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茎疫病から大豆を守る! 被害や発生原因を踏まえた防除対策を解説

茎疫病から大豆を守る! 被害や発生原因を踏まえた防除対策を解説
出典 : 田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

水田転作畑で大豆を栽培する場合、悩まされるのが湿害や土壌病害です。この記事では、その中でも大きな被害につながりやすい茎疫病に焦点を当てて解説していきます。

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大豆 茎疫病 発病株

大豆 茎疫病 発病株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

大豆は中国が原産地であるといわれており、日本の気候にも合った作物であることから全国各地で栽培されています。ただし、本州では、水田転換畑で栽培している農家も多く、湿害や土壌病害によって収量が思うように取れないケースもあるのが課題となっています。

特に茎疫病は病勢が進むと株が枯死して収量がゼロになってしまうこともあるため、対応に悩んでいる農家も多いのではないでしょうか。この記事では茎疫病の特徴やその防除方法を紹介するので、大豆栽培農家の方は参考にしてください。

水田転換畑で増加傾向。大豆の茎疫病とは?

大豆 茎疫病 フィトフィトラ属菌

大豆 茎疫病 フィトフィトラ属菌
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

大豆の茎疫病(くきえきびょう)は糸状菌の一種である「Phytophthora sojae(フィトフィトラ属菌)」が原因で発病する病害です。1951年にアメリカで初めて確認され、その後オーストラリアやアルゼンチン、ブラジルなど、世界中で発生が報告されるようになりました。

日本では1977年の北海道で初めて確認されたあと、秋田県、新潟県、静岡県、福岡県など、全国各地で発生が報告されています。発病が確認されている都道府県は徐々に広がっているので、まだ身近に被害が及んでいない地域の農家であっても油断してはいけません。

日本においては、特に水田転換畑での被害が顕著ですが、これは発病の原因となる糸状菌が湿潤状態を好むことが要因だと考えられています。水田転作畑で排水性が十分でない場合、茎疫病が広がりやすい条件になっているところも少なくありません。

もともと大豆は湿害に弱い作物です。そのため、実際には茎疫病が発生していても「湿害による被害」とと認識してしまい、対策が遅れることもあります。

湿害と茎疫病による被害は、どちらも外見上は腐敗症状であるため判別がつきにくいという問題があるのは確かです。

しかし、茎疫病には有効な登録農薬があり、早期発見をすれば被害を軽減できる可能性も高まります。茎疫病の被害の特徴や診断のポイントをしっかり把握しておくことが重要です。

大豆茎疫病は大幅な減収を引き起こす難防除病害。被害の特徴と診断のポイント

大豆 茎疫病 茎のところどころに白いカビが広がっている

大豆 茎疫病 茎のところどころに白いカビが広がっている
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

茎疫病は大豆の生育期全般にわたって発生しますが、特に株が十分に育っていない播種直後や生育初期にかけて発生するケースが多く見られます。

具体的な症状は、まず幼苗期においては地下部もしくは地上部の胚軸が感染して水浸状の病斑が出現します。病勢が進むにつれて病斑が拡大し、株や葉が徐々に衰弱して最終的には枯死に至ります。

一方、生育がある程度進んだ段階や開花後に発病した場合は、主に茎の地際部や下位部、根を中心として紡錘形や楕円形の水浸状病斑が発生するのが特徴です。病勢が進むとともに病斑は拡大し、やがて茎の全周を覆うほどになりますが、維管束が褐変することは基本的にありません。

湿度の高いほ場では病斑の表面に白色の粉状をした菌糸が視認できるケースもあり、その場合は茎疫病の判別が比較的容易です。

茎疫病は糸状菌が生み出す遊走子が水中を移動することによって感染が拡大します。そのため、降雨や過度な灌水は被害拡大の一因になる場合があるので、注意しましょう。発病株が冠水や帯水状態に陥ると、症状が悪化して枯死する場合があります。

台風で冠水した大豆ほ場

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

また、遊走子を生み出す卵胞子は病斑部の菌そうや表皮細胞上に多数存在していますが、土壌中でも数年間にわたって生存できることがわかっています。つまり、茎疫病は一度発生すると長期間にわたって被害を受けやすくなるというわけです。

仮に株が枯死するほどひどくなると収量はほぼゼロになってしまうため、安定した経営を営むためにも適切な防除に努める必要があります。

大豆茎疫病の防除対策

ここからは大豆茎疫病の防除方法について紹介します。

耕種的防除

水田転作畑の大豆 排水溝が切られている

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

茎疫病の感染を拡大させる糸状菌の遊走子は、水中を泳いで移動します。そのため、湿度の高い環境にあるほ場では深刻な被害をもたらすリスクが高くなる傾向にあります。

一方で、ほ場の排水性を高め、灌水や降雨によってもたらされる必要以上の水分を素早くほ場外へ排出できれば、被害拡大のリスク低減につながります。ほ場の排水性を高める方法としては、暗渠(あんきょ)や明渠(めいきょ)といった従来から行われている対策でも十分な効果が期待できます。

