【キャベツの害虫】主な種類と使える農薬・防除対策一覧
キャベツの栽培で注意すべき害虫には、アオムシ、コナガなどの蛾類や、ヨトウムシ類、アブラムシ類、アザミウマ類、ナメクジなど、多くの種類があります。本記事では、重要な害虫を写真付きで一覧にし、それぞれの特徴や防除対策、有効な農薬を解説します。
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目次
キャベツは害虫被害を受けやすいため、生育初期から収穫期まで防除が欠かせません。害虫被害を抑えるには、予防の徹底と早期な対処が不可欠です。害虫の正しい知識と防除の方法を押さえることで、キャベツの品質を高められます。
【一覧】キャベツ栽培時に注意すべき主な害虫
東京都産業労働局「防除指針 令和6年(2024年)オンライン版」所収「キャベツ」よりminorasu編集部作成
アブラナ科野菜であるキャベツは、多くの害虫から被害を受けやすいため、露地・施設栽培にかかわらず適切な防除が必要です。
キャベツの栽培で特に注意すべき害虫には、モンシロチョウの幼虫であるアオムシや、コナガ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガなどの蛾類、アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ類、ナメクジが挙げられます。
キャベツの害虫は、春から夏にかけて多発します。また、コナガやアオムシ、ヨトウムシ類などは秋から冬にかけても発生します。
以降では、それぞれの害虫の概要や被害の特徴・症状、防除対策と有効な農薬を解説します。
なお、本記事で紹介する農薬は2024年4月8日現在、キャベツへの有効性が認められているものです。実際の使用に当たっては、必ず使用時点の農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み用量・用法を守ってください。
また、同じ系統の農薬を連続で使用すると、害虫が耐性を獲得する場合があります。複数の農薬をローテーションで使用することで、耐性の獲得を防止できます。
アブラムシ類:葉裏に集団で寄生。すす病の原因にも
「アブラムシ」は代表的な広食性の害虫で、さまざまな雑草や作物に発生して茎や葉から吸汁します。
キャベツに被害を及ぼす代表的なアブラムシは、黄緑色、緑色または赤褐色の「モモアカアブラムシ」、黄緑色の体に白い粉をふいた「ダイコンアブラムシ」、暗緑色に少し粉をふいたような「ニセダイコンアブラムシ」の3種です。
モモアカアブラムシが集団で寄生しているキャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ダイコンアブラムシの体はロウ質の白色粉で覆われている
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ニセダイコンアブラムシの体長は2mm
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
アブラムシは一年中発生しますが、暑さには弱いため真夏は発生が減ります。晩秋になり気温が下がると多発する種もいます。
体長は成虫でも2~3mmと小さく、大量に発生し群がることで認識しやすくなります。
アブラムシは単為生殖によりメスだけで増殖可能です。条件がよければ毎日5匹ほどの幼虫を生み、その幼虫も10日ほどで成虫となり増殖するため、爆発的に増えることがあります。オスが現れて有性生殖も行います。
被害の特徴・症状
3種とも、成虫・幼虫がキャベツの葉裏などに群がって吸汁します。大量に発生した場合は、食害された葉が黄変して枯れることもあります。
また、結球の内部にアブラムシ類が入り込み、その死骸が残ったまま出荷されて商品価値が下がることもあります。
直接的な食害よりも注意が必要なのは、アブラムシ類の排泄物による「すす病」や、ウイルス性の病気である「モザイク病」の発生です。
