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水稲栽培がドローンで変わる! 直播や農薬散布、生育診断まで使えるドローン活用術

水稲栽培がドローンで変わる! 直播や農薬散布、生育診断まで使えるドローン活用術
出典 : yuki / PIXTA(ピクスタ)

スマート農業の一環として、ドローンを活用した水稲栽培が注目されています。播種や栽培管理の省力化につながるため、営農の大規模化や農家の担い手対策としても効果的です。この記事では、水稲栽培でドローンを活用する方法や導入コスト・ドローンを導入する際の注意点について解説します。

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RTKによる高精度測位をはじめ、生育状況を見える化するセンシング技術など水稲栽培におけるドローン活用をサポートする技術が開発されています。自治体や営農法人の導入事例・実証実験の結果とともに、水稲栽培でドローンを活用する方法を紹介します。

水稲栽培でのドローンの活用方法

水稲栽培では、以下の用途でドローンを活用できます。

・直播
・農薬散布
・肥料散布
・モニタリング
・鳥獣対策

農業用ドローンが多数販売されており、用途に合わせた機種を導入して農作業の時間短縮や省力化を実現している農家も見られます。

一般社団法人農協協会がJAの水田関係者に対して実施した「JAの安心・安全な米づくりと防除対策について」の2022年度調査結果では、「管内でドローンを使った農薬散布をしている農家がいる」と答えたJAの比率は全国平均で80%でした。

出典:一般社団法人農協協会(農業協同組合新聞|2022年9月27日)「【農協協会 JAのコメ実態調査】ドローンの普及進む」

続いて、水稲栽培にドローンを取り入れることで期待できる効果や、具体的な活用方法について解説します。

活用方法①「直播」

水田にドローンでの水稲直播)(大阪天王地区)初実施

水田にドローンでの水稲直播(大阪天王地区)初実施
出典:株式会社PR TIMES(株式会社アルケミックス ニュースリリース 2021年5月12日)

ドローンを活用した直播では、粒剤散布装置を搭載した農業用ドローンを高度1.5m前後で飛行させて、湛水状態のほ場に水稲の種子を播きます。浮き苗・鳥害の発生を防ぎ、種子の蒔きムラを最小限に抑えるために、鉄コーティング種子を用いるのが一般的です。

土中打ち込み播種機を搭載すればほ場に条を作りながら直播でき、播種精度の向上につながります。水稲の直播では出芽や苗立ちの安定性に課題があるため、播種量を多くするのが収量低下を防ぐポイントです。

ドローンによる直播を取り入れることで、作業時間を短縮できます。実際に、JA新いわての事例では、ドローンを活用した10a当たりの播種時間は0.82時間で、移植栽培での作業時間(4.05時間)と比べて80%の作業時間短縮につながりました。

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」所収「ドローンを活用した水稲(飼料用)直播栽培の実証(JA新いわて)」

さらに、育苗作業が不要となるので生産コストの削減にもつながります。鉄コーティング種子は農閑期に準備でき、農作業のピークシフトにも効果的です。

活用方法②「農薬散布」

セキド農業ドローン(DJI AGRAS MG-1)講習会を12月3日〜7日に新潟県五泉市で開催!

セキド農業ドローン(DJI AGRAS MG-1)講習会を12月3日〜7日に新潟県五泉市で開催!
出典:株式会社PR TIMES(株式会社セキド ニュースリリース 2018年11月13日)

農薬散布にドローンを活用する農家も増えています。農林水産省によると、2020年度のドローンによる農薬などの散布実績は11万9,500haで、散布面積は年々、拡大傾向にあります。

ドローンによる農薬等の散布面積の推移

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」所収「令和4年度農業分野におけるドローンの活用状況(令和4年10月」

無人ヘリコプターと比べると飛行時間や農薬の搭載量が少ないのが課題ですが、農業用ドローンは小回りが利くのでほ場周辺に障害物がある場合でも農薬を散布できます。そのため、中山間地をはじめ狭いほ場や形状が複雑なほ場でも、効率的に農薬を散布できるのが特徴です。

ドローンの低空飛行で農薬を散布すると、無人ヘリコプターと遜色ない防除効果を期待できます。

愛媛県農林水産研究所の実証試験結果では、エクシードフロアブルの散布14日後にツマグロヨコバイ・ヒメトビウンカの密度が低下し、ドローン散布区と無人ヘリ散布区に薬効の大きな差はありませんでした。

出典:愛媛県「愛媛県病害虫防除所 |調査成績書」所収「平成30年度調査成績書|水稲における産業用マルチローターによる飛行及び薬剤効果実証試験(平成 31 年1月)」

また、ドローンの低空飛行による農薬散布では、ほ場周辺への農薬飛散量が無人ヘリコプターでの散布時よりも少なくなります。散布ほ場から2.5mの地点では、農薬飛散量が無人ヘリコプターの8分の1程度に抑えられています。

