プロファインダーでハウスを見える化!収量アップの事例も紹介
ハウス内環境を「見える化」する株式会社誠和の「プロファインダー」を使い、農業経営に役立つデータ活用法を解説します。気温やCO2濃度などをリアルタイムで把握することで、収量改善やコスト削減を実現した事例を紹介。
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プロファインダーではハウス内環境をパソコンやスマートフォンでリアルタイムで確認でき、得られたデータを環境改善や収量予測に活用できるのが特徴です。まずはプロファインダーの機能を確認してみましょう。
プロファインダーとは?
株式会社誠和が開発した「プロファインダー」には、環境モニタリング機器の「プロファインダーⅣ」と、上位機種であり環境制御も可能な「プロファインダーNext80」の2機種があります。
この記事では、環境測定の基本機種であるプロファインダーⅣ(以下、プロファインダーと表記)の開発背景や機能・製品ラインアップについて解説します。
ハウス内の環境を見える化する「プロファインダー」
株式会社誠和 Youtube公式チャンネル「【プロファインダークラウド】環境グラフ ~基本操作編~」
作物の生産性を高めるためには、ハウス内の環境を見える化することが必要不可欠という考え方をもとに開発されたのが、プロファインダーです。植物生産や施設園芸で最低限必要な環境因子などをハウス内に設置したセンサーで収集し、最大10ヵ所のハウス内環境をリアルタイムでモニタリングすることが可能です。
出典:株式会社誠和 ホームページ
ユーザー専用の「プロファインダー友の会」に会員登録すると(年会費有料)、会員専用サイトで環境・生育調査などのデータ活用方法を入手できるほか、承認し合った会員同士でハウス内環境のデータ共有が可能です。
データ活用や環境制御の技術を少人数制で学ぶ新時代農業塾や全国各地で開催される勉強会・交流会に参加できるなど、情報収集のチャンスが広がります。
プロファインダーの機能は?
プロファインダーでは、ハウス内に設置した通風式温湿度・CO2センサーや日射センサー・培地温センサーでリアルタイムでデータを収集します。収集したデータは、パソコンにインストールした専用のロガーソフトで一覧表示され、グラフ表示も可能です。
ハウスごとの環境も比較でき、CSV形式で収集データをダウンロードしてほかのシステムでの分析にも活用できます。CO2濃度のほか、以下のデータを収集可能です。
株式会社誠和 Youtube公式チャンネル「【プロファインダークラウド】環境グラフ説明」
プロファインダー本体とパソコンはLANケーブルで接続するしくみです。ただし、ハウス内へのセンサー設置では屋外の電気・配線工事が伴うため、専門業者への依頼をおすすめします。
また、パソコンの電源が切れるとその間のデータは蓄積できないため、データ記録専用のパソコンの準備が必須です。
プロファインダーの製品ラインナップ・価格
プロファインダーの本体1台あたりに日射センサーは1台、温度センサープラスは2台まで接続可能です。標準価格は以下のとおりです(税抜)。
「プロファインダークラウド」に契約すると、インターネットに接続されたスマートフォンやタブレットからもハウス内の情報を参照できます。ハウス内で把握した情報をその場で入力してグラフ化できるため、効率的な環境管理が行えます。
日本最大規模のトマト栽培施設「トマトパーク」の栽培データとの比較・検討も可能です。給液・廃液成分の分析結果をグラフ表示できるオプションも提供されています。
利用料金は月額2,500円、通信ボックスやプロファインダーの台数が増えても最大8,800円です。成分分析のオプションを利用する場合は、月額1,400円が別途かかります(いずれも税抜価格)。
ハウス内環境の見える化成功事例|機器導入から効果とデータ活用まで
プロファインダーのような環境モニタリング機器を導入し、作物の栽培に必要なデータを集約・分析することで収量改善につなげられるでしょう。
トマト・ナス・きゅうり栽培での、データ活用事例を紹介します。
トマト|データをもとに作型を変えた結果、収量が大幅に向上
yasu / PIXTA(ピクスタ)
最初は、ハウス内の環境を把握することで営農上の課題を明らかにし、栽培方法や作型を変更して有利な営農につなげた事例です。
宮城県内のトマト栽培農家では、フルティカなど高糖度のトマト栽培で生じる空洞果や時期による品質の低下が営農上の課題と認識していました。水ストレスを与える従来の栽培方法を変えようと、プロファインダーを導入してハウス内の環境を測定したところ、CO2の不足が判明したのです。
