黒腐病からブロッコリーを守るために。強風や大雨には特に注意!防除対策と適用農薬を知っておこう
ブロッコリーの黒腐病は、台風や大雨の後に一気に多発することがあります。収獲残さを徹底し、ほ場の排水対策をしっかりするなどの耕種的防除をしたうえで、農薬による予防的防除を行うのが基本的な対策です。ブロッコリーの黒腐病の多発条件と対策、農薬使用のポイントなどを解説します。
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ブロッコリー黒腐病 発病ほ場
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ブロッコリーの黒腐病が茎葉にとどまっている場合は、収量への影響はそれほどありませんが、花蕾まで進展すると商品価値が低下し、思わぬ収入減につながることがあります。
この記事では、ブロッコリーの黒腐病の特徴と、発生条件に応じた耕種的防除、定植時からの農薬の使用について解説します。
葉にV字型の病斑が…ブロッコリー黒腐病の特徴
ブロッコリー 黒腐病 発病株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ブロッコリーの黒腐病の病原菌は、「Xanthomonas campestris pv. campestris(ザントモナス・キャンペストリス pv キャンペストリス)」と呼ばれる細菌です。この病原菌は、多くのアブラナ科作物に寄生することが特徴でブロッコリーのほか、キャベツや白菜、カブ、大根などの作物にも被害を与えます。
育苗期の子葉では、葉の先端部分の少しへこみができている箇所に病斑が生じます。
本葉では、発生初期段階で下葉の葉縁部分に病斑を生じ、V字形などに黄化していきます。感染初期から、茎の維管束を通じて黒変し栽培に大きな影響が出ます。
ブロッコリー 黒腐病 病斑が拡大
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ブロッコリー黒腐病の発生条件と対策
黒腐病が進展すると収量減につながりかねません。この項では、黒腐病を多発させないために、黒腐病の発生条件に応じた基本の対策を紹介します。
主な伝染源は前作の収穫残さ
黒腐病の主な伝染源は、前作の土壌に残った被害株の残さです。
この病原菌は、乾燥に強く土壌中に1年以上生存し、次作の作付時に、根の傷から侵入したり、降雨時に水滴と一緒に跳ね上がって茎葉の傷から侵入するなどして発病に至ります。
まずは、収穫後の残さ処理を徹底しましょう。生育中に被害株を発見したら、速やかにほ場から持ち出し処分します。
モンキチ / PIXTA(ピクスタ)
発生リスクが高いアブラナ科作物の連作ほ場
黒腐病が発生したことがあるほ場で、アブラナ科作物を連作すると病原菌密度が高くなり、被害が前作より大きくなるリスクがあります。
発生したことがあるほ場では、アブラナ科の連作を避け、イネ科やマメ科などで輪作体系を組むことが推奨されます。なお、ブロッコリーの輪作年限は、2〜3年とされています。
本圃の排水対策はしっかりと
黒腐病は、ほ場が過湿状態になると被害が拡大しやすくなるため、排水性をよくしておく必要があります。
ほ場の排水環境を改善するためには、まず、ほ場の現状を把握し、排水不良となっている原因を特定します。その後、明渠(めいきょ)や暗渠(あんきょ)を必要に応じて設置し、地表水や浸透水を排除します。
排水対策を事前にしていても、台風や降雨が多い時期に停滞水が発生することがあります。排水はできる限り速やかに行ってください。
排水性のよくないほ場では高畝に仕立てることも有効です。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
台風や大雨で茎葉が傷ついたときに多発
台風や大雨の時は、黒腐病被害株の病原菌が風雨で周囲に飛散し、風による擦れでできた茎葉の傷や、既にできていた害虫の食害痕から侵入し、多発を招くことがあります。
大雨や台風の後は、速やかに農薬の予防的散布を行います。(使用できる農薬については後述)
G-item / PIXTA(ピクスタ)
種子感染のリスクを防ぐ
セルトレイ育苗が主流になってから、無病の専用培土を使うため土壌伝染性病害が育苗時に発生するリスクは低くなったといわれています。
しかし、黒腐病は種子伝染するため、種苗メーカーから消毒済みの無病種子を入手しましょう。消毒済みと確認できない場合は、種子消毒を行います。
野菜類の種子消毒剤で黒腐病に使える農薬としては「野菜類種子消毒用ドイツボルドーA」があります。また、50~60℃の温湯に10~30分程度漬ける「温湯浸漬法」も有効ですが、発芽障害が起きることがあるので、少量でテストしてから行いましょう。
苗を徒長させない
茶華月 / PIXTA(ピクスタ)
苗の軟弱徒長は発病を助長します。育苗ハウスの日当たりと風通しをよくし、過剰な灌水を避け徒長しないように管理します。
▼徒長を防ぐ育苗方法の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
農薬による防除は定植時から
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)
黒腐病が発生したことがあるほ場の場合、農薬による防除は、定植時から始めます。
定植時には、本圃に「オリゼメート粒剤」を全面混和しておきます。
定植時防除を行った場合も、定植2~3週間後から、予防的な農薬散布を行います。使用できる主な農薬は以下の通りです。
・出蕾期前まで:「Zボルドー」「コサイド3000」などの銅水和剤。ただし、出蕾期以降は薬害がでやすいので使用しない方がよい。
・降雨後の予防的防除:「カスミンボルドー」「カッパーシン水和剤」などのカスガマイシン・銅水和剤
・発生初期の防除:「キノンドー水和剤40」(有機銅水和剤)、「ヨネポン水和剤」(ノニルフェノールスルホン酸銅水和剤)など
また、前述したように黒腐病の病原菌は、害虫の食害痕から侵入しやすいため、害虫防除も徹底しましょう。ブロッコリーの害虫防除については以下の記事をご覧ください。
なお、ここに記載する農薬は、2022年9月5日現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。
また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。
農薬登録情報提供システム
黒腐病は、病勢が進展すると出荷できなくなることもあります。残さ処理を徹底し、ほ場環境を整えたうえで、定植時から予防的な農薬使用を行い、発生させないようにしていきましょう。
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大矢隼平
フリーランスのWebメディア編集者・ライター、コピーライターとして活動中。ITや通信、農業など多数メディアの編集・執筆業務から企業HPのコンテンツライティングまで幅広い業務を手掛けています。読者の方にとって有益な情報を発信します。