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水稲を白葉枯病から守る! まん延を防止する5つの対策とは

水稲を白葉枯病から守る! まん延を防止する5つの対策とは
出典 : Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)

水稲の白葉枯病は細菌の感染によって発生する病気で、高温多湿の環境で多発する傾向です。感染が拡大すると稔実不良や枯死が発生し、大幅な減収につながります。この記事で白葉枯病が発生する原因を確認したうえで、抵抗性品種の導入や農薬散布・ほ場管理など白葉枯病のまん延を防止する対策を立てましょう。

白葉枯病の病原菌は、農業用水や雨水を介してほ場全体に広がります。残さ・雑草にも病原菌が付着するため、ほ場全体への拡散を防ぐためには早期の防除やほ場管理の徹底が重要です。防除対策を検討する前に、白葉枯病の特徴や発生原因について確認しておきましょう。

水稲の減収を招くイネ白葉枯病とは?

イネ白葉枯病 止葉の病徴

イネ白葉枯病 止葉の病徴
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

「イネ白葉枯病(しらはがれびょう)」とは、水稲に侵入した病原菌によって葉の枯死や稔実不良を引き起こす病害です。世界各地の稲作地帯で発生する病害ですが、国内では1970年代半ばをピークに発生件数が減少しています。

出典:一般社団法人日本植物防疫協会「植物防疫 第72巻 第5号(2018年)」所収「病害編―5 イネ白葉枯病の発生生態と防除(京都府立大学 生命環境科学研究科 津下誠治)」

しかし、病原菌は水媒伝染するため、台風や長雨などの異常気象が発生すると、局地的に病害が多発する事例が見られます。

水稲が白葉枯病に感染すると葉の先端から枯れるため、感染が拡大した場合はほ場が白っぽく見えるのが特徴です。また、ほ場周辺の雑草に付着した病原菌は越冬するので、適切な防除を行わないとほ場全体に被害が拡大し、翌年以降の減収にもつながります。

ほ場全体にまん延することも。イネ白葉枯病の発生原因と感染経路・症状

イネ白葉枯病 葉の両縁が波状に白色枯死している

イネ白葉枯病 葉の両縁が波状に白色枯死している
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イネ白葉枯病の病原菌は雑草だけでなく、ほ場周辺の土壌や被害を受けた残さにも付着します。農業用水や風・雨を通じて病原菌が拡散すると、被害が広範囲に及ぶので注意が必要です。イネ白葉枯病の症状や発生原因・感染経路を具体的に解説します。

病原は雑草の根に寄生する細菌

イネ白葉枯病は「Xanthomonas oryzae pv. oryzae(キサントモナス・オリゼ)」という細菌によって引き起こされます。1本の鞭毛を持つ桿状の細菌で、菌体周辺に大量の菌体外多糖質を作り出すのが特徴です。

葉の水孔や傷口から細菌が侵入すると、菌体外多糖質と増殖した細菌で導管の内部が満たされます。そのため、葉の内部で水分が移動できなくなり、葉の病変や水稲の生育阻害につながります。

さらに、増殖した細菌は水孔・傷口から浸出し、風・雨を介して雑草や他の水稲にも付着します。細菌は被害を受けた残さや雑草の根に寄生した状態で越冬するため、春になると農業用水によってほ場の広範囲に細菌が運ばれ、被害が拡大してしまいます。

梅雨の長雨や台風発生に注意!

水稲 出穂直前・出穂期

大地爽風 / PIXTA(ピクスタ)・cozy / PIXTA(ピクスタ)

イネ白葉枯病は穂ばらみ期から目立つようになり、7~9月頃に感染のピークを迎えます。高温多湿の環境で多発する傾向があり、梅雨時の長雨や台風による暴風雨をきっかけに感染が一気に広がる恐れがあるので注意が必要です。

病原菌の発育適温は26~30℃、気温が40℃を超える環境でも十分な増殖力・病原性を維持できます。水媒伝染する特性もあり、低湿地を中心にほ場が冠水すると長期間にわたって病原菌が滞留し、感染拡大を助長してしまいます。

出典:
愛知県「あいち病害虫情報」内「病害虫図鑑 イネ白葉枯病」
一般社団法人日本植物防疫協会「植物防疫 第72巻 第5号(2018年)」所収「病害編―5 イネ白葉枯病の発生生態と防除(京都府立大学 生命環境科学研究科 津下誠治)」

