コナギの防除|SU抵抗性への効果的な対処法
コナギは水稲の生育を阻害する厄介な雑草で、除草剤へのSU抵抗性が問題となっています。本記事では、コナギの生態や発生しやすい時期、効果的な機械除草のタイミング、SU抵抗性が発生した際の対応方法について解説します。
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雑草は稲作農家にとって悩みの種ですが、中でも「コナギ」は水稲の生育に被害を及ぼす難防除雑草の1つです。
この記事では、コナギの性質や生育しやすい時期・環境、基本的な除草剤による防除方法について解説します。また、近年問題視されている、SU抵抗性の発生要因と考えられる要素や判断方法、SU抵抗性が確認されている農薬についても紹介します。
コナギとは? 生態・発生時期
生育初期のコナギの葉は細長い
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
コナギとは、ミズアオイ科ミズアオイ属に分類される一年生広葉雑草で、北海道の北部を除く国内全域で発生する水田雑草の代表格です。
水稲栽培の渡来に伴い大陸から渡ってきたとされており、平安時代頃までは食用として栽培されていました。北海道では葉の大きなミズアオイが発生するほか、西日本では外来種である「アメリカコナギ」も分布しています。
コナギは種子で繁殖する一年生雑草で、夏から秋にかけて種子が落ちてもすぐには発芽しません。ただし、冬の寒気にさらされると種子が目覚め、春にはほとんどの種子が発芽します。
25~35℃では発芽率が8割以上とされており、しかも、全く酸素がない状態でも発芽し、繁殖力が強いのが特徴です。湿田環境での種子の寿命は10年以上と長く、乾田環境ではさらに長期間生存します。
発芽時には葉先がとがった線形葉が現れ、生長するとハート型の葉に変わります。別名「ハート草」と呼ばれるのはそのためです。
幼植物の段階でも白い根に紫色が混じるので、コナギだと簡単に確認できます。8月頃には、葉の間に紫色の花が咲きます。1さく果に約150個の種子、1株当たり20~30個のさく果を形成するため、コナギの種子の生産量は非常に多くなる傾向にあります。
コナギの葉は生長するとハート型に変わる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
コナギが稲作にもたらす被害
水田で繁茂したコナギ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
コナギは草丈10~30cmと低めですが、強い繁殖力・生存力を持っています。土壌中の浅い部分で出芽しますが、水の中でも生長しやすい特性があり、一年生雑草の中では水稲に最も深刻な害を及ぼす雑草の一つです。
タイヌビエ・ミズガヤツリに並んで窒素の吸収力が大きく、コナギの地上部の窒素含有率は水稲の2倍ほどに達します。水稲より速いスピードで生長するためコナギに養分が取られてしまい、水稲の生育が阻害されるわけです。
加えて、コナギが密集すると水稲の根元が覆われて分げつが妨げられ、穂数減にもつながります。見かけの草の量以上に、収量への影響が大きくなりがちです。
コナギの生育量と種子生産量は発生時期によって異なりますが、水稲移植の時期に発芽したコナギが、最も高い種子生産量を示します。
そのため、5月から6月の田植えの時期に発生したコナギが除草されずに残ったままだと、大量の種子が土壌に蓄積されてしまうので要注意です。翌年以降は長期にわたってコナギの発生量が大幅に増加し、水稲の減収につながるなど農業経営にも深刻な影響が及ぶでしょう。
コナギの効果的な除草方法
コナギの除草が不十分だと水稲に十分な養分が行き渡らず、収量に影響が及んでしまいます。コナギの効果的な除草方法やSU抵抗性の発生要因と考えられる要素、防除に有効な農薬について確認しておきましょう。
機械による除草
たかきち / PIXTA(ピクスタ)
機械によるコナギの除草を行う場合、乗用型水田除草機や株間除草機を活用することで精度の高い作業が可能になります。
欠株や損傷株が発生しないよう、ほ場の状況に合わせて作業速度やローターの通過幅を調整しましょう。除草機の後部にチェーンやブラシを取り付けて、株間に残るコナギを減らす工夫をこらす農家も見られます。
除草回数で考えると、3回実施よりも4回実施のほうが高い除草効果が現れます。
1回目の機械除草を代かき17日後と25日後の実施で比較した場合、代かき17日後に実施したほうが高い除草効果を発揮し、水稲収量も4回除草と遜色ありません。コナギの葉齢が代かき17日後に2葉期に達しているため、コナギの生育初期に1回目の機械除草を実施することで、土壌の撹拌・埋土効果が高まるでしょう。
ただし、機械除草を2回に減らすと除草効果が急激に低下します。代かきの19~27日後にコナギの個体数が急増する傾向もみられることから、1シーズンに最低3回は機械除草の実施が必要です。2回目の除草時期はコナギの葉齢が5葉期まで、3回目の除草では9葉期までが最適だといわれています。
出典:雑草研究 2011年56巻2号 中井譲・中橋富久「機械除草の時期および回数がコナギの抑草効果と水稲収量に及ぼす影響」
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SU剤による除草
近年、SU抵抗性が確認されたコナギの発生が全国的に問題視されています。
SU抵抗性雑草とは、スルホニルウレア系除草剤(SU剤)を散布しても防除できない雑草で、国内では1995年に北海道のミズアオイで最初に見つかり、2000年にはコナギでもSU抵抗性が発現しています。
外見は従来のもの(感受性個体)と変わらないため、SU抵抗性雑草かどうか疑わしい場合には、農業試験場など都道府県の指導機関に相談しましょう。
SU抵抗性のコナギが残った場合は、一発処理剤にも含まれている成分のクロメプロップでの防除が有効です。
初めてSU抵抗性のコナギ確認した年は、既に大きく生育していることも考えられます。シメトリンとMCPBの混合剤や、ベンタゾンを含む中・後期除草剤も有効なので、翌年に雑草が増えないように体系的に除草剤を散布し、必ず防除しておきましょう。
周囲のほ場でSU抵抗性のコナギが見つかっている場合は、予防的な雑草対策として一発処理剤を散布しておきます。ベンゾビシクロンやブロモブチド・ピラゾレート・メフェナセットの効果が高いほか、プレチラクロール、ペントキサゾン、ピラクロニル、テニルクロール、カフェンストロール、ベンゾフェナップなども有効です。
これらの有効成分を含む除草剤を散布した後は湛水状態を保ち、1週間程度は落水やかけ流しをしないようにしましょう。
注意:農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。
コナギは窒素の吸収力が大きく、水稲の生育を阻む要因になるため、除草しなければ収量が減るなど農家経営に深刻な影響を及ぼします。代かきの19~27日後にコナギの個体数が急増する傾向が見られるため、代かき後の早い段階で1回目の機械除草をおすすめします。
農薬を用いてコナギを除草する場合は、SU抵抗性雑草かどうかの判断が必要です。SU剤以外でもクロメプロップをはじめ、シメトリンとMCPBの混合剤やベンタゾンを含む中・後期除草剤の体系散布で防除し、翌年に備えましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。