これらの病気が発生すると、収穫物が汚れたり斑点がついたりして商品価値が下がります。また、ウイルスがほ場内の作物に伝搬すれば、多くの作物が出荷できなくなり、大規模な損害を被ります。
防除対策と有効な農薬
アブラムシ類は、周辺の雑草から有翅の成虫が飛来することでほ場に発生します。ほ場だけでなく、周辺の雑草も防除することで発生のリスクを抑えられます。
また、目合い1mmの細かい防虫ネットを張れば、有翅個体の侵入を高い確率で防げます。1mmのネット被覆であれば生育障害も起こりにくいため、害虫の侵入防止に有効です。
また、アブラムシ類は下から光が当たると上下感覚が狂い、正常に飛べなくなると考えられています。それを利用して、光を反射させるシルバーマルチを張るのも効果的です。
効率的に防除したい場合には、農薬の使用が有効です。ただし、同じ農薬を使い続けると、アブラムシ類が薬剤抵抗性を獲得することがあります。薬剤抵抗性の獲得を防止するには、異なる系統の農薬を組み合わせたローテーション散布が効果的です。
定植時に「オルトラン粒剤」や「ベリマークSC」などを施用すれば、アブラムシだけでなくアザミウマ類やヨトウムシ類、コナガ、アオムシなど多くの害虫を同時に防除できます。生育期には、「コルト顆粒水和剤」「ウララDF」「セフィーナ®DC」の施用が有効です。
▼アブラムシ類の防除については、以下の記事も参照してください。
ネギアザミウマ:葉に「かすり」や「てかり」が残る
アザミウマ類はあらゆる作物に寄生する広食性の害虫です。アザミウマ類の中では、ネギや玉ねぎ、ニラなどのネギ属に寄生する「ネギアザミウマ」がキャベツを食害します。
キャベツを食害するネギアザミウマの成虫と食害痕
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
4月から11月頃まで発生し、気温が高くなる7〜9月に多発します。体長1.1〜1.6mmと小さく、褐色や淡黄色で目立たないため、発見が難しい害虫です。
多発後の防除は難しいため、早期の発見と防除が重要です。
被害の特徴・症状
幼虫・成虫ともにキャベツの葉から吸汁します。食害痕は「かすり」や「てかり」として残り、商品価値を下げます。食害痕で細菌が繁殖すると、ゴマ状斑の痕を残すこともあります。
また、ネギアザミウマは「トスポウイルス」を媒介します。トスポウイルスは、トマトやキクなどに、葉の黄化や枯死などの被害を及ぼすため、キャベツと混作している作物がある場合には注意が必要です。
防除対策と有効な農薬
ネギアザミウマは主にユリ科ネギ属に寄生するため、玉ねぎやネギのほ場から飛来することがあります。飛来を防ぐには、目合い0.2~0.6mm程度の防除ネットやマルチの活用が効果的です。
トンネル掛けした防虫ネット
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)
成虫は黄色や青色に誘引される習性を持ちます。これを利用して、黄色または青色の粘着トラップをほ場に設置すれば、ネギアザミウマを捕獲できます。夏期に土壌を太陽熱で消毒して、次作でアザミウマ類の発生を抑える方法もあります。
また、農薬の使用も有効です。アザミウマ類に有効な農薬の多くは、ほかの害虫にも効果があるため、2種類以上の害虫を同時に防除することが可能です。
育苗期の後半から定植までは、「プリロッソ粒剤」「ディアナSC」などを施用します。定植後に発生した場合は、「スピノエース顆粒水和剤」「カスケード乳剤」などの施用が有効です。
多発後の防除は難しいため、農薬や粘着トラップなどを利用した早期の対策が重要です。
アオムシ(モンシロチョウ):葉脈を残して葉に大きな穴が開く
「アオムシ」は、「モンシロチョウ」や「スジグロシロチョウ」、「オオモンシロチョウ」などの幼虫の総称で、キャベツの宿敵もいわれる害虫です。
キャベツを食害するアオムシの若齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
主にさなぎで越冬し、春になると羽化してほ場に飛来し、第一世代として産卵します。通常は2~3月から年に6~7回出現しますが、北日本などの冷涼な地域では2~4回の出現に留まります。
