【2024】柿の生産量、日本一の都道府県は? 有名産地の栽培事例
柿の生産量、日本一の地域について解説します。本記事では都道府県別・市町村別の柿の生産量ランキングTOP10とともに、有名産地の栽培事例、収益を高める施策、省力化による労働負担の軽減方法などについてお伝えします。
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目次
【2024最新】 都道府県別! 柿の生産量ランキングTOP10
収穫間近の柿農園
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
農林水産省の統計によると、2023年の都道府県別の柿の生産量(収穫量)1位は和歌山県で、45年連続で全国一を誇ります。
次いで生産量が多いのは奈良県、福岡県、岐阜県、愛知県の順となっています。これら上位5県の生産量を合計すると、全国の柿生産量の5割以上を占めています。
都道府県別 柿の生産量ランキング(2023年)
順位 | 都道府県 | 収穫量(t) |
---|---|---|
1 | 和歌山 | 38,900 |
2 | 奈良 | 26,600 |
3 | 福岡 | 15,100 |
4 | 岐阜 | 12,100 |
5 | 愛知 | 10,100 |
6 | 新潟 | 8,920 |
7 | 長野 | 8,910 |
8 | 福島 | 8,270 |
9 | 愛媛 | 6,490 |
10 | 山形 | 5,260 |
出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(果樹)|第1報|令和5年(2023年)産西洋なし、かき、くりの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
和歌山県は温暖な気候と豊富な日照量により、柿の栽培に適しています。
特に県内北東部の伊都地方は、柿の産地として有名です。複数の地質が帯状に配列された豊かな土壌であることや、昼と夜の寒暖差が大きいことなどから、甘くて色づきのよい柿が生産されています。
市町村別では、奈良県の五條市が生産量トップに
市町村別の生産量(収穫量)では奈良県五條市が日本一で、ハウス柿に限ると全国シェアの約70%を占めています。
同市は「日本一の柿のまち」を標榜し、栽培から販売、イベント開催まで多岐にわたる活動を展開しています。
市町村別 柿の生産量ランキング(2023年)
順位 | 市区町村 | 収穫量(t) |
---|---|---|
1 | 五條市(奈良県) | 21,000 |
2 | かつらぎ町(和歌山県) | 15,600 |
3 | 紀の川市(和歌山県) | 13,100 |
4 | 橋本市(和歌山県) | 11,400 |
5 | 佐渡市(新潟県) | 6,970 |
6 | 豊橋市(愛知県) | 6,230 |
7 | 本巣市(岐阜県) | 6,170 |
8 | 鶴岡市(山形県) | 6,120 |
9 | 伊達市(福島県) | 5,990 |
10 | 朝倉市(福岡県) | 5,520 |
出典:e-Stat「作物統計調査|作況調査(果樹)|確報|平成18年(2006年)産果樹生産出荷統計 」
生産量や栽培面積の推移は? 国内柿生産の現状
春に芽吹く柿の樹
YUKI / PIXTA(ピクスタ)
全国の柿の生産量と結果樹面積は、近年、減少傾向にあります。
先述の農林水産省の統計によると、全国の柿の生産量(収穫量)は令和元年(2019年)の20万8,200tから令和5年(2023年)には18万6,600tまでに減少しています。また、結果樹面積も同期間比で18,900haから17,500haへと縮小しています。
年度別 柿の生産量と結果樹面積
年度 | 収穫量(t) | 結果樹面積(ha) |
---|---|---|
平成26年 (2014年) | 240,600 | 21,300 |
27年 (2015年) | 242,000 | 20,800 |
28年 (2016年) | 232,900 | 20,400 |
29年 (2017年) | 224,900 | 19,800 |
30年 (2018年) | 208,000 | 19,100 |
令和元年 (2019年) | 208,200 | 18,900 |
2年 (2020年) | 193,200 | 18,500 |
3年 (2021年) | 187,900 | 18,100 |
4年 (2022年) | 216,100 | 17,800 |
5年 (2023年)(概数) | 186,600 | 17,500 |
出典:農林水産省「令和5年(2023年)産西洋なし、かき、くりの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
日本の柿農家・産地が抱える3つの課題
春に向けて萌芽する柿の樹
奈良観光 / PIXTA(ピクスタ)
柿の生産量や結果樹面積が減少傾向である背景には、大きく3つの課題が考えられます。
- 栽培管理にかかる労働負担の大きさ
- 高齢化による担い手の減少、後継者不足
- 集中出荷や小玉果の増加による販売価格の低迷
栽培管理にかかる労働負担の大きさ
減少傾向の背景には、まず、栽培管理にかかる労働負担の大きさが挙げられます。
摘蕾は花芽の一部を取り除く作業で、残った花の栄養を確保します。摘果は果実の一部を取り除く作業で、残った果実の大きさと品質を向上させます。これらの作業は柿の品質向上と適正な収量確保のために重要ですが、多大な労力を要します。
高齢化による担い手の減少、後継者不足
次に、高齢化による担い手の減少と後継者不足があります。柿栽培の技術や知識の継承が難しくなっており、産地の維持に課題を抱えています。
集中出荷や小玉果の増加による販売価格の低迷
さらに、集中出荷や小玉果の増加による販売価格の低迷も問題となっています。これは気候変動の影響も受けており、温暖化による開花時期の変化や、異常気象による品質低下などが要因となっています。
