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【肥料計算】適切な施肥量の求め方とは? 簡単便利な無料ソフトも紹介
出典 : Hemerocallis / PIXTA(ピクスタ)
  • 生産技術

【肥料計算】適切な施肥量の求め方とは? 簡単便利な無料ソフトも紹介

適切な施肥設計を行ううえで重要なのが、正しい肥料計算です。肥料計算が正しくないと、意図した施肥ができず、結果的に作物の生育不良・収量減につながります。本記事では土壌診断にもとづく施肥設計の考え方と正しい肥料計算の方法について解説し、自動で計算できる便利な無料ソフトも紹介します。

肥料は、作物の生育を左右する重要な要素です。作物と産地の土壌や気候に応じた適切な施肥は、作物の品質の向上・収量アップにつながります。

基準になるのは?野菜栽培における、施肥設計の基本的な考え方

トラクターによる肥料散布

田舎の写真屋/PIXTA(ピクスタ)

作物の生長に必要な栄養を供給するため、堆肥や化学肥料などの施用は不可欠です。

そもそも肥料とは「窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)」の三要素のいずれかを含んだ物質のことで、作物にとっての最適なバランスを計算して施肥することが大切です。また、施肥によって影響が出る土壌のpH値も適正に保つよう調整することを忘れてはいけません。

施肥量の目安は、それぞれの地域の土壌や気候の特徴、栽培する作物ごとに異なります。そこで、都道府県別に、主要な作物についての適切な施肥量を示す「施肥基準」が提示されています。

この「施肥基準」には、主要作物についての施肥の適正量や時期の基準だけでなく、肥料の基本的な知識、効率的な施肥の技術などの情報が記載されています。また、特定の要素が過剰になった場合の「減肥基準」というものもあります。

施肥設計は、基本的には、この施肥基準にそれぞれの農家が栽培する作物や作型、土壌の種類、地力などの条件を加味して行います。

まずは農林水産省のホームページで紹介されている都道府県別の施肥基準を確認してみましょう。気候や土壌条件によって、他県の基準のほうが適することもあるかもしれません。

農林水産省「都道府県施肥基準等」はこちら

土壌診断結果などに基づいた施肥量の計算方法

施肥基準は1つの目安であり、それぞれの農地の土壌診断に基づいて施肥をすることが重要です。ここでは、土壌診断結果の見方と、結果をもとにした施肥の考え方を紹介します。

土壌診断のイメージ

ヒト猫デザイン研究所/PIXTA(ピクスタ)

設計の基準となるのは「窒素量」

各地域の施肥基準や土壌診断結果のうち、注目すべきは窒素量です。窒素量を基準として、面積当たりの施肥量を計算します。なお、ほとんどの場合、診断結果は面積10a当たりの量として表示されます。

ほとんどの野菜類は肥料に含まれる窒素成分を硝酸態窒素の形で取り込むため、十分な硝酸態窒素が必要ですが、多すぎると人体や環境に悪影響を及ぼします。

目安としては、硝酸態窒素の分析値が100g当たり10mg未満の場合は基準通りの施肥を、100g当たり20~25mgを超える場合は基本的には無施肥とするといいでしょう。

2つ以上の要素が含まれた複合肥料を用いる場合の計算式

窒素を基準とした施肥量の計算は、肥料成分表示をもとに行います。

例えば、化成肥料の袋や箱に掲載されている(10-12-8)という数字は(N-P-K)の配合比率を意味します。つまり、この複合肥料に含まれる成分の比率は「窒素(N)10%・リン酸(P)12%・カリウム(K)8%」ということです。

この肥料100kgには成分量として、窒素が10kg、リン酸が12kg、カリウムが8kg含まれることになります。

この複合肥料を用いて窒素成分を8kg施肥したい場合は、
8kg÷10%=80kg
となるので、80kg施肥すればよいことがわかります。また、この施肥によりリン酸成分は、80kg×12%=9.6kgを、カリウム成分は、80kg×8%=6.4kgを同時に施肥することになります。

窒素を基準に、成分の配合が適切になる肥料を選びましょう。

単肥を用いる場合の計算式

1成分のみを施肥したい場合は単肥を利用します。例えば窒素肥料として「硫酸アンモニウム」(窒素含有量約20.5%)、リン酸肥料として「過リン酸石灰」(リン酸含有量約17~20%)、カリウム肥料として「硫酸カリ」(カリウム含有量約50%)がよく知られています。