作物への被害は、個体数が増える春と秋に集中しています。夏期はアオムシを捕食する天敵が多くなるため個体数が減り、被害は比較的小さくなります。
蝶の雌成虫は、一生の間に300~400個もの卵を産むといわれています。葉の裏に産み付けられた卵は、3~5日間ほどでふ化します。
幼虫は葉を摂食しながら10日間ほどで成長し、5~10日間ほどさなぎを経て成虫になります。
成虫になれば飛来を目視できるため、巡回により発生を容易に確認できるようになります。
被害の特徴・症状
キャベツ栽培でのアオムシによる被害は、目に見える食害の痕です。アオムシは老齢幼虫でも体長が3cmほどの小さな害虫ですが、食欲は旺盛です。食害して葉に大きな穴を開け、キャベツは文字通り「虫食い」状態になります。
多発すると葉脈を残して食い尽くし、品質や収量を大幅に低下させます。
防除対策と有効な農薬
蝶は日中に上空から飛来するため、防虫ネットでの防除が効果的です。目合い0.6mmのネットを利用すれば、高い確率で侵入を防止できます。
アオムシは農薬が比較的効きやすいため、農薬の散布により効率的に防除できます。特に若齢幼虫に対して効果が高いため、早い段階での施用が有効です。ただし、アオムシの天敵に影響を及ぼす農薬を利用すると、捕食者が減ります。天敵に影響の少ない農薬を選べば、自然の力を借りながら個体数を減らせます。
アオムシに有効な農薬には、育苗期の後半に灌注して使う「プレバソンフロアブル5」、定植後に散布する「アファーム乳剤」、アザミウマ類にも効果のある「ディアナSC」、無人航空機で散布できる「カスケード乳剤」などがあります。
タマナギンウワバ(ウワバ類):多発時には葉がボロボロに
「タマナギンウワバ」は蛾の仲間で、主にキャベツやブロッコリーなどのアブラナ科作物を食害します。全国に分布し、4~5月から発生し始めます。夏の間は発生が減りますが、暑さがおさまる頃から再び増え始め、秋の被害が最も大きくなる傾向にあります。
老齢幼虫の体長は40mmほどになり、体色は淡い緑~黄緑色です。幼虫は大きくなってもシャクトリムシのように歩きます。
成虫の体長は18mmほどであり、羽を広げると34~40mmほどになります。夜にほ場に飛来し、葉裏に丸く白い卵を1つずつ産卵します。卵はふ化が近づくと、白から黒に変化します。
卵から成虫になるまでは30日ほどかかり、年に4~5回発生します。地域によっては冬期でも確認できます。
タマナギンウワバの卵の直径は0.8mmほど
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
タマナギンウワバの中齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
タマナギンウワバの老齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
タマナギンウワバの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
被害の特徴・症状
タマナギンウワバの幼虫は主に外葉を食害します。若齢幼虫は葉裏から表皮を残すように食害しますが、成長すると葉の全体を食べるため葉に穴があくようになります。多発すると外葉が食い尽くされて商品価値が大きく下がります。
防除対策と有効な農薬
ほかの幼虫と同様に、成虫の飛来を防ぐためには防虫ネットが有効です。目合い0.6~1mmの防虫ネットを利用すると、高い確率で侵入を防止できます。
タマナギンウワバの幼虫は、若齢の頃から単独で行動して食害します。集団で食害することはほぼなく、被害が一目でわからないこともあるため、小規模栽培の場合は葉裏のこまめな確認が有効です。
大規模栽培の場合は、「コンフューザーV」などの性フェロモン剤を設置して交尾を阻害し、発生密度を下げる方法があります。
タマナギンウワバに有効な農薬には「グレーシア乳剤」「ベネビアOD」などがあります。タマナギンウワバは葉裏から食害するため、外葉の葉裏まで農薬が付着するように散布すると効果的です。