また、新たな病害虫の発生や従来の防除法が効かなくなるなどの問題も生じています。
これらの課題に対して、柿の主要産地ではさまざまな取り組みが行われています。
【産地の取り組み1】全国一の柿産地、和歌山県伊都地方の事例
和歌山県伊都郡かつらぎ町の柿畑
miamiwatase / PIXTA(ピクスタ)
全国一の柿の産地である和歌山県伊都地方では、さらなる収益の向上や労働環境の改善などを推進するために、次のような取り組みに注力しています。
柿の販売価格の向上に向けたオリジナル品種の導入
和歌山県のオリジナル品種「紀州てまり」
和歌山県 果樹試験場 かき・もも研究所
出典:和歌山県 果樹試験場 かき・もも研究所「紀州てまり」
和歌山県伊都地方では、県オリジナル品種の「紀州てまり」の栽培を推進しています。
紀州てまりは大玉で見た目が美しく、食味は甘くてみずみずしいながらも、食べごたえのある柿です。そのため、ブランド力の底上げから取引価格の向上が期待されています。主要品種である「刀根早生」への偏重対策としても位置付けられています。
また、和歌山県では柿の輸出にも力を入れており、現在はアジア圏を中心に販売を進めている状況です。
出典:和歌山県「果樹試験場 かき・もも研究所」
省力化を叶える「結果母枝の先端せん除技術」を推進
さらに、伊都地方では省力化を実現する「結果母枝の先端せん除技術」の推進も行われています。この技術は、冬のせん定時期に結果母枝先端の芽をせん除することで着蕾数を抑え、摘蕾作業の負担を軽減するものです。
導入の結果、摘蕾作業の効率が20%向上し、1樹当たりの摘蕾作業時間が約20%短縮したことが明らかとなっています。
なお、この効果は「刀根早生」など特定の品種で確認されており、他の品種については更なる研究が必要です。
出典:農林水産省「和歌山県 省力化と新品種導入による柿産地の振興」
柿の葉や摘果柿の利用で耕作放棄園を解消
伊都地方では、「省力品目化」の推進も行われています。これは、柿の栽培や収穫にかかる労力を減らしつつ、柿の葉や摘果した未熟果など、従来は廃棄されていた部分も活用して収益を上げる取り組みです。
例えば、摘果柿を利用してジャムやコンポートなどの加工食品を製造・販売するといった取り組みが挙げられます。これにより、栽培の効率化と収益の多様化を同時に実現することができ、耕作放棄園の解消にもつながることが期待されています。
【産地の取り組み2】 日本一の柿のまち!奈良県五條市の事例
奈良県五條市内にある柿博物館
yuyuJApan / PIXTA(ピクスタ)
奈良県五條市では、かつて優良な農地の不足や小規模な営農体制、かんがい用水の確保不足などの課題に直面していました。
これらの課題を解決するために、樹園地の造成、大規模化による省力化、畑地かんがい施設の整備などを積極的に行い、強固な柿の生産基盤を築き上げています。
柿の消費を促進するイベント、技術向上に向けた研修会を開催
五條市では柿の消費を促進するイベント「柿の里まつり」を開催しています。柿を使った料理が食べられるブースや柿の詰め放題など、さまざまな企画が用意されており、家族で楽しめるイベントとして人気を集めています。
さらに、若手農家が中心となり研修や勉強会を開催するといった、主体的な活動も行われています。
これらの取り組みを通じて、柿産地としての活性化やブランド力の向上を図りながら、「日本一の柿のまち」の地位を更に強化しています。
規格外品を加工し、年明け以降も高付加価値で販売
五條市に拠点を置く柿専門店の「石井物産」では、規格外となった柿を加工して、時期に限らず高値での販売を実現しています。
石井物産は規格外の柿を適正価格で買い取ることで農家を収入面でサポートしつつ、廃棄される柿を削減するほか、加工品として販売する際は付加価値を高めることを重視しています。
その結果、規格外の柿で作られた和菓子の「郷愁の柿」は、観光庁が主催する平成25年(2013年)度の「世界にも通用する究極のお土産」を受賞するなど、地域の特産品としての地位を確立しています。
この事例は、柿農家が6次産業へ着手する際のロールモデルとしても参考になる取り組みです。
出典:石井物産
【産地の取り組み3】 人手不足の解消をめざす奈良県天理市の事例
収穫期の人手不足に対しては、新たな取り組みが始まっています。
例えば、奈良県内で五條市と並ぶ柿の生産地である天理市では、農家と旅人をマッチングするシステム「おてつたび」を活用しています。
天理市は大阪や京都からのアクセスがよく、農業体験を希望する人にとっても魅力的なスポットです。加えて、柿の主要品種「刀根早生」発祥の地としても知られています。
おてつたびのようなマッチングシステムは、未経験者に農業に触れる機会を提供するとともに、農業全体において新たな雇用スタイルを確立する可能性を秘めています。
出典:おてつたび
柿農家として収益を高めていくには、さまざまな課題に対応しつつ、地域と協力しながら6次産業化を見据えた経営戦略を立てることが求められます。
柿栽培の歴史は古く、日本の文化や食生活に深く根ざしています。その伝統を守りつつ、現代の課題に対応し、新たな価値を創造していくことが、日本の柿産業の未来を切り開く鍵となるでしょう。
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相馬はじめ
農業×SEOに特化した専業Webライター。農業法人に正社員として8年間勤めた経歴を持つ。これまでに携わった作物は「キャベツ・白菜・レタス・長ネギ・馬鈴薯・米・麦・そば」。得意な執筆ジャンルは農業・音楽・転職など多岐にわたる。強みはコミュニケーション力の高さと、誰とでも打ち解けられること。minorasuでの執筆以外では、農業初心者に向けたブログ『農業はじめるなら見るブログ』を運営中。https://hajimete-hirogaru.com/