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【イボクサ対策】 水田における防除方法と各種除草剤の特徴

【イボクサ対策】 水田における防除方法と各種除草剤の特徴
出典 : hiro/ PIXTA(ピクスタ)

イボクサは、水田の畦畔にごく普通に見られる雑草です。近年、水田内で多発して水稲に絡みつき、倒伏させたり収穫を妨げたりする被害をもたらし、水稲農家を悩ませています。防除するには、イボクサの独特な生態の特徴を知り、発生サイクルに沿った防除体系の構築が必要です。

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イボクサの発生時期はほかの一年生雑草に比べて早く、生育初期に、耕起や代かきによって一度防除できます。その後、切断された茎から再発生し繁殖する個体が大きな被害をもたらします。本記事では、主に再発生個体の効率的な防除方法と有効な農薬について解説します。

イボクサの生態的特徴

開花したイボクサ

アネモネ/ PIXTA(ピクスタ)

ツユクサ科の一年生雑草であるイボクサは、本州以南の水田に広く見られます。種子は気温8℃で発芽するとされ、ほかの水田一年生雑草よりも早く、関東地方では耕起前の3月頃から発生するのが特徴です。乾田状態で発芽が促進されるため、主に入水前の水田で多発します。

種子は湛水条件下ではほとんど発芽しないため、耕起や代かきによって埋没させると一度姿を消します。しかし、埋没が不完全だと、切断され水田に散らばった茎から根や芽が出て再生育します。

このほか、畦畔で繁殖したものが茎を伸ばして水田内に侵入するケースもあるので、注意が必要です。

イボクサは、夏の間に畦畔や水田内で茎を這わせるように伸ばし、節から根や分枝を出して繁茂します。水田内で繁茂すると稲体に絡みついて倒伏させたり、収穫時にコンバインに絡みついて作業の妨げとなったりします。

9月から10月にかけて紫色の小さな花を咲かせ、結実して多量の種子を落とします。

水田におけるイボクサ防除方法

茎が切断されても節から新たに根を出し再生育するほど生命力の強いイボクサですが、土中に完全に埋没すれば死滅し、茎も水没すると抑制されます。また、効果の高い農薬も多数あるので、耕種的防除と農薬による防除体系を組み合わせることで、密度を下げられます。

具体的な防除対策について、「耕種的防除」と除草剤による「化学的防除」、翌年に持ち越さないための「刈り跡防除」の3つに分けて解説します。

耕種的防除

水田 代かき

Photo753/ PIXTA(ピクスタ)

春先に種子から発生したイボクサの幼植物は、耕起・代かきで土中に埋めることで防除できます。ただし、このとき千切れた茎が地表近くにあると、そこから再発生し増殖してしまいます。

そのため、すでにイボクサが繁殖したほ場で田起こしや代かきを行う際には、切断茎を土中に埋め込むよう丁寧に進めることがポイントです。

また、水没させた種子は発芽せず、茎の再発生も抑制されるため、湛水深を保つこともポイントです。畦畔から水田に侵入するケースも多いので、畦畔にイボクサが見られた場合は早めに除草する必要があります。

化学的防除

田植え後の除草剤散布

mofukun / PIXTA(ピクスタ)

イボクサには多くの除草剤が有効であることが分かっています。1990年代以降、水田内で蔓延して水稲栽培への被害が問題になってから、各地で効果的な防除体系についての研究が進められてきました。

農研機構の中央農業総合研究センターが2001~2005年に行った研究では、イボクサ発生初期の幼植物には「プレチラクロール」「インダノファン」「ベンスルフロンメチル」などの成分が有効であることが分かっています。

また、幼植物の水面から出ている部分が2cm以下の場合に効果が高い、という研究結果も得られています。

出典:農研機構 中日本農業研究センター「水田雑草イボクサの初期生育と除草剤の効果に及ぼす水深の影響(平成15年度「関東東海北陸農業」研究成果情報|関東東海・水田畑作物部会)」

さらに、三重県農業研究所と農研機構 中央農業総合研究センターが2007~2010年に行った研究では、水稲乾田直播栽培におけるイボクサの防除には、水田内の入水前の除草と併せて、畦畔にも有効な除草剤を使用して防除をすると効果が高まる、という検証結果が得られています。

これは水稲乾田直播栽培についての研究ですが、畦畔に生えるイボクサを防除することの重要性については、水稲移植栽培でも同様と考えられます。

出典:農研機構 中日本農業研究センター「水稲乾田直播栽培におけるイボクサの防除方法(平成22年度「関東東海北陸農業」研究成果情報|関東東海・水田作畑作部会)

そのほか、秋田県農業試験場が2016~2021年に行った研究では、イボクサの代かき後の再生に対する防除には、「プレチラクロール」を含む初期除草剤と「ベンゾビシクロン」などの白化剤を含む一発処理除草剤の組み合わせや、草丈3cmまでに行う「トリアファモン」を含む一発処理除草剤の散布が有効であることなどが成果として挙げられています。

出典:秋田県|美の国あきたネット「実用化できる試験研究成果(令和3年度試験研究成果)」内「普及事項」所収「水稲移植栽培におけるイボクサの防除法の確立(秋田県農業試験場)」

なお、除草剤による防除は初期剤、一発処理除草剤、中・後期剤とも、雑草が大きくなってしまうと効果が劣ります。いずれの防除方法も、雑草が生長しきらないうちの早期対処が重要です。

