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種籾消毒とは? 手順と揃えておきたい効果的な農薬

種籾消毒とは? 手順と揃えておきたい効果的な農薬
出典 : HP埼玉の農作物病害虫写真集

種籾消毒は、種籾や生長後の稲を病害から守るための工程です。播種後の発芽に影響する繊細な作業でもあります。しかしながら、コツがつかめないという方もいるでしょう。そこで種籾消毒の手順とポイント、農薬の種類、種籾消毒に適した製品をご紹介します。

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種籾消毒は、発芽に影響する繊細な作業です。主に温湯による消毒と、農薬による消毒の2つがあります。近年では、サーモシードと呼ばれる新技術の消毒方法も登場しました。

それぞれの具体的な方法や特徴について紹介しますので、ポイントを押さえながら正しく実践していきましょう。

種籾消毒の重要性

育苗時に発生したしたばか苗病

育苗時に発生したしたばか苗病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

種籾消毒は、塩水選した種籾を消毒し、害虫や稲の病害を予防する米作りの準備作業です。農家にとって重要な作業で、発芽率を向上させられます。

また、種籾の段階で伝播する稲の病害は、いもち病やばか苗病、「イネシンガレセンチュウ」によるイネ心枯線虫病など、数多くあります。特にいもち病は、大きな被害が発生しやすく、種籾に寄生する菌を種籾消毒で予防することが肝心です。

▼「デジタルツールでいもち病の早期発見につながった事例」についてはこちらをご覧ください

良質な種籾を選ぶ塩水選の方法

種籾の構造

FUTO / PIXTA(ピクスタ)

塩水選とは、発芽から初期生育の栄養源となる、胚乳が多く含まれた種籾を選び取る作業です。塩水に種籾をつけると、胚乳のある種籾は比重が重いため沈み、胚乳のない籾は浮き上がるため、簡単に選別できます。

塩水選の手順

1. 種籾の芒(のぎ)を取り除く

脱芒機などで種籾の芒を取り除いておきます。芒が多いと播種機にひっかかり播種精度が落ちる可能性があります。

種籾にひげのようについている芒(のぎ)

Sheke-E-Lee / PIXTA(ピクスタ)

2. 比重1.13の塩水を作る

水約20ℓに対し食塩約5㎏を溶かし、比重1.13の塩水を作ります。一般的に、生卵を浮かべたときに卵の頭がのぞく程度といわれています。

生卵を浮かべたときに卵の頭がのぞく程度の塩水

pat_hastings - stock.adobe.com

3. 種籾の選別をする

比重液の中に種籾を入れ、浮かんできたものは取り除き、沈んだものだけを水洗いします。

種籾消毒の方法-1. 温湯消毒

温湯消毒は、種籾を湯にひたし、湯の熱で消毒する方法です。約60℃の湯に10分ほどさらすことで、いもち病を始めとする病害を予防する効果が期待できます。農薬を使用しないため、廃液処理の負担が省けることもメリットです。

温度が高すぎると発芽しにくく、温度が低すぎたり消毒時間が短いと、十分な消毒効果が得られない可能性があります。専用の温湯消毒機を活用すると、温度や時間の管理がしやすくなります。

温湯種子処理機による種子消毒

温湯種子処理機による種子消毒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

温湯消毒の手順

1. 種籾を用意する

塩水選をして1時間以内の種籾を用意します。

2. 種籾を湯にひたす

網袋に入れた種籾を60℃の湯に10分、または58℃の湯に15分ひたします。種籾がまんべんなく湯にひたるようにしましょう。

3. 水で冷却する

温湯処理が完了したら、速やかに水で冷却します。

種籾消毒の方法-2. 種子消毒剤

種子消毒剤に浸漬する種籾袋

shima / PIXTA(ピクスタ)

農薬を使用して種籾消毒する場合は、種子消毒剤を使用します。消毒方法は、種籾を農薬にひたす浸漬処理、種籾に粉末の農薬をふりかける粉衣処理、吹付処理などがあります。

使用する薬剤や病害によって消毒方法は異なるため、それぞれの使用方法を守って行いましょう。

種子消毒剤の種類

農薬の種類は化学合成農薬と微生物農薬に分けられます。微生物農薬は、その名の通り微生物などをもとに作られた農薬です。種籾に使用すると、微生物が増殖し、病原菌が住み着くことを防ぐ効果があります。また、環境負荷を減らせる利点もあります。

