作業時間30%削減!雑草管理で大豆栽培を効率化する方法
大豆栽培で悩ましい雑草対策を効率化する「雑草管理プログラム」の導入事例を紹介します。除草作業の時間とコストを削減し、適切なタイミングでの除草により収量が最大80%もアップした事例もあります。
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大豆栽培では、連作障害を考慮した作付計画に始まり、ほ場の排水対策、播種予措、雑草防除、中耕培土、病害虫防除と、収穫を迎えるまでに必要な工程が数多くあります。
その中でも、多くの大豆農家を悩ませ、時間がかかっているのが雑草防除です。
出典:農林水産省「農業経営統計調査|令和3年産農産物生産費(個別経営)|大豆」よりminorasu編集部作成
中耕除草にかかる時間は、規模の大小にかかわらず、直接労働時間の3割前後を占めています。追肥や栽培管理、防除の一部も雑草対策にあてられるとすると、雑草防除にかかる時間はもっと多くなります。
防除時間の短縮は、大豆農家にとって重要な課題といえそうです。
今、大豆農家を悩ませる難防除雑草の存在
大豆栽培で問題になる難防除雑草の例
大豆作の雑草防除は、播種の直後に土壌処理型除草剤を使い、生育期に、培土を兼ねて複数回の中耕除草をするのが一般的です。慣行の対策では防除が難しい雑草を「難防除雑草」といい、外来種が多いことが知られています。
大豆栽培での代表的な難防除雑草としては「帰化アサガオ類」「アレチウリ」「ヒロハフウリンホオズキ」「カロライナツユクサ」「イヌホオズキ」「ニシキアオイ」などが挙げられます。
難防除雑草は、防除の機会を逸すると急速に蔓延します。そして、蔓延してからの防除には手間もコストもかかります。
さらに残草は、大豆の生育を妨げるだけでなく、収穫時にコンバインが雑草を巻き込むため、汚損粒の発生やコンバインの故障につながります。
※全国平均は2021年産。帰化アサガオ類蔓延ほ場は、農研機構 中日本農業研究センターが調査した関東以西のほ場の2014・2015年の2ヵ年平均
出典:農林水産省「農業経営統計調査|令和3年産農産物生産費(個別経営)|大豆」、農研機構「研究情報|研究活動報告|中日本農業研究センター|診断に基づく栽培改善技術導入支援マニュアル(小麦・大麦のWEBシステムを大幅 にリニューアル)」所収「大豆栽培における難防除雑草の防除」よりminorasu編集部作成
例えば、帰化アサガオ類蔓延ほ場の労働時間の内訳をみると、全国平均と比べて除草にかかる時間が倍以上、特に残草の手取り除草に多くの時間がかかっていることがわかります。
大豆の難防除雑草を増やさない!使える除草剤を「適期」を逃さずつかうこと
難防除雑草は、繁茂するスピードが早いため、蔓延する前に密度を下げることが重要です。
難防除雑草に使える除草剤は少ない
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
難防除雑草が多いほ場では、播種後の土壌処理型除草剤と生育期の中耕除草だけでは雑草を抑えきれないため、生育期にも除草剤を使います。
生育期に使える除草剤としては「大豆バサグラン液剤」「アタックショット乳剤」「パワーガイザー液剤」などが挙げられますが、いずれも1回しか使えません。
そのため、防除適期を逃すと、収穫の直前まで除草剤の畝間散布と手取り除草に追われることになります。
雑草ごとに違う「適期」を逃さないことが重要
出典:農研機構「研究情報|研究活動報告|中日本農業研究センター|診断に基づく栽培改善技術導入支援マニュアル(小麦・大麦のWEBシステムを大幅 にリニューアル)」l 所収「大豆栽培における難防除雑草の防除」よりminorasu編集部作成
厄介な難防除雑草も、大豆の葉が畝間を覆うまでに、雑草の出芽期と遅くも4葉期ごろまでのタイミングを狙って除草剤を使うことで十分な効果が得られます。ただし、雑草によって出芽の期間や展葉の時期、後発子葉の発生時期が異なるので、防除適期も違ってきます。
防除適期を逃すと、除草剤を使用しても残草量が増えてしまいます。逆に適期を捉えて防除できれば、手間もコストも抑えて、収量を十分に確保できます。
マルバアメリカアサガオの葉齢が高くなってからでは枯死率が低くなる。1剤目の処理は大豆の2葉期、2剤目の処理は大豆の4葉期に行うとよいことがわかる。
出典:農研機構「植物防疫研究部門|2021年の成果情報|ダイズ作における化学的、耕種的防除手段を組み合わせたマルバアメリカアサガオ防除技術」よりminorasu編集部作成
農研機構の試験では、大豆2葉期+4葉期に除草剤を使う防除体系では、土壌処理型除草剤+手取りで完全に除草を行った場合と同程度の収量が得られる、と報告されています。
では、大豆と雑草の葉齢の関係から、防除適期を見極めるにはどうしたらよいのでしょうか。
1つめの解決策は、地域で協力して7月~9月に、雑草の種類・発生場所・発生程度の記録を集めて共有することです。
その年の収穫は、コンバインに付いた種子を広げないために雑草の発生程度が低いほ場から始めます。そして次年は、ほ場ごとの防除暦を作るのに活かしていきます。