コナガ:アオムシの食害よりも小さな穴が複数生じる
「コナガ」は、主にアブラナ科の作物に大きな被害をもたらす、キャベツの主要な害虫です。成虫は背面にダイヤ型の茶色っぽい模様を持ち、体長は成虫と幼虫ともに1cmほどです。
コナガの幼虫に食害されたキャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
繁殖のサイクルが短く、西日本・南日本では春から秋にかけて7~10回発生し、北日本では6~9月にかけて3~5回発生します。その後、さなぎか老齢幼虫の状態で越冬します。
アオムシと同様に、天敵の多い夏場は増殖が抑えられます。
コナガは、ほかの作物には卵を葉脈に沿って1粒ずつ産みつけますが、キャベツにはかためて産みつけることがあります。卵は2日ほどでふ化し、老齢幼虫は体長10mmほどに成長します。
被害の特徴・症状
コナガの幼虫は葉裏から表皮を残して食害します。そのため、アオムシのように葉全体を食い尽くされるのではなく、点々とした穴が透けて見える状態になります。
しかし、多発すると葉全体を食いつくし、葉脈のみが残る状態になります。また、幼苗期にキャベツの芯葉に潜り込まれると、生育の遅れや枯死を引き起こします。
防除対策と有効な農薬
コナガの防除には、防虫ネットや農薬の施用が効果的です。防虫ネットは、目合い1mm以下のものを使用すれば、外部からの侵入を防止できます。
コナガに有効な農薬には「プレオフロアブル」「コテツフロアブル」「カスケード乳剤」などがあります。これらは他の蛾の幼虫にも効果があります。
大規模栽培の場合は、無人航空機による散布にも対応している「トルネードエースDF」などを使えば、効率的に防除できます。
なお、コナガは葉裏を食害するため、外葉の葉裏に農薬が付着するように散布すると効果的です。「浸透移行性」や「浸達性」のある農薬を選ぶようにすると高い効果が得られます。
発生サイクルが多いため、農薬をローテーションして薬剤抵抗性を獲得させないよう工夫する必要があります。
ハイマダラノメイガ:芯葉に近い部分を食害する
「ハイマダラノメイガ」は、1995年頃から西日本で発生するようになった害虫です。防除の歴史は浅く、深刻な被害をもたらす厄介な害虫ですが、生態や防除方法などが徐々に明らかになっています。
ハイマダラノメイガは、キャベツなどアブラナ科の野菜に5~10月にかけて6~8回ほど発生します。8~9月頃に多く発生し、冬期には死亡すると考えられています。高温で雨が少なく、残暑の厳しい年は多発するため、気候によって注意が必要です。
成虫の体長は約7~10mmで、夜間に飛来して葉に1~10個の卵を産み付けます。卵は3〜5日でふ化し、老齢幼虫は体長15mmほどに成長します。
ハイマダラノメイガの幼虫による新葉の被害
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ハイマダラノメイガの雌成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
被害の特徴・症状
ハイマダラノメイガの幼虫は、新芽や若い葉を好んで食害します。生長点付近の新葉をつづり合わせ、その内側から食害します。
ハイマダラノメイガは生長点付近を食害するため、被害を受けた多くの株は生育が止まったり、枝分かれして複数の小さな結球ができたりします。
ハイマダラノメイガの被害により枝分かれして結球したキャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
生育が進めば大きな被害は受けませんが、幼苗期に発生すると生育が大きく遅れるため、商品価値がなくなる場合もあります。
防除対策と有効な農薬
ハイマダラノメイガの防除には、防虫ネットや農薬が有効です。防虫ネットは、目合い2×4mmでも効果があります。しかし、目合いが大きいと他の害虫が侵入するため、状況に応じた判断が必要です。
有効な農薬は、播種時や育苗期、定植時に施用できる「ダントツ粒剤」、定植後に散布する「フェニックス顆粒水和剤」「カスケード乳剤」「アクセルフロアブル」などです。
