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米農家必見!JA熊本の「売れる米づくり」に見る収益アップのカギ

米農家必見!JA熊本の「売れる米づくり」に見る収益アップのカギ
出典 : ソーシャルワイヤー株式会社(菊池市役所 ニュースリリース 2017年11月15日)

熊本県の米農家を支えるJA熊本の「くまもと売れる米づくり推進計画」を紹介します。米余り問題に直面する中、JA熊本は「生産対策」「集荷対策」「販売促進対策」「食育・消費拡大対策」の4つの基本方針を掲げ、ブランド力強化と需要拡大に取り組んでいます。

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熊本では米余りの影響を受け、米の作付面積を減らす農家や、作付品目を大豆などに変更する農家も少なくありません。そこで、米農家の収入増をめざす「くまもと売れる米づくり推進計画」の内容と事例、期待される効果について解説します。

作付面積・収穫量はトップクラス! 西日本有数の米どころ、熊本県

豊かな自然に恵まれた熊本県は、西日本有数の米どころとしても知られています。実際にどの程度米づくりが盛んなのか、どのような種類の米を栽培しているのかを見ていきましょう。

リオオリンピック会場に展示された田園風景

リオオリンピック会場に展示された田園風景
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(菊池市役所 ニュースリリース 2017年11月15日)

温暖な気候を生かした米づくりが盛んな熊本

令和3年度の作付面積・収穫量のデータによれば、熊本県は西日本の米づくりにおいて、兵庫県や福岡県に次いで3番目に盛んな地域です。また、全国16位の作付面積・収量であり、温暖な気候を生かしておよそ32,300haのほ場で米が作付けされています。

なお、熊本県で作付けされている米のほとんどは主食用米です。32,300haのほ場のうち、実に31,200haが主食用米に用いられています。また、米全体の収量は156,300tで、そのうち151,000tが主食用米です。

西日本(近畿・中国四国・九州・沖縄 農政局管内)の水稲の作付面積・収穫量上位県

作付面積うち主食用収穫量うち主食用
兵庫県3.58万ha3.41万ha17.6万t16.7万t
福岡県3.46万ha3.41万ha16.4万t16.1万t
熊本県3.23万ha3.12万ha15.6万t15.1万t
滋賀県3.01万ha2.89万ha15.6万t15.0万t
岡山県2.88万ha2.79万ha15.1万t14.6万t

出典:農林水産省「令和3年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)」よりminorasu編集部作成

熊本県で栽培されている、代表的なお米の品種

熊本県ではオリジナルの品種、ブランドの米を含むさまざまな米が栽培されています。中でも「くまさんの力」は、令和2年の食味ランキングで特Aを獲得するほどの人気と実力を兼ね備えた品種です。また、「ヒノヒカリ」や「森のくまさん」も人気と評価が高く、全国ランキング上位の常連として知られています。

そのほかにも「三度のときめき」や「にこまる」など、さまざまな品種の米が栽培されていることが、熊本の特徴といえるでしょう。人気が高いブランドも多く、熊本県はおいしい米の産地であることがわかります。

全国的な「米余り」の影響も。熊本の米農家がいま抱える課題

阿蘇の稲作地帯

阿蘇の稲作地帯
K.I. / PIXTA(ピクスタ)

人気の品種も多い熊本県の米ですが、全国的な米余りの影響を強く受けており、決して安泰とはいえません。農林水産省の「米をめぐる関係資料(令和3年2月)」によれば、食文化の変化などによって米の需要は低下しています。実際に2000年代は1年に8万tペース、2010年代以降は1年に10万tペースで主食用米の需要が減少してきました。

出典:農林水産省「米をめぐる関係資料(令和3年2月)」

また、新型コロナの影響による外食需要の低下などの理由で、米の生産量に対して消費量が少ないことも米余りを加速させているといえるでしょう。特に主食用米を多く生産している熊本県ではその影響が大きく、主食用米の作付けを減らし、飼料用・加工用米や大豆・麦などへの転換を考える農家も増えています。

米を余らせないように生産量をコントロールすることも重要ですが、国民一人当たりの米消費量の拡大促進も急務と考えられるでしょう。また、米価の下落に伴って産地間の競争が激化しているため、熊本県でも生き残るために、さまざまな施策を実施することが求められています。

▼米の需給についてはこちらの記事をご覧ください。

熊本のお米を全国へ! 生産&販売促進を目指す、JA熊本の取り組み事例

米余りの現状を打破するためにも、米の消費量の促進と品種や地域ごとの競争力の向上が求められています。JA熊本ではこれらの課題の解決へ向けて、「くまもと売れる米づくり」の取り組みを開始しました。どのような取り組みなのかを具体的に紹介します。

「くまもと売れる米づくり推進計画」とは?