2つめの解決策は、農研機構が開発した「Excel版雑草防除支援マップ」が挙げられます。
ほ場図情報と大豆の播種日、気温データ、品種別のモデルデータを入力することで、防除適期を色分けしてくれるエクセルマクロです。ただし、各種データを自分で揃えなければならず、生産者には扱いが難しいツールです。詳細は農研機構に問い合わせてください。
出典:農研機構「大豆雑草防除適期をマップ表示するMicrosoftExcel用マクロプログラム」
3つめの解決策は、雑草管理システムの活用です。
代表的なものとして、独・BASF社「ザルビオ(xario)フィールドマネージャー」の「雑草管理プログラム」があります。品種と雑草の種類を入力するだけで、AIがおすすめの除草剤と処理時期を選んでくれるアプリです。
雑草管理プログラムは、地域で協力体制をつくったり、自分でデータ集めをせずとも、簡単に防除適期を見極められることが大きな利点です。
適期防除でコスト削減&収量アップ
この章では、「ザルビオ」の「雑草管理プログラム」の導入効果を実感されたユーザーの声と使い方を紹介します。
ツールを活用したユーザーの声「手間が減った上に80%の増収、12%のコスト削減を実現」
栃木県で大豆作20年以上のベテラン農家 冨田裕司さん
画像提供:BASFジャパン株式会社「大豆雑草管理プログラムを活用して、大豆畑から雑草が消えました!」
栃木県で20年以上大豆を栽培している冨田さんは、「ザルビオ」を利用して雑草管理を行っています。
導入前は、大豆用除草剤のラベルの説明通りに、大豆の葉齢にあわせて年3回の撒布作業を行っていたそうです。それでも収穫前には手取り除草をしなければならならず、雑草害に悩まされていたため、「雑草管理プログラム」の導入を決めました。
出典:BASFジャパン株式会社「大豆雑草管理プログラム を活用して、大豆畑から 雑草が消えました!」よりminorasu編集部作成
雑草管理プログラムを導入したことで、年3回行っていた除草剤の回数が年2回で済むようになり、除草剤のコストは12%削減できました。
さらに、手取り除草をほとんどする必要がなくなり、作業時間を大幅に短縮できました。
収穫前の除草が不要になり、スムーズに収穫作業を始めることができるようになったそうです。
富田さん「大豆用除草剤のラベルには、大豆の何葉期にこの除草剤を撒くと記載されていますが、実はこれを正しく理解できていませんでした。除草剤を撒くタイミングを経験に頼って行っていたので、結果的に、雑草に悩まされていたのかもしれません。」
ザルビオを導入したことで、雑草防除の悩みから解消されたといいます。
富田さん「ザルビオ通りに除草剤を散布した圃場は雑草が少なく、雑草を手で抜く必要がありませんでした。収穫作業も雑草が絡まって大変だったのですが、その悩みからも解放されました。」
ザルビオ(xarvio)フィールドマネージャー「雑草管理プログラム」が、大豆の葉齢と雑草の状況によって、最適な防除タイミングを知らせてくれる
画像提供:BASFジャパン株式会社
そして、雑草管理プログラムを導入したほ場は、雑草の発生を抑制させたことで、なんと大豆収量が80%アップ。大豆の生育ステージについての理解も深まったといいます。
富田さん「収穫作業の中で、収量が上がっている手ごたえを感じることができてうれしかったです。大豆農家の方には、是非ザルビオのすばらしさを理解してもらいたいです。」
データ上での収量アップだけでなく、確かな手ごたえを実感されているそうです。
▼富田さんのインタビュー詳細はこちら。また、富田さんの実際のお声を動画でご覧ください。
BASF「ザルビオ導入事例_大豆畑から雑草が消えて収量アップ」
雑草管理システムの使い方は?
ザルビオ(xarvio)フィールドマネージャー「雑草管理プログラム」に、土壌の種類と対象雑草、防除体系を登録しておくと、発生リスクが通知されるため、早期の防除対応が可能に。
画像提供:BASFジャパン株式会社
雑草管理プログラムは、ほ場の土壌種類、除草剤の散布方法、防除対象の雑草を登録するだけで、おすすめの防除体系と除草剤が表示されます。
ザルビオ(xarvio)フィールドマネージャー「雑草管理プログラム」に、土壌の種類と対象雑草、防除体系を登録しておくと、発生リスクが通知されるため、早期の防除対応が可能に。
画像提供:BASFジャパン株式会社
また、ザルビオを利用することによって、スマートフォンやパソコンでいつでもほ場の状態を確認することができます。
ザルビオの会員登録は無料です。雑草管理プログラムなどのAI機能を活用できる中級者向けプランは、1作物・2haなら年額13,200円(税込)<月当たり1,100円>から始められます。
月額に換算すると1,000円台のこのプランには、雑草管理プログラムのほか、生育ステージ予測、病害リスク予測、防除推奨アラート、水稲の水管理推奨アラートなど、収量アップや効率化につながるプログラムが多数含まれています。
手軽な金額で始められる「ザルビオ」の「雑草管理プログラム」。雑草防除に悩む多くの農家にとって力強いパートナーとなるのではないでしょうか?
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