大豆のコンバイン収穫マニュアル|ロスを減らす機械化のコツ
大豆の収穫作業は、効率的な機械化によって収穫ロスを減少させることが可能です。特にコンバインを使用することで、収穫と脱穀の負担を軽減できます。この記事では、大豆栽培の機械化に取り組むプロ農家に向けて、収量アップにつながるコンバインの選び方や作業のポイント、コンバイン収穫に適した品種を紹介します。
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大豆収穫に使えるコンバインの種類と選び方
大豆の収穫に使えるコンバインは、大きく分けて「大豆用コンバイン」と「汎用コンバイン」の2種類があり、作業性能が栽培環境に適しているか検討する必要があります。それぞれの特徴は以下の表の通りです。
特徴/製品 | 大豆用コンバイン(YH400) | 汎用コンバイン(YH1170) |
---|---|---|
適用作物 | ・大豆 ・小豆 ・黒大豆 ・麦 ・そば ・なたね ・雑穀類 | ・大豆 ・小豆 ・麦 ・そば ・子実とうもろし ・水稲 |
コンケーブ | ロールパイプ式 | 従来式 |
脱こくローター | 軸流式スパイラルロングローター | スクリュー式ロングローター |
ロークロップヘッダー | 装着可 | 装着可 |
出典:ヤンマーホールディングス株式会社所収
「普通型コンバインYH400」
「普通型コンバインYH1170」
大豆用コンバイン
出典:ヤンマーアグリ株式会社「普通型コンバインYH400」
写真提供:ヤンマーアグリ株式会社
大豆用コンバインは大豆の収穫に適した機能により、汚粒の発生や収穫ロスの低減を実現します。ヤンマーアグリ株式会社「YH400」を例に挙げると、大豆収穫に適した以下の機能があります。
軸流式スパイラルロングロータ
- 大豆へのダメージを軽減しながら脱粒できる
- 割粒や裂皮、茎への損傷も低減でき、茎汁による汚粒の発生を抑える
パイプ式ローラーコンケーブ
- 稈(かん)のささりを抑えることで、きれいに脱こくできる
- 従来のコンケーブよりも高い強度を持ち、作業能率が向上している
大豆の取引価格は等級によって変動するので、収穫時のダメージをいかに軽減するかがポイントになります。大豆用コンバインは、本来の品質を保ちながら、よりスムーズで効率的な収穫を行うことが可能です。
また、近年の大豆用コンバインは、小豆やそば、麦などといったさまざまな穀物類の収穫にも対応しており、汎用的な一面を併せ持ちます。
出典:ヤンマーホールディングス株式会社所収「普通型コンバインYH400」
汎用コンバイン
出典:ヤンマーアグリ株式会社「普通型コンバインYH1170」
写真提供:ヤンマーアグリ株式会社
汎用コンバインは大豆のみならず、子実とうもろこしや水稲などの穀物の収穫にも対応しています。大豆栽培をメインとしながらもほかの穀物を裏作にしている場合、汎用コンバインを検討するとよいでしょう。
汎用コンバインの作業性能の目安は、以下のとおりです。
性能 | 数値 |
---|---|
収穫速度 | 2.00m/s |
グレンタンク容量 | 1,900L |
刈幅 | 3,230mm ※スーパーワイドヘッダー装着時 |
出典:ヤンマーホールディングス株式会社所収「普通型コンバインYH1170」
一方で汎用コンバインは、収穫する作物(大豆や麦など)に合わせて、回転速度の設定や部品を交換する必要があります。
コンバイン収穫に適した大豆品種
olko21393 / PIXTA(ピクスタ)
コンバインの収穫に適した大豆の品種を選ぶときは、主に3つのポイントがあります。
- 倒伏・裂莢(れっきょう)しにくい
- 最下着莢(ちゃっきょう)位置が高い
- 青立ちが少ない
これらの栽培特性とともに、適した品種を紹介します。
倒伏・裂莢しにくい
