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農業の保険や共済にはどのようなものがある?公的・民間の事例を紹介

農業の保険や共済にはどのようなものがある?公的・民間の事例を紹介
出典 : kiyopayo / PIXTA(ピクスタ)

農業の6次産業化によって、現代の農業はこれまでにない多様なリスクに直面しています。それらを補償するためのさまざまな保険、共済が国や民間で作られ、改定されています。具体的な事例を挙げながら、いま農業に求められる補償について検証しました。

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人々の命や豊かな生活を支える重要な産業である農業。しかし、その経営は農家の自助努力だけでは乗り越えられないさまざまなリスクと常に隣りあわせです。

これまでにない自然災害、農業の6次産業化など、取り巻く環境が大きく変わる中でリスクも多様化し、従来の保険や共済ではカバーできない事例も増えています。

これからも安心して農業を続けていくには、どのようなリスクに備える保険が必要なのでしょうか。

農業において考えられるリスク

農業をめぐる環境が大きく変わる中で、農業が直面するリスクはこれまでになく多様で、大きくなりつつあります。6次産業化や自然環境の変化、農家の高齢化や後継問題がその好例です。

農業の6次産業化とは、1次産業である農業が、加工(2次産業)や販売(3次産業)までトータルで行い新たな付加価値を生み出そうとする取り組みのことで、1次産業×2次産業×3次産業を掛け合わせた呼称と言われます。

農産物そのものや収入に直接的かつ深刻な影響を及ぼすリスクにも、さまざまなものがあります。本人の病気やけがのほか、自然災害、鳥獣害、家畜の病気や死亡、農業施設や機器の損壊、火災、盗難、市場価格の暴落、取引相手の倒産や閉店、事故などがその例です。

加えて、賠償が発生するリスクとして、出荷した農産物への異物混入や農薬残留による食品リコール、農作業中や農地施設の不備で第三者にけがをさせた際の賠償、賃貸機器や施設の損壊賠償など、賠償責任の範囲も飛躍的に広がっています。

こうした不測の事態に備え、万一の場合にも安心して営農を続けられるように、保険や共済を上手に活用しましょう。

農作業 田植え

Fast&Slow/PIXTA(ピクスタ)

農業の公的保険・共済事例

公的保険・共済には、農業共済組合連合会が実施する「収入保険制度」と「農業共済制度」があります。収入保険は平成31年1月から新たに始まった保険です。農業共済制度は以前から存在しましたが、収入保険のスタートに合わせて内容が大幅に見直されました。
このほか、JA共済が実施主体となって運営する「農作業中傷害共済」、「特定農機具傷害共済」があります。

収入保険

現代の農業のあり方に合わせてスタートした「収入保険」の大きなポイントは3つです。
1つめは、基本的に品目の限定がなく、すべての農産物が対象となること。収穫後の作物や、精米や餅などの簡易な加工品も対象です。ただし、肉牛、肉豚、鶏卵のような畜産物など一部の品目ではそれぞれ専用の措置があるため、収入保険では対象外になります。

2つめは対象者が青色申告者であること。加入申請時に1年以上の青色申告の実績があれば加入できます。

3つめは補償対象が幅広いこと。自然災害だけでなく、けがや病気による収入減少、為替変動による輸出時の損失など、農業者の経営努力では避けられない収入減少も補償の対象となります。

保障のしくみは、農業者ごとに設定した基準収入をもとに、保険期間の収入が9割を下回った場合に、下回った額の9割を上限に補てんする、というものです。9割から8割までの下落に対しては積立方式で、8割を下回る下落に対しては保険方式で補てんされます。

積立方式は選択性で、保険方式のみと、積立方式とセットのどちらかを選ぶことができます。掛け金は、保険方式のみに比べて積立方式は倍以上と高くなりますが、掛け捨てではなく次の年に繰り越すことも、使わずに戻すこともできます。

また、保険の支払いが発生した場合でも、実際に支払われるのは保険期間が終了したあと、つまり翌年になるため、それまでの資金として無利子のつなぎ融資を受けることができるのも特徴です。ただし、補償されるのは収入についてだけなので、農作業に伴って発生した賠償金などの損害には対応していません。

出典:農林水産省「農業経営の収入保険」所収「収入保険パンフレット(様々なリスクから農業経営を守ります!)」

▼収入保険については、こちらの記事をご覧ください。

農業共済

農業共済制度は、農業者が掛け金を出し合って作った共同準備財産をもとに、加入者に被害が発生した場合に共済金を支払う相互扶助のしくみです。収入保険のスタートと同時に内容が見直され、時代に合わない細かい決まりを廃止・修正して、より利用しやすくなりました。