一方で、適切に保存・使用しないと十分な効果を得られない可能性があります。以下に化学合成農薬、微生物農薬の一例と使用上の注意をまとめました。比較検討しながら使いやすい製品を選びましょう。

主な種子消毒剤

稲の主な病害である、ばか苗病、いもち病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、苗立枯病、褐条病、ごま葉枯病に有効な種子消毒剤7種をまとめました。浸漬する場合は20倍の希釈水に10分、200倍なら24時間が基本です。

テクリードCフロアブル

テクリードCフロアブルの含有成分であるイプコナゾールは、いもち病などを引き起こす糸状菌の成長を阻止します。病原菌に吸着し、酸素系に影響を与える水酸化第二銅が同時に作用することで、稲の病害を幅広く防除します。

消毒方法は、浸漬・吹き付け・塗沫処理です。浸漬は10分間浸ける場合は20倍、24時間の場合は200倍に希釈します。吹き付け処理の際は7.5倍(希釈液30ml)に希釈します。塗抹処理の場合は、吹き付けと同じ割合で希釈するか、1㎏当たり5mlの原液を使用します。

苗いもち(発病初期)

苗いもち(発病初期)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ヘルシードTフロアブル

ヘルシードTフロアブルは、ばか苗病などの病害を防ぐヘルシードと殺菌スペクトラムが広いチラウムを混合することにより、幅広い病害に効果を示す農薬です。適用病害の1つである苗立枯病は、原因となるリゾープス菌、トリコデルマ菌どちらにも有効です。ただし、苗立枯細菌病への有効性はありません。

消毒方法は、浸漬・吹き付け・塗沫処理です。浸漬する際は20倍に薄めた希釈水に10分間浸水させます。吹き付け・塗抹処理の場合は、種籾1㎏当たり7.5倍に薄めた希釈液30mlを使用します。浸種の水交換は原則禁止で、水温が高めの場合のみ静かに交換します。

苗立枯病(リゾープス属菌)

苗立枯病(リゾープス属菌)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ベンレートT水和剤20

ベンレートT水和剤20は、粉末状の農薬で、ばか苗病、いもち病、ごま葉枯病、苗立枯病、もみ枯細菌病、褐条病のほか、イネシンガレセンチュウの防除に有効です。種籾のほか、麦や大豆、野菜類の消毒にも使用できます。ただし、苗立枯細菌病への有効性はありません。

消毒方法は、浸漬・吹き付け・塗抹処理のほか、粉衣による消毒も可能です。防除したい病害によって処理の仕方が異なります。適用病害が広く、防除効果があるのは浸漬です。20倍に薄めた希釈水に10分間浸水させます。

ただし、浸漬はもみ枯細菌病に対しては防除効果がありません。もみ枯細菌病を防除したい場合は、種籾重量1%分を粉衣させるか、3.75倍の希釈液を作って吹き付けか塗抹処理します。浸種する際は数時間の風乾燥が必要です。(吹き付けした種籾の場合は不要です)浸種の水交換は必要ありません。

ごま葉枯病

ごま葉枯病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

もみ枯細菌病 被害粒

もみ枯細菌病 被害粒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

モミガードC水和剤

モミガードC水和剤は、粉末状の水和剤です。ばか苗病、いもち病を防除するペフラゾエート、細菌性病害を予防する塩基性塩化銅、フェニルピロール系殺菌剤のフルジオキソニルを配合しています。

消毒方法は、浸漬・吹き付け・塗沫・粉衣処理です。浸漬処理には200倍の希釈水を使用し、24時間浸水させます。吹き付け処理、塗抹処理する際は7.5倍の希釈水を準備します。粉衣処理の場合は、種籾重量の0.5%を付着させます。

ばか苗病(育苗時)

ばか苗病(育苗時)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

スポルタックスターナSE

スポルタックスターナSEは、抗菌力でいもち病などを予防するスポルタックと、害虫への防除効果を示すスターナーの混合剤です。

消毒方法は、浸漬・吹き付け・塗沫処理です。浸漬する際は20倍に薄めた希釈水に10分間ひたすか、200倍の希釈水に24時間浸水させます。吹き付け処理、塗抹処理には7.5倍の希釈水を使用します。

エコホープDJ

エコホープDJは、トリコデルマ菌と呼ばれる菌を有効成分とする微生物農薬です。菌が種籾の表面で増殖することで病原菌の発生を抑制する効果が期待できます。稲の他、アスパラガス、たばこの消毒にも使われることがあります。