出典:愛媛県「農業|研究開発|研究所だより(旧・愛媛農林水産試験場だより)」所収「第14号(令和3年7月発行)|産業用マルチローターによる水稲害虫防除」

周辺への農薬飛散量が少なくなることで、周辺住民はもちろん生産者の健康リスクへの配慮にもつながるでしょう。

活用方法③「肥料散布」

ドローンに肥糧を投入する

srijaroen - stock.adobe.com

水稲の追肥にもドローンを活用できます。直播する時と同様に、ドローンに粒状散布装置を搭載して実施しますが、農薬の粒状散布装置と共用することも可能です。近年では、ドローンなどで収集したセンシングデータをもとに、生育状況に合わせて肥料を散布する事例もみられます。

有限会社ファーマー(石川県)の事例では、空撮した画像データで特定した生育不良の場所にドローンを使ってピンポイントで追肥を行った結果、収量・品質のバラツキを抑制する成果も出ています。

動力散布機による追肥よりも肥料の散布量が20~40%削減できるため、水稲栽培のコストダウンにも効果的です。

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」所収「「令和3年度農業分野におけるドローンの活用状況(令和3年8⽉)」(3ページ)

ドローンで追肥を行う際は、散布に適した銘柄の肥料を選ぶようにします。また、肥料が吸湿すると粒状散布装置の不具合の原因になるだけでなく、追肥量が不足する可能性があります。そのため、雨上がりなど湿度が高い状態での散布を避けることが重要です。

活用方法④「モニタリング」

「Hotto Motto (ほっともっと)」と「やよい軒」を全国展開する、株式会社プレナスは、埼玉県加須市の自社農場で、ドローンを使った葉色診断とドローンによる追肥を導入した

「Hotto Motto (ほっともっと)」と「やよい軒」を全国展開する、株式会社プレナスは、埼玉県加須市の自社農場で、ドローンを使った葉色診断とドローンによる追肥を導入した
出典:株式会社PR TIMES(株式会社プレナス ニュースリリース 2021年7月6日)

ドローンは水稲の生育状況のモニタリング(ほ場センシング)にも活用されています。

ほ場内でRGBカメラやマルチスペクトルカメラを搭載したドローンを飛行させ、撮影した画像からNDVI値を算出して生育状況や地力を把握します。生育状況や地力をデータ化できるため、栽培ノウハウの継承にも効果的です。

ほ場の画像をAIで解析して、病害虫や雑草の発生箇所を検知する技術も実用化されています。

株式会社ニューファームみのり(兵庫県)の事例では、ほ場内の解析データから雑草の発生箇所を特定するためにモニタリング技術を活用しています。

解析データをもとに作成されたマップをもとに農薬をピンポイントで散布するか全面散布するかを判断し、農薬の購入費用や作業コストの軽減に効果を発揮しています。

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」所収「農林水産省 「令和3年度農業分野におけるドローンの活用状況(令和3年8⽉)」(8ページ)

活用方法⑤「鳥獣対策」

水稲の収量低下を防ぐには、イノシシやシカ、スズメといった鳥獣対策も重要です。特にイノシシは穂の食害だけでなく、踏み荒らしたり掘り返したりすることによってほ場に深刻な被害を及ぼします。

野生動物の侵入経路を調査するためにも、ドローンが活用されています。例えば佐賀県唐津市では、ドローンでイノシシの侵入経路や被害状況を確認した上で集落点検マップを作成して、集落ぐるみでイノシシ対策に役立てる取り組みが行われました。

出典:佐賀県 農林水産部「鳥獣被害対策技術関係資料・推進パンフレット」所収「各地域での鳥獣被害の取組事例」

また、岩手県農業研究センターでは、定期的にドローンを飛行させてほ場内に侵入したウミネコやスズメを追い払う研究が行われています。ドローンによる防除を実施することでウミネコによる欠株被害やスズメの食害を防ぎ、減収回避に効果を発揮することがわかりました。

出典:岩手県農業研究センター「令和2年度 試験研究成果書」所収「ウミネコおよびスズメに対する無人航空機(ドローン)の防除効果」

ドローンの導入コスト

農業用ドローンを効果的に活用するには、用途ごとに適した機種選びが重要です。多くの機種が農薬散布に対応していますが、ほ場センシングや鳥獣被害対策に特化した機体も見られます。

農業用ドローンの導入コストは80万~300万円前後が目安といわれており、搭載するオプションなどによっても価格が変化します。ほ場の規模に合った最大積載量・飛行時間の機体を選ぶのがポイントです。農業用ドローンの機種の一例を紹介します。