コンバインの収穫に適した大豆は、倒伏・裂筴への耐性を持つ品種です。倒伏に耐性を持たない品種は、天候などの影響を受けて地面に倒れやすいことが懸念されます。倒れてしまうと、コンバインでの刈り取りが困難になり、計画どおりの収量は期待できません。
裂筴に耐性を持つ品種は、脱こくされるときにはじけるリスクを抑えられるため、品質の低下を防げます。
倒伏・裂筴へ耐性を持つ大豆の品種は、以下のとおりです。
- シュウリュウ
- あきみやび
- はれごころ
出典:
農研機構「シュウリュウ」
農研機構「あきみやび」
農研機構「ウイルス病に強く難裂莢性を備える温暖地向けだいず新品種「はれごころ」」
最下着莢(ちゃっきょう)位置が高い
大豆の最下着莢位置が高いと、コンバイン収穫時の損傷が軽減でき、作業性も向上します。反対に、着莢位置が低いと、収穫物を刈り残す確率が高くなります。
低位置での刈り取りになると、コンバインが土を巻き込んでしまい、トラブルの原因になることもあります。そのため、機械化を検討する際は、着莢位置が高い品種を選ぶことも重要です。
最下着莢位置が高い大豆の品種は、以下のとおりです。
- 里のほほえみ
- タチナガハ
- リュウホウ
出典:
千葉県所収「大豆「里のほほえみ」は難裂莢性で青立ちが少ない早生品種です!」
福島県「平成10年(1998年)度~平成17年(2005年)度の研究成果」所収 「大豆の層位別着莢特性と機械収穫適応性」
農研機構「白目・良質・多収だいず新品種「リュウホウ」」
青立ちが少ない
大豆の青立ち性もコンバインの収穫には重要です。青だちの状態の株をコンバインで収穫してしまうと、茎の水分量が多いため、水分が豆に付着し、汚粒発生の原因となります。
青立ちが少ない大豆の品種は、以下のとおりです。
- はつさやか
- ちくしB5号
これらの品種は、倒伏への耐性・着莢位置が高いという特徴も兼ね備えています。品種選びに迷う農家にも扱いやすい大豆といえるでしょう。
出典:
農研機構「はつさやか」
農林水産省「九州ブロック」所収「大豆新品種「ちくしB5号」 栽培技術マニュアル」
【技術情報】 汚粒・ヘッドロスを低減する作業のポイント
たかきち/ PIXTA(ピクスタ)
大豆をコンバインで収穫するときに最も重要なのは、汚粒・ヘッドロスの発生を防ぐことです。汚粒・ヘッドロスを低減させる作業のポイントについて解説します。
収穫適期・時刻の見極め
大豆の品質を保つためには、収穫適期と時刻を見極めることが重要です。それぞれの判断目安は以下のとおりです。
収穫適期の目安
- 大豆全体の色が褐色化してきたとき
- 筴(さや)を振ったときに「カラカラ」と音がする
収穫時刻の目安
- 晴天時は10:00〜17:00が最適
- 前日晴れていたが、当日曇りの場合は11:00〜15:00までにする
収穫時期が早すぎると大豆の子実や茎の水分量が多いため、汚粒発生のリスクを高めます。一方で時期が遅すぎると、自然落粒やしわ粒が増えるので注意してください。
収穫する時間帯は、水分量が多くなる朝方や夕方を避ける必要があります。
機械化に適した条間・株間
機械化に適した条間、株間、培土高は、コンバインで使用するアタッチメントによって決まります。主に2種類のアタッチメントがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。
「リールヘッダ」は、刈り取り部分に回転するリールを装備しており、このリールが大豆の茎を持ち上げてカッターバーに導くことで収穫を行います。リールヘッダでは、一度に1行を収穫できます。
一方の「ロークロップヘッダ」は、複数の行を同時に収穫できる特徴があります。ローターやカッターが作物の間を通過し、作物を引き抜く、または切り取ることで効率的な収穫を実現します。
これらのアタッチメントの特性に合わせて栽培方法を最適化することで、より効率的な収穫作業が可能になります。