また、風で葉が擦れ合ってできた傷口からも病原菌が侵入するため、栽植密度が高すぎる場合も被害が大きくなる傾向があります。

まん延すると稔実不良の原因に

イネ白葉枯病がまん延すると多くの葉に病変が起こり、稔実不良によって20~40%前後の減収につながるともいわれています。

出典:宮城県公式ウェブサイト「病害虫ライブラリー~水稲」所収「白葉枯病(令和3年3月改訂)」

イネ白葉枯病に感染した後、葉縁部が黄緑色に変色して浸潤状になり、白濁した水滴も発生します。葉が脱水症状となって巻き上がる、急性の症状が現れることもあります。水滴が乾燥すると黄色~黄褐色の塊(粘液塊)になるため、診断の目安となります。

病変が進むと葉脈に沿って波状の黄色病斑が拡大し、やがて灰白色に変化して枯死します。光合成も阻害されるため、稔実不良の原因となります。また、茎の基部が病原菌におかされると、株全体が萎凋して枯れる場合もあります。

イネ白葉枯病を防ぐ5つの対策

イネ白葉枯病による減収を防ぐためには、耕種的防除や農薬散布などのほ場管理を徹底することが大切です。抵抗性品種の導入も、収量を安定させる有効な対策です。イネ白葉枯病を防ぐ5つの対策を紹介します。

1.抵抗性品種の導入

栽培する水稲を抵抗性品種に置き換えることも、イネ白葉枯病を防ぐ有効な対策の1つです。遺伝子解析によって、新たな品種開発も進められています。

例えば「コシヒカリ関東BL1号」「コシヒカリ近中四SBL1号」のほ場抵抗性は中、「くらのぬし」のほ場抵抗性はやや強です。
出典:農林水産省 品種登録ホームぺージ
「コシヒカリ関東BL1号」
「コシヒカリ近中四SBL1号」
「くらのぬし」

白葉枯病のほ場抵抗性が弱くても、他の病害に対するほ場抵抗性や耐倒伏性が強い品種もあるため、栽培環境に応じて品種を選ぶとよいでしょう。奨励品種は地域によって異なるため、抵抗性品種を導入する際はJAや農業普及センターなどにご相談ください。

2.伝染源となる雑草の防除

畦畔の草刈り

けいわい / PIXTA(ピクスタ)

白葉枯病の病原菌は被害を受けたわら・もみにも付着しますが、サヤヌカグサやエゾノサヤヌカグサ、マコモといったイネ科の雑草が感染源となることが多いです。病原菌の感染を防ぐためには、ほ場内だけでなく畦畔・用水路の徹底した除草が欠かせません。

サヤヌカグサなどの雑草は種子だけでなく地下茎からも繁殖するため、除草が遅れると土壌の養分を奪われ、水稲の生育そのものにも影響します。

ほ場内は除草機、畦畔・用水路は草刈機を使って除草しますが、用水路のコンクリートのすき間など機械での除草が難しい場合は手で引き抜くようにします。

3.排水路の整備

水田 排水路

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

大雨などでほ場が冠水すると白葉枯病の病原菌が滞留しやすくなり、水稲に感染したり病原菌がほ場外に飛散したりするリスクが高まります。そのため、排水路の整備も白葉枯病の防除において重要です。

暗きょ排水口からスムーズに排水できるよう、排水管・排水路の土砂やゴミは定期的に取り除くようにします。排水管の清掃は、ほ場に水が溜まった状態で水こうを開いて一気に排水すると効果的です。排水路の下流から上流の順に水こうを開くと、排水路内の水が流れやすくなります。

落水管と排水路の高低差が少ない場合は、ほ場の過剰な水を速やかに排水できるように排水路を深く掘り下げるとよいでしょう。

4.適切な施肥管理

土壌の窒素が多すぎると過繁茂を招き、風の影響などで葉が傷つくことで白葉枯病の病原菌が侵入する可能性が高まります。

紋枯病・いもち病などほかの病原菌の影響を受けたり倒伏したりする原因にもつながるため、収量減少を防ぐには適切な施肥管理が重要です。都道府県ごとの施肥基準を参考にしながら、地力や栽培条件に応じて加減するようにしましょう。

基肥窒素量は、目標とする穂数を計算したうえで調整します。また、登熟を良好にして一穂籾数を増やすために、穂首分化期から減数分裂期にかけて穂肥も行います。

品種や生育状況によって適正な施用量・施用時期が変わるので、葉色などを確認したうえで穂肥の時期を決めることが重要です。

穂肥

Photo753 / PIXTA(ピクスタ)

5.生育期の農薬散布

イネ白葉枯病の防除に効果を発揮する、代表的な農薬を紹介します。農薬を使用する際はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明な点はメーカーや普及指導センターなどに問い合わせるなどして適切に使用してください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。

農薬登録情報提供システム

オリゼメート粒剤

白葉枯病だけでなくいもち病・もみ枯細菌病の防除にも効果を発揮します。本田散布の場合は、移植後7~10日頃の予防的散布が有効です。移植3日前から移植前日までの、育苗箱処理にも使用できます。

