【ネギのべと病】適切な防除で発生・多発を阻止! 適用農薬と散布時期の目安
ネギのべと病はカビによる病害で、葉の変色などが起こり、症状が進行すると株が枯死します。そのため、しっかりと対策を行い、収量や品質を守ることが重要です。そこで本記事では、べと病に悩むネギ農家に向け、防除のコツや適用農薬について解説します。
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べと病は感染すると白カビが発生し、葉の変色などが起こって最終的に枯れてしまう病害です。そこで本記事では、べと病の対策として、症状や原因、発生しやすい時期などの基本的な情報から、適用農薬などの具体的な対策の仕方までを詳しく紹介しています。
栽培農家は要対策! ネギの病害「べと病」とは?
ネギ べと病 初期病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
べと病は越冬ネギの場合、病斑が発生せず全身が感染します。感染した株は生育がとまり、草丈が低く、葉全体が厚みを増して、色が白から黄色に変色するのが特徴です。
葉の一部分が黄色に変色した場合は、その部分から折れ曲がります。その後、気温が上昇すると葉の表面にカビが発生し、黄色に変色して枯死します。
ネギ べと病 葉が黄化し折れ曲がる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
春や秋に感染したネギの場合は、葉や花梗に大きな黄白色の病斑が発生し、その上に白いカビが出て暗緑色や暗紫色に変化します。その後、症状が進むと黄色く変色して枯れます。激発した場合には、煮え湯をかけられたように急激に葉が枯れます。
ネギ べと病 黒いカビがみえる病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
べと病に罹患したネギは商品価値を失います。農家としては収量が大幅に減少する危険性があるため、対策をしっかりと行うことが大切です。なお、べと病はネギのほか玉ねぎ、わけぎなどでも発生が見られます。
ネギがべと病になる原因と、発生しやすい時期
kita / PIXTA(ピクスタ)・Freddie G / PIXTA(ピクスタ)
べと病が発生する原因はカビであり、その病原菌の名称は Peronospora destructor(ペロノスポラ・デストルクター)です。病原菌は卵胞子もしくは菌糸の状態で、被害を受けた越冬ネギや残さとともに、土壌の中で生き残って冬を越します。
気温が上がるとともに、越冬ネギや残さに寄生していた卵胞子から分生子が作られ、健全な葉に移って感染します。これが一次感染です。そして、その被害株の分生子が雨滴などと一緒に周囲の株に飛散して感染させるのが二次感染です。
感染源となる分生子は、湿度がある条件で、13~15℃で形成され10℃前後で感染しやすくなります。春秋で雨の量が多い場合や暖冬で降雨が多い年などは注意が必要です。
また、湿度が高くなりやすいほ場も要注意です。水はけが悪く日陰で風通しの悪い場所や連作地などで発生しやすい傾向があります。また、過繁茂になると湿度が高くなり、べと病の発生を助長します。
発生条件や症状が類似! さび病と黒斑病を見分けるポイント
ネギでは、べと病のほかにもさび病や黒斑病が同時に発生しやすく、症状も類似しています。防除において農薬を正しく選定するためには、それぞれの病害を見分ける必要があります。
べと病は黄白色の病斑や白カビが発生し、病斑のサイズも大きいため、色とサイズの違いで見分けましょう。
ネギ さび病
ネギ さび病 初期発病葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
さび病は、葉に紡錘型か楕円形で1~数mm程度の橙黄色の若干凹凸を感じる症斑点が発生します。肥料が切れた株で発病が多いことも特徴です。
▼ネギのさび病についてはこちらの記事をご覧ください。
ネギ 黒斑病
ネギ 黒斑病 発病葉(病斑がつながったもの)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
黒斑病は、特に初期段階の症状がべと病と似ていますが、病斑の色が淡黒色の楕円形をしているため、広がり具合によっては目視で区別することができます。くわえて、黒斑病の病斑は同心状に輪紋をいくつか形成し、病斑よりも上部が枯れることから、見分けることができるでしょう。