光合成の増加で栽培上の課題が解決できることがわかり、CO2発生装置を導入してハウス内のCO2濃度を調整しながら灌水量も増やしたところ、収量・食味両方の向上につながりました。
プロファインダー導入前と比較して10a当たりの収量が7tから12tに増加、需要も大幅に増えて順調な営農を実現しています。データに基づく温度管理を実践して、通年栽培の作型に変革も遂げています。
このトマト農家ではリスク分散やバイヤーのニーズに合わせた栽培面積の拡大を検討しており、ハウス環境をリアルタイムで確認できるプロファインダーの効果も発揮できるでしょう。
ナス|ハウス内のCO2不足を改善し単収アップ
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
次は、プロファインダーでCO2濃度をモニタリングしながらナス栽培に取り組み、収量の向上を実現した事例です。
愛知県内のナス農家ではCO2施用による収量アップに関心を持っていたところ、地域の営農団体からプロファインダーとCO2施用装置を導入したナス栽培の試行を依頼されました。
そこで、ハウス内のCO2濃度や温度・湿度のモニタリング結果に基づき栽培技術を改善したところ、10a当たりの収量が19tから23tに増加しました。
試行栽培期間中は技術研究会に参加し、モニタリングデータや生育データなどを比較検討しながら栽培管理方法も見直していました。その後、他社のクラウド型モニタリングシステムを導入して、ほかの農家や普及指導員・営農団体の職員とデータ共有も行っています。
このナス農家は家族経営ですが、後継者対策の一環として将来的には従業員を雇い、蓄積されたデータを活用した営農を検討しています。栽培技術を改善して、さらなる収量アップも目指しています。
きゅうり|データ収集から共有まで。地域全体でスマート化を実現
リョウ / PIXTA(ピクスタ)
最後に、プロファインダークラウドで得られたハウス環境のデータを営農団体の部会で集約し、地域ぐるみでスマート農業を推進している事例を紹介します。
JA宮崎中央田野支店の胡瓜部会では、部会員の8割がプロファインダーを導入しています。
毎日のハウス環境や収量をGoogleスプレッドシートに登録、データを比較しながら環境制御技術を高めています。週1回の開花調査や2週に1回の現地調査の結果もGoogleドライブに登録、ICTを活用した情報共有を実践しているのが特徴です。
農家ごとに収量向上の意識が高まり、SNS(LINE)や電話での活発な情報交換も行われています。その結果、農家単位だけでなく部会全体の収量拡大につながっています。
一方、メンバー間の実績差や周年栽培化などの課題が浮上したことから、JA宮崎中央の支店にデータ分析担当者を配置して営農指導員の能力を高め、各農家への技術展開が進められています。
環境モニタリング機器の活用のポイント
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
プロファインダーをはじめとする環境モニタリング機器を上手に活用するためには、データ分析や環境改善に関する知識・技術が求められます。ハウス内の情報を的確に把握できるよう、機器・センサーのメンテナンスも行ってください。
収集したデータはハウス内の環境整備だけでなく、施肥・追肥や灌水のタイミングの検討、病害虫の発生予測など、営農のさまざまな場面で活用可能です。これまで農家の勘に頼っていた判断基準が見える化されるため、営農規模の拡大や後継者対策にも有効でしょう。
このように、栽培環境を最適化するには正しいデータが欠かせません。作物の種類や把握したい情報に応じてセンサーの位置を調整する必要もあります。
得られたデータは営農管理システムなどに取り込んで分析できます。ただし、データの活用には高度な知識・技術が求められるため、営農団体や外部のコンサルティング業者を活用するのも一つの方法です。
※県のスマート農業推進事業を活用し、地域でプロファインダーをイチゴ栽培に導入した事例がこの記事に掲載されています
プロファインダーなどの環境モニタリング機器をハウス栽培に導入すると、ハウス内の温度・湿度などの環境をリアルタイムで確認・記録できるようになります。クラウドを活用すればスマートフォンやタブレットでハウス環境の確認ができるため、営農の効率化にもつながります。
得られたデータを分析した上でハウス環境や作型などを改善し、収量の向上につなげられるのもメリットです。センサーの設置やメンテナンスなどの注意事項を確認しながら、データを活用した営農戦略にシフトしてはいかがでしょうか。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。