林水産省の「令和5年産麦の農産物検査結果」より、「きたほなみ」の検査数量は56万2,726tであり、国内で最も多く栽培された品種です。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性はやや早生で穂発芽性はやや難です。

「きたほなみ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性はやや強、赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性はやや弱です。

ゆめちから

「ゆめちから」は、2011年3月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。北海道で最も多く栽培されていますが、兵庫県・滋賀県・福井県など他県での栽培例もあります。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性はやや早生で穂発芽性は中となっています。

「ゆめちから」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性としま萎縮病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性はやや強です。

春よ恋

「春よ恋」は、2001年3月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。

春播き栽培の作型に適しており、早晩性は中生で穂発芽性はやや難となっています。

「春よ恋」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性はやや強、うどんこ病抵抗性は強、赤かび病抵抗性は中です。

はるきらり

「はるきらり」は、2010年3月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。

春播き栽培の作型に適しており、早晩性は中生で穂発芽性は難です。

「はるきらり」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性は中となっています。

キタノカオリ

「キタノカオリ」は、2003年3月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性は中生で穂発芽性は中です。

「キタノカオリ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性はかなり強、うどんこ病抵抗性は強、赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性は弱となっています。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
一般社団法人 北海道農産協会「令和6年(2024年)北海道の小麦づくり」所収「Ⅱ 小麦品種の特性と栽培上の注意点」
農林水産省「登録品種データベース|18438」
農林水産省「登録品種データベース|20751」
農林水産省「登録品種データベース|8834」
農林水産省「登録品種データベース|19304」
農林水産省「登録品種データベース|11095」

九州地域で栽培されている主な小麦品種

小麦粉と麦の穂

masamimix / PIXTA(ピクスタ)

九州地域の2023年(令和5年)産小麦収穫量は15万2,400tであり、北海道に次いで2番目に小麦収穫量が多い地域です。九州地域の小麦作付面積は3万7,900haで、こちらも北海道に次いで2番目に多い数値となっています。

九州地域で栽培されている主な小麦4品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
シロガネコムギ1974年12月秋まき小麦日本麺用やや早生やや弱---
チクゴイズミ1996年1月秋まき小麦日本麺用やや早生やや強やや弱
ミナミノカオリ2006年7月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生やや強やや強やや弱やや易
ラー麦(ちくしW2号)2010年8月秋まき小麦中華麺用早生---やや強やや弱

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

このように、全国2番目の小麦生産地である、九州地域で多く栽培されている小麦は、以下の4品種です。

  • シロガネコムギ
  • チクゴイズミ
  • ミナミノカオリ
  • ラー麦(ちくしW2号)

これら4品種について、それぞれの用途・早晩性・病害抵抗性などの特性を解説します。

シロガネコムギ

九州地域の主力品種である「シロガネコムギ」は主に日本麺用の品種です。1974年12月と約50年前に認定され、農林水産省「令和5年産麦の農産物検査結果」における検査数量は6万3,478tと全国で3番目に多い数値を示しています。九州地域では福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県で栽培されています。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難です。

シロガネコムギの主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性はやや弱、うどんこ病抵抗性は強、しま萎縮病抵抗性は強となっています。

チクゴイズミ

「チクゴイズミ」は、1996年1月に品種登録された日本麺用の品種です。九州地域では、福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県で栽培されています。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難です。

「チクゴイズミ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性はやや強、うどんこ病抵抗性はやや弱、赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性は強となっています。

ミナミノカオリ

「ミナミノカオリ」は、2006年7月に品種登録されたパン・中華麺用の秋播き小麦品種です。九州地域では、主に福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県で栽培されています。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性はやや易という特性を持っています。

「ミナミノカオリ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性はやや強、赤かび病抵抗性はやや弱、しま萎縮病抵抗性は強です。

ラー麦(ちくしW2号)

「ラー麦」は、ラーメンに適した小麦として福岡県が開発し、「ちくしW2号」の品種名で2010年8月に品種登録されました。福岡県内で限定栽培されています。

秋播き栽培の作型に適しており、早晩性は早生、穂発芽性は難です。

「ラー麦(ちくしW2号)」の主要な病害に対する抵抗性は、うどんこ病抵抗性はやや強、赤かび病抵抗性はやや弱、しま萎縮病抵抗性は強となっています。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「アグリナレッジ|シロガネコムギ」
農林水産省「登録品種データベース|4830」
農林水産省「登録品種データベース|14302」
農林水産省「登録品種データベース|19702」
農研機構「とんこつラーメン用小麦新品種「ちくしW2号」の育成」
福岡県「「ラー麦」とは」

関東地域で栽培されている主な小麦品種

小麦畑

めがねトンボ / PIXTA(ピクスタ)