共済の種類には、水稲、陸稲、麦を対象品目とした「農作物共済」、牛、馬、豚対象の「家畜共済」、ほとんどの果樹を対象とした「果樹共済」、馬鈴薯、豆類、てん菜、さとうきび、茶、そば、スイートコーン、たまねぎ、かぼちゃ、ホップ、蚕繭を対象とした「畑作物共済」、園芸施設対象の「園芸施設共済」、建物や農機具対象の「任意共済」があり、広い品目をカバーしています。

補償の対象となる被害については、共済ごとに詳しく規定されていますが、共通して風水害、干害、冷害、雪害など気象上の原因や、地震、噴火などの自然災害、火災、病虫害、鳥獣害などについて、家畜の場合は死亡、廃用、疾病、傷害などについて補償されます。

広範囲に及ぶ大災害が起き、共済金支払が多額となった場合には、都道府県ごとの農業共済組合連合会や政府が再保険を行うので安心です。こちらも第三者への賠償には対応していません。

出典:農林水産省「農業共済」

▼農業共済については、以下の記事の「農業共済」の項をご覧ください。

農作業中傷害共済

JA共済が実施するさまざまな共済のうち、農作業や農機具使用による被害に特化した農業者向けの共済です。農作業中のけがや事故による入院や通院、死亡時に共済金が支払われます。記名被共済者限定特約を付加すると、集落営農や農業法人の所属する農業従事者個々人を保障することができ、保障の対象者の年齢は99歳までと高齢者にも対応していることが特徴です。

この共済は施設の損壊、取引先の倒産による収入減、出荷した農産物の食品リコール、農園を訪れた人のけがや事故に対する賠償、近隣の畑に及ぼした被害への賠償、盗難などのリスクには対応していませんが、対応するほかの共済プランを揃え、併せて提案しています。

出典:JA共済「農作業中傷害共済」

特定農機具傷害共済

農作業中傷害共済同様、農業従事者向けの共済で、指定された農機具の使用によって生じた事故により、使用者がけがをしたり死亡したりした場合に共済金が支払われます。農機具にかけられるため、対象となる人物を指定する必要がなく、対象年齢なども定められていません。

農機具を使用した事故であれば、基本的に共済金を受けることができます。ただし、第三者への加害は対象外です。第三者への賠償は、ほかの共済プランと併用することで備えます。

出典:JA共済「特定農機具傷害共済」

農作物 出荷

Fast&Slow/PIXTA(ピクスタ)

農業の民間保険事例

農業者向けの保険商品やプランを扱っている民間保険会社もあります。公的保険が対応していない第三者への賠償などにも対応する商品や、対応可能な商品を組み合わせたパッケージプランの事例がいくつか見られます。その一例を紹介します。

農業賠償責任保険

共栄火災海上保険では、JA共済連と協力し、農業に潜むさまざまなリスクに対応できる補償を揃え、「農業者賠償責任保険」として農業者に提案しています。

このプランは、大きく3種類のリスク補償が提供されることが特徴的です。施設の不備や、農地内での草刈り・農薬散布などの作業に起因する賠償事故など「施設リスク」、出荷した農産物が原因の食中毒、残留農薬、異物混入で商品や消費者に損害を与える「生産物リスク」、リースで使っていた農機具や人から借りていた施設を損壊させる「保管物リスク」に対応します。

この3種類のリスク補償のほかに、出荷した農産物に問題が発覚し回収する「生産物回収リスク」に対応できる生産物品質特約、農業体験受け入れ農家において、農業体験中の子どものけがや食中毒、物的損害といった「体験農業宿泊リスク」に対応できる民泊保障特約という2つの特約を加えて、農業における賠償リスクを幅広くカバーしています。

農業応援隊

同じく共栄火災海上保険が手掛ける「食品事業者総合保険」は、農業賠償責任保険で補償している5つのリスクに加え、休業による利益喪失、個人情報漏えい、使用者としての賠償、企業イメージ回復賃貸施設に関する賠償など、より細かいさまざまなリスクをトータルで補償するセットプランです。

※詳細は、共栄火災海上保険株式会社「農業リスクへの取り組み」のページをご確認ください・

小学生 稲刈り体験

V-MAX/PIXTA(ピクスタ)

多様化する農業に従事する人を守るために、さまざまな公的保険や共済、民間の保険が存在します。補償内容はそれぞれ異なるため、必要な補償を上手に組み合わせて不測の事態に備えましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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