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籾乾燥機(穀物乾燥機)の種類と特徴を解説! 賢い選び方や価格の目安とは?

籾乾燥機(穀物乾燥機)の種類と特徴を解説! 賢い選び方や価格の目安とは?
出典 : amosfal / PIXTA(ピクスタ)

籾乾燥機は耐久性のある農機の1つで、買い替えの機会はあまりありませんが、ずっと個人で使っていた人にとっては、ないと不便なものです。そこで、籾乾燥機の購入、買い替えの際に気をつけたいポイントについて解説します。

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籾の乾燥は、丹精込めて育て上げた米の品質を左右する重要な工程です。米の品質をよく仕上げるためには、乾燥機の選び方と適切な使用方法もポイントとなるでしょう。そこで、現在使われている籾乾燥機の特徴や選び方について解説します。

実は重要工程! 「籾の乾燥」が米の品質へ与える影響

コンバインで脱穀した直後の籾

トシ松 / PIXTA(ピクスタ)

籾の乾燥は米作りの最後の行程であり、等級にも影響する重要な作業です。収穫直後は20%以上ある水分を、15%まで下げるのが乾燥の作業です。乾燥作業の行程が米に及ぼす影響を具体的に解説します。

水分量の高い籾は変質しやすく、ヤケ米発生の原因に

収穫した直後の籾は水分を多く含んでいます。特にコンバインで収穫した場合は20~30%の水分を含むといわれ、この状態で長く放置すると、蒸れて変質したり、カビや細菌が繁殖して「ヤケ米」という腐敗した米が発生したりします。

ヤケ米は精米すると着色米として残り品質を大きく低下させるので、これを避けるためにも収穫後は速やかに乾燥機に広げ、送風をはじめましょう。収穫直後の籾には水分ムラがあるので、いきなり乾燥させずに数時間ほど送風をしてムラをなくしてから熱風を送ります。

刈り取った籾をそのまま放置することがないように、1日に収穫する量を乾燥機にすぐにかけられる量に調整することも大切です。

米の品質を保つには、籾の状態に応じた乾燥作業を行うことが大切

米の品質・等級検査

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

ヤケ米と並んで嫌われるのが、玄米の内部で米粒に亀裂が生じる胴割米です。胴割米は精米すると砕米となり、品質・等級を大きく低下させます。

胴割米は、水稲の栄養不良や出穂直後の高温、収穫の遅れなどが原因で生育中に発生することが多いものの、乾燥時の急激な乾燥によって発生することもあります。また、収穫までにほんの少し入っていた亀裂を、不適切な乾燥で大きく広げてしまわないよう注意が必要です。

米の品質を乾燥作業で下げてしまわないように、籾の状態をよく見て、適した方法で乾燥することが重要です。

例えば、乾燥温度の調節は、初期籾の水分量が24%なら50℃、22%以下なら45℃以下を目安にしましょう。急激な乾燥は胴割れを引き起こしやすいので、胴割れの心配がある場合は乾燥率を毎時0.5~0.6%に調整するとよいでしょう。

こまめに籾の様子を確認し、正確に水分測定をしながら15%を目標に乾燥させます。

どんなしくみ? 乾燥を効率化する「籾乾燥機」とは

カントリーエレベーター(CE)

カントリーエレベーター(CE)
rara / PIXTA(ピクスタ)

籾を乾燥させる方法には、古くから行われている「自然乾燥」と、カントリーエレベーター(CE)やライスセンター(RC)などの籾乾燥機による「機械乾燥」の2種類があります。

天日による自然乾燥は、好天が続けば乾燥ムラが少なく品質良く仕上がるので、ブランド米などの付加価値として実践している農家もあります。ただし、自然乾燥は非常に労力がかかり、乾燥までの日数も2週間から1ヵ月ほどかかるうえに、天候が悪い日が続くと、かえって乾燥ムラや品質低下を招いてしまいます。

稲の自然乾燥 稲架(はさ)掛け

稲の自然乾燥 稲架(はさ)掛け
mamemike / PIXTA(ピクスタ)

また、現在は収穫もほとんどがコンバインで刈り取りから一気に籾の状態にしてしまうため、籾から素早く効率的に乾燥できる籾乾燥機が主流になっています。籾乾燥機にはさまざまな種類がありますが、いずれも籾を投入し、風や熱を当てることで人工的に乾燥させるしくみです。

共同施設として優れたCEやRCがある地域もありますが、個人で小型の乾燥機を所有しているケースも少なくありません。籾乾燥機は比較的耐用年数の長い農機で、買い替えるまでに10~20年使用するケースが多く、30年近く使用されている例もあります。

出典:新農業機械実用化促進株式会社「実用化機種のフォローアップ調査結果報告書」(p.24-25の図Ⅲ-8)

籾乾燥機

籾乾燥機
Mai/PIXTA(ピクスタ)

乾燥方式別! 籾乾燥機の種類と特徴

コンテナに排出した籾を籾乾燥機のある作業場所まで運び込む

コンテナに排出した籾を籾乾燥機のある作業場所まで運び込む
Mai/PIXTA(ピクスタ)

籾乾燥機は、乾燥方式別に「平形静置式」「循環式」の2種類、さらに循環式の中でも熱風乾燥と遠赤外線乾燥の2種類に分けられます。それぞれの特徴を詳しく見てみましょう。

古くから使われている「平形静置式乾燥機」

平形静置式乾燥機は、すのこや金網の上に籾を張り込み、下から常温または温めた風を送って乾燥させる方式です。扱いも簡単で価格が安い点、すのこを変えれば菜種などほかの作物にも応用しやすい点などが長所です。

一方、横に置くので場所を取ること、下からのみ風が当たるので籾を厚く並べると乾燥ムラが生じやすく、平らに並べなければならない、時々天地替えの必要がある点などがデメリットといえます。