出典:農林水産省「スマート農業推進フォーラム2020|農業用ドローン」

XAG JAPAN株式会社「P40」

XAG JAPAN株式会社 Youtube公式チャンネル「XAG P40 movie」

農薬散布はもちろん、液体の噴霧や肥料・種子の散布にも対応した機種です。「SuperX 4 インテリジェント制御システム」を搭載しており、ほ場環境やバッテリー・農薬などの残量に基づき自動で飛行ルートを作成してくれます。

参考:XAG JAPAN株式会社「P40 農業用無人機」

SZ DJI Technology Co.,Ltd「DJI MAVIC 3M」

DJI「Mavic 3 Multispectral」

DJI「Mavic 3 Multispectral」DJI「Mavic 3 Multispectral」
出典:株式会社PR TIMES(DJI JAPAN 株式会社 プレスリリースリリース 2022年12月16日)

RGBカメラ1台とマルチスペクトルカメラ4台を搭載し、農業分野の航空測量や作物の成育モニタリングに特化している機種です。「DJI SmartFarmプラットフォーム」では撮影画像のAI解析が可能で、作物の成育状況や収量の分析にも対応しています。

参考:DJI AGRICULTURE「DJI MAVIC 3M」

水稲栽培にドローンを導入するときに気をつけるべきポイント

2022年6月20日から、機体重量が100g以上の無人航空機の登録が義務化されています。ドローンで散布できる農薬が限定されているほか、散布前の許可・承認手続きも必要です。水稲栽培にドローンを導入する際の注意点について解説します。

申請手続きが必要

ドローン 手続き

ak_yamauchi / PIXTA(ピクスタ)

購入やリース等で農業用ドローンを導入したら、必ず無人航空機の登録申請を行います。ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)によるオンライン申請が可能で、手数料を納付した後1~5開庁日で登録記号が発行されます。

ドローンの飛行に当たっては、機体への登録記号の表示とリモートID機能の搭載が必須です。無人航空機の登録手続きについては、国土交通省無人航空機登録ポータルサイトを確認してください。

国土交通省「無人航空機登録ポータルサイト」

併せて、ドローンで農薬等を散布する場合は、遅くとも散布予定日の10開庁日前までに航空法に基づく飛行許可・承認申請書を提出する必要があります。ドローン情報基盤システムで申請が可能ですが、ドローン販売店などで申請を代行してくれる場合もあります。

飛行の日時を特定して申請するのが基本ですが、包括申請として最長1年間まで飛行日時の設定が可能です。

出典:農林水産省「無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報」所収「ドローンによる農薬等の空中散布を行う際の手続き・留意事項について」

農薬散布では使用できる農薬が限定される

ドローンで使用できる登録農薬数は、年々増え、2022年3月末には1,050になっています。しかし、まだ、使用できる農薬が限られているのが現状です。

以下に使用方法を説明しますので、必ず、ドローンでの使用ができるかどうか、確認してください。

ドローンに適した農薬数の推移

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」所収「令和4年度農業分野におけるドローンの活用状況(令和4年10月)」

ドローンで使用できる農薬は、使用方法で次のように明記されています。

・無人航空機による散布
・無人ヘリコプターによる散布
・無人航空機による滴下
・無人ヘリコプターによる滴下

ただし、使用方法に「散布」「全面土壌散布」「滴下」と記載されている場合は、希釈倍率や使用量などを遵守できる範囲であればドローンでの散布が可能です。

使用予定の農薬がドローンでの散布に対応しているかは、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認できます。農薬登録情報提供システムでの検索方法もご紹介します。

・トップページの「様々な項目から探す」をクリックする
・「作物を選択」をクリックした後、散布したい作物名を選択して「確定する」をクリックする
・使用方法の欄に「無人」と入力した後「検索する」をクリックする

農林水産省「農薬登録情報提供システム」

なお、ドローンで農薬を散布する際は機体の取扱説明書に記載された散布方法を参考にしたうえで、ほ場周辺の環境や風向きを考慮した散布計画を作成してください。

出典:農林水産省「無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報」所収「無人マルチローターによる農薬の空中散布ガイドライン(令和元年7月30日付け元消安第1388号農林水産省消費・安全局長通知)」

水稲栽培でドローンを活用すると、農薬・肥料散布の省力化につながるだけでなく生産コストの軽減にも効果的です。ドローンを使って撮影したほ場画像を解析して、生育状態や病害虫・雑草の発生箇所も見える化できます。

また、使用できる農薬は限られているものの、近年ではドローンによる散布に対応する農薬も増加しています。

ドローンを使用する際は、無人航空機の登録申請と飛行許可・承認申請書の提出が必須です。どちらもオンラインでの申請が可能なので、農薬等の散布やほ場のモニタリングを開始する前に、忘れずに手続きを済ませましょう。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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