関東地域(関東・東山地域)の2023年(令和5年)産小麦収穫量は7万7,500tであり、小麦作付面積は、2万1,400haです。

関東地域で栽培されている主な小麦2品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
さとのそら2010年10月秋まき小麦日本麺用やや早生
ゆめかおり2010年10月秋まき小麦パン・中華麺用中生やや強やや強やや難

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

関東地域で小麦栽培が活発なのは群馬県・埼玉県・茨城県・栃木県で、多く栽培されている小麦は以下の2品種です。

  • さとのそら
  • ゆめかおり

以上の2品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

さとのそら

「さとのそら」は、2010年10月に品種登録された日本麺用の品種です。関東地域では、主に茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難という特性を持っています。

「さとのそら」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性としま萎縮病抵抗性は強、赤かび病抵抗性は中となっています。

ゆめかおり

「ゆめかおり」は、2010年10月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。関東地域では、主に茨城県・栃木県・群馬県・長野県で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は中生、穂発芽性はやや難という特性を持っています。

「ゆめかおり」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性としま萎縮病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性はやや強です。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「さとのそら」
農林水産省「登録品種データベース|19991」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ゆめかおり」
農林水産省「登録品種データベース|19992」

東海地域で栽培されている主な小麦品種

小麦粉と玄麦

gori910 / PIXTA(ピクスタ)

東海地域の2023年(令和5年)産小麦収穫量は7万5,700t、小麦作付面積は1万7,700haとなっており、北海道、九州地域、関東・東山地域に次いで、全国で4番目の小麦生産量と小麦作付面積を誇ります。

東海地域で栽培されている主な小麦4品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
きぬあかり2011年3月秋まき小麦日本麺用やや早生やや弱
あやひかり2003年8月秋まき小麦日本麺用やや早生やや弱やや強
イワイノダイチ2002年1月秋まき小麦日本麺用やや早生やや強やや強
ゆめあかり2014年5月秋まき小麦パン・中華麺用中生中~やや強

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

東海地域内での小麦収穫量は、多いほうから愛知県、三重県、岐阜県、静岡県の順番です。東海地域で多く栽培されている小麦は以下の4品種です。

  • きぬあかり
  • あやひかり
  • イワイノダイチ
  • ゆめあかり

これら4品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

きぬあかり

「きぬあかり」は、2011年3月に品種登録された日本麺用の品種です。東海地域で最も多く栽培されている品種で、主に愛知県と静岡県で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難という特性を持っています。

「きぬあかり」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性と赤かび病抵抗性は中、うどんこ病抵抗性はやや弱、しま萎縮病抵抗性は強です。

あやひかり

「あやひかり」は、2003年8月に品種登録された日本麺用の品種です。東海地域では主に三重県で栽培されており、東海地域以外では埼玉県でも多く栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難という特性を持っています。
「あやひかり」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性はやや弱、赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性はやや強となっています。

イワイノダイチ

「イワイノダイチ」は、2002年1月に品種登録された日本麺用の品種です。東海地域では、主に岐阜県で栽培されていおり、東海地域以外では栃木県でも多く栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は中という特性を持っています。

「イワイノダイチ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性と赤かび病抵抗性は中、うどんこ病抵抗性としま萎縮病抵抗性はやや強です。

ゆめあかり

「ゆめあかり」は、愛知県が県内での普及をめざして2014年5月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。愛知県でのみ栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は中生、穂発芽性は難という特性を持った品種です。

「ゆめあかり」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性は中~やや強です。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「登録品種データベース|20752」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「きぬあかり」
愛知県「技術情報」所収「小麦新品種「きぬあかり」の特性と施肥体系
農林水産省「登録品種データベース|11363」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「あやひかり」
農林水産省「登録品種データベース|9647」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「イワイノダイチ」
農林水産省「登録品種データベース|23409」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ゆめあかり」

近畿地域で栽培されている主な小麦品種

麦畑

PIXTOKYO / PIXTA(ピクスタ)

近畿地域では、2023年(令和5年)に8,920haの作付面積で、3万300tの小麦が生産されました。特に滋賀県で盛んに栽培されており、2023年(令和5年)の滋賀県の小麦収穫量2万4,200tは、近畿地域全体の79.9%を占めています。

近畿地域で栽培されている主な小麦4品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
びわほなみ2022年2月秋まき小麦日本麺用早生やや弱やや弱弱~やや弱
ふくさやか2005年3月秋まき小麦日本麺用早生やや弱やや弱
せときらら2014年5月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生---
ふくほのか2009年9月秋まき小麦日本麺用やや早生

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

近畿地域で多く栽培されている小麦は以下の4品種です。

  • びわほなみ
  • ふくさやか
  • せときらら
  • ふくほのか

これら4品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

びわほなみ

「びわほなみ」は、2022年2月に品種登録された日本麺用の品種です。2023年(令和5年)は全国のうち滋賀県でのみ栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は早生、穂発芽性は中という特性を持っています。

