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農業産出額とは? 都道府県&品目別ランキングの推移から見る日本農業の今

農業産出額とは? 都道府県&品目別ランキングの推移から見る日本農業の今
出典 : あずさ/PIXTA(ピクスタ)

農業産出額は都道府県別に農業生産の動向を読み取れる身近なデータです。各地方の農政局も毎年農業産出額をまとめ、表やグラフにして生産状況をわかりやすく伝える資料を作成しています。これらの資料からどのようなことがわかるのでしょうか。

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農林水産省は毎年さまざまな統計を作成しています。その1つである農業産出額は、各都道府県の最終生産物の総産出額をまとめたもので、部門・品目別や都道府県別に構成割合を比較できます。
この統計を活用して、農業生産の現状を分析します。

農業産出額とは?

農産物 価格 統計

ナオ/PIXTA(ピクスタ)

農林水産省では日本の農業生産の実態を把握するために、毎年「生産農業所得統計」を作成しています。

その結果は、全国単位で推計した「農業総産出額」と「生産農業所得」、都道府県別に推計した「農業産出額」と「生産農業所得」として公開されています。

農業産出額

「農業産出額」とは、都道府県を単位とした農業における最終生産物の総産出額のことです。

都道府県ごとの品目別の生産量に、品目別の農家庭先販売価格(消費税を含む)をかけて求められます。

この場合の農家庭先販売価格とは、農業経営体が農産物を出荷した時点の税込価格で、市場手数料や集出荷団体経費などの諸経費は控除されます。

農業総産出額

「農業総産出額」とは、全国を1つの推計単位とし、生産されたすべての農産物の価値の合計を指します。

基本的な概念は農業産出額と同じですが、都道府県別農業産出額の合計と農業総産出額は必ずしも一致しません。

なぜなら、農業産出額では、他都道府県に販売した種子や子豚など「最終生産物となる農産物を生産するために再投入される中間生産物」を計上しますが、全国単位である農業総生産学では一切の中間生産物を計上しないなど、推計方法が少し異なるためです。

農業総産出額と農業産出額の比較

現在の最新データである2022年のデータで見比べてみましょう。


2022年 部門別の農業総産出額・農業産出額

全国推計統計表
農業総産出額
都道府県別推計統計表
農業総産出額
合計9兆14億円9兆146億円
野菜2兆2,298億円2兆2298億円
1兆3946億円1兆4015億円
果実9,232億円9,232億円
肉用牛8,257億円7,912億円
生乳7,916億円7,917億円
6,713億円6,775億円
鶏卵5,638億円5,716億円
鶏(鶏卵以外)4,078億円4,446億円
花き3,493億円3,493億円
いも類2,199億円2,123億円
工芸農作物1,551億円1,551億円
乳用牛(生乳以外)1,097億円927億円
豆類715億円731億円
そのほかの畜産物979億円979億円
そのほかの耕種作物607億円717億円
麦類647億円663億円
加工農産物565億円565億円
雑穀83億円86億円

出典:農林水産省 生産農業所得統計 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別推計)

全国の農業総産出額は9兆14億円で、部門・品目別の実額や推移についてまとめられています。部門別順位は1位:野菜、2位:米、3位:果実、4位:肉用牛、5位:生乳です。

一方、農業産出額の全都道府県合計は9兆146億円で、前述の通り、農業総産出額とは数値が異なります。以下では都道府県別の「農業産出額」について取り上げます。

【2022年】日本の農業産出額ランキング

都道府県別では北海道が不動の1位に

2022年の農業産出額における上位5位のランキングと農業産出額は以下の通りです。

2022年 農業産出額 トップ5の都道府県

順位都道府県農業産出額シェア対前年比
1位北海道1兆2,919億円14.3%-1.4%
2位鹿児島県5,114億円5.7%2.3%
3位茨城県4,409億円4.9%3.4%
4位千葉県3,676億円4.1%5.9%
5位熊本県3,512億円3.9%1.0%

出典:農林水産省「令和4年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」よりminorasu編集部作成

一見してわかるように、北海道は2位に倍以上の差をつけて1位です。2位以下は毎年僅差でしのぎを削っていますが、北海道は例年1兆超えで、首位を独走しています。

部門別構成比は耕種部門は低下、畜産部門は増加

農業産出額 上位県の部門別構成比  2020年・2022年の比較

出典:農林水産省 生産農業所得統計 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別推計)よりminorasu編集部作成

上位5道県について、部門別構成割合を2020年と比較してみると、1位の北海道では野菜や米、いも類などの耕種部門が42.1%から41.7%とわずかに下がり、畜産部門は57.9%から58.3%とわずかに上昇しています。

2位の鹿児島県も耕種部門が33.4%→30.7%、畜産部門が65.1%→67.7%と同様の傾向が見られます。

耕種部門の割合が高い茨城県や千葉県、熊本県でも同様で、上位の全5道県において畜産部門の割合が増加しています。

耕種部門における農業産出額の割合の減少は、気候の影響や労働力不足のほか、2020年以降主食用米の取引価格が下落し続けたことも要因の1つです。

一方、畜産部門における農業産出額の割合の増加は、肉類や乳製品の需要の増加や新型コロナウイルスの影響を受けた外食産業の回復などが影響しています。

農業産出額を知ることで、都道府県ごとにおける農産物の市場動向が読み取れます。

市町村別に農業産出額を知りたい場合は、同じく農林水産省から公表されている市町村別農業産出額(推計)を活用できます。

出典:
肥料価格高騰対策事業(令和4年6月~令和5年5月に購入した肥料に対する支援)
農業労働力に関する統計
JF外食産業動向調査94-23年年間データ(1月-12月合計)
農林水産省「市町村別農業産出額(推計)」

