6次産業化のモデルケース|淡路島 山田屋農園に学ぶ観光と農業の融合
淡路島 山田屋農園の成功事例を通じて、地域農業活性化と6次産業化の可能性に迫ります。ジャム作りから地域連携、観光資源化まで、多角的な取り組みを解説し、農業経営のヒントをお伝えします。
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目次
淡路島山田屋のいちご園
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ホロニック「第8回生産者トークby島みるセトレ」 ニュースリリース 2016年1月18日)
淡路島でイチゴを栽培する山田屋農園では、ジャム作りを通した農業の活性化、地域の活性化に取り組んできました。山田屋農園の取り組みの内容を解説し、どのように農業経営に活かせるのかを見ていきましょう。
所得向上だけじゃない! 地域の活性化にもつながる「農家の6次産業化」
現在、農業において「6次産業化」をめざす動きが見られています。6次産業化とは、農家が生産・加工・流通・販売までを含めて一本化して行うことで、農家の所得向上に加え、雇用の創出や観光客の増加、特産物のブランド化などを図る動きのことです。つまり、それぞれの農家が経営改善するだけではなく、地域農業、ひいては地域全体の活性化をめざすことが6次産業化といえるでしょう。
“こだわりのジャム作り” が地域農業を盛り上げる、「淡路島 山田屋農園」
淡路島でイチゴ栽培に取り組む「淡路島 山田屋農園」では、こだわりのジャム作りを通して、地域農業の活性化をめざしています。そんな山田屋農園のモットーは「農を通した地域貢献...をくれぐれも身の丈で」です。山田屋農園の誕生から6次産業化の実現までを見ていきましょう。
淡路島産の原料にこだわったジャムを製造・販売するイチゴ農家
淡路島山田屋 山田夫妻
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ホロニック「第8回生産者トークby島みるセトレ」 ニュースリリース 2016年1月18日)
山田屋農園は、大学卒業後に勤めた観光農園で、農業への魅力と可能性を感じた夫と、同じ観光農園でジャム作りを担当していた妻が、淡路島に農園を構えたことから始まりました。
「二人で農業で生きていく」という目標があった夫婦が淡路島を選んだきっかけは、お互いの実家のちょうど真ん中にあったからだそうです。淡路島を通るたびに魅力を感じ、「いつか淡路に住めたらいいね」という夢が生まれたのです。
そんなある日、淡路島で古民家の再生を手がける「kunono再生プロジェクト」に出会います。この出来事により、いろいろな歯車が動き出し、2012年春、淡路島に山田屋農園が誕生しました。
二人は淡路島の環境と素材を活かし、生産と加工、観光という3つの柱を通して、地域に関わっていくことを決めました。
これまでの主な取り組みはこちらです。
・2012年:淡路島に移住し、山田屋農園が誕生
・2015年:イチゴの摘み取り園を開始
・2020年:イチゴの摘み取り園を「山田屋+はなゑみコーヒー」としてリニューアル
はなゑみコーヒーでは、新たにコーヒーやソフトクリームのテイクアウトもできるようになりました。店舗販売以外にも、地方発送に対応し、淡路島のミルクを使ったミルクジャムや、淡路島産のゆずやライム、みかんなどを使ったママレードなども全国に届けています。
淡路島山田屋「みかんとさつまいものジャム」
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ホロニック「第8回生産者トークby島みるセトレ」 ニュースリリース 2016年1月18日)
多くのメディアでも紹介され、今では淡路島の有名スポットに
山田屋農園の取り組みは、さまざまなメディアに取り上げられています。今では淡路島の人気スポットとして、観光客を含めた多くのお客さんが、毎日訪れています。
将来的には食事からデザートまで幅広く提供する「農家カフェ」の経営も検討し、淡路島産の農産物をさらに活用する計画も立てています。まさに農家の6次産業化が、地域や地域農業の活性化につながっている好例といえるでしょう。
「淡路島 山田屋農園」はなぜ成功した? 事例から見る取り組みのポイント
淡路島 山田屋農園(いちご農園)がある釜口周辺
ホーリ / PIXTA(ピクスタ)
山田屋農園の取り組みから、農家が6次産業化を成功させるポイントを学んでいきましょう。主な注目ポイントは以下の3つです。
●すべての事業で「農を通した地域貢献」を意識
●地元農家とのコミュニケーションを欠かさない
●自分の“好き”を農業経営に取り入れる
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
1. すべての事業で「農を通した地域貢献」を意識
山田屋農園のモットーは「農を通した地域貢献...をくれぐれも身の丈で」です。耕作の放棄された土地を再生してイチゴ農園に変えていくこと、島の特産品にこだわってジャムを作ることなど、モットーに基づいた農業経営を行っています。
また、モットーという確固とした軸を持つことが、山田屋農園の特徴であり、強みです。ぶれない軸による一貫した取り組みにより、自然と地域の協力が得られ、成功につながったと考えられるでしょう。
2. 地元農家とのコミュニケーションを欠かさない
山田屋農園では淡路島産にこだわり、なるべく地域の農産物を直接仕入れるように心がけています。例えば、たまたま通りかかった栗農家を訪問して、仕入れ交渉したこともあるそうです。
また、仕入れた農産物を使ったジャムに対して、お客さんから感想を受け取ったときは、できるだけ農家にも直接伝えることを大切にしています。感想を伝えることで、農家とのコミュニケーションが活発になり、協力しあえる農家も増えるそうです。
近年では少しずつ地元のジャム屋さんとして認知され、地元の農家が作物を持ち込んでくれることがあるそうです。持ってきてくれた作物がヒントになり、新商品のアイデアにもつながっています。
3. 自分の“好き”を農業経営に取り入れる
山田屋農園は、観光農園が好きな夫とお菓子作りが好きな妻とのコラボレーションから生まれています。好きなことが農業経営に活かされ、人気のイチゴ農園、そしてジャム屋さんになりました。
しかし、最初から好きなことを実現できたわけではありません。元々奥さんのほうは農作業を希望し、大学を休学して米農家で修行した経験があります。その際に、重労働に体がついていかずに挫折した経験を抱えています。
農業をしたいのにできないというジレンマの中、生産以外の方法で農業に関わることができるというアドバイスを受けました。それで生まれたのが、お菓子やジャム作りを通した農業の実践だったのです。
現在では以下のような役割分担ができています。
・園長である夫が農作業を担当
・加工や製造を妻が担当
また、将来的には「おにぎりや野菜で作ったおかずも食べられるカフェ」を運営するという共通の目標を持ち、実現に向かっています。これもお互いの好きなことを追求する姿勢の表れです。
夫婦ともに自分の好きな分野、得意な分野で農業に関わってきたからこそ、今の山田屋農園があるといえます。理想的な6次産業化の形といえるでしょう。
淡路島 山田屋農園+はなゑみコーヒー
〒656-2331 兵庫県淡路市仮屋91
こしあん / PIXTA(ピクスタ)
山田屋農園の取り組みからは、農業を通した地域貢献や地元農家と積極的にコミュニケーションを取ることの大切さを学べます。
また、農業を行う人が「好き」を活かすことも大切です。「好き」という気持ちがあるからこそ、農業に対して自発的に取り組むことができるからです。
たとえ挫折するようなことが起こったとしても、「好き」が原動力であれば乗り越えやすいのではないでしょうか。ぜひ山田屋農園の取り組みを参考に、地域農業の活性化を実現していきましょう。
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林泉
医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。