トラクターの公道走行が可能に! 作業機や免許は? ポイントを解説
従来、作業機を装着したままでは、トラクターは公道を走ることができませんでした。しかし法律の見直しにより、一定の条件を満たせば公道走行が可能になりました。本記事では、公道走行をするための条件や免許などについて解説します。
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道路運送車両法の見直しによって、トラクターに作業機を装着、またはけん引したままでも公道走行が可能になりました。
ただし、ルールに従わなければなりません。今回は、公道を走るうえで守るべきルールのポイントや具体的な条件などについて解説します。
作業機を装着・けん引したままでも公道走行が可能に
公道を走行するトラクター
これまでは、農作業中に別のほ場まで公道を移動する場合、トラクターは単体で走行し、作業機などは別に運搬しなければなりませんでした。農家にとっては作業効率の点で、非常に負担が大きかったのではないでしょうか。
しかし、道路運送車両法の運用が見直されたことで、一定の条件を満たせば、トラクターに作業機を装着・けん引したままでも公道上を走行できるようになりました。ただし前提として、作業機を装着しない状態でも公道走行ができるトラクターでなければなりません。
また公道を走行する場合は、条件として規定された対応をする必要があります。必要な対応をしないままで公道走行をすると、法令違反となる可能性があるので注意しましょう。
道路走行が認められる作業機
作業機を装着・けん引したトラクターでの公道走行は、まずはトラクター単体で、道路運送車両の技術基準を満たす必要があります。作業機に関しても、制限事項を遵守したものでなくてはなりません。トラクターに装着・けん引できる作業機はどのようなものがあるのか、タイプ別に主な種類を見ていきましょう。
直接装着タイプの作業機
mits / PIXTA(ピクスタ)
カプリコーン / PIXTA(ピクスタ)
トラクターに直接装着する作業機は、ほとんどが後方に装着するタイプですが、中には前方に装着するタイプもあります。主な作業機の種類は以下の通りです。
・ロータリー
・ハロー
・プラウ
・ブロードキャスター
・ライムソワー
・ブームスプレイヤー
・フロントローダー(前方装着)
これらの作業機を装着したトラクターは、一定の条件を満たせば普通免許か小型特殊免許で公道走行が可能です。しかし、全体のサイズや運行速度によっては、大型特殊免許が必要になります。
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
被けん引タイプの作業機
次に、トラクターがけん引するタイプの作業機を挙げていきます。
・ロールベーラー
・マニュアスプレッダー
・トレーラー
・バキュームカー
yankane / PIXTA(ピクスタ)
こうした作業機をけん引する場合も、一定の条件を満たすことで、普通免許か小型特殊免許で公道走行ができます。ただし、サイズや速度によっては大型特殊免許が必要です。また、総重量が750kgを超えるトレーラー(重被けん引車)の場合は、別途けん引免許を取得する必要があります。
けん引して公道走行をするときは、万が一トラクターと作業機の連結部分が分離しても連結状態を保てるように、チェーンなどで固定しておかなければなりません。
akio / PIXTA(ピクスタ)・niyan / PIXTA(ピクスタ)
トラクターの公道走行に当たってのチェックポイント
作業機を装着した状態で公道走行をするためには、これから解説する4つの条件をすべて満たす必要があります。保有するトラクターでチェックしてみてください。条件が揃わないまま公道走行すると、違反の対象になるので注意しましょう。
出典:農林水産省「作業機付きトラクターの公道走行について」のページ 所収の「農作業機を装着・けん引した農耕トラクタの公道走行ガイドブック」
1. 灯火器類の確認
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
まずは灯火器類について確認していきましょう。
公道走行をするにあたっては、作業機を装着した状態でも、ランプ類やウィンカーなどの灯火器類が、ほかの車両や歩行者から正しく見えなければなりません。トラクターの前方と後方、すべての灯火器類が対象です。
もしも灯火器類が正しく見えない場合は、見える位置に別途装着する必要があります。灯火器類が見える場合でも、その位置が作業機の端から40cmを超えるときは、作業機の両端に反射器(前面が白・後面が赤)を装着しなければなりません。