「びわほなみ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性はやや弱、赤かび病抵抗性は弱、しま萎縮病抵抗性は弱~やや弱です。

ふくさやか

「ふくさやか」は、2005年3月に品種登録された日本麺用の品種です。近畿地域では滋賀県を中心に栽培されている品種です。

秋播き栽培に適しており、早晩性は早生、穂発芽性は中という特性を持っています。

「ふくさやか」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性は弱、うどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性はやや弱、しま萎縮病抵抗性は中となっています。

せときらら

「せときらら」は、2014年5月に品種登録されたはパン・中華麺用の品種です。近畿地域では、京都府・兵庫県で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難という特性を持ちます。

「せときらら」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性は弱、赤かび病抵抗性は中となっています。

ふくほのか

「ふくほのか」は、2009年9月に品種登録された日本麺用の品種です。近畿地域では兵庫県を中心に栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難です。「ふくほのか」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性は強、うどんこ病抵抗性は弱、赤かび病抵抗性としま萎縮病抵抗性は中です。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「登録品種データベース|28960」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「びわほなみ」
農研機構「品種詳細|びわほなみ」
農研機構「多収で製粉性に優れる日本めん用の小麦新品種「びわほなみ」」
農林水産省「登録品種データベース|12963」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ふくさやか」
農林水産省「登録品種データベース|23408
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「せときらら」
農林水産省「登録品種データベース|18496」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ふくほのか」

中国・四国地域で栽培されている主な小麦品種

収穫した麦

freeangle / PIXTA(ピクスタ)

中国地域の2023年(令和5年)産小麦収穫量は1万900t、小麦作付面積は3,130haです。また、四国地域の2023年(令和5年)産小麦収穫量は1万1,500t、小麦作付面積は3,110haです。

中国・四国地域で栽培されている主な小麦2品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
さぬきの夢20092012年7月秋まき小麦日本麺用早生------------やや難
農林61号1944年2月秋まき小麦日本麺用中生------

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

小麦栽培が活発なのは、中国地域では山口県・岡山県、四国地域では香川県・愛媛県となっています。四国・中国地域で広く栽培されているのは、以下の2品種です。

  • さぬきの夢2009
  • 農林61号

以上の2品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

さぬきの夢2009

「さぬきの夢2009」は、うどんに適した小麦として香川県が開発した品種で、2012年7月に品種登録されました。主に香川県内で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は早生、穂発芽性はやや難です。

香川県では「さぬきの夢2009」の後継となる新品種の育成が進んでおり、2023年7月には後継品種にあたる「さぬきの夢2023」の品種登録出願が完了しています。

農林61号

「農林61号」は、80年以上前の1944年2月に認定された品種で、現在でも全国各地で栽培されている日本麺用の品種です。中国・四国地域では、島根県で主に栽培されており、そのほかの地域では埼玉県・岐阜県・滋賀県・大分県など幅広く栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は中生です。

「農林61号」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性は弱、しま萎縮病抵抗性は強です。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「登録品種データベース|21846」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「さぬきの夢2009」
農林水産省「アグリナレッジ|小麦農林61号」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「農林61号」
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構「小麦「農林61号」の栽培特性について」

東北地域で栽培されている主な小麦品種

北海道の麦畑での収穫風景

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

東北地域全体の2023年(令和5年)産小麦収穫量は1万7,300tであり、作付面積は6,730haとなっています。

東北地域で栽培されている主な小麦2品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
ゆきちから2005年12月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生
ナンブコムギ1951年12月秋まき小麦日本麺用早生やや弱やや強やや弱

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

東北地域では、岩手県と宮城県が小麦の生産量・作付面積ともに上位を占めています。東北地域で多く栽培されている小麦は以下の2品種です。

  • ゆきちから
  • ナンブコムギ

以上の2品種について、それぞれの作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

ゆきちから

「ゆきちから」は、2005年12月に品種登録されたパン・中華麺用の品種です。東北地域では主に青森県・岩手県・山形県・福島県で栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は中です。

「ゆきちから」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性としま萎縮病抵抗性は強、赤かび病抵抗性は中です。

ナンブコムギ

「ナンブコムギ」は、70年以上前の1951年12月に認定された品種で、現在でも岩手県を中心に栽培されている日本麺用の品種です。東北地域では、岩手県・山形県を中心に栽培されています。

秋播き栽培に適しており、早晩性は早生、穂発芽性は難です。

「ナンブコムギ」の主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性としま萎縮病抵抗性はやや弱、うどんこ病抵抗性は強、赤かび病抵抗性はやや強です。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「登録品種データベース|21846」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ゆきちから」
一般社団法人農山漁村文化協会「ルーラル電子図書館|ナンブコムギ」
農林水産省「アグリナレッジ|ナンブコムギ」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ナンブコムギ」