JA熊本では、米の需要低下や米の価格下落などによって米農家が利益を得られない現状を改善するため、「くまもと売れる米づくり推進計画」を策定しました。推進計画には「生産対策」、「集荷対策」、「販売促進対策」、「食育・消費拡大対策」の4つの基本方針があります。

「JAグループ熊本 くまもと売れる米づくり推進本部」ホームページ

生産対策

生産対策とは、消費者や飲食店などから選ばれる米産地となるための対策です。「くまさんの輝き」を熊本県を代表する米の品種として位置づけ、卸業者などに安定して供給することをめざします。

また、「くまさんの輝き」を基準として味のよいブランド米づくり、高付加価値の米づくりを同時に推進していくことも生産対策のひとつです。熊本県の米は安心して食べられるという意識を消費者側に広めるためにも、残留農薬の検査やDNA鑑定などを実施すること、検査結果を開示することなども実施していきます。

集荷対策

集荷対策とは、JAグループが一丸となり計画生産に沿った出荷契約を推進することです。また実需者と複数年の契約を結び、出荷量の安定をめざします。

出荷目標を達成するためには、JA出荷推進本部やJAグループ熊本出荷対策プロジェクトチームの活動を強化すること、JAが扱う米穀とJA以外が扱う米穀との区別を明確にすることも必要です。出荷米専用袋の管理を徹底し、さらに「熊本県推奨うまい米基準」に基づいた選定を行ってJAの米の差別化も図ります。

熊本県「熊本県推奨うまい米基準について」

販売促進対策

JA熊本経済連のWEBアニメ「にこやか食堂」のイベントに出演した「お米やん」

JA熊本経済連のWEBアニメ「にこやか食堂」のイベントに出演した「お米やん」
出典:株式会社PR TIMES(JA熊本経済連 ニュースリリース 2019年11月11日)

販売促進対策とは、熊本県の米を代表する「くまさんの輝き」やほかの米の宣伝活動を強化し、熊本県の米のブランド力向上をめざす対策です。

イベントや試食会などのPR活動を通して、「くまさんの輝き」などの認知度向上や大消費地での販売強化、「くまモン」や「お米やん」などのキャラクターを活用した販売促進グッズの活用なども行います。

食育・消費拡大対策

食育・消費拡大対策とは、幼稚園から中学生を対象とした、食農教育と米の消費拡大につながる活動の強化です。

活動内容は幅広く、JAの地域本部でアグリキッズスクールを開催したり、稲作体験を行ったり、米飯給食を進めて地産地消に取り組んだり、ご飯食による「お弁当の日」を実施したり、ご飯に関する作文や図画のコンクールの開催を支援したりなど、多岐にわたります。

事例1. 「くまもと売れる米づくり推進大会」の開催と、LINE連動企画の実施

基本方針のひとつである「集荷対策」の一環として、農家やJAグループ役職員、行政関係者などが出席する「くまもと売れる米づくり推進大会」を毎年開催しています。主な目的は具体的な集荷目標を掲げ、集荷推進運動への積極的な取り組みを促すことです。令和3年度は公式サイトでのオンライン開催でした。

「令和3年度くまもと売れる米づくり推進大会」サイト

大会の開催に合わせて、くまさんの輝きや人気のくまモングッズをプレゼントするLINE連動企画を実施しています。SNSを積極的に活用することで、若い世代にも熊本の米を効果的にアピールしているといえるでしょう。

事例2. 新品種“くまさんの輝き”をPRする、「ヒロシ米プロジェクト」の動画を配信

お笑い芸人のヒロシさんが「くまさんの輝き」の栽培にチャレンジする「ヒロシ米プロジェクト」

お笑い芸人のヒロシさんが「くまさんの輝き」の栽培にチャレンジする「ヒロシ米プロジェクト」
出典:PR TIMES(くまもと売れる米づくり推進本部 ニュースリリース 2021年11月19日)

平成30年に本格デビューした新品種「くまさんの輝き」は熊本の米を代表する品種であり、食味ランキングで参考品種として特Aを獲得した実力も併せ持っています。「くまもと売れる米づくり推進計画」では、地域特性を活かした特色ある米づくりを行うために、「くまさんの輝き」の生産拡大や認知度の向上をめざして、さまざまな活動を実施してきました。

活動のひとつとして、お笑い芸人のヒロシさんが「くまさんの輝き」の栽培にチャレンジする「ヒロシ米プロジェクト」が挙げられるでしょう。栽培に取り組む様子を動画で配信し、熊本の米づくりや米への関心向上をめざしています。

令和3年産「くまさんの輝き」のパッケージ

令和3年産「くまさんの輝き」のパッケージ
出典:PR TIMES(くまもと売れる米づくり推進本部 ニュースリリース 2021年11月19日)

全国的な米余りの中、熊本県では独自に売れる米づくり活動を実施しています。生産する米をブランド化することや食育・販売促進活動を実施すること、安全性の基準を高めて消費者が買いやすくすることなど、さまざまな活動に取り組んできました。

ぜひ熊本県の取り組みや活動事例を参考に、独自の売れる米づくりを進めていきましょう。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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