もともと大豆は湿害に弱い特徴があるため、茎疫病の予防に限らず、ほ場の排水性を高める対策を実施しておくとよいでしょう。

そのほか、「畝立て栽培を行う」「酸度を矯正する」といった対策も防除に有効です。

水田から転作する場合、畝を立てずに播種を行うケースも見られますが、それでは水分量の多い土壌で栽培することになり、茎疫病が発生するリスクも高まります。労力はかかるものの、収量や品質のことを考えると畝を立てたほうが一般的に経営へのメリットは大きいといえます。

また、大豆は土壌pHが低いと茎疫病にかかりやすくなる傾向があるので、酸性に傾いた土壌では石灰資材などを用いてpH6.5程度を目安に調整することも大切です。

さらに、連作を行うと病原菌密度が高まる恐れもあるため、「被害株は速やかにほ場外へ持ち出して処分する」「水稲や麦類などと輪作を行う」といった対策も忘れずに実行しましょう。

水稲と大豆の複合栽培

Nagawa / PIXTA(ピクスタ)

農薬による防除

茎疫病に有効な登録農薬は、2006年までは銅粉剤とオキサジキシル・銅水和剤しかありませんでした。

出典:一般社団法人日本植物貿易協会「植物防疫 第64巻第8号 平成22年8月号」所収農研機構中央農業総合センター 加藤雅康「ダイズ茎疫病研究の現状と課題」(3ページ)

しかし、近年では多くの農薬が登録されており、化学的防除の選択肢も広がっています。

その中でも効果的な農薬として期待されているものには、「シアゾファミド水和剤」「ジメトモルフ・銅水和剤」「ジメトモルフ・マンゼブ水和剤」が挙げられます。また、「シモキサニル・ TPN水和剤」「マンゼブ・メタラキシルM水和剤」も茎疫病の防除に効果が期待できる登録農薬です。

いずれの農薬も使用時期や使用回数は異なりますが、適切な散布処理をすることで茎疫病による被害を抑えられる場合があります。仮に発生が見られない場合でも、台風や大雨などによって茎疫病の発生リスクが高まったほ場では予防散布をするのも防除に効果的です。

大豆 農薬散布

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

さらに、化学的防除において重要なポイントになるのが種子消毒です。茎疫病は大豆の出芽前もしくは、出芽後の幼苗期に発生すると特に被害が深刻になりやすい反面、種子消毒を施してから播種すると生育初期の発病リスクが減り、苗立ちの向上にも貢献します。

シアゾファミド水和剤とマンゼブ・メタラキシルM水和剤なら種子処理の登録もあるので、できるだけ消毒をした種子を播種するように心がけましょう。

なお、ここで紹介した農薬はすべて、2022年4月25日時点で大豆と茎疫病に登録があります。

実際の使用に当たっては、必ず使用時点での登録を確認してください。また、ラベルをよく読み、用法・用量を守って使用しましょう。地域に農薬の使用についての決まりがある場合はそれに従ってください。

抵抗性品種の導入

一般的に大きな被害をもたらす病害に対しては各種の試験場等で抵抗性品種の研究が進められ、防除に貢献しています。しかし、茎疫病に関しては病原菌の遺伝子情報が細分化されているため、すべての地域で防除に有効な品種はないのが現実です。

そのため、栽培に当たっては地域の状況に即した品種の選定を行うことが重要になります。

農研機構が行った試験によると、「エンレイ」「おおすず」「納豆小粒」「スズマル」といった品種には、茎疫病の抵抗性遺伝子がないという結果が公表されています。

一方で、「タチナガハ」「ミヤギシロメ」「里のほほえみ」は抵抗性遺伝子を持っている可能性が高く、「ユキホマレ」や「東山231号」については特に発病する確率が低かったことから、今後の遺伝資源として期待できると報告されました。

出典:農研機構中央農業研究センター 2019年の成果情報「国内産ダイズ茎疫病菌株の接種結果から推定される国内ダイズ品種の抵抗性の特徴」

また、北海道の中央農業試験場の試験では、「ユウヒメ」や「幌加内在来」のほ場抵抗性が「強」、「カリカチ」「トカチクロ」「中系174号」が「中」と判断されています。

出典:地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 農業研究本部 中央農業試験場「試験研究の成果(中央農試とりまとめ課題)」所収「ダイズ茎疫病圃場抵抗性の評価(2005~2009 年度)」

いずれにしても、2022年4月時点では、残念ながら茎疫病に対して万能な抵抗性品種というものはありません。茎疫病に悩まされている方は、レース情報をもとに最適な品種を選んでください。

大豆 ユキホマレのほ場

ふうび / PIXTA(ピクスタ)

茎疫病は発生すると株が枯死する恐れのある病害で、万が一ほ場全体に感染が広がると収量がなくなってしまう可能性もあります。ほ場が湿度の高い状態では発生するリスクも高まるので、排水性を高める工夫をして栽培をするのがポイントです。

また、化学的防除では発生の兆候が認められた場合に予防も兼ねた早めの農薬散布を行うのはもちろん、生育初期の発病リスクを減らすための種子消毒もできるだけ行うとよいでしょう。

品種を選ぶうえでは収量や品質も重要ですが、そもそも病害にかかってしまっては意味がありません。地域で発生しているレースに合った品種を選んで栽培してください。

▼大豆の栽培暦・栽培管理・主要な病害虫についてはこちらの記事もご覧ください。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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