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【2022年版】農業の確定申告、経費になるのは? 農家が知っておくべき具体例と注意点

【2022年版】農業の確定申告、経費になるのは? 農家が知っておくべき具体例と注意点
出典 : tsukat / PIXTA(ピクスタ)

確定申告に当たり農業所得を割り出す際は、経費を正確に差し引くことで、課税対象となる所得額を最小限に抑えられます。本記事では、個人事業主として青色申告する場合において、具体的な支出の例を挙げながら、それぞれの計上方法について説明します。

農家にとって確定申告をすることは、節税などさまざまなメリットにつながります。本記事では、農業での確定申告において申告額を大きく左右する経費や、わかりにくい減価償却について詳しく解説します。正しく帳簿をつけ、無駄のない申告で賢く節税をしましょう。

※本記事は2022年2月10日現在、国税庁「令和3年分の確定申告に関する手引き等」および「令和3年度 所得税の改正のあらまし」を基本に、一般社団法人全国農業経営専門会計人協会など農業財務の専門サイトへ掲載された情報を参照し執筆しております。詳細はお近くの税務署や公認会計士、税理士にご確認ください。

農家の確定申告! 税負担の軽減には、経費の正しい申告が最重要

農業所得用 収支内訳書

artswai /PIXTA(ピクスタ)

農業所得は、1年間の農作物の売り上げや補助金、小作料などの農業収入から必要経費を差し引くことで求められます。

農業における収入には、主に農作物を出荷・販売した「販売額」、自宅で消費したり事業に活用したりする農産物の金額を示す「家事消費・事業消費」、米精算金や補助金・助成金、共済受取金、営農組合収入、小作料などの「雑収入」が含まれます。ほとんどの収入は、この3つのいずれかに分類されます。

一方、農業における必要経費は細かく分類され、計算が複雑なものもあります。費用を各科目に分け適切に管理するのは大変ですが、節税するためには経費を漏れなく計上し、正しい農業所得を申告することが重要です。そこで次項では、特に重要な経費について、算出方法や注意すべき点を解説します。

農業の経費として計上できる支出の具体例

確定申告においては、経費として計上できる支出とできない支出があります。それぞれの具体的な例を、使用目的別にまとめてご紹介します。

農地の取得・維持にかかった費用

土地改良事業による区画整理が行われた農地

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

農地は資産であるため、農地の購入費用は経費に計上できません。また、減価償却もできません。ただし、取得した農地にかかる固定資産税や不動産取得税は経費に計上できます。

土地の購入費用を借り入れた場合は、返済にかかる利子も経費になります。農地を借りている場合にかかる地代・賃借料・小作料なども同様です。

なお、土地改良事業の賦課金がある場合は、目安として10a当たり1万円未満であれば「土地改良費」として全額経費に計上できます。それを超えた場合は、永久資産取得費に相当する部分について、内訳を土地改良区に確認します。永久資産取得費とは、土地改良施設の敷地などに当たる土地取得や、農用地の整理・造成に要する費用経費のことで、これを個人の経費から差し引いて申告します。

なお、賦課金には水利費も含まれており、水利費は全額を「租税公課」として計上します。市町村によっては、地域にある土地改良事業の永久資産取得費を除く経費のみの額を算出し、広報などで公開している場合もあるので、参考にするとよいでしょう。

農機具や農業用設備の取得にかかった費用

収穫用コンテナなどは「農具費」に計上できる

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農機具や、農業用倉庫などの農業用設備を購入した費用は「農具費」として、農具のリースにかかった費用は「賃借料」として経費に計上できます。ただし、農具費はハサミ・バケツ・コンテナ・育苗箱・刈払機といった、使用可能期間が1年未満か、取得価格が10万円未満の農具の購入費用に限られます。

10万円以上の農業用機械を購入した場合は、全額をその年に経費計上できず、減価償却資産となります。減価償却資産について、詳しくは後述します。

農機具や農業用設備の維持にかかった費用

ビニールハウスの加温などにかかった燃料費は「動力光熱費」

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

トラクターなどの農業用機械やビニールハウスの加温などにかかった燃料費、電気代・ガス代・水道代などの光熱費は、「動力光熱費」として経費に計上できます。ただし、家事用は経費にできないので、事業用と明確に分ける根拠がない場合は経費計上できません。

根拠が明確で、かつ算出方法が合理的であれば、自分なりに計算した割合でOKです。例えば電気代の根拠としては、メーターを分けていなければ、農業に使用した月と使用しなかった月の明細を比較して使用割合を合理的に割り出し、それによって使用料を家事用・事業用に分けます。その場合は、根拠とした明細をノートなどに貼り付けて保管し、そこから算出した割合もメモしておきましょう。