対象となる灯火器類は以下の通りです。
・ヘッドランプ
・ウィンカー
・後部反射器
・前部反射器(被けん引タイプの作業機のみ)
・車幅灯
・テールランプ
・ブレーキランプ
・バックランプ
被けん引タイプの作業機は、トラクターと別の車両として扱われるため、作業機自体にもトラクターと同様の灯火器類を装着する必要があります。
ただし、トラクター単体が、長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下に収まり、最高速度が時速15km/h以下の「特定小型特殊自動車」に分類される場合は、ウィンカー、後部反射器、前部反射器以外は取付義務がありません。
kiki / PIXTA(ピクスタ)
2. 車両幅の確認
公道走行をするためには、作業機を装着した状態での車両幅の確認が必要です。特定小型特殊自動車に該当するトラクターで、作業機を含めた幅が1.7mを超えるときは、下記の3つの対応をする義務があります。
・作業機の両端に反射器を装着する
・トラクターの左側にサイドミラーを装着する
・保安上の制限を受けているという制限標識を、後部の見やすい位置に表示する
また、車両幅が2.5mを超える場合には、以下の対応が必要です。
・道路管理者(国土交通省の地方整備局や地方自治体)から、特殊車両通行許可を得る
・前部と後部に外側表示板、反射器、灯火器を装着する
・全幅を示す標識を後部の見やすい位置に表示する
・運転席にも全幅を示す標識を表示する
なお、特定小型特殊自動車が作業機を付けた状態で車両幅が2.5mを超える場合は、トラクターの左側にサイドミラーを装着する必要があります。
mits / PIXTA(ピクスタ)
3.安定性の確認
トラクターには、30度または35度という安定性の保安基準(最大安定傾斜角度)が設けられています。作業機を装着すると、この基準を満たせなくなる可能性があるため、事前にチェックが必要です。
直装式作業機の安定性保管基準の確認
トラクターと直装式作業機を組み合わせた場合に安定性の保安基準を満たしているかどうかについては、日本農業機械工業会のホームページで確認できます。
トラクターのメーカー別に、トラクターの型番と安定性保安基準を満たした作業機の型番がわかる表が収載されています。作業機のメーカー名から上記のトラクターのメーカー別の文書を探すこともできます。
出典:一般社団法人日本農業機械工業会「作業機付きトラクタの公道走行について」
安定性保安基準が確認できない場合の対応
直装式作業機とトラクターの組み合わせで安定性保安基準の確認ができない場合と、被けん引タイプの作業機でブレーキが未装着の場合には、以下の対応が必要です。
・運行速度時速15km/h以下で走行する
・保安上の制限を受けているという制限標識を、後部の見やすい位置に表示する
・「運行速度15キロメートル毎時以下」の標識を後部に表示する
・運転席にも制限速度を表示する
4. 免許の確認
最後に、トラクターで公道走行する場合の免許についてチェックしましょう。必要な免許は、トラクターと作業機のサイズによって決まります。
普通免許と小型特殊免許で公道走行ができるのは、トラクターが特定小型特殊自動車に分類される場合です。具体的には作業機を装着した状態で、長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下に収まり、最高速度が時速15km/h以下であることが条件です。
このサイズを超えるときは、大型特殊免許がないと走行できません。また、総重量が750kgを超える被けん引タイプの作業機を装着するときは、別途けん引免許が必要です。なお、大型特殊免許とけん引免許は、農耕作業用自動車限定でも問題ありません。
トラクターの運転に必要な免許についてはこちらの記事をご覧ください。
離れた場所にあるほ場を行き来するような農作業の場合、作業機を装着したまま公道走行が可能になることで、作業効率の向上が見込まれます。
ただし、決められた条件はすべて満たすように注意してください。自分が法令違反になるだけでなく、周囲の車両や歩行者の安全にも関わることなので、必ず条件を守るようにしましょう。
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大澤秀城
福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。