刈り跡防除

水稲の刈取り直後の耕起

しなぷす / PIXTA(ピクスタ)

イボクサは秋に大量の種子を実らせ落とすので、水稲の収穫後に種子生産と発芽を防ぐ対策を行うことで、翌年に発芽する種の密度を大幅に減らせます。イボクサが種子を付ける前の9月中に収穫が終わる地域であれば、収穫後速やかに耕起することで、種子生産を防ぐことができます。

前出の三重県農業研究所の出典によれば、10月に耕起した場合、その年の収穫後に再生したイボクサはなく、翌年の発生本数も1平方m当たり2本前後と、大幅に発生を抑えられています。

出典:農研機構「水稲乾田直播栽培におけるイボクサの防除方法」

イボクサ対策で効果的な各種除草剤の特徴

水田 畦畔 雑草

ふるさと探訪倶楽部/ PIXTA(ピクスタ)

イボクサの防除に効果が高いとされる5つの除草剤について、農薬としての種類と特徴を紹介します。

※なお、ここで紹介する農薬は2023年4月26日現在、登録のあるものです。実際の使用に当たっては、使用時点での登録を「農薬登録情報提供システム」 で確認し、ラベルをよく読んで用法・用量を守りましょう。

バスタ液剤(グルホシネート液剤)

水稲ではなく「水田作物」または「水田畦畔」に登録のある除草剤です。耕種的防除である耕起の前に、あらかじめ畦畔に発生したイボクサに散布することで、代かき後のイボクサ再生を防ぎます。

水田内のイボクサを防除するだけでは、効果が切れたあとに畦畔からイボクサが侵入し繁茂してしまうため、発生初期の段階で畦畔のイボクサを防除することはとても重要です。

BASF Agricultural Solutions Youtube公式チャンネル「畦畔でのバスタ®液剤の散布方法」

ダブルスター1キロ粒剤(ピラゾスルフロンエチル・フェントラザミド粒剤)

移植水稲と水田一年生雑草に登録があります。ピラゾスルフロンエチルはスルホニルウレア(SU)系の成分ですが、フェントラザミドがSU抵抗性の雑草にも有効です。SU成分を含むので、SU抵抗性の獲得を避けるために連用は避けてください。

移植水稲と直播水稲のどちらにも使え、イボクサをはじめとした一年生雑草全般に効果がある、汎用性の高い除草剤です。移植時に田植え同時散布機で施用するか、移植後5~30日までに湛水散布し、イボクサの再生を抑えます。

ロイヤント乳剤(フロルピラウキシフェンベンジル乳剤)

イボクサが繁茂してしまってからでも効果がある、中・後期水稲用除草剤です。移植水稲と直播水稲のどちらにも使え、一年生広葉雑草に登録がありますが、イボクサには特に高い効果を示します。

散布後、素早く効果を発揮し、散布2時間後の雨にも強く、再散布の必要がありません。なお、フロルピラウキシフェンベンジルは新規有効成分で、SU抵抗性雑草にも使えます。

ノミニー液剤(ビスピリバックナトリウム塩液剤)

移植水稲と直播水稲のどちらにも使える中・後期除草剤で、イボクサの生育が進んでも、草丈30cm程度までならば防除可能です。移植水稲に対しては、クサネムとイボクサだけに登録があり(2023年4月26日)、イボクサに対して非常に高い効果を発揮します。

使用する際には落水して、または浅く湛水して散布します。なお、出穂・籾の品質に影響する恐れがあるので、幼穂形成期から乳熟期の水稲には使用を避けてください。

クリンチャーバスME液剤(シハロホップブチル・ベンタゾン液剤)

移植水稲と直播水稲のどちらでも、中・後期に使える除草剤です。2つの有効成分のうち、ベンタゾンが一年生広葉雑草に対し効果を発揮します。

使用する際は、落水状態またはごく浅い湛水状態で散布し、落水状態で散布した場合は3日、浅い湛水状態で散布した場合は5日、そのままの状態を保ちます。

水深を深くすると除草剤の効果が高まる

水田 湛水 深水

adigosts/ PIXTA(ピクスタ)

除草剤にもよりますが、特に初期剤で、湛水状態で散布するタイプのものは、水深を深くした状態で除草剤を用いると効率的に防除できます。

イボクサの化学的防除の項でも触れましたが、除草剤の効果に加えて、湛水の条件下ではイボクサの種子は発芽できず、茎葉の生育が抑制されるという特徴があります。

前出の農研機構の試験結果では、水深が3cm、5cm、7cmと深くなるほど、イボクサの幼植物の生育は抑制されると報告されています。

出典:農研機構 中日本農業研究センター「水田雑草イボクサの初期生育と除草剤の効果に及ぼす水深の影響(平成15年度「関東東海北陸農業」研究成果情報|関東東海・水田畑作物部会)」

除草剤による初期防除に加え、水深に対するイボクサの生態の特徴を利用することで、より効果的に防除できます。

秋まで残ってしまった畦畔のイボクサ

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

イボクサは近年、各地で発生が増加し、水稲栽培で被害が報告されています。畦畔から水田内に侵入し、水稲に絡んで倒伏させたり、収穫作業を妨げたりする非常に厄介な雑草です。発生が増える前に、水田内だけでなく畦畔にも初期に適切な防除を行い、被害を防ぎましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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