農機具や農業用設備などの修理費、軽トラックなど業務で使う車両の車検費用は、「修繕費」として経費に計上できます。ただし、軽トラックなどを生活の用途でも使用している場合は、使用割合を割り出し、農業用割合をかけて計算します。割り出した金額の根拠となる領収書や計算のメモを保管しておきましょう。

トラクターや軽トラックなどにかかる自動車税や、車両の購入・車検の際にかかる自動車取得税・自動車重量税は、「租税公課」として経費に計上できます。こちらも同様に農業用割合をかけて計算します。

トラクターの修理費は「修繕費」

Diziano / PIXTA(ピクスタ)

農業の知識を学ぶためにかかった費用

農業関係の書籍購入費や農業新聞などの購読費、セミナーや研修への参加費・交通費などは「雑費」として経費に計上できます。これ以外にも事務用品の購入や、営農集団個人帰属組合費用など、帳簿上ほかの科目に当てはまらない農業に関する経費が雑費に当たります。領収書や通帳、持分明細書などの資料が必要です。

農作物の栽培にかかった費用

種苗の購入費は「種苗費」、トンネル栽培用のビニールなどの消耗品代は「諸材料費」として経費に計上できる

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

農作物の栽培にかかる費用については、種子・苗・種いもなどの購入費は「種苗費」、肥料の購入費は「肥料代」、農薬の購入費や共同防除費用などは「農薬衛生費」といった具合に、細かく分類されています。

なお、共同防除費用が補助金などを差し引いたうえで請求されている場合、その内訳を確認し、実際の委託費を経費として、補助金は収入として計上する必要があります。

ビニールハウスのビニール代、防虫ネットや寒冷紗、マルチ、縄、針金などの消耗品代は「諸材料費」として経費に計上できます。

農作業で使用する作業用衣類の購入費用

作業用衣類は「作業用衣料費」として経費に計上

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作業衣や長靴、帽子、手袋、地下足袋などの作業用衣類を購入した費用は、「作業用衣料費」として経費に計上できます。ただし、私服と兼用している場合は全額を経費計上できず、使用割合を割り出し、農業用割合をかけて計算します。

農作物の出荷にかかった費用

荷造りのための包装費用は「荷造運賃手数料」

kura / PIXTA(ピクスタ)

農作物を出荷する際に必要となる、荷造りのための包装費用や運賃などは、「荷造運賃手数料」として経費に計上できます。カントリー固定費、販売対策にかかる費用なども、この科目に該当します。

販売促進チラシなど広告宣伝にかかった費用

ホームページを作成した場合の通信料やプロバイダ料金、サーバー・ドメイン代などは「事務通信費」

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

青色申告決算書の既存科目にはないものの、近年の農業に欠かせない費用として、農作物の販売促進チラシの制作費用など「広告宣伝費」、ホームページを作成した場合の通信料やプロバイダ料金、サーバー・ドメイン代などの「事務通信費」も経費として計上できます。これらの科目は農業簿記勘定科目にあるので、決算書を作成する際は、余白を利用して科目を記入しましょう。

なお、事務通信費について家庭用としても利用している場合は、使用割合を割り出し、農業用割合をかけて計算します。

借入金の支払利息

JAなどから借り入れの支払利息は「利子割引料」として経費に計上

yamahide / PIXTA(ピクスタ)

農地やコンバインなどの農機具を購入する際、JAなどから借り入れを行った場合は、その支払利息を「利子割引料」として経費に計上できます。ただし、購入費用の元金は「減価償却費」として経費計上します。

なお、住宅購入や生活借入資金利息は経費に計上できません。

人を雇用したとき支払った給与等の費用

農繁期のアルバイト

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

常時雇用している従業員や、繁忙期に臨時で雇ったアルバイトなどへ支払う給与・交通費は、「雇人費」として経費に計上できます。商品券や現物で支給する場合も含まれます。

一方、親族を雇用し給与を支払った場合、原則としてそれを経費にはできません。ただし、青色事業専従者給与の特例(青色申告)、もしくは事業専従者控除の特例(白色申告)によって、親族への給与についても特別な取り扱いが認められています。

特に「青色事業専従者給与」は、申告者と生計を同じくしている配偶者や親族のうち、15歳以上でその家の農業に専ら従事している人に支払った給与は、労務に対して適正な金額であれば必要経費として計上できるので、大きなメリットがあります。

ただし、事業専従者は控除対象配偶者や扶養親族になれない点に注意しましょう。

お金がなくても税金はかかる?! 知っておきたい「減価償却」の考え方

トラクターなど購入代金が10万円以上の資産は減価償却の対象

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続いては、科目の中でもわかりにくい減価償却の考え方について詳しく解説します。