各都道府県の特色が見える品目別産出額

部門・品目別に産出額の都道府県構成割合を見ると、各都道府県の特色が見えてきます。

農業産出額1位の北海道は野菜といも類、工芸農作物、生乳の品目で全国1位になっており、特に生乳の産出額は51.9%と全体の半分以上を占めています。米や肉用牛、豚では2位となり、多様な農産物を生産していることがわかります。

2位の鹿児島県も肉用牛、豚、ブロイラーで1位を占め、工芸農作物では2位、いも類や鶏卵で3位を占めるなど畜産を中心に多くの品目を生産しています。

その他、ランキングに入っていない新潟県は米の産出額で1位、愛知県は花きの生産で1位など、1つの品目の生産が突出して盛んな県もあります。

▼北海道の農業の特徴は以下の記事をご覧ください。

農業産出額の推移から読み解く! 農業生産に大きな変化が見られる地域とその理由

農業産出額の推移を見ながら、各都道府県における農業生産の増減について検証してみましょう。

上位5都道府県の農業産出額の推移

都道府県20182019202020212022
実数
2022
対前年増減率
合計9兆1,283億円8兆9,387億円8兆9,557億円8兆8,600億円9兆147億円1.7
北海道1兆2,593億円1兆2,558億円1兆2,667億円1兆3,108億円1兆2,919億円-1.4
鹿児島4,863億円4,890億円4,772億円4,997億円5,114億円2.3
茨城4,508億円4,302億円4,417億円4,263億円4,409億円3.4
千葉4,259億円3,859億円3,853億円3,471億円3,676億円5.9
熊本3,406億円3,364億円3,407億円3,477億円3,512億円1.0

出典:令和4年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)より

農業総産出額は、農畜産物の国内外の需要に応じた生産の拡大を背景に、2015年以降、約9兆円で推移してきました。2023年には、米や野菜などの耕種部門、および豚や鶏などの畜産部門で価格が上昇したため、前年に比べ1,631億円(1.8%)増加し、9兆15億円となりました。

北海道は全期間を通じて安定した産出額を維持していますが、2022年には前年比で減少しています。この減少の主な原因は、気候変動による異常気象の影響や市場価格の変動、生産コストの上昇が考えられます。特に、2022年の夏の気温上昇や降雨量の変動が農作物の生育に悪影響を及ぼした可能性があります。

伸び率が高い地域は野菜の農業産出額が増加傾向に

2022年農業産出額の前年比が減少した地域は、北海道(前年比1.4%減)・沖縄県(前年比3.5%減)のみとなり、その他の地域では増加が見られます。

中でも山陽地方(同5.0%増)、山陰地方(同4.1%増)、南関東(同4.4%増)が前年より農業生産額を大きく伸ばしています。

山陽地方の各県では、全国順位こそ広島県と岡山県は1位低下し山口県は変化はありませんが、野菜の生産が拡大し産出額も顕著に伸びています。岡山県の野菜の農業産出額は前年比約13.3%増加、広島県では前年比約12.0%増加、山口県では、前年比約9.4%増加を見せています。

山陰地方の島根県でも、野菜の農業産出額が前年比約27.3%の増加を見せ、南関東地方の各県でも野菜の農業産出額が目立って伸びています。東京都の野菜の農業産出額は前年比約20.0%と大幅な増加が見られ、千葉県でも前年比で約4.3%の増加、神奈川県でも前年比で約4.5%増加しています。

農業産出額の増加は天候不順が影響。安定生産で収益向上につなげよう

天候不順などで生産量が減少し、野菜の価格が高騰しています。特に高温障害で収量確保が難しくなっていますが、栽培管理を工夫して安定生産を実現すれば、収益向上が期待できます。

例えば、トマトなら遮光ネットで太陽光の量を減らし温度を下げる、ドライミストで水滴の付着を抑えることなどが有効です。また、水稲では高温障害に耐性のある品種の選定や適切な土作りと施肥などの工夫ができます。

▼トマトや水稲の高温障害の対策は以下の記事をご覧ください。

毎年公表される生産農業所得統計のうち、農業産出額は、各都道府県や品目別の生産実態を掴み、傾向を知ることのできるとても有用なデータです。

こまめにチェックして、自身営農計画や地域の取り組みに積極的に活用しましょう。

出典:
令和4年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)

令和4年 農業総産出額及び生産農業所得(全国)

生産農業所得統計 都道府県別推計統計表 対前年増減率

生産農業所得統計 都道府県別推計統計表 都道府県別農業産出額及び生産農業所得 実績 2021年

生産農業所得統計 都道府県別推計統計表 都道府県別農業産出額及び生産農業所得 実績 2022年

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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