そのほか、黒斑病は9月の台風時期にも発生しやすく、株の伸長する勢力が落ちると発病が増加するという特徴もあります。
効果のある予防法は? べと病の防除対策と適用農薬
べと病の防除は、発病を早期発見し、症状の進行具合や気象状況に応じて農薬を散布したり、苗床での厚播きや本圃での多肥栽培を避けたりなど、適切な栽培管理の徹底が重要です。
そこで次に、予防に効果のある栽培管理のコツや、べと病を防除するための適用農薬、散布時期の目安、効率的な散布の方法などについて紹介します。
栽培管理では、発生を助長する「肥料過多」や「厚播き」に注意
kinpachi / PIXTA(ピクスタ)
葉が軟弱になるとべと病の被害を助長するので、苗床で育苗する場合の「厚播き」や、本圃の「肥料過多」に特に注意しましょう。
各地域の施肥基準を参考に、堆肥や化成肥料などをあわせ、かつ、基肥・追肥とおして、窒素成分量が多くなり過ぎないように調整します。
農林水産省「都道府県施肥基準」
またネギの施肥には、石灰窒素を活用するのもおすすめです。ネギはアンモニア態窒素と硝酸態窒素の吸収でよく生育するため、品質の向上も期待できるでしょう。そのほか雑草やセンチュウ類の抑制効果も期待できます。
詳細は、日本石灰窒素工業会 技術情報Q&A「ネギに対する石灰窒素の施用法を教えて下さい。」を参照してください。
▼石灰窒素の使い方についてはこちらの記事もご覧ください。
【参考】 べと病に適用のある農薬例
ネギのべと病の防除に登録があり、黒斑病やさび病も同時防除できる農薬例を紹介します。
ザンプロDMフロアブル
2つの有効成分で、特にべと病の生活環におけるほぼ全てのステージを強く阻害できます。これにより予防はもちろん、感染の初期でも効果が期待できます。また水を弾きやすい葉の表面に対してもなじみやすいことから、雨にも強く、しっかり効果を残すことができます。
使用する場合は1,500~2,000倍に希釈し、10a当たり100~300Lを散布しましょう。使用期限は収穫14日前までであり、使用回数は3回以内となっています。
シグナムWDG
作用性の異なる成分を混合することにより、べと病はもちろん黒斑病とさび病も同時に防除できるなど、幅広い効果のある農薬です。胞子の発芽阻害に優れていることから、発病前や発病初期の予防的な散布で、特に高い効果が期待できるでしょう。粉立ちが少ないため、扱いが簡単なことも魅力です。
使用する場合は1,500倍に希釈し、10a当たり100~300Lを散布すれば、べと病や黒斑病、さび病をまとめて防除できます。使用時期は収穫7日前まで、使用回数は3回以内となっています。
農薬の散布時期目安と、効率的な散布のコツ
農薬を散布する時期は、基本的にべと病が発生しやすい3月下旬~5月上旬、および9月上旬~10月下旬です。
ただし、ザンプロDMフロアブルであれば3月下旬~4月下旬と10月上旬~下旬、シグナムWDGであれば4月中旬~5月中旬と6月下旬~7月中旬、9月上旬~10月上旬に散布するなど、農薬によっても多少散布の時期や回数が異なります。
そのため、実際に農薬を散布する場合は、使用する農薬のラベルをよく読み、適正に使用してください。また、地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合があります。確認のうえ使用してください。
なお、ネギは農薬の付きにくい作物であるため、展着剤を必ず加用しましょう。散布する際は、動力噴霧器を使用して農薬を細かい霧状にし、葉全体に付くようにすると効率的に散布が行えるでしょう。
出典:BASFジャパン株式会社「BASF社製品ねぎ栽培ブック」
akiyoko / PIXTA(ピクスタ)・川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
べと病の発生は収量の減少を引き起こす可能性があるため、しっかりと対策を行うことが重要です。予防のためや発生初期での農薬散布、厚播きや多肥栽培を避けるなどの栽培管理を徹底し、栽培するネギの収量と品質を守っていきましょう。
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百田胡桃
県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。