確定申告における減価償却制度の概要

事業用に取得した建物や設備、機械装置、農機具、車両などの資産は一般的に高額で、数年から十数年にわたって使用します。また、購入時には高額でも、経年によって価値が下がります。そのため、購入代金が10万円以上の資産は、その購入額を使用可能な期間全体にわたって分割し経費とする、というのが減価償却制度の考え方です。

各資産の使用可能な期間の目安として、法定耐用年数が財務省令の別表で定められています。減価償却では、該当する資産を取得したときの金額を、耐用年数の全期間にわたり一定の方法で必要経費として配分します。

つまり購入した年は、現実には購入代金がかかっているのに、その全額を経費として計上できないため、そのぶん税金がかかり、一見損をしているように思えます。しかし、次の年からは、支払いがなくても耐用年数の期間内は経費とされるので、結局は同じ金額を払うことになり、損も得もありません。

耐用年数について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。

わかりやすく言うと? 減価償却の具体例

減価償却の考え方や概要はわかっても、具体的にどのように代金を払うことになるのか、いまいちピンとこない方もいるかもしれません。そこで以下では、わかりやすい例を挙げて説明します。

まず、100万円の収入があった年の7月1日に、70万円のトラクターを購入したとしましょう。勘定科目上、トラクターは「機械・装置」における農業用設備として扱うため、耐用年数は7年です。つまり、購入代金を7年で按分するため、初年度は70万円を支払い手元に30万円しか残っていなくても、計算上は「収入100万円-費用5万円(6ヶ月分)=農業所得95万円」となり、95万円に対して課税されることになります。

ただ、次の年も同じように100万円の収入があったとすると、何も購入せず手元には100万円があっても、減価償却で10万円を経費とするため農業所得は90万円となり、これが課税対象額になります。

農業所得の確定申告で注意すべきその他のポイント

経費の計算以外にも、確定申告をする際にいくつか注意すべきポイントがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

領収書の保管方法

領収書のスキャン

HiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)

国税庁では、帳簿書類の保管について、その事業年度の確定申告書の提出期限翌日から7年間保存しなければならないと定めています。ここでいう帳簿書類とは、総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳などの確定申告に向けて作成した帳簿と、領収書をはじめ棚卸表や貸借対照表、損益計算書、注文書などの書類が含まれます。

また、近年では帳簿をパソコンの会計ソフトなどで電磁的に記録することも増えているため、電子帳簿保存法も定めています。同法では、帳簿書類をその年のはじめから一貫してパソコンなどで電磁的に作成し、ハードディスク・CD・DVD・磁気テープなどの記録媒体に情報として使える状況で記録されていれば、電磁的記録による保存を紙媒体の帳簿書類の保存に代替できることとしています。

電磁的記録による保存とは、「電子帳簿などの保存」「紙で授受・作成した書類のスキャナ保存」「電子取引のデータ保存」の3種類に区分されます。書面で入手した書類でも、スキャン文書による保存が認められています。また、電磁的記録等電子取引で行った取引は、電磁的記録を保存しなければなりません。

2022年1月1日には、前年に行われた税制改正が施行されました。「電磁的記録にて保存することに税務署長の許可が必要なくなる」「優良な電子帳簿には過少申告加算税の軽減措置が整備される」「正規の簿記の原則(複式簿記)に従った電子帳簿であれば、最低限の要件を満たす場合でも電磁的記録による保存が可能になる」などの点が改正され、より帳簿の管理が簡便になることが期待されます。

国税庁パンフレット「電子帳簿保存法が改正されました」

※詳細は、国税庁「電子帳簿保存法関係」のページをご確認ください。

経費記帳時の勘定科目

農業所得者用の青色申告決算書には、限定された勘定科目しかなく、実際の帳簿の科目をどう記載したらよいか迷うこともあるでしょう。経費を記帳する際の勘定科目については、国税庁のマニュアル「帳簿の記帳のしかた-農業所得者用-」などが参考になります。また、迷ったときには最寄りの税務署や税理士に相談することをおすすめします。

国税庁「帳簿の記帳のしかたー農業所得者用ー」

なお、勘定科目について詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。

確定申告において、青色申告決算書の作成は煩雑で、慣れるまでは判断に迷うことも少なくありません。ですが、一度やり方を覚えてしまえば、それほど難しいものではないのも事実です。この記事をはじめ、農林水産省や国税庁が公表している資料を参考にしたり、税務署などで専門家に相談したりしながら、正確な申告をしましょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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