生産量拡大中! いま注目の小麦新品種4選

小麦の栽培風景

大地爽風 / PIXTA(ピクスタ)

これから小麦の作付けを考えているなら、ぜひ注目したい品種として、近年開発されて徐々に普及が進んでいる4品種の特性を一覧にまとめました。

生産量を拡大している要注目の小麦4品種の特性一覧

品種名品種登録年月作型用途早晩性赤さび病うどんこ病赤かび病しま萎縮病穂発芽性
みのりのちから2014年5月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生---------------
はる風ふわり2022年6月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生------やや弱~中---
夏黄金2019年4月秋まき小麦パン・中華麺用やや早生
ナンブキラリ2022年7月秋まき小麦日本麺用中生やや強

出典:農林水産省「品種登録ホームページ」内「品種登録データ検索」などによりminorasu編集部作成

それぞれが育成された背景や作型・用途・早晩性などの特性を解説します。

みのりのちから(北海道)

「みのりのちから」は、北海道における超強力小麦の新品種として開発されました。2013年2月に品種登録され、「ゆめちから」と同様に秋播き品種でありながら、「ゆめちから」以上の多収性が期待されています。

主に北海道で栽培が広がっており、2020年には「パン用と中華麺用」の用途で産地品種銘柄の指定を受けています。

赤さび病などの病気や雪への耐性も高まっています。ただし、草丈がやや長いため、倒伏のリスクがあり、栽培には注意が必要です。

はる風ふわり(佐賀県)

「はる風ふわり」は、西日本地域を中心に栽培されているパン用小麦品種「ミナミノカオリ」よりも、穂発芽耐性と製パンに適した品種として育成されました。パン・中華麺用の秋播き小麦品種で、早晩性はやや早生、穂発芽性は中、赤かび病抵抗性はやや弱です。

2020年に佐賀県で産地品種銘柄に設定され、奨励品種に採用されました。その後、栽培面積が拡大し、2022年産では約1,000haとなり、生産量は4,618tを達成しています。

佐賀県を中心に栽培が広がっており、今後、西日本地域での栽培に適したパン用小麦として普及拡大が期待されています。

夏黄金(宮城県)

「夏黄金」は、東北地域の主力パン・中華麺用品種である「ゆきちから」に代わる品種として育成され、2019年4月に品種登録されました。

パン生地特性や製パン適性が優れており、「ゆきちから」では難しかった、さまざまな種類のパン製造が可能になっています。

秋播き栽培に適しており、早晩性はやや早生、穂発芽性は難となっています。

主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性とうどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性は強です。

ナンブキラリ(岩手県)

「ナンブキラリ」は、東北地域で広く栽培されてきた「ナンブコムギ」の難点を改善するために開発されました。2022年7月に品種登録され、「ナンブコムギ」と比較してしま萎縮病に対する抵抗性が高く多収であり、製麺適性が高いのが特徴です。

主要な病害に対する抵抗性は、赤さび病抵抗性はやや強、うどんこ病抵抗性と赤かび病抵抗性は中、しま萎縮病抵抗性は強です。

2023年には岩手県で奨励品種に採用され、日本麺用の秋播き小麦品種として、県内での普及や作付面積の拡大が進められています。縞萎縮病に強く安定生産が可能であり、寒冷地を中心に栽培が広がることが期待されています。

出典:
農林水産省「麦類の農産物検査結果」所収「令和5年(2023年)産麦類の農産物検査結果」
農林水産省「登録品種データベース|23407」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「みのりのちから」
農研機構「品種詳細|みのりのちから」
農林水産省「登録品種データベース|29273」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「はる風ふわり」
農研機構「プレスリリース|パン用小麦品種「はる風ふわり」の普及拡大」
農林水産省「登録品種データベース|27456」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「夏黄金」
農林水産省「登録品種データベース|29297」
農林水産省「小麦の品種別の特徴」所収「ナンブキラリ」

栽培する小麦品種を選ぶ際には、栽培地域の気象条件に適したものを選定することがポイントです。収穫後の用途や収量はもちろん、栽培地域ごとに異なる病害の発生状況も考慮しなければなりません。

この記事でお伝えした品種情報を参考にしつつ、需要の高い小麦品種を安定的に生産するための品種選びを進めてください。

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沢城アツシ

沢城アツシ

フリーランスのWebメディア編集者・ライターとして活動中。大学では農学を専攻し、大手・ベンチャー企業で研究職として15年勤務した経験を生かした、農業を中心とする科学系全般の記事執筆が得意です。その他にも、飲食店経営・不動産投資・金融サービスなどのWebメディアから企業のプレスリリースまで幅広い分野の執筆を手掛けています。

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