消毒方法は浸漬です。種籾を消毒する場合は200倍の希釈水で24~48時間浸漬させます。いもち病、苗立枯病(リゾープス菌)に対して消毒する場合の浸漬時間は24時間です。ピシウム・トリコデルマ菌による苗立枯病、ごま葉枯病には効果が得られない点に注意しましょう。

タフブロック

タフブロックは、イチゴから採取したタラロマイセス・フラバス菌を配合した微生物農薬です。タラロマイセスが種籾に定着し、病原菌をシャットアウトします。菌の活動が活発になると種籾の表面に黄色いコロニーが現れ、その効果を目で実感することもあります。

有効期限が短い傾向にある微生物農薬としては珍しく、2年の長期保存ができることも特長です。ただし、ごま葉枯病への有効性はありません。

消毒は、浸漬と湿粉衣での消毒が可能です。浸漬の際は200倍の希釈水で24~48時間の浸水を実施します。湿粉衣は、種籾の重量の2~4%をふりかけます。

種子消毒剤使用の注意点

浸漬の際は消毒剤の温度が下がりすぎないように注意しましょう。低温になると消毒効果や発芽率に悪影響が出る場合があります。

種子消毒剤を使用した後は、廃液を適切に処理することも大事です。環境保全のため、河川などには捨てず、廃液処理キットや専用の処理装置を活用しましょう。産業廃棄物業者に処理を委託することもできます。

微生物農薬は、浸種・催芽の段階で使用することも可能です。微生物農薬の場合、催芽前に消毒処理するよりも、催芽時に処理した方が防除効果が高いという実験結果があります。農薬の特性に応じて十分タイミングを見計らいながら消毒作業を進めましょう。

種籾消毒の方法-3. サーモシード

サーモシードは、日本国内で試験開発が進む新しい種籾消毒の方法です。高温加湿空気によって消毒するもので、宮城県の農業試験場などから、いもち病やばか苗病に対する防除効果が報告されています。

温湯処理のような温度管理の難しさや、農薬の廃液処理の負担がなく、農作業の負担軽減にもつながるでしょう。

ヨーロッパではすでに浸透している技術で、スウェーデンやノルウェーでは多くの穀物種子が、サーモシードによって消毒されています。今後国内でも種籾消毒の課題を克服する一手として、定着することが期待されます。

参考:インコテック社おサーモシード説明動画

INCOTECgroup Youtube 公式チャンネル「新しい種子消毒技術サーモシード-日本語ナレーション付 」

消毒後は適切に浸種を行う必要がある

消毒した種籾は、浸種で発芽に必要な水分を吸収させます。浸種は数日間にわたり種籾を水に漬け込む工程です。

浸種の水温や時間は、その後の発芽の良し悪しを左右します。水温が上下したり、浸漬時間が長すぎたり短すぎたりしないよう、丁寧に管理しながら作業を進めましょう。

浸種の手順

1. 浸種する温度と日数を確認する

浸種する温度と日数を確認しましょう。適温と浸種期間は米の種類や種籾消毒の方法によって変わります。

種籾が発芽する積算温度の見当をつけ、「水の平均温度(℃)×日数=積算温度」で計算します。たとえば積算温度100℃なら水温は15℃、日数は7日間になります。

2. 水替えの頻度

温湯消毒の場合は毎日水替えします。農薬消毒した場合は、農薬の効果を定着させるため最初の2、3日間は、水替えは行わず置いておきます。

※浸種後の育苗手順はこちらの記事をご覧ください。

種籾消毒は手間と神経を使う作業ですが、おいしいお米を実らせるためには不可欠な仕事です。農家それぞれが自分の実情に合った方法や農薬を選び、丁寧に作業を進めましょう。

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西岡日花李

西岡日花李

大学在学中より東京・多摩地域の特産・伝統文化などを取材し、街のローカルな魅力を発信するテレビ番組制作・記事を執筆。卒業後は大学院でジャーナリズムを学び、神奈川県のミニコミ紙記者として勤務。マスメディアでは取り上げない地域の課題を幅広く取り上げ、経験を積む。現在はフリーライターとして主に農業をテーマにした記事を執筆。農業の様々な話題を通して、地方都市の抱える問題や活性化への手立てを日々考察している。

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