ただし、ハイマダラノメイガの幼虫はつづり合わせた葉の中にいるため、農薬が効かない場合があります。「浸透移行性」や「浸達性」のある農薬を選べば、有効成分を葉の内部にも届けることができます。
ヨトウムシ類:葉裏からの薄皮を残すように食害
ヨトウムシ類は、漢字で「夜盗虫」と書くように、昼間は作物の株元に潜んで見えず、夜になると盗人のように葉を食べます。
ヨトウムシの中齢幼虫(体長10mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ヨトウムシ類には多くの蛾の種類が含まれていますが、キャベツ栽培で注意すべきは「ヨトウガ」「シロイチモジヨトウ」「ハスモンヨトウ」の3種です。
ヨトウムシ(ヨトウガ)は、東日本以西では4~6月と8~11月にかけての2回発生します。北日本では6~9月の間に2回発生します。北方系の虫であるため、北日本のほうが被害が大きい傾向にあります。
ハスモンヨトウとシロイチモジヨトウは6月頃から発生し、8~9月には特に多発します。南方系の虫で、主に西日本で被害が大きい傾向にあります。
ヨトウムシ類の中でもヨトウガは、シャクトリ虫のように歩行します。ウワバ類の幼虫と間違えられることがありますが、ヨトウガの幼虫はウワバ類と異なり、集団で行動する特徴を持ちます。
被害の特徴・症状
ヨトウムシ類は幅広い植物を食害しますが、特にアブラナ科のキャベツなどを好みます。夜になると動き出し、食欲旺盛で数日のうちに葉脈以外を食べ尽くされることもあるほど、大きな食害を及ぼします。
いずれの種類も若齢幼虫のうちは葉裏から表皮を残すように集団で食害します。中齢以降は分散して株の根元や物陰などに隠れ、夜に食害するようになるため、発見が困難です。
防除対策と有効な農薬
ヨトウムシ類の飛来を防止するには、4mm以下の防虫ネットが有効です。施設栽培の場合は、開口部をネットで覆い、侵入を防ぎます。ただし、ネットに卵を産みつけられた場合、幼虫が入り込む可能性があるため、防虫ネットの設置後も注意が必要です。
また、黄色蛍光灯の設置もヨトウムシの防除に効果的です。黄色蛍光灯にはヨトウムシの忌避効果があるため、夜間に成虫の飛来を抑えられます。
ほかにも、市販されているヨトウムシ用の合成性フェロモンを使用すれば、オスが撹乱して交尾できなくなるため、産卵を防げます。
ヨトウムシ類の防除に有効な農薬は、ヨトウムシとハスモンヨトウに登録のある「ディアナSC」や「フェニックス顆粒水和剤」「ノーモルト乳剤」、3種すべてに登録のある「カスケード乳剤」「プレオフロアブル」などがあります。
なお、同じヨトウムシ類でも、種類によって登録されている農薬が異なります。ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウのうちどれが発生したのかを正確に判断し、適した農薬を散布することが重要です。
見分けるポイントについては、大阪府が作成した資料が参考になります。
出典:大阪府病害虫防除所「病害虫防除カラー技術資料」所収「ヨトウムシ類の見分け方と防除」
老齢幼虫になると薬剤に対する感受性が極端に下がり、また、日中は物陰作物の地際に潜むため、農薬が効きづらくなります。こまめに葉裏をチェックして早期発見に努め、若齢幼虫のうちに防除することが大切です。
オオタバコガ:結球内部の目立たない箇所へ食入して潜り込む
「オオタバコガ」は広食性の蛾の仲間で、キャベツなどのアブラナ科作物をはじめ、ピーマン、オクラ、とうもろこし、花き類など、多くの作物に発生します。
暖地での栽培や施設栽培では春~秋にかけて3~5回発生し、その中でも8~10月に多発します。
幼虫の体色は褐色や緑色など変化に富み、ヨトウムシやハスモンヨトウに似ています。しかし、オオタバコガはキャベツに1つずつ産卵するため若齢幼虫が集団にならない点で区別できます。
また、オオタバコガの幼虫は体に黒い斑点と、そこから伸びる毛があるのも見分けるポイントです。