それぞれの条間・株間・培土高の目安は以下の表を参考にしてください。
リールヘッダ | ロークロップヘッダ (CRC954) | |
---|---|---|
条間 | 60〜75cm | 66cm |
株間 | 20〜25cm | - |
培土の高さ | 20cm以下 | 20cm以下 |
出典:ヤンマーホールディングス株式会社所収「平成23年(2011年)度版:上手な大豆収穫のしかた」
着莢高を上げる栽培方法
大豆の着莢高を上げる方法として、「不耕起無中耕栽培技術」を試すのも1つの方法です。
不耕起無中耕栽培技術とは、田畑で大豆を栽培する期間中、耕起を一切せずに育てる技術です。この技術により、大豆の根や茎にダメージを与えずに済むため、生育の助長が期待できます。
農研機構によると、コンバインで大豆を収穫する際、最下着莢位置と刈り高さの差を5cm以上確保することで、汚粒やヘッドロスの発生率を下げることができると報告されています。
出典:農研機構「大豆の汚粒低減のためのコンバイン収穫条件と大豆クリーナの利用法」
作業速度と部品選び
コンバインの作業スピードを落とすことも、汚粒発生の軽減に効果的です。大豆が収穫時に受けるダメージは、作業スピードを調整するだけで減らせます。
また、コンバインの部品にフッ化樹脂コートを採用するのも有効です。主要部品である「揺動選別機構」や「オーガ」などをフッ化樹脂コートの仕様に変更すれば、穀粒損失の低減に期待できます。フッ化樹脂コートの耐久性は、実用的であることもすでに評価されています。
出典:農研機構「汎用コンバインの大豆収穫時における汚粒発生低減技術」
大豆のコンバイン収穫で重要な「雑草対策」
E&W/ PIXTA(ピクスタ)
大豆栽培で農家の頭を悩ませるのが「雑草」です。収穫時における雑草の影響は、以下のようになります。
- 汚粒発生の増加
- ヘッドロスの増加
- コンバインの故障率増加
そのため、雑草対策に取り組まなければ、収益を減らすことになります。雑草の防除は農薬を使えば対処できますが、散布する適期を見極めるのが困難なことも事実です。
適期を逃すリスクを最小限に抑えるには、例えば栽培管理システム「xarvio®(ザルビオ)フィールドマネージャー」を活用することができます。ザルビオを導入した農家は、除草剤のコストや業務時間の削減、そして収量の大幅な向上を実現しています。
栃木県 冨田様
■栽培作物
大豆
父親の代から比べると、管理する圃場数も増えてきており、効率的に農業を行うことが常に経営課題
▷除草剤を撒くタイミングを経験に頼っていて、雑草に悩まされていた
▷管理する圃場数も増えてきており、効率的に農業を行うことが常に経営課題
▷ザルビオを導入した圃場は80%の増収
▷除草剤のコストを12%削減!
▷手前や労力も大きく削減、お悩みも解決
HAPPY SMILE / PIXTA(ピクスタ)
大豆収穫を効率化するには、コンバインの購入、品種選定、収穫適期・時刻の見極め、雑草防除など、検討すべき課題が複数あります。
しかし、それぞれの課題を解決することで、作業負担を軽減しながら収益の向上まで見込めます。雑草防除に当たっては、手軽に導入できる栽培管理システム「ザルビオ」の活用も検討して見てください。
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相馬はじめ
農業×SEOに特化した専業Webライター。農業法人に正社員として8年間勤めた経歴を持つ。これまでに携わった作物は「キャベツ・白菜・レタス・長ネギ・馬鈴薯・米・麦・そば」。得意な執筆ジャンルは農業・音楽・転職など多岐にわたる。強みはコミュニケーション力の高さと、誰とでも打ち解けられること。minorasuでの執筆以外では、農業初心者に向けたブログ『農業はじめるなら見るブログ』を運営中。https://hajimete-hirogaru.com/