岡山県農業の特徴は? 農家の収入目安と、就農時に使える支援制度

岡山県は年間晴天日数が全国一を誇る「晴れの国」として知られ、恵まれた気候を活かした多彩な農業が展開されています。本記事では、岡山県での新規就農を検討する希望者に向けて、岡山県の農業の特徴や就農の流れ、補助金やサポート制度について紹介します。
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目次
「晴れの国」岡山県における農業の特徴

収穫間近のブドウ
sirokuma / PIXTA(ピクスタ)
岡山県の農業の最大の強みは、年間を通じて安定した農業経営が可能な気候条件です。
降水量1mm未満の年間日数は276.7日と全国一を誇り、年間降水量は1,143.1mmと全国で2番目に少なく、年間日照時間の平均値は2,033.7時間(全国15位)を確保しています。この気象条件は、作型の選択や栽培管理に大きな利点をもたらします。
地形的には、北部の中国山地(標高1,000m超)、中部の吉備高原(標高300~500m)、南部の平野部と瀬戸内海沿岸に分かれており、それぞれの特性を活かした農業が展開されています。
特筆すべきは、吉井川、旭川、高梁川の3つの一級河川からの良質な農業用水です。年間を通じて安定した水量が確保でき、水稲から果樹まで、多様な作物の栽培を支えています。
この恵まれた条件を背景に、岡山県の農業産出額は2022年度で1,526億円を記録し、全国第22位、中国四国地方の中でトップを誇ります。
内訳は野菜が230億円(15.1%)、果実が278億円(18.2%)、畜産が697億円(45.7%)で、バランスの取れた農業構造を持っています。
出典:農林水産省「令和4年(2022年)生産農業所得統計」 所収「農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」
生産量上位は? 岡山県で有名な農産物一覧

岡山県で栽培されるマスカット・オブ・アレキサンドリア
okimo / PIXTA(ピクスタ)
岡山県の農業を代表する作物は、ブドウと桃です。「くだもの王国おかやま」の名にふさわしく、高品質な果実栽培が盛んに行われています。
ブドウ栽培は生産量(収量)15,300tを誇り、全国第3位を維持しています。シャインマスカットやニューピオーネ、オーロラブラック、マスカット・オブ・アレキサンドリアなど、多彩な品種を県内全域で栽培しています。
桃の栽培も盛んで、特に「清水白桃」は最高品種として知られ、栽培面積は日本一です。桃全体では5,610tを生産し、全国第6位の生産量(収量)を誇ります。
施設野菜では、ナスが代表的な作物です。特に「千両なす」は市場でトップクラスの評価を得ています。また、トマトやきゅうり、アスパラガス、白ネギなどが「広域重点振興品目」として選定されています。
出典:農林水産省「作況調査(果樹)」 所収「令和5年(2023年)産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
農林水産省「作況調査(果樹)」所収「令和5年(2023年)産もも、すももの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
農林水産省「作況調査(野菜)」 所収「令和5年(2023年)産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」
岡山県の農家は儲かる? 参考になる経営指標

岡山県は桃の産地
うっちー / PIXTA(ピクスタ)
岡山県での就農を考えるうえで、最も気になるのは具体的な収入の見込みでしょう。県の農業経営指導指標をもとに、実際の新規就農者の経験も踏まえながら、作物ごとの収益見込みを見ていきます。
岡山県の主な作物(品種・作型)における10a(1,000m2)当たりの「農業経営指導指標」
作目(品種・作型) | 栽培適地 | 収量 (kg) | 粗収入 (千円) | 経営費 (千円) | 農業所得 (千円) | 労働時間 (時間) |
---|---|---|---|---|---|---|
水稲 (稚苗 30ha) | 岡山平野 | 520 | 129 | 84 | 45 | 13 |
水稲 (有機無農薬) | 全域 | 350 | 140 | 81 | 59 | 29 |
桃 (清水白桃) | 岡山平野 吉備高原 津山盆地 | 2,200 | 2,376 | 1,260 | 1,116 | 320 |
桃 (おかやま夢白桃) | 岡山平野 吉備高原 津山盆地 | 2,500 | 2,705 | 1,355 | 1,350 | 311 |
マスカット・オブ・アレキサンドリア (2月加温) | 岡山平野 | 2,100 | 6,172 | 4,551 | 1,621 | 653 |
ピオーネ (簡易被覆) | 全域 | 1,800 | 1,602 | 922 | 680 | 344 |
シャインマスカット (簡易被覆) | 岡山平野 吉備高原 津山盆地 | 2,100 | 3,667 | 1,188 | 2,479 | 429 |
イチゴ (促成・高設) | 岡山平野 吉備高原 津山盆地 | 5,500 | 7,062 | 4,913 | 2,149 | 1,374 |
きゅうり (露地) | 岡山平野 吉備高原 津山盆地 | 10,000 | 3,290 | 1,720 | 1,570 | 756 |
トマト (雨よけ・養液土耕) | 吉備高原 中国山地 | 12,000 | 4,176 | 3,080 | 1,096 | 869 |
ナス (促成) | 岡山平野 | 19,000 | 9,671 | 6,440 | 3,231 | 2,730 |
アスパラガス (露地) | 全域 | 1,800 | 2,227 | 1,212 | 1,015 | 370 |
小松菜 (周年・ハウス) | 岡山平野 津山盆地 | 2,000 | 750 | 480 | 270 | 393 |
りんどう (露地・盆出し) | 吉備高原 津山盆地 中国山地 | 32,000本 | 1,760 | 1,039 | 721 | 567 |
スイートピー (施設・11〜4月出し) | 岡山平野 | 210,000本 | 7,560 | 4,105 | 3,455 | 2,734 |
出典:岡山県農林漁業担い手育成財団 所収「新規就農者ガイドブック」
上記の表によると、例えば白桃栽培では「清水白桃」が10a当たり111万6,000円、「おかやま夢白桃」が135万円の農業所得を見込めることがわかります。
なお、これらの数値は熟練農家の実績をもとにしていますが、就農初期は技術習得段階であり、目標達成までの具体的な道筋を理解することが重要です。
岡山県農業の課題と、解決に向けた取り組み事例