体長18mmのオオタバコガの中齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
前翅長18mmのオオタバコガの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
被害の特徴・症状
キャベツの結球部分に2~5mmほどの穴を開けて侵入し、内部を食害します。穴の小ささから収穫時には気が付かず、出荷後に発覚することもあります。
また、幼苗期に発生した場合は芯部を食害され生育できなくなり、商品価値が著しく低下します。
オオタバコガの老齢幼虫の被害を受けたキャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
防除対策と有効な農薬
まずは、防虫ネットを活用して飛来させないことが重要です。万が一侵入した場合でも、農薬や黄色蛍光灯を使用することで対処できます。しかし、幼虫が結球内部に入り込んでしまうと発見が困難になるため、未然に防ぐことが重要です。
オオタバコガに有効な農薬は、ほかの害虫にも効果のあるものが多く、同時防除が可能です。コナガやアオムシ、ウワバ類など幅広い害虫を防除できる「グレーシア乳剤」「プレオフロアブル」「ベネビアOD」などの農薬が有効です。
また、市販されている合成性フェロモンは、オオタバコガにも有効です。フェロモンを使ってオスのを撹乱させて交尾を阻害し、産卵数を減らします。
チャコウラナメクジ:食害痕に、糞や這い跡なども残る
「チャコウラナメクジ」は、成体でおよそ50~70mmのナメクジです。体色は淡褐色で、背面に2本の灰黒色の縦線を持ちます。名前の示す通り退化した介殻が甲羅のように見えます。
体長30mmのチャコウラナメクジ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
4月頃にふ化する個体が多く、春~秋にかけて活動し、特に5~7月の梅雨の時期に多発します。夜行性で、日中は落葉の下などに隠れるため、発見が困難です。
被害の特徴・症状
チャコウラナメクジはアブラナ科の作物を好み、ヤスリ状の歯舌で葉や茎を薄くかじるように食害します。 食害された部分には穴が開き、周囲には乾燥すると光る粘液が残ります。
結球したキャベツの内側に潜んでいることもあり、気づかずに出荷すれば問題になることもあります。
また、見た目が不衛生なだけでなく、ナメクジは人に感染する「広東住血線虫」を媒介することがあります。感染者は発熱や激しい頭痛、脳神経麻痺などを起こします。
チャコウラナメクジが食害したキャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
防除対策と有効な農薬
チャコウラナメクジの発生を防ぐためには、ほ場内にビニールシートやダンボールなど、ナメクジが隠れられる場所を作らないようにします。また、多湿な環境を好むので、土壌や作物が過度に湿った状態にならないように、ほ場の排水性を高めることも重要です。
あえて湿らせた環境を作れば、トラップになります。例えば、湿らせた段ボールをほ場の周囲に置いて薬剤トラップを仕掛ければ、捕殺して個体数を減らせます。
ほ場への侵入を許した後は、トラップや農薬を活用して根気よく防除する必要があります。
チャコウラナメクジを発見した場合は、結球前に「ナメクリーン3」を作物にかからないよう株元散布すると食害を防げます。 チャコウラナメクジがキャベツの結球内に入り込むと、発見も防除も困難なので注意してください。
農薬散布中のキャベツほ場
bwinds / PIXTA(ピクスタ)
害虫防除は、キャベツの生育ステージとほ場にいる害虫の種類に応じて実施する必要があります。特に栽培初期に害虫が発生すると被害が大きくなりやすいため、注意が必要です。
育苗に使用する農機具や長靴などの洗浄やほ場周りの雑草の処理など、基本的な防除は常に求められます。予防を含めた防除を徹底すれば、害虫を削減でき、高品質な作目の栽培につなげられます。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。