農薬登録情報提供システム「オリゼメート粒剤」

ルーチン粒剤

水稲自身の病害抵抗性機能を強めて、白葉枯病・いもち病の防除効果を発揮するのが特徴です。浸透移行性と残効性に優れており、播種前から移植当日まで1回、本田では収穫30日前までに2回使用できます。

農薬登録情報提供システム「ルーチン粒剤」

ブイゲット粒剤

葉いもちに対する防除効果が高い農薬ですが、白葉枯病の防除にも効果を発揮します。水稲自身の病害防御機能を高め、長期にわたって防除効果が続くのが特徴です。葉いもちの初発20~7日前までに2回使用できます。

農薬登録情報提供システム「ブイゲット粒剤」

農薬の育苗箱処理

農薬の育苗箱処理
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イネ白葉枯病は、葉の水孔や傷口から病原菌が侵入して発生します。イネ白葉枯病に感染すると葉の病変によって光合成が阻害されるため、稔実不良が発生して収量が大幅に減少します。

ほ場周辺のイネ科雑草が感染源となるため、防除にあたってはほ場内外の徹底した除草が重要です。排水環境の整備や窒素過多を防ぐ施肥管理、育苗段階からの農薬防除によって、総合的な対策を行いましょう。

参考文献・参照サイト:

一般社団法人日本植物防疫協会「植物防疫 第72巻第 5号(2018年)」所収「病害編―5 イネ白葉枯病の発生生態と防除(京都府立大学 生命環境科学研究科 津下誠治)」

「株式会社せいだ」運営「よく分かる水稲栽培」サイト内「水稲の病気一覧」

高知県「農業情報サイト こうち農業ネット」内「水稲 白葉枯病」

愛知県「あいち病害虫情報」内「病害虫図鑑 イネ白葉枯病」

「HP埼玉の農作物病害虫写真集」内「イネ白葉枯病」

長野県農業関係試験場「農作物病害虫データベース」内「白葉枯病(普通作物/イネ)」

愛知県「あいち病害虫情報」内「発生予察情報令和元年度」所収「イネ白葉枯病情報第1号(令和元年9月17日)」

宮城県公式ウェブサイト「病害虫ライブラリー~水稲」所収「白葉枯病(令和3年3月改訂)」

山口県病害虫防除所「主な病害虫の発生生態と防除対策資料」所収「032イネ白葉枯病」

農研機構「研究成果情報 平成24年度」所収「宮城県古川農業試験場・イネ第4染色体上の白葉枯病抵抗性と連鎖するいもち病圃場抵抗性遺伝子」

一般社団法人日本植物防疫協会「植物防疫 第69巻第1号(2015年)」所収「病虫害抵抗性付与の品種開発(1)イネ育種における病虫害抵抗性付与の現状と展望(農研機構 中央農業総合研究センター 前田英郎)」

広島県「水稲・麦・大豆栽培基準(付 奨励品種など特性表)」所収「奨励品種等特性表」

農林水産省 品種登録ホームぺージ
「コシヒカリ関東BL1号」
「コシヒカリ近中四SBL1号」
「くらのぬし」

株式会社全国農村教育協会「病害虫・雑草の情報基地 > 防除ハンドブック」内「エゾノサヤヌカグサ」

株式会社全国農村教育協会「病害虫・雑草の情報基地 > 防除ハンドブック」内「白葉枯病」

農山漁村文化協会「農業技術事典」内「エゾノサヤヌカグサ」

株式会社クボタ「クボタ営農ナビ」内「排水対策と土づくり」

新潟県「暗渠排水施設の維持管理について~暗渠排水施設を長持ちさせるためには~」

地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所「水稲栽培の手引き」内「本田管理 その3 水稲の施肥ー基肥、穂肥」

一般社団法人 全国農業改良普及支援協会 ・株式会社クボタ「みんなの農業広場」内「収量・品質を決める施肥」

農林水産省「都道府県施肥基準等」掲載「福井県 施肥の手引き」所収「水稲の土づくりと施肥対策(その1)」

千葉県「適正施肥の推進(主要農作物等施肥基準・バランスの取れた土づくりの推進)」所収「主要農作物等施肥基準(平成31年3月改訂) 水稲」

農業協同組合新聞「農薬:現場で役立つ農業の基礎知識 2017~予防が最も効率良い防除【本田防除のポイント】(2017年6月10日)」

北興化学工業株式会社「オリゼメート粒剤」

農薬登録情報提供システム「オリゼメート粒剤」

バイエルクロップサイエンス株式会社「ルーチン(R)粒剤」

農薬登録情報提供システム「ルーチン粒剤」

日本農薬株式会社「ブイゲット粒剤(チアジニル粒剤)」

農薬登録情報提供システム「ブイゲット粒剤」

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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