効率的な乾燥を実現した「循環式乾燥機(熱風乾燥)」

循環式乾燥機では、投入された籾は自動で乾燥機内を循環します。どのメーカーでも基本的な構造は同じで、乾燥機に投入された籾は、複数の層を流れ落ちる間に横から熱風を受け、温められます。

そのあと、タンクに溜まったらしばらくテンパリング(温度調整)をし、その間に温められた籾の表面と芯の水分を均一化します。この工程を自動で循環させるしくみです。

流れ落ちる間に熱風を浴びるので、全体にまんべんなく熱が当たり、ムラになりにくい点が長所です。しかし、熱風は表面だけを温め乾燥させるので、調整を誤ると胴割米の発生が多くなったり品質が低下しやすくなったりする点に注意が必要です。

遠赤外線の力で品質を保つ、現在の主流「循環式乾燥機(遠赤外線乾燥)」

張り込み準備。コンテナにホースを接続

張り込み準備。コンテナにホースを接続
Mai/PIXTA(ピクスタ)

同じ循環式乾燥機で、熱風乾燥の難点である、籾の表面だけが温められ内部との温度差が生じる点を改善したものが、遠赤外線乾燥です。

熱風のみで乾燥するより均一に素早く熱が入るので、表面と中心部に温度差が生じず米の食味や品質を高く保てます。また、熱の伝わりが早いので消費電力が少なく、ランニングコストが抑えられるのもうれしい点です。

ただし、乾燥機の中では価格が高額になる傾向があります。

何を基準にするべき? 籾乾燥機の賢い選び方

タンクの籾を籾乾燥機に張り込む

タンクの籾を籾乾燥機に張り込む
Mai/PIXTA(ピクスタ)

籾乾燥機を購入する場合、長く使える機器でもあるので、後悔のないように適切な機種を選びたいものです。そこで、選択基準別に押さえておきたいポイントを紹介します。

最も高い品質を保てる「乾燥方式」や「追加機能」で選ぶ

平形静置式や熱風式の乾燥機は、高性能のセンサーで温度管理を行うので、きちんと管理をすればそれほど大きな品質低下を招くことはありません。しかし、籾を一方向から温めたり、表面から温めたりするので乾燥ムラが籾の品質を低下させることもあります。

それに対し、遠赤外線式は品質や食味を保ったまま乾燥でき、乾燥方式としては現時点で最も広く普及しています。

遠赤外線式の中でもさらに品質にこだわるなら、センサー類が充実し、張り込み量や天候に応じてマイコンによる無段階制御で籾にとって最適な状況を保てる機種を選ぶとよいでしょう。

さらに、近年のスマート農業の一環としてICT技術を取り入れ、スマホやタブレットで籾の乾燥状態がわかったり、遠隔操作ができたりする機能を備えた乾燥機も登場しています。乾燥中にもその場を離れて他の仕事をすることができるので、作業の効率化に繋がります。

参考サイト:
株式会社サタケ「穀物乾燥機遠隔監視サービス」
株式会社山本製作所「YCAS -山本乾燥機遠隔確認システム」
金子農機株式会社「遠隔確認システム ミルもん」

籾乾燥機の温度と時間の調整

籾乾燥機の温度と時間の調整
Mai/PIXTA(ピクスタ)

また、籾乾燥では多量の埃の発生が大きな悩みです。性能の良い排気ダクトや集塵機などの部品が付けられるかどうかもチェックしたいポイントです。

予算に応じた「価格」で選ぶ

最も低予算で購入できるのは、平形静置式乾燥機です。ただし、仕上がりの品質や機能の充実から見て、現在主流となっているのは循環式乾燥機といえるでしょう。

循環式乾燥機の中でも、熱風式と遠赤外線式では価格が大きく変わります。小型の熱風乾燥機なら80万円程度から購入できるのに対し、遠赤外線乾燥機は200万円以上するものもあります。

収量がそれほど多くなければ、平形静置式や循環式熱風乾燥機でも十分に管理できるでしょう。乾燥効率が劣り、容量が少ないものの、初期投資金額をかなり抑えられます。単純な構造の分、使い勝手の良さもあるでしょう。

ただし、収量が多い場合は、多少予算がかかってもたくさんの籾を一度に効率よく乾燥させられる 循環式遠赤外線乾燥機を選ぶとよいでしょう。購入金額が抑えられても、米の品質を低下させてしまっては、収入減に繋がってしまいます。

耐用年数の長いものなので、新品だけでなく中古品を購入することで、費用を抑えることもできます。

導入後の「運用コスト」で選ぶ

長く使うものなので、購入額だけでなく運用コストにも気をつけたいものです。運用コスト面でいえば、平形静置式で使用されるのは送風にかかるエネルギーのみのため、最も低コストです。

現在主流となっている循環式乾燥機を比較すると、熱風を絶えず吹き込む熱風式よりも、遠赤外線式のほうがエネルギー効率に優れ、コストも抑えられます。具体的には、遠赤外線式は熱風式に対して、灯油使用量を約10%低減できるといわれます。

運用コストを低く抑えたいなら、平形静置式もしくは遠赤外線式がおすすめです。

乾燥後の籾摺り工程

乾燥後の籾摺り工程
mits / PIXTA(ピクスタ)

籾乾燥機はそれほど頻繁に買い替えるものではなく、20年や30年ぶりに買い替えを検討するケースも多いと思われます。また、地域に立派な共同施設があり、乾燥から籾摺り・選別まで最先端の機器を使える場合もあるかもしれません。

それでも、栽培している水稲の質に合った籾乾燥機を持てば、自分の作業計画にあわせて籾を乾燥でき、作業の大幅な効率化につながるでしょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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