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ビニールハウスにかけられる保険は? 台風などの災害リスクへ備える基礎知識

ビニールハウスにかけられる保険は? 台風などの災害リスクへ備える基礎知識
出典 : Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

農業は自然環境との戦いです。特にビニールハウスで作物を栽培する場合、どのような保険がかけられるかについて解説します。また、損害を抑えるためには、ビニールハウス自体の倒壊を防ぐことも大切です。台風や大雪に備える方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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ビニールハウスは大切な資産です。台風や大雪などの自然災害から守るためにも、万一の際に補償を受けられる農業保険に加入するのが望ましいでしょう。どのような保険が利用できるのか、また、ビニールハウス以外にもどのような補償が必要なのかについて解説します。

台風など、自然災害による農業経営リスクに備える「農業保険」

台風でビニールがめくれ上がったビニールハウス

Akiphoto / PIXTA(ピクスタ)

台風や大雪などによる自然災害が起こると、作物や施設に著しいダメージを受けることがあります。農業経営が立ち行かなくなるほどのダメージを回避するためにも、「農業保険」に加入して備えておく必要があるでしょう。そこで、農業保険とはどのような保険か、また保険を選ぶポイントについて解説します。

異常気象が頻発する日本の施設園芸は、自然災害への備えが必須

ビニールハウスは決して安価なものではありません。異常気象が頻発する昨今の日本において、施設園芸を行う農家は自然災害が生じたときのために、ビニールハウスの損壊に備えておく必要があります。

特に近年は、甚大な被害を与えるほどの異常気象が増えているため、今まであまり台風や大雪の被害を受けたことがない地域であっても、農業保険などで万が一の事態に備えておく必要があるでしょう。

一般的にビニールハウスは、1平方m当たり20kgを超える積雪、あるいは秒速30mを超える台風によって大きな被害を受けるといわれています。

出典:JA全農 耕種資材部「施設園芸用ハウス自然災害対策マニュアル」

積雪で被害をうけたビニールハウス

cozy / PIXTA(ピクスタ)

例えば、平成26年2月の記録的な大雪により、関東甲信越では多くのビニールハウスが倒壊しました。ハウスまでの交通手段がなく、また家から出られないケースも多くあったため、すぐに除雪作業が行えなかったことも被害増大につながっています。

出典:農林水産省「施設園芸の台風、大雪等被害防止と早期復旧対策」所収一般社団法人日本施設園芸協会「平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策指針」

令和元年台風で倒壊したビニールハウス

K松 / PIXTA(ピクスタ)

令和元年9月の台風15号も、ビニールハウスに多くの被害をもたらしました。福島県や千葉県、東京都などの1都7県において35,000軒弱のビニールハウスが倒壊し、その被害額は400億円を超えると見積もられています。

出典:農林水産省「令和元年房総半島台風(台風第15号)に係る被害情報」

このような事態を想定し、いざというときでもサポートを受けられるよう、農業保険に加入しておくことが必要といえるでしょう。

保険を選ぶポイントは「補償の対象」

自然災害によってビニールハウスが損壊すると、ビニールハウスが使えなくなるだけでなく、中の作物にも被害が及ぶことがあります。農業保険を選ぶときには、補償の対象に何を含めるのかに注目するようにしましょう。

また、どの程度の保険金を受け取れるのか、どのような状況のときに保険金が支払われるのかについても確認しておきます。

どんな制度がある? ビニールハウスにかけられる保険の例

男性 農業 タブレット

mits / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスにかけられる保険は大きく次の3つに分けられます。

農業共済
民間の火災保険
ハウスメーカーの独自補償

それぞれの概要やしくみ、特徴について見ていきましょう。

園芸施設が受けた損害を補償。NOSAIによる「農業共済」

NOSAI(全国農業共済)では、農作物共済や家畜共済、果樹共済、畑作物共済などのさまざまな共済制度を設けています。

NOSAIは農業保険法に基づく保険商品を提供しており、掛け金(一般的な保険の保険料に相当)の50%を原則として国が負担するため、少ない支出で大きく備えられるという点がほかとは異なる特徴といえるでしょう。