岡山県の桃畑
y.uemura / PIXTA(ピクスタ)
岡山県の農業は現在、いくつかの課題に直面していますが、これらは新規就農者にとってむしろチャンスとなる面もあります。県の積極的な支援策と併せて、具体的な状況を見ていきましょう。
世代交代とスマート農業の推進
基幹的農業従事者は年々減少し、令和2年(2020年)には3万人を下回り、平均年齢は71.5歳と農家数の減少と高齢化の進展が顕著となっています。
これに対し県では「岡山県スマート農業推進方針」を策定し、新規就農者が最新技術を活用した効率的な農業経営を実現できるよう、環境整備を進めています。
具体的な取り組みとして、施設園芸では環境制御型ハウスの導入が進んでおり、温度・湿度・CO2濃度などを自動制御することで、品質向上と労力軽減を両立しています。
また、水田作では自動運転トラクターやドローンによる農薬散布など、新技術の導入支援が充実しており、規模拡大の際の労力軽減に貢献しています。
出典:岡山県「岡山県野菜農業振興計画を策定しました(令和6年(2024年)3月策定)」 所収「岡山県野菜農業振興計画」
岡山県「岡山県スマート農業推進方針(令和3年(2021年)5月更新)」 所収「岡山県スマート農業推進方針(令和3年(2021年)5月更新)」
環境保全型農業の推進
環境保全型農業の推進も特徴的です。
全国に先がけて「おかやま有機無農薬農産物」に取り組み、国の有機JAS規格をさらに上回る厳しい基準(農薬・化学肥料は一切不使用)を設けており、付加価値の高い農産物の生産を可能にしています。国際水準GAP(農業生産工程管理)の普及も推進しています。
「岡山ブランド」のグローバル展開
世界市場を視野に入れた取り組みも進んでいます。
例えば、イチゴでは「晴苺(はれいちご)」というブランドを確立し、首都圏での販路開拓を支援しています。新品種の育成や長期安定出荷体制の整備を進め、桃やブドウと合わせて年間を通じた「くだもの王国おかやま」のブランド確立につなげる考えです。
出典:岡山県「岡山県野菜農業振興計画を策定しました(令和6年(2024年)3月策定)」所収「岡山県野菜農業振興計画」
岡山県で農家になろう! 就農までの主な流れ

「清水白桃」の収穫作業の風景
magicalphoto / PIXTA(ピクスタ)
岡山県での就農は、作目や営農プランについて検討したうえで農業技術や知識を習得し、資金を準備してから農地と住居を確保する必要があります。具体的なステップは、以下のとおりです。
- インターネットや就農相談会を活用して情報収集する
- リスクとリターンを考えたうえで、収納の動機を整理する
- 少なくとも、就農してから10年間の営農・生活プランを考える
- 初期投資額や労働力、技術力、栽培適地、所得率、将来性を考慮し、自分の条件に適した作目を選ぶ
- 営農プランが実行できる就農候補地を訪問する
- 農業経営全体の収支計画をもとに、就農後の計画を立てる
- 資金の準備と計画を行う
- 新規就農研修制度を活用し、農業の技術や知識を習得する
- 農地や住居を確保する
就農の検討を始めたら、まずは「岡山県農林漁業担い手育成財団」に相談することをおすすめします。
同協議会では、就農希望者一人ひとりの状況に応じたアドバイスを行っており、特に栽培品目の選定や農地の確保、資金計画など、重要な決定事項について、経験豊富なアドバイザーによる支援を受けられます。
就農時に活用したい、岡山県独自の農業支援制度

岡山県久米郡に広がる棚田
Yama / PIXTA(ピクスタ)
岡山県の新規就農支援は、研修から就農後の経営安定まで、段階に応じた体系的な支援が特徴です。ここでは、就農までの流れに沿って主要な支援制度を紹介します。
就農前の研修支援制度
就農前の研修制度として、「農業体験研修」があります。これは原則55歳未満の希望者を対象に、1ヵ月間、実際の農家での農業体験を提供するものです。
募集は年2回あり、研修先は希望する地域や品目に応じて選定されます。この研修では、実際の農作業に加え、就農後の生活についても具体的なイメージを得ることを目指しています。
本格的な技術習得をめざす場合は、「農業実務研修」を活用できます。最長2年の研修期間中は、年額150万円程度の研修費が支給されます。
農業普及指導センターや農業大学校での基礎研修、ほ場及び施設での実地研修、先進農家への派遣研修など実践的な研修内容が用意され、研修修了後に新規就農者として農業経営を始めることになります。
就業奨励金の支給
岡山県では、「新規就業者の激励」にも取り組んでいます。将来にわたって県内で専業として農業経営を継続する意思のある39才以下の新規就農者を対象に、指定の就業奨励金が支給されます。
岡山県は充実した支援体制と恵まれた気候条件を活かし、新規就農者の成功をきめ細かくサポートしています。就農を検討の際は、まずは県の相談窓口に足を運んでみることをおすすめします。
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