窒素含有量が20.5%の硫酸アンモニウムで、窒素10kgを施肥したい場合は

10kg÷20.5%=約49kg

となるので、49kgを施肥します。ほかの肥料も同様に、含有量をもとに必要な成分量に対する肥料の量を求めます。

【参考】pH値は石灰資材などで調整する

pHスケール

kolonko/PIXTA(ピクスタ)

pH値も、土壌診断をもとに適正値を保つ調整が必要です。土壌が酸性に傾いている場合は石灰資材などを散布しカルシウムを補給して調整します。

土壌診断結果に応じたカルシウムの適切な施肥量は、「アレニウス表」を用いると簡易的に求められます。これは、主にほ場の土壌について、pH6.5に矯正する場合の炭酸カルシウムの所要量を示しています。簡易的なもので精度は低いので、参考にした際は施用した7~10日後に再度pHを測定し、効果を確認しましょう。


アレニウス表が掲載されている資料:
農林水産省「都道府県施肥基準等」所収の「青森県 健康な健康な土づくり技術マニュアル」31ページ
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/tuti13.pdf

ホクレン農業協同組合連合会ホームページ「土づくりQ&A Q-14 石灰の施用量はどうやって求めるのでしょうか?」
http://www.hiryou.hokuren.or.jp/qa/q02_14_01.html

例えば、土壌診断結果が以下の通りであったと仮定します。
土性=埴壌土、腐植含有=含む(5%以下)、pH=5.2、仮比重=1.0
そして、改善目標を層厚20cm、目標pH=6.0として、資材に炭酸カルシウム使用する場合について考えてみましょう。

アレニウス表を見ると、診断結果のpH5.2の炭酸カルシウム所要量は439、目標であるpH6.0では169なので、439から169を引いた270kg(1a当たり)が、この場合の炭酸カルシウム所要量となります。

さらに、この表で基準にしている耕土の深さは10cmなので、矯正目標である耕土20cmではこの倍となり、仮比重1.0をかけた540 kg(1a当たり)が算出されます。まとめると、以下のような計算式になります。

(439-169)×20cm/10cm×1.0=540kg (1a当たり)

土壌のpH値がアルカリ性に傾いている場合は、硫黄粉などを混和する方法がありますが、基本的には土壌の入れ替えや天地返しなどで改善をめざすのが一般的です。

もう施肥設計で苦労しない! 無料で使えるおすすめの肥料計算ソフト・ツール

肥料の計算方法は覚えてしまえばそれほど難しくはありませんが、毎回計算するのは面倒で、苦手な人も多いでしょう。その場合は、便利な計算ソフトやアプリを使ってみましょう。ここでは、おすすめのツールを2つ紹介します。

土壌診断結果のイメージ

nisi/PIXTA(ピクスタ)

400種類以上の肥料や堆肥を計算できる「できすぎ君2020」(Excel)

「できすぎ君」は、山口県農林総合技術センターが作成、提供する土壌診断・施肥計算ソフトウェアです。Excelを利用するので、操作もしやすく簡単です。簡単版を使えば、1)土壌分析結果の入力、2)診断基準値の読込み、3)肥料セットの選択という3ステップだけで、必要な施肥量が計算できます。

できすぎ君は1998年頃に山口県農業試験場で農家説明用として作られ、現場の声を反映しながら改良を重ね、2011年にフリーソフトとして公開されました。その後も、多くの指導者や生産者に使いやすいようにとさらなる改良を続けています。

大変頼りになるソフトではありますが、説明書をよく読んでから利用するようにしましょう。
山口県の土壌診断・施肥計算ソフト「できすぎ君」のページはこちら

DL不要! Web上で簡単に施肥設計が可能な「施肥なび」

「施肥なび」は、地方独立行政法人 青森県産業技術センター農林総合研究所が管理・運営する施肥設計支援システムです。

ダウンロードの必要はなくWeb上で誰でも操作でき、会員登録すると、さらにお得な機能が使えるようになります。

ただし、あくまでも青森県内の農家への指導用なので、地名選択では青森県内の地名のみで、作物も県内で生産されるものに限られます。それでも、非常に細かくわかりやすい処方箋が提供されるので、参考までに見てみるとよいでしょう。

地方独立行政法人 青森県産業技術センター 施肥設計支援システム「施肥ナビ」はこちら

最近では土壌診断がかなり浸透してきましたが、それをもとに正しい施肥量を計算するのは苦手という人は多いでしょう。しかし、土壌診断結果の活用次第で作物の品質や収量が大幅に改善することもあります。便利なツールも利用して適切な施肥設計と正しい肥料計算で最高収量をめざしましょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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