各共済制度に加入することで、自然災害などで損害を受けたときに共済金(一般的な保険の保険金に相当)を受け取れるようになります。

施設園芸を行う農家は「園芸施設共済」に加入することで、ビニールハウスなどの施設やハウス内の作物に対する補償を受けられるのです。

園芸施設共済では台風や大雪などの自然災害だけではなく、「車両が衝突した」、「飛行機が墜落した」といった事故に対しても備えられます。

基本補償では施設の資産価値の8割を上限として共済金が支払われ、復旧費用や撤去費用などに対する補償をオプションでつけることも可能です。

また、耐用年数が経過したビニールハウスであっても、最大で再建築に必要な費用の4割を受け取れます。

掛け金は補償内容によって異なりますが、共済金の1.2%程度です。例えば300万円の共済金を受け取るには年間36,000円ほどの掛け金が必要になります。

▼農業共済制度の「園芸施設共済」の詳細については、以下をご確認ください。
農林水産省の「農業共済」のページ「園芸施設共済」の項
全国農業共済協会(NOSAI協会)「園芸施設共済」

▼農業共済については、下記記事の「農業共済制度」の項もご覧ください。

自然災害による施設被害への補償特約を付加した「民間の火災保険」

民間の火災保険の中には、自然災害による建物などの被害を補償する特約が付いたものがあります。この特約により、台風や大雪などの自然災害によるビニールハウスの損害に備えられることもあるでしょう。

例えば、農業を経営する人向けの保険商品が充実した「共栄火災海上保険株式会社」では、ビニールハウスなどの施設が損害を受けたときに補償される企業財産保険(企業財産補償特約付普通火災保険)を提供しています。

ベーシックタイプでも火災や落雷、雪災、竜巻などの風災に備えることができるだけではなく、被災設備の修復費用や残存物の片付けといった費用を受け取ることが可能です。ワイドタイプなら、さらに水災や物体の落下、飛来による被害にも備えられるでしょう。

なお、保険料は地域や保険金、保険金を受け取る際の自己負担額によっても異なります。

出典:共栄火災海上保険株式会社
 「農業リスクへの取り組み」のページ
 「企業財産保険(企業財産補償特約付普通火災保険)」掲載のページ

ビニールハウス購入時に補償も付く「ハウスメーカーの独自補償」

建設中のビニールハウス

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスを販売するメーカーの中には、独自の補償制度を実施しているところもあります。中には保険料や追加負担なしで補償を受けられることもあるので、確認しておきましょう。

例えば、渡辺パイプ株式会社では、「グリーンハウス3年補償」と呼ばれる独自の補償制度を設けています。同社が販売するすべてのビニールハウスであれば追加料金を支払うことなく利用できる制度で、火災や雹災、雪災、台風や暴風雨による水災などが起こったときに、施設の実費や残存物の片付け費用、修理に付帯する費用などを受け取ることが可能です。

また同社の製品であれば、暖房機などビニールハウス以外の設備なども補償対象に入ります。

出典:渡辺パイプ株式会社「グリーンハウス3年補償」のページ

減少した収入を補填! 「収入保険」への同時加入でさらに安心

災害による被害は、ビニールハウスや作物だけではありません。収入が減少することで、生活費に困る可能性もあるでしょう。

NOSAIでは、自然災害によって収入が減少したときに補償を受けられる「収入保険」も提供しています。国が保険料の50%を負担してくれるのに加えて、保険金の1.08%という低い負担で加入できる点も特徴です。ビニールハウスの損害に備える保険や共済と一緒に加入しておくと、万が一のときにも安心して生活を送れるでしょう。

なお、通常は野菜類の市場価格が下がったときに価格差に対する補給金を受け取る「野菜価格安定制度」とは併用できませんが、令和3年1月から当面の間は初めて収入保険に加入する人に限り、1年間の同時利用が可能になります。

▼「収入保険」の詳細については、以下をご確認ください。
農林水産省の「収入保険」のページ
全国農業共済協会(NOSAI協会)「収入保険」

▼収入保険の仕組みなどについてはこちらの記事もご覧ください。

被害を最小限に抑えるには、ハウスの損壊を防ぐ対策も重要

台風や大雪などの自然災害によるビニールハウス被害を最小限に抑えるためには、そもそもハウスを損壊させないための対策も重要です。例えば斜材X字補強を行うことで耐風速を向上させたり、風がビニールハウス内に吹き込まないようにサイドのビニールを留めたりすることができます。

また、大型台風の場合には、ビニールを引き落としてアーチパイプを露出させることでも損壊被害を軽減できるでしょう。

▼ビニールハウスの台風対策について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

自然災害はいつ起こるか分かりません。特に近年、異常気象が起こりやすくなってきているため、従来よりも災害に備える意識を高める必要があります。

万が一の事態に備え、日頃からビニールハウスの点検や補強を行うとともに、罹災した場合でも自身の負担が少なくなるよう農業保険に加入しておくなどの対策を行うことが